ドバイのオフプラン物件について「解約できるのか」を調べるとき、多くの人が探しているのは、購入者が自分の判断で契約から抜ける方法です。しかしドバイの法令が正面から定めているのは、購入者が契約上の義務を履行しなかったときに、開発会社がどの手続きを経て契約を終わらせられるかという側の規律です。今回確認したLaw No. 13 of 2008とその改正法の条文には、購入者が理由を示さずに解約できる権利を定めた規定は見つかりませんでした。
そこでこの記事では、支払いを続けられなくなったときに何が起きるのか、どの時点で誰が何を発行するのか、支払った額のうちいくらが戻るのかを、条文の順序どおりに整理します。あわせて、DLDが公開している2つの手続きの違いと、プロジェクトそのものが中止された場合に誰が判断するのかを確認します。個別の契約の適否や損害の有無を判断するものではないため、金額や権利の確定が必要な場面では、条文と契約書を示して専門家へ確認してください。
解約の入口は3つに分かれます
1つ目は、購入者が支払いなどの義務を履行しなかったことを理由に、開発会社が契約を終わらせる入口です。これはLaw No. 13 of 2008の第11条が定めており、2020年の改正法が現在の文面を与えています。DLDが関与する手続きが条文に書かれているため、当事者だけで完結しません。
2つ目は、ドバイの裁判所の決定にもとづいて、登記上の契約を取り消す入口です。DLDは契約の取消を申請する手続きを公開しており、必要書類として裁判所の書面を挙げています。3つ目は、プロジェクトそのものが中止された場合で、2020年のDecree No. 33が設けた専門の裁判所が権利の清算を扱います。
今回確認した公開情報の範囲では、購入者が自分の意思だけで進められる入口はありませんでした。合意して契約を終わらせることをDLDへ直接申請する手続きも、公開されているサービスの中には見つかっていません。したがって、まず自分がどの入口にいるのかを決めることが、調べる順序の最初になります。
条文はDLDを通した段取りを定めています
第11条は、購入者が契約上の義務を履行しない場合に、開発会社がDLDへ届け出ることから始めると定めています。届出はDLDが定める書式で行い、開発会社と購入者の情報、対象となる住戸の記載、そして購入者が違反した契約上の義務の詳細を含みます。開発会社が一方的に通知を送って終わる形ではありません。
DLDは届出を受けて内容を確認し、購入者に対して30日の通知を送ります。この通知は、開発会社に対する契約上の義務を履行するよう求めるものです。2017年の改正時に公表された第11条の解説は、DLDが同時に当事者間の和解を仲介すると説明しています。つまり30日は、支払いを立て直すか条件を話し合うための期間として置かれています。
期間が過ぎても解決しない場合、DLDは開発会社に対して公式の文書を発行します。この文書には、開発会社が条文の手続きを踏んだことと、対象となる住戸の完成率が記されます。完成率が文書に載るのは、次に開発会社が取れる措置が完成率の帯で変わるためです。この段階まで来ると、争点は払うか払わないかではなく、どの帯にいるのかへ移ります。
完成率の帯で、開発会社が取れる措置が変わります
完成率が80%を超えている場合、条文は3つの選択肢を挙げています。契約を維持して残りの代金を請求すること、住戸を公売にかけて未払分の回収を求めること、そして契約を一方的に解除して住戸の価額の40%までを保持することです。公売を選んだ場合の費用は購入者の負担として条文に書かれています。
完成率が60%以上80%以下の場合は、一方的に解除して40%までを保持する措置だけが挙げられています。完成率が60%未満でも、開発会社が工事を始めている場合、つまり建設現場を引き継いで工事に着手している場合には、解除して25%までを保持できます。帯が下がるほど保持できる上限が下がる構造です。
| 完成率の帯 | 条文にある措置 | 解除したときの保持上限 |
|---|---|---|
| 80%を超える | 契約の維持と残代金の請求/公売の請求/一方的な解除 | 住戸の価額の40%まで |
| 60%以上80%以下 | 一方的な解除 | 住戸の価額の40%まで |
| 60%未満(着工済み) | 一方的な解除 | 住戸の価額の25%まで |
| 未着工(開発会社の責めによらない) | 支払額の全額を返金 | 保持の定めなし |
割合の基準は、支払った額ではありません
ここが読み違えやすいところです。条文の40%と25%は、オフプラン売買契約に記載された住戸の価額に対する割合です。自分がそれまでに支払った額に対する割合ではありません。契約額の20%しか支払っていない段階で、上限が25%の帯にいる場合、計算上は支払額を上回る位置に上限があることになります。
この形だと、返ってくる額がゼロになる場合があります。条文は保持できる上限を定めるもので、上限と支払額の差を追加で請求できるかどうかは、今回確認した第11条の文面からは読み取れませんでした。確認できていない部分を有利にも不利にも補わず、自分の契約額と支払済額を並べて、上限がどこに来るかだけを先に把握してください。
上限であることも押さえます。条文の書き方は40%まで、25%までで、必ずその額になるという意味ではありません。実際に保持される額は契約の内容と手続きの経過によって決まります。またこの規定は公序に属するものとされ、これに従わない法律行為は無効になると定められています。契約書に条文より重い違約の定めが書かれていても、その定めがそのまま通るとは限りません。
条文は、2020年の施行日の前後を問わず、すべてのオフプラン売買契約に適用されるとしています。2020年より前に契約した住戸でも、この手続きの対象です。古い契約だから別の扱いになる、という前提は置かないでください。
返金の期限は、解除から1年か転売から60日の早いほうです
解除して上限までを保持する場合、超過分の返金には期限が定められています。条文は、解除から1年以内、または住戸が転売された日から60日以内のいずれか早い日までと定めています。転売が早く成立すればそれだけ早く返金の期限が来る構造で、転売されなければ1年が上限になります。
この期限は、返金が実際に完了した日の実績ではなく、条文が定める期限です。入金の記録、解除の通知、転売の有無を自分の側で時系列に並べておくと、期限との関係を説明できます。送金が遅れている場合も、まず解除がいつ成立したのか、転売があったのかを確認してから照会します。
着工していない場合は、全額の返金が定められています
完成率の帯とは別に、開発会社が工事に着手していない場合の規定があります。開発会社の責めによらない事由で、かつ過失なく工事を始められなかった場合、条文は購入者が支払ったすべての額を返金すると定めています。返金はLaw No. 8 of 2007の手続きと規則に従って行われます。これはプロジェクトの資金を扱うエスクロー口座の枠組みを定めた法律です。
ここで注意したいのは、全額返金が定められていることと、資金がすぐ手元に戻ることが同じではない点です。返金の経路がエスクロー口座の手続きに結びついているため、口座の状況と手続きの進行に左右されます。日数の定めについては、第11条の文面からは読み取れませんでした。期間の見込みを自分で置く場合は、条文に書かれた期限ではないことを前提にしてください。
DLDの窓口は、申請する人によって別の手続きです
DLDが公開している手続きのうち、オフプランの契約が終わる場面に関係するものは2つです。1つは初期登録の抹消を申請するもので、公開されている説明では、オフプラン売買契約の分割金を支払わなかった投資家について、仮登録の抹消を開発会社が申請するサービスとされています。申請できるのは開発会社で、経路は不動産開発業者向けのポータルです。
必要書類として、売買契約の該当ページ、開発会社の警告書、購入者が通知を受け取ったことの証明、本人確認の書類が挙げられています。第2段階では、法務部門が発行する抹消の通知、契約上の住所へ送付したことの証明、アラビア語と英語での官報掲載、法務部門の異議なし書面が並びます。料金はAED 600に知識料と革新料がそれぞれAED 10で、所要時間は8時間30分と公表されています。
もう1つは契約の取消を申請するものです。公開されている説明では、売買契約、抵当契約、リース・トゥ・オウンなどの契約について、ドバイの裁判所が出した決定にもとづいて取消を申請するサービスとされています。必要書類は裁判所の書面で、料金は取消がAED 1,000、権利証の発行がAED 250、これに知識料と革新料がそれぞれAED 10です。所要時間は15分、受付はDLD本館の窓口と公表されています。
2つを並べると、購入者の立場から見える景色が整理できます。開発会社が進める抹消の手続きには、購入者へ通知が届いていることの証明が要ります。いっぽう購入者の側から登記上の契約を取り消すには、先に裁判所の決定が必要です。どちらの手続きでも、通知を受け取った事実と日付の記録が材料になります。
| 項目 | 初期登録の抹消 | 契約の取消 |
|---|---|---|
| 申請できる人 | 開発会社 | 申請者(居住区分を問わない) |
| 前提になる根拠 | 分割金の不払いによる契約違反 | ドバイの裁判所が出した決定 |
| 必要書類 | 契約の該当ページ、警告書、受領の証明、本人確認、官報掲載ほか | 裁判所の書面 |
| 料金 | AED 600+知識料AED 10+革新料AED 10 | AED 1,000+権利証AED 250+知識料AED 10+革新料AED 10 |
| 所要時間 | 8時間30分 | 15分 |
| 受付の経路 | 不動産開発業者向けのポータル | DLD本館の窓口 |
プロジェクトが中止された場合は、専門の裁判所が扱います
2020年のDecree No. 33は、ドバイの未完成・中止となった不動産プロジェクトを扱う専門の裁判所を定めています。対象は、工事が始まったあとに止まったプロジェクトと、中止されたプロジェクトで、DIFCは除かれます。RERAが最終的な中止の決定を出したプロジェクトについて、清算と関係する権利の精算を、清算費用を差し引いたうえで行うとされています。
申立てができるのは、開発会社、購入者・投資家、そしてRERAです。RERAの中止の決定に対する不服も、この裁判所が扱います。エスクロー口座からの返金に関する命令や、支払われた額を検証するための監査人の選任も、権限として挙げられています。未完成のプロジェクトがRERAから回付された場合、完成を別の開発会社へ割り当てる決定も出せます。
押さえておきたいのは管轄の専属性です。ドバイの他の裁判所や司法機関は、この裁判所の管轄に属する申立て・請求・不服を扱えないとされ、すでに係属している事件は回付されます。そして出された裁定・命令・決定は確定するものとされ、通常の上訴の手続きには服しません。どこへ持ち込むかを間違えると、時間だけが過ぎることになります。
確認できなかったこと
購入者が理由を示さずに解約できる権利を定めた規定は、今回確認した法令の本文には見つかりませんでした。合意による解約をDLDへ直接申請する手続きも、公開されているサービスの中では確認できていません。また、実際に返金されるまでの平均的な日数、帯ごとの適用件数、開発会社が上限のうちどこまでを実際に保持しているかという実績値も、公表されているものを確認できませんでした。
第11条の文面から読み取れなかった点として、保持できる上限と支払済額の差を追加で請求できるかどうか、そして未着工での全額返金に期限の日数があるかどうかを挙げます。これらは条文の解釈と個別の契約に関わるため、推定で埋めずに空けておきます。
解約を調べる前に、手元で揃える記録
最初に揃えるのは、売買契約書の全ページ、支払いの予定表、入金の記録、そしてDLDや開発会社から届いた通知です。契約額がいくらで、そのうちいくらを支払ったのかを並べると、上限の帯が自分にとって何を意味するかが分かります。完成率については、開発会社の説明と公的な照会を分けて確認します。
次に、届いた通知の日付を並べます。30日の通知が届いているのか、まだ届いていないのかで、いまどの段にいるのかが変わります。登記の状況は権利証や登録の記録で確認し、ドバイ不動産のTitle Deedの確認方法やRERAが監督する範囲も合わせて見ておくと、誰へ何を照会するのかを分けられます。
当社は、価格の上昇、賃料収入、利回り、そして返金の額と時期について、いずれも保証しません。この記事は条文とDLDの公開情報を読んだ整理であり、個別の契約についての法的な助言ではありません。開発会社の登録や公表されている実績を確認するときは、ドバイのディベロッパーの順位やドバイのデータも入口として使えます。