ドバイで物件を買うときに必要な費用は、ひとまとめに1回で出ていくわけではありません。Dubai Land Department(DLD/ドバイ土地局)が公表している料金は手続きごとに別のページに載っており、支払う相手も、売買登録を扱う窓口、融資をする銀行、売主、開発事業者に分かれます。この記事は、2026年10月10日に確認したDLDの4つのサービス案内を、支払いが発生する順に並べ替えたものです。
先に結論から書きます。公表されている金額のうち大きな部分、つまり売買額の4%にあたる登録料と窓口のサービスパートナー手数料は、売買登録を行う日に動きます。ローンを使う場合の抵当権登録料は、同じ取引でも銀行の口座から引かれる形で公表されています。そして売主に住宅ローンの残債がある物件では、支払いが小切手3枚に分かれ、抵当権の解除レターが出るまで登記が終わりません。
費用の項目そのものや総額の組み立ては購入費用・諸費用の各記事で扱います。ここで扱うのはいつ、誰に、どの手段で払うかという一点だけです。DLDの料金は改定されることがあるため、実際の取引では同じページを自分で開いて確認してください。
公表されている料金は、時点ではなく手続きごとに並んでいる
DLDの料金表は、e-Service(電子サービス)の単位で作られています。完成物件の売買を登記する「Property Sale Registration」、抵当権が付いた物件の売買を登記する「Registering the Sale of a Mortgaged Property」、建設前・建設中の物件を登記する「Request to Register the Initial Sale」、抵当権を登録する「Grant Property Mortgage」は、それぞれ別のサービスで、料金も別のページに載っています。
この並び方は、手続きを申請する側には合理的ですが、資金を準備する立場では読み替えが必要になります。1つの取引で複数のサービスが動くことがあり、逆に条件に当てはまらなければ一度も使わないサービスもあります。全部を足して1つの金額にまとめてしまうと、どの時点でいくら手元に要るのかが分からなくなります。
そこで4つの案内を、支払いが発生する時点の順に並べ替えました。順番は手続きの前後関係で決まり、下の図の③と④は条件に当てはまるときだけ発生します。
売買登録の日に、窓口でまとめて動く費用
完成物件(レディ物件)の売買登録について、DLDはサービスの提供経路をReal Estate Registration Trustees Centerと公表しています。案内に載っている手順は、必要書類を提出して確認を受け、担当者が取引データを入力して監査し、手数料を支払って領収書を受け取る流れです。所要時間は25分と公表されています。
手数料は3つの段に分かれています。売主と買主がそれぞれ売買額の2%を負担するService Fees、証書の発行料や地図の費用に知識料・革新料を加えたAdditional Fees、そして窓口のService Partner Feesです。窓口の手数料は売買額で段が変わり、AED 500,000以上ならAED 4,000に付加価値税を加えた額、AED 500,000未満ならAED 2,000に付加価値税を加えた額と公表されています。
ここで資金準備の観点から押さえておきたいのは、定額の費用は売買額に比例しないという点です。2%は価格に連動しますが、証書の発行料、地図の費用、知識料と革新料は定額で、窓口の手数料も2段階しかありません。価格の低い住戸では、この定額部分が総額の中で相対的に重くなります。
| 公表されている項目 | 公表されている額 | 払う先 |
|---|---|---|
| Service Fees(売主) | 売買額の2% | DLD |
| Service Fees(買主) | 売買額の2% | DLD |
| Title Deed Certificate Issuance Fee | AED 250 | DLD |
| Unified Map under Dubai Municipality | AED 225 | DLD |
| Map for lands not under Dubai Municipality | AED 100 | DLD |
| Villas and Apartments(案内の表記のまま) | AED 250 | DLD |
| knowledge fee | AED 10 | DLD |
| innovation fee | AED 10 | DLD |
| Service Partner Fees(AED 500,000以上) | AED 4,000 +付加価値税 | 窓口(Trustees Center) |
| Service Partner Fees(AED 500,000未満) | AED 2,000 +付加価値税 | 窓口(Trustees Center) |
表の4行目は、案内のAdditional Feesに「AED 250 Villas and Apartments」と並んでいる項目です。何に対する費用なのかは案内に明記されていないため、公表されている表記のまま載せています。見積書に同じ額の行が2つ出てきたときは、証書の発行料と地図の費用のどちらなのかを確かめてください。
必要書類としては、売主と買主のEmirates ID(非居住の外国人は有効なパスポート)に加えて、フリーホールド区域では開発事業者が発行するe-NOC(異議がないことの電子証明)が挙げられており、Dubai REST Appを通じて取得すると公表されています。e-NOCそのものの手数料は、この案内には書かれていません。
売主に残債があると、支払いが小切手3枚に分かれる
売主に住宅ローンが残っている物件には、DLDは別のサービス「Registering the Sale of a Mortgaged Property」を用意しています。この案内で支払いの段取りに直結するのは、申請時に用意する書類としてマネージャーズチェック3枚が挙げられている点です。内訳は、銀行または開発事業者を宛先にした残債の額、売主を宛先にした差額(ある場合)、そしてDLDを宛先にした4%の手数料です。
つまり同じ日に、同じ取引のための資金が3つの相手へ分かれて渡ります。案内では、銀行から残債を示す書面(liability letter)を取り、銀行宛の小切手を売主に渡して、売主が銀行で抵当権の解除証明を受け取るという順序が示されています。
登記がいつ完了するのかも明示されています。案内は、売主または買主が抵当権の解除レターを提出した後に、解除の手続き、売買の手続き、(ある場合は)新しい抵当権の手続きが完了するとしています。抵当権の解除手続きの費用はAED 1,290と公表されています。
ここは時点を読み違えやすい場所です。売買額の4%を用意していても、残債の精算と解除の手続きが終わらなければ、その日に所有権の登記は完了しません。登記が終わって初めて発行される証書の役割はドバイ不動産のTitle Deedで扱っています。
あわせて注意点を1つ挙げます。Service Feesは売主2%・買主2%として公表されている一方、抵当権付き売買の案内では申請時に用意する小切手として「DLD宛に4%の手数料」が挙げられています。実際にどちらがいくら用意するのかは契約で決まる部分で、DLDの案内からは読み取れません。見積書を受け取ったら、4%が誰の負担として計算されているかを文面で確認してください。
買主がローンを使う場合、0.25%は銀行の口座から引かれる
買主がUAEの銀行から融資を受ける場合、抵当権の登録は「Grant Property Mortgage」という別のサービスになります。料率は、Mohammed bin Rashid Housing Establishmentが融資するものでない場合、抵当額の0.25%と公表されています。計算の基準は売買額ではなく抵当額です。借入額が売買額より小さければ、基準になる金額もその分小さくなります。
支払いの経路も他の手続きと違います。案内の手順では、顧客が銀行から要件を受け取り、銀行の担当者が必要書類をオンラインで提出し、DLDが監査したうえで手数料は銀行の口座から引かれるとされています。所要時間は15〜20分と公表されています。買主の立場で見ると、この料金は窓口で自分が払うものではなく、銀行の見積りや精算書のどこに入っているかを確認する対象になります。
抵当権の登録で必要な書類としては、市の地図、抵当権者である銀行のレター、双方が署名した抵当権設定契約3部、所有者のEmirates IDなどが挙げられています。これらは銀行側が揃える前提で手順が書かれているため、買主が用意するのは銀行から求められた書類ということになります。
オフプランは、窓口がオンラインに変わる
建設前・建設中の物件を契約する場合は、「Request to Register the Initial Sale」が使われます。案内では、Oqoodのポータルにログインして仮売買登録のサービスを選び、物件を選択して必要事項を入力し、書類を添付して支払い方法を選んでオンラインで申請する手順が公表されています。結果は購入者へ電子メールで届くとされています。
料率は売主が売買額の2%、購入者が売買額の2%で、知識料と革新料が各AED 10です。開発事業者が自分で登記する場合の料金としてAED 1,000が挙げられています。支払いの経路はNoqodiのウォレットか、エスクロー口座からの控除です。所要時間は、この案内には書かれていません。
同じ物件でも、オフプランの時期と完成後では別のサービスになります。支払う場所が「出向く窓口」から「オンライン」へ変わり、支払いの原資としてエスクロー口座が選べる形になります。資金の準備としては、手元から出す現金なのか、すでにエスクロー口座へ入れた資金から引かれるのかで意味が変わるため、どちらの経路で申請されるのかを事前に確認してください。
支払手段は公表されているが、口座の要件は書かれていない
支払手段は4つの案内それぞれに書かれています。完成物件の売買登録はePay、Dubai Pay、Noqodiのウォレット、マネージャーズチェック。抵当権付き物件の売買登録はePay、Sadad Dubaiのプラットフォーム、Noqodi、そしてDLDを宛先にしたマネージャーズチェック。オフプランの初回登記はNoqodiのウォレットとエスクロー口座からの控除。抵当権の登録はNoqodiで、手数料は銀行の口座から引かれます。
手段の呼び方が案内ごとに揃っていない点には注意が必要です。たとえばDubai Payは完成物件の売買登録の案内に出てきますが、抵当権付き売買の案内ではSadad Dubaiのプラットフォームという表記になっています。同じ仕組みを指しているのかどうかは文面から判断できないため、当サイトでは公表されている表記のまま並べています。
そして、日本から購入する読者がいちばん知りたい部分は、どの案内にも書かれていません。マネージャーズチェックを用意するために必要な口座の条件、海外送金にかかる手数料、為替の取り扱いは銀行側の条件であり、DLDのサービス案内の範囲外です。当サイトでも確認できていないため、この記事では金額を示しません。送金の段取りは、取引に入る前に銀行へ直接確かめてください。
DLDの案内に金額が書かれていない費用
資金の準備で漏れやすいのは、DLDが金額を公表していない費用です。公表資料で確かめられることと、確かめられないことを分けておきます。
| 費用の項目 | DLDの4つの案内での扱い | 確認する相手 |
|---|---|---|
| 仲介の報酬 | 金額の記載がありません | 合意した仲介契約 |
| 開発事業者のe-NOC手数料 | 必要書類としての記載のみ | 開発事業者の公表資料 |
| 評価書・鑑定の費用 | この4件には記載がありません | 依頼先と銀行 |
| 管理費・サービスチャージの初回請求 | この4件には記載がありません | 管理会社の請求書 |
| 海外送金の手数料と為替 | 記載がありません | 送金する銀行 |
これらは「存在しない」のではなく、DLDの4つのサービス案内には書かれていないという意味です。仲介の報酬は合意した契約が根拠になり、開発事業者の手数料は開発事業者の公表資料で確認します。保有を始めてからの支出は別の論点なので、購入費用・諸費用の他の記事で扱います。
自分の取引で、時点ごとの必要額を組み立てる順番
最後に、手元の取引に当てはめる順番を整理します。まず対象が完成物件かオフプランかを決めます。これで売買登録の案内を見るのか、初回登記の案内を見るのかが決まります。次に、売主に抵当権が残っているかを確認します。残っていれば小切手が3枚に分かれ、解除の手続きと解除手続きの費用が加わります。最後に、自分がローンを使うかを確認します。使うなら抵当額の0.25%が加わり、その支払いは銀行の口座を経由します。
この3つを決めると、必要なサービスの組み合わせが確定します。あとはそれぞれの案内に載っている金額を、時点ごとに足し合わせるだけです。総額を先に出してから時点に割り振るのではなく、時点ごとに必要な金額を積み上げる順番にすると、売買登録の日に足りないという事態を避けやすくなります。
制度全体の前提を確認したい場合はドバイ不動産投資の基本を、ドバイと他の首長国を費用の違いから比べる場合はドバイとアブダビの比較を参照してください。
なお、当社は物件価格の上昇、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。この記事に挙げた金額は、DLDが2026年10月10日時点で公表していた表記にもとづくもので、改定される可能性があります。取引の前には、必ず該当するサービス案内を自分で開いて確認してください。