UAEで住戸を1件買おうと決めたあと、次に迷うのがドバイとアブダビのどちらにするかです。結論を先に書きます。この2つは同じ国の中にありますが、買える権利の年数、権利を登記する相手、登録手数料が何に掛かるか、貸したあとに賃料を上げられる幅が、それぞれ別に定められています。UAEの不動産としてまとめて考えると、手続きの相手と費用の計算方法を取り違えます。
この記事は、どちらが得かを順位で示すものではありません。どちらを選ぶかは、政府機関が公表している4つの項目を自分の条件に当てはめれば決まります。値上がりの見通しや人気といった、読者が再現できない基準は使いません。使うのはドバイ政府の法令ポータル、ドバイ土地局(DLD)、アブダビ不動産センター(ADREC)が運営するDARI、ADGMの登録局、そしてUAE政府ポータルの公表ページだけです。確認日は2026年9月29日です。
エリアの単位で数字を突き合わせられるかどうかは、ドバイとアブダビのエリア比較で扱いました。そちらは資料の粒度の話です。この記事は首長国そのものを選ぶ場面を扱い、価格の水準ではなく制度と費用の計算方法に絞ります。
決める順番は、権利・登記の相手・手数料・賃料の上げ幅
4つの項目には順番があります。先に費用を比べても、そもそも取得できる権利の形が希望と違えば意味がありません。逆に、権利の形を受け入れられるなら、残りは金額と手続きの話なので、料金欄と申請画面で確かめられます。
下の図は、最初の3つの分かれ道を上から順に答えていく形にしたものです。答えによって候補が片方に絞られる場合と、両方が残る場合があります。3つとも両方が残ったなら、首長国の制度では差が付かないということです。そのときは物件そのものの条件で選びます。
図の見方でひとつ注意があります。2つめの分かれ道は、いまの制度がそうなっているという話であって、これから先も続くという意味ではありません。アブダビの上限は一時的な変更として公表されていて、いつ戻るのかは書かれていません。
取得できる権利は、期間の書き方が違う
UAE政府ポータルは、ドバイとアブダビを別の節に分けて説明しています。
ドバイについては、指定された区域で、期間の制限のないfreeholdの所有権、usufruct(用益権)、または99年までのleaseholdを取得できると書かれています。期間の制限がない、という書き方があるのはドバイの側だけです。
アブダビについては、投資区域として9つの名前を挙げ、取得できるものを4つの区分に分けています。住戸についての所有は99年、建築や改変ができるmusatahaは50年、usufructは99年、そして長期リースは最初の期間が25年以上という書き方です。住戸の所有には土地が含まれないとも書かれています。
| 取得できる権利 | ドバイ | アブダビ |
|---|---|---|
| 期間の制限のない所有 | freeholdとして公表されている | 公表されている区分にありません |
| 期間の決まった所有 | leaseholdは99年まで | 住戸の所有は99年 |
| 使う権利 | usufructの記載がある | usufructは99年 |
| 建てる・手を入れる権利 | この節に区分としての記載はありません | musatahaは50年 |
| 長期の賃借 | leaseholdとして99年まで | 最初の期間が25年以上 |
表の1行目が、この記事でいちばん大きい違いです。期間の区切りのない所有権を前提に考えているなら、候補はドバイの指定区画に絞られます。99年で足りると判断できるなら、どちらも候補に残ります。
ただし、ドバイ側は区域の名前だけでは決まりません。規則は区域の名前と土地の区画番号で指定していて、同じ区域名でも区画によって取得できる権利が違うことがあります。権利の区分そのものはドバイのフリーホールドとは、アブダビの4区分はアブダビ不動産の所有権は4種類で詳しく扱っています。
権利を登記する相手が、アブダビでは2つに分かれる
ドバイで権利を登記する相手はDLDです。売買の登録、権利証の発行、賃貸契約の登録が、この1つの機関の系統にまとまっています。
アブダビはADRECで、実際の申請はDARIという電子プラットフォームで行います。ただしアブダビには、同じ首長国の中で相手が変わる区域があります。ADGMの登録局は、その管轄区域にある不動産上の権利の登録を扱うと説明し、対象としてAl Maryah島とAl Reem島を挙げています。手続きはAccessRPという別のプラットフォームで行い、規則は英国のコモン・ローを取り込んだものだとされています。
この差は費用の額よりも、誰に何を確認すればよいのかという段取りに効きます。物件の所在がどちらの管轄なのかを、契約の前に確かめてください。アブダビ側の手続きの順序と書類はアブダビ不動産の購入費用にまとめています。
売買登録の手数料は、率より「何に掛かるか」で差が出ます
どちらも2%という数字が出てくるため、同じくらいの費用だと読まれがちです。ところが公表されている料金欄を並べると、率が掛かる相手が違います。
DLDの売買登録の案内では、売主が売買価額の2%、買主が売買価額の2%と分けて掲載されています。基準は売買価額です。足せば4%になりますが、公表されている区分は売主と買主に分かれているので、この記事では区分を落としません。誰がどこまで負担するかは、契約で合意する事項です。
DARIの売買の案内では、評価額と売買価格を比べて高いほうの2%と書かれています。評価額はDARIが自動で計算すると説明されています。ここが読み違えやすい点です。値引きの交渉が成立しても、評価額のほうが高ければ、手数料はその評価額を基準に決まります。売買価格から諸費用を逆算する前提で予算を組むと、足りなくなることがあります。
同じDARIの案内には、契約から残っている評価額と売買価格の高いほうの1%という記載も併記されています。どの場合にこちらが適用されるのか、条件の説明は見当たりませんでした。確認できていないので、この記事では条件を推測しません。
固定額として公表されているものにも差があります。DLDの料金欄には、権利証の発行、図面、知識料、革新料が金額つきで並び、物件の価額の帯で変わるサービスパートナーの料金まで載っています。DARIの案内では、市の手数料が自動で計算されると書かれている一方、その率と額は書かれていません。どちらの側にも、公表されていない項目があります。見積書を受け取ったら、率の数字ではなく、掛ける基準と固定額の行を1つずつ突き合わせてください。
貸したときに賃料を上げられる幅が、いまは逆になっています
買ったあとに貸す前提なら、更新のときに賃料をどこまで上げられるかが効きます。ここは2026年に入って向きが変わりました。
ドバイは、Decree No. (43) of 2013 が更新時の上限を段階で定めています。基準は、いまの賃料が同種の住戸の平均賃料をどれだけ下回っているかです。下回りが10%以下なら上げられません。11%から20%なら5%、21%から30%なら10%、31%から40%なら15%、40%を超えて下回っているなら20%まで上げられると書かれています。平均賃料は、RERAが承認したドバイの賃料指数によって決まるとされています。つまり上限は物件ごとに違います。
アブダビは、年間の上限が1つだけ定められている形です。DARIの更新の案内には、貸主は前年の年額賃料の5%を超えて賃料を上げられないと書かれています。ところがADRECは2026年6月3日、この上限を5%から0%へ一時的に変えると公表しました。対象は住宅・商業・工業の物件で、新しい契約と更新の両方だとされています。終わる時期は書かれていません。
この違いは、収入の見通しの立て方を変えます。ドバイでは、いまの賃料が平均より大きく下回っている物件ほど上げられる幅が広く、平均並みの物件は上げられません。上限は市場全体ではなく、その物件の位置で決まります。アブダビでは、いまのところ物件がどこにあっても上げられません。
一時的な措置だからいずれ戻る、とは書かないでください。発表に書かれているのは変更の内容と開始日までです。アブダビ側の経緯はアブダビの賃料据え置き、ドバイ側の賃貸の規律はドバイ賃貸借法の基本にあります。
借主に請求される手数料も、率は同じで基準が違う
賃貸に出すとき、契約の登録とそれに伴う費用の書き方も首長国で分かれます。おもしろいのは、ここでも率がそろっていて基準が違うという形になっている点です。
UAE政府ポータルは、ドバイの借主がドバイ自治体へ払う住居費を、年額の賃料に対する5%と説明しています。アブダビについては、賃料か賃料インデックスの高いほうを基準にした5%と書かれています。どちらも電気・水道の請求に加算され、アブダビは12か月に分けて加算されると説明されています。
DARIの料金表は、これに加えて登録そのものの料金を示しています。住宅の契約は、4年未満ならサービス料が1契約あたりAED 50、4年以上なら年額賃料の1%です。非ローカルの契約に掛かる市政手数料は年額賃料の5%で、AED 450を下回らないと書かれています。商業・工業の契約については、市政手数料が「No fees」と明記されています。
| 賃貸に出したときの費用 | ドバイ | アブダビ |
|---|---|---|
| 契約の登録 | Ejari(DLD) | Tawtheeq(ADREC。DARIで申請) |
| 登録のサービス料 | この記事では確認していません | 住宅で4年未満は1契約あたりAED 50 |
| 4年以上の住宅契約 | この記事では確認していません | 年額賃料の1% |
| 自治体の手数料の率 | 5% | 5% |
| その率が掛かる基準 | 年額の賃料 | 賃料か賃料インデックスの高いほう |
| 下限の額 | 記載を確認していません | AED 450を下回らない |
| 商業・工業の自治体手数料 | この記事では確認していません | No feesと明記 |
| 請求のしかた | 電気・水道の請求に加算 | 同じ請求に12か月に分けて加算 |
率が同じ5%なので、日本語の資料では「どちらも家賃の5%」と書かれることがあります。アブダビ側は賃料そのものではなく、賃料と賃料インデックスの高いほうが基準です。相場より安く貸しても、手数料の側は下がらないことになります。下限の額もあります。ドバイのEjariの手続きはドバイのEjari登録とはにまとめています。
住むつもりなら、在留の申請先も変わります
買った物件に自分で住むつもりなら、もう1つ窓口が分かれます。UAE政府ポータルは、ビザの照会先を首長国ごとに分けていて、ドバイはGDRFA、アブダビを含むほかの首長国はICPとしています。滞在資格の名前は共通でも、申請する相手が違います。アブダビに住む場合の段取りはアブダビ移住の基礎にまとめています。
条件から選ぶ。順位は付けません
どちらが優れているという順位は付けません。公表値で並べ替える基準を作れないためです。代わりに、確認できた項目から条件で絞ります。誰にとってのおすすめかを先に書きます。
期間の区切りのない所有権を前提に考えている人は、ドバイの指定区画だけが候補になります。政府ポータルの説明で、期間の制限がないと書かれているのはドバイの側だけです。
買ってすぐ貸し、更新で賃料を上げながら回していく前提の人は、いまのアブダビでは上げられません。ドバイには段階の上限があり、いまの賃料が平均を下回っている物件なら上げられます。ただし平均並みなら上げられないので、物件ごとに確かめる必要があります。
売買価格から諸費用を確定させたい人は、ドバイのほうが計算しやすくなります。基準が売買価額で固定されていて、固定額の項目まで金額が公表されているためです。アブダビは評価額のほうが高ければそちらが基準になるため、申請の画面に出るまで額が確定しません。
登記の窓口を1つにしたい人は、物件がADGMの管轄区域に入るかどうかを先に確かめてください。Al Maryah島とAl Reem島は、登録を扱う相手とプラットフォームが変わります。
この4つのどれにも当てはまらない人にとっては、首長国の制度では差が付きません。そのときは物件そのものの条件で選んでください。
この記事で確認できなかったこと
DARIの売買の案内に併記されている1%について、適用の条件を確認できていません。2%と1%のどちらになるかは、申請画面の表示で確かめてください。市の手数料が自動で計算されるという記載についても、率と額を確認できていません。
ドバイ側について、賃貸契約の登録そのものにかかる料金を、この記事では確認していません。借主が払う住居費の率は政府ポータルで確認できましたが、登録の料金表は別に当たる必要があります。
アブダビの上限0%がいつまで続くのかも公表されていません。発表は一時的な変更としていて、期限は書かれていません。見つけられなかったことは、存在しないという意味ではありません。確認できた範囲だけを書いています。
ドバイの区域の指定について、区画を示す地図は法令ポータルからは読めませんでした。対象の区画に入っているかどうかは、契約の相手方から受け取る書面と、局の記録で確かめてください。
値上がりも賃料収入も保証しません
当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。この記事で並べたのは制度と公表されている費用で、結果ではありません。
賃料の上限が高いことは、実際に上げられることを意味しません。借主が応じるかどうか、周辺の賃料がどうなるかは別の話です。手数料が低いことも、総額が安いことを意味しません。物件の価格、管理費、空室、為替、売却するときに買い手が付くかどうかは、どちらの首長国を選んでも結果を左右します。
比較でそろえられるのは条件のほうで、結果ではありません。確かめられた事実と、確かめられていない見込みを、同じ表に混ぜないでください。
まとめ
ドバイとアブダビのどちらにするかは、4つの項目で決まります。期間の制限のない所有権が必要かどうか、権利を登記する相手が1つでよいかどうか、諸費用を売買価格から逆算したいかどうか、そして更新で賃料を上げる前提かどうかです。
期間の制限のない所有権と、売買価格を基準にした費用の確定を重く見るならドバイです。99年の区分で足り、貸したあとの値上げを前提にしないなら、アブダビも候補に残ります。いまのアブダビは、更新でも新しい契約でも賃料を上げられません。
どちらを選んでも、確かめる相手は変わります。ドバイはDLD、アブダビはADRECで、Al Maryah島とAl Reem島はADGMの登録局です。率の数字だけを並べて安いほうを選ばないでください。基準が違えば、同じ2%でも支払う額は変わります。