「ドバイのディベロッパーを比べたい」と調べると、会社名の横に「信頼度」「人気」「おすすめ度」といった列を付けた表がいくつも出てきます。その列の中身は誰かが付けた点数なので、読者が同じ手順をたどっても同じ順位になりません。当サイトは、並べ替えの根拠になる公表値を示せない順位を作らない方針です。だからこの記事にも、点数で並べた表は出てきません。
代わりに使うのは、Dubai Land Department(DLD、ドバイ土地局)がオープンデータとして配っているプロジェクトの登録簿です。誰でも同じ条件で取り直せて、同じ数字に行き着きます。ただし、そこに入っている列は限られていて、会社の良し悪しを表す列はひとつもありません。比べられるのは、どの法人がどの案件を、どれだけの規模で、どの状況まで進めているかという事実だけです。
この記事では、その登録簿で実際に何が比べられるのか、どの列を見落とすと順位がまるごと変わるのか、そして読者が同じ表を作り直すにはどうするのかを順に書きます。数字は本文に散らさず、集計の定義と対象期間を添えて図の中に置いています。引用するときは期間と集計日ごと持っていってください。
並べるのに使えるのは、プロジェクト登録簿の列です
DLDのオープンデータのページでは、取引、賃貸、プロジェクト、評価、土地、建物、住戸、仲介業者、ディベロッパーというデータセットが配られています。会社を横に並べるときに使えるのは、このうちプロジェクトとディベロッパーの2つです。ほかのデータセットは物件や取引の単位で作られているため、会社ごとにまとめ直すことができません。
プロジェクトのデータセットには、プロジェクト番号と名称、ディベロッパー番号と名称、着工日と終了予定日、採択日、プロジェクトの種別と価額、エスクロー口座番号、プロジェクトの状況、完了した割合、検査日といった列が並びます。ディベロッパーのデータセットのほうは、ディベロッパー番号と名称、登録日、免許の出所と種別、法人の形態、ウェブサイト、電話、免許番号、免許の発行日と期限、商業会議所の番号です。
この一覧に「品質」も「評判」も「顧客満足」もありません。比較の材料をこの範囲に限ると書けることは減りますが、そのかわり読者が自分で確かめ直せる比較になります。逆に言えば、公表データの外側にある評価を列に加えた瞬間に、その表は再現できなくなります。
会社を比べる目的から見ると、読む列は次の5つに絞られます。
| データセット | 会社を比べるときに読む列 | この列から言えること |
|---|---|---|
| Projects | ディベロッパー名・ディベロッパー番号 | どの案件が、どの法人のものか |
| Projects | 住戸の数(CNT_UNIT)・ヴィラの棟数(CNT_VILLA) | 登録簿に載っている供給の規模 |
| Projects | エスクロー口座番号 | 代金の預け先が案件に設定されているか |
| Projects | プロジェクトの状況・完了した割合 | 案件が進んでいるのか、止まっているのか |
| Developer | 登録日・免許番号・免許の期限 | 登録と免許が、いつまで有効なのか |
住戸の多い順に並べると、こう見えます
登録簿に載っている住戸の数だけで並べると、上位はオフプランの大型案件を抱える会社に寄ります。いちばん多いBinghatti Developers FZEは、案件の数では十数件ですが、1件あたりの住戸数が大きいため2番手以下を大きく引き離します。逆にEMAAR DEVELOPMENT P.J.S.C.は、登録されている案件の数ではいちばん多いのに、住戸の列だけを見ると十番目に落ちます。
この並びを「ドバイで最大のディベロッパー」の順位として読まないでください。ここで数えているのはその期間の照会で返ってきたプロジェクトに登録されている戸数であって、会社がこれまでに引き渡した住戸の累計でも、売上でも、時価総額でもありません。すでに完成した案件はこの照会の対象に入っていないため、歴史の長い会社ほど数字が小さく出ます。
もうひとつ、会社名はDLDに登録されたとおりの法人名で並べています。同じブランドでも案件ごとに別の法人を立てている場合は、別の行になります。当サイトは名寄せをしていません。ブランドで束ねたい読者は、自分の判断で束ねてください。どの法人がどの案件を持っているかは、登録簿の行がそのまま答えになります。名寄せを機械にやらせると、似た社名を勝手に同じ会社として扱ってしまい、照会できない数字が生まれます。
日本語の記事でよく見る「エマール」「ダマック」といったカタカナ表記も、この表では使っていません。登記された法人名は、読者がDLDの登録を照会するときの手がかりです。カタカナに置き換えると照会できなくなるため、英語のまま置いています。
住戸とヴィラは、別の列に入っています
登録簿には、住戸の数を入れる列とヴィラの棟数を入れる列が別々にあります。アパートメントを積み上げる案件は前者に、戸建てのコミュニティを造る案件は後者に入ります。つまり住戸の列だけで並べると、ヴィラを中心に手がけている会社がまるごと抜け落ちます。表に出てこないことと、規模が小さいことは別です。
実際に、DAMAC PRIME DEVELOPMENT L.L.Cは住戸の列がゼロです。住戸の多い順の表には最後まで出てきません。ところがヴィラの列を見ると、同社は10件の案件を抱えていて、そのすべてが進行中として記録され、すべてにエスクロー口座番号が入っています。2つの列を足して並べ直すと、順位は上のほうへ移ります。EMAAR DEVELOPMENT P.J.S.C.も同じで、ヴィラを足すと十番目から2番目へ動きます。
どちらの並べ方が正しい、という話ではありません。アパートメントを探している読者には住戸の列が、戸建てを探している読者にはヴィラの列が意味を持ちます。大事なのは、ランキングを見たときに何を数えた順位なのかを先に確かめることです。基準の列が書かれていない順位は、この違いをそのまま隠してしまいます。
登録簿の全体でも、ヴィラの棟数は住戸の数より一桁小さく、両方を足した戸数の一割強にとどまります。少数派だからこそ、住戸の列だけで並べたときの取りこぼしが目立ちません。図には両方の合計を出しているので、割合は読者の側でも確かめられます。
会社ではなく、プロジェクト単位で確かめる
会社の規模が分かっても、自分が買おうとしている住戸が守られているかは分かりません。代金の預け先は案件ごとに決まるからです。登録簿でも、エスクロー口座番号は会社の列ではなくプロジェクトの列に入っています。同じ会社の案件でも、口座番号が入っているものと、まだ入っていないものがあります。
そこで、会社名を聞いたら次はプロジェクトの名称と番号を受け取ります。DLDはプロジェクトの状況を照会するサービスを公開していて、名称でも番号でも検索できると案内しています。照会すると、ディベロッパーの名称と番号、管理会社、エスクロー口座の銀行名、プロジェクトの状況、検査の記録などが表示されると書かれています。利用の経路としてはDubai RESTのアプリが案内されています。会社のパンフレットではなく、この画面が照合の基準になります。
確かめるのは3つです。案件が進行中として登録されているか、エスクロー口座が設定されているか、そして送金を求められている口座が、その画面に出ている口座と一致するかです。どれかが確かめられないうちは、価格や支払いプランを他社と比べても意味がありません。並べ替えの前に、同じ土台に乗っているかどうかを見るのが先です。
登録簿の中を状況ごとに数えると、進行中として記録されている案件が大半で、残りは保留の扱いです。エスクロー口座番号が入っている案件も全件ではありません。図に内訳を出しているので、どのくらいの割合が保留なのかは読者の側で確かめられます。保留が直ちに問題という意味ではありませんが、保留の案件を進行中の案件と同じ前提で比べることはできません。
オフプランの売買登録そのものも、買主の側からは起票できません。DLDの初期売買登録のサービスは、開発会社が暫定的な登録簿へ登録するための窓口として案内されています。だから登録が進んでいるかどうかは、相手に確認し、発行された記録で確かめる形になります。
同じ表を自分で作り直す手順
この記事の図に出ている数字は、次の手順で誰でも作り直せます。当サイトが独自に集めた数字ではありません。
まずDLDのオープンデータのページでプロジェクトのデータセットを選び、期間を指定して照会します。照会の画面には画像認証が付いているため、ここだけは人が操作します。当サイトは画像認証を機械で回避しません。返ってきたCSVを保存したら、ディベロッパー名で行をまとめ、住戸とヴィラの列をそれぞれ合計し、状況が進行中の行と、エスクロー口座番号が入っている行を数えます。これで図と同じ表になります。
集計の定義も書いておきます。件数は行の数です。会社名は大文字と小文字をそろえてから突き合わせ、ブランドによる名寄せはしていません。期間は、こちらが要求した範囲ではなく、返ってきたデータに実際に入っていた日付の範囲を書いています。CSVは説明文の中に改行を含む行があるため、1行を1件として読むと件数がずれます。
同じ手順を別の期間で走らせれば、数字は変わります。変わること自体が正常です。新しい案件が登録され、保留が進行中に切り替わり、完成した案件が対象から外れていきます。だから図には集計日と対象期間を必ず入れています。数字だけを引用して期間を落とすと、いつの話なのか誰にも分からなくなります。
この比べ方で分からないこと
登録簿で比べられるのはここまでです。読者が知りたいことのうち、この方法では埋まらない項目を先に並べておきます。埋まらないものを推測で埋めないことが、この記事の前提です。
| 知りたいこと | 登録簿で分かるか | 補う方法 |
|---|---|---|
| 引き渡しが予定どおりだったか | - | 契約の引き渡し条項と、案件ごとの検査の記録を照会する |
| 仕上げや施工の品質 | - | 同じ会社が完成させた建物を実際に見る |
| 会社の財務の健全性 | - | 上場している会社なら、公表されている決算資料を読む |
| 支払いプランの条件 | - | 対象案件の販売資料と契約書で確認する |
| これまでに完成させた累計 | - | この照会の対象外。別の期間で取り直す |
| 代金の預け先が設定されているか | ○ | エスクロー口座番号の列と、照会画面の銀行名 |
| 免許がいつまで有効か | ○ | ディベロッパーのデータセットの免許の期限 |
表に「-」が並んでいるのは、データが足りないという意味ではありません。登録簿がそもそも別の目的で作られているという意味です。登録簿は、誰がどの案件をどの枠組みで進めているかを記録するものであって、会社の優劣を評価するために作られたものではありません。評価の列を足したくなったときは、その列がどこから来たのかを自分に問い直してください。
評価にあたる部分は、読者が自分の条件に照らして判断するしかありません。当サイトができるのは、その判断の前に置く事実を、出典と確認日つきでそろえることまでです。当社は特定のディベロッパーの案件について、値上がり、賃料収入、利回り、引き渡しの時期のいずれも保証しません。
次に見るもの
アブダビのディベロッパーは、登録の仕組みも公表されている項目も違います。アブダビのディベロッパー比較で、同じ趣旨の整理をしています。首長国が違うと、確かめられる項目そのものが入れ替わります。
供給の規模そのものを追いたい場合は、ドバイの完成プロジェクトの実績が、DLDの発表した完成ベースの数字を扱っています。予定と実績は別の数字で、この記事の登録簿は予定の側にあたります。
登録の仕組み自体が変わりつつある点は、DLDの初期登録プラットフォームにまとめています。プロジェクトの登録、取引の登録、エスクロー口座の管理をひとつにまとめる動きで、この記事で読んだ列の作られ方にも関わります。
エリアの側から入りたい場合は、ドバイ不動産データに索引を置いています。ディベロッパー別の取引はディベロッパー別データにまとめています。