アブダビへの移住で最初に決めるのは、住む場所でも物件でもなく、何を根拠にUAEに住むのかです。雇用主に就労ビザを出してもらうのか、自分でグリーンビザを取るのか、不動産や投資でゴールデンビザを取るのか、家族に扶養されるのか。ここが決まると、誰が申請するのか、医療保険を誰が払うのか、住まいを借りるか買うかの選び方まで、後ろの手続きが順に決まっていきます。
ドバイと比べたとき、見落とされやすい違いが1つあります。アブダビに住む人の滞在資格は、ドバイの窓口ではなく連邦の機関(ICP)が扱います。ゴールデンビザやグリーンビザという制度の名前は同じでも、申請する先、賃貸契約を登録する仕組み、不動産を登記する機関が首長国ごとに分かれています。ドバイの情報をそのまま当てはめると、窓口を取り違えます。
この記事では、UAE政府ポータル、連邦の身元・国籍・税関・港湾保安庁(ICP)、アブダビ保健局(DoH)、アブダビ不動産センター(ADREC)、自治体交通局(DMT)の公表ページと、日本の旅券法で確認できた範囲だけを書きます。個々の滞在資格の細かい要件は、公表ページに書かれている範囲にとどめ、書かれていないことは書かれていないと記します。
先に決めるのは「何を根拠に住むか」です
ゴールデンビザやグリーンビザは、連邦の機関であるICPが案内している制度です。アブダビに住む場合もドバイに住む場合も、選べる種類の名前は同じです。変わるのは申請先で、これは次の節で扱います。
ICPとUAE政府ポータルの公表ページから、移住の根拠になりうる主な区分と、ページに書かれている条件を並べます。
| 住む根拠 | 誰が申請の主体になるか | 公表ページで確認できた主な条件 |
|---|---|---|
| 雇用主の就労ビザ | 雇用主(保証人) | 雇用主ごとの手続きのため、この記事では条件を扱っていません |
| グリーンビザ(技能のある被雇用者) | 本人(保証人は不要) | UAE国内の有効な雇用契約、職業分類が1〜3、学士以上、月給 AED 15,000 以上 |
| グリーンビザ(フリーランス・自営) | 本人(保証人は不要) | フリーランスまたは自営の許可、学士または専門のディプロマ、直近2年のフリーランス収入が年 AED 360,000 以上 |
| グリーンビザ(投資家・事業のパートナー) | 本人(保証人は不要) | UAE国内の事業への投資または出資の証明と、関係機関の許認可 |
| ゴールデンビザ(不動産投資家) | 本人(保証人は不要) | 価格 AED 2,000,000 以上の物件を全部所有していること(詳しくは後述) |
| 家族の扶養 | 扶養する家族 | グリーン・ゴールデンの保有者は配偶者と子を扶養できるとされています |
グリーンビザについて、ICPのガイドは5年の、更新できる在留と書き、UAE国内に保証人を必要としないことを利点に挙げています。在留が切れたときには猶予期間が設けられるとも書かれていますが、その日数はガイドの本文にはありませんでした。
表のうち、どの区分を選ぶかは読者の状況で決まります。当サイトは、どれが有利かを判定しません。1つだけ言えるのは、雇用主の就労ビザで住む人は、滞在資格が雇用に結びつくということです。退職や転職で雇用が切れたときに何が起きるかは、雇用主と契約の内容で変わるため、この記事では書きません。
アブダビに住むなら、申請先はICPです
UAE政府ポータルのビザの状況照会のページは、担当する機関を首長国ごとに分けて書いています。アブダビ、シャルジャ、アジュマン、ウンム・アル・カイワイン、ラアス・アル・ハイマ、フジャイラの6つの首長国はICP、ドバイ首長国はドバイの居住・外国人局(GDRFA)です。
この違いは、読む情報を選ぶときに効いてきます。日本語で見つかるUAEの滞在資格の解説は、ドバイに住む前提で書かれたものが少なくありません。GDRFAのアプリやサイトを前提にした手順は、アブダビに住む人には当てはまりません。検索で見つけた手順が、どちらの機関のものかを先に確かめてください。
申請の経路について、UAE政府ポータルはICPのウェブサイト(eChannels)、ICPのアプリ、ICPに登録された代行窓口(typing centre)を挙げています。オンラインで完結するのか、窓口に行く必要があるのかは、滞在資格の種類と手続きの段で変わるため、個々のサービスページで確かめることになります。
不動産で住む場合:公表値と、2つの政府ページの食い違い
アブダビで物件を買い、それを根拠に住むことを考える人もいます。ICPには、不動産投資家向けの在留のために入国許可を出すサービスのページがあり、条件と手数料が数字で書かれています。
ICPのページに書かれている条件は、UAE国内で有効な医療保険、残りの有効期間が6か月以上ある旅券、そして物件を投資家が全部所有していることです。物件の価格は AED 2,000,000 以上とされ、そのことを不動産の登記部門が証明する書面(Letter)を提出書類に挙げています。手数料は申請・発行・スマートサービスの3項目がそれぞれ AED 100 で、処理期間は2日と書かれています。
注意してほしいのは、有効期間の書き方が政府のページの間で揃っていないことです。ICPのサービスページは、このサービスをゴールデンの在留を10年で得るための手続きと説明しています。一方、UAE政府ポータルのゴールデンビザのページは、不動産投資による区分を5年としています。どちらが新しい扱いなのか、両方が別の条件を指しているのかは、2つのページからは読み取れませんでした。当サイトはどちらか一方に寄せて書きません。申請する前に、ICPに対して自分の場合の期間を確かめてください。
ICPのページに書かれていないことも挙げておきます。ローンを組んで買った物件、完成前のオフプラン物件、複数の物件を合わせて価格の条件を満たす場合の扱いは、このサービスページには記載がありません。これらを前提に物件を選ぶ場合は、購入の前に確認が要ります。オフプランの支払いの区切りはアブダビのオフプランの支払いプランで扱っています。
物件を買うときの費用は在留の手数料とは別にかかります。登記にかかる費用はアブダビ不動産の購入費用に、外国人がどの区域でどの権利を取得できるかはアブダビ不動産の所有権は4種類にまとめています。在留のために物件を買うことは、その物件が値上がりすることや、貸して収入が出ることを意味しません。当社は値上がり・賃料収入・利回りのいずれも保証しません。
医療保険は、滞在資格より前に用意が要ります
アブダビで働く人の医療保険は、雇用主が費用を負担することになっています。アブダビ保健局(DoH)は、ゴールデンビザの医療保険の要件についての発表で、アブダビで働く被雇用者の保険について、Health Insurance Law No. 23/2005 の規定に従って雇用主が引き続き費用を負担しなければならない、と書いています。
同じ発表は、それ以外のゴールデンビザの申請者について、UAEに住む期間を通じて本人と家族の有効な医療保険を示すか、医療費をすべて自分で負担する旨の誓約に署名するか、のどちらかを求めるとしています。発表はアブダビの居住者事務所(Abu Dhabi Residents Office)と連携してまとめたものとされています。
前の節で見たとおり、ICPの不動産投資家向けのサービスも、UAE国内で有効な医療保険を要件に挙げています。つまり、保険は滞在資格が出たあとに考えるものではなく、申請の段で必要になるものです。雇用主の就労ビザで住む人は雇用主が手配しますが、グリーンビザやゴールデンビザで自分が申請の主体になる人は、自分で先に用意することになります。
ドバイの医療保険の決まりは、この記事の出典では確かめていません。アブダビの雇用主負担の規定を、ドバイにもそのまま当てはまるものとして読まないでください。保険料の水準や補償の範囲も、DoHの発表には書かれていないため、この記事では扱いません。
住まいを借りるときの仕組み:Tawtheeqと占有証明書
移住してすぐに物件を買う人ばかりではありません。まず借りて住み、暮らしながら考えるという順番もあります。アブダビで住まいを借りると、その賃貸契約はTawtheeqという仕組みに登録されます。ADRECの賃貸契約の登録のページは、その根拠を Chairman of the Executive Council Resolution No. 4 of 2011(アブダビ首長国の賃貸契約の登録の規則と手続きについての決議)としています。
ドバイで同じ役割を持つのはEjariで、名前も運営する機関も違います。Ejariの仕組みはドバイのEjari登録で扱っています。ドバイで借りた経験がある人でも、アブダビでは別の仕組みを通ると考えてください。
借りる前に確かめておきたいのが、建物の占有証明書です。DMTの発表は、この書面を、建物が使用にあたって安全であり、適用される基準に適合していることを証明する自治体の公式な書面と位置づけています。そして、有効な占有証明書が無い住戸については、ADRECがTawtheeqを通じた新規の賃貸借契約の登録を止めると書いています。
借りる側にとっての意味は単純です。登録できない住戸を借りる話が進むと、契約を結んでも登録の段で止まります。物件を探す段階で、その建物の占有証明書が有効かどうかを、貸主か仲介に尋ねてください。制度の経緯はアブダビの占有証明書の期限にまとめました。家賃の水準はアブダビの家賃データで、ADRECが公表している範囲の数字を見られます。
日本側の届出:3か月以上住むなら在留届
UAE側の手続きとは別に、日本の法律が求める届出があります。旅券法第16条は、旅券の名義人で外国に住所又は居所を定めて三月以上滞在するものは、当該地域に係る領事官に届け出なければならないと定めています。これが在留届です。
アブダビに住む場合、届出先は現地を管轄する日本の在外公館です。UAEには在アラブ首長国連邦日本国大使館と在ドバイ日本国総領事館があります。どちらがどの首長国を管轄するかは、この記事では公館のページを取得できず、確かめられませんでした。届け出る前に、外務省または公館の案内で管轄を確認してください。
在留届は、住所が決まってから出すものです。下の順番でいえば、住まいが決まった後になります。住民票の転出など、日本の市区町村での手続きは自治体ごとに案内が分かれるため、この記事では扱いません。
この記事で確認できなかったこと
第一に、不動産投資家としてゴールデンビザを得た場合の有効期間です。ICPのサービスページは10年、UAE政府ポータルのゴールデンビザのページは5年と書いており、どちらが適用されるのかを公表ページから判断できませんでした。
第二に、ローンで買った物件、オフプラン物件、複数物件の合算がこの在留の条件にどう扱われるかです。ICPのサービスページに記載がありませんでした。
第三に、グリーンビザが切れたときの猶予期間の日数です。ICPのガイドは猶予期間があることだけを書いています。
第四に、ドバイの医療保険の決まりと、アブダビとの違いです。この記事の出典では確かめていません。
第五に、在留届の届出先となる公館の管轄区域です。大使館と総領事館のページを自動では取得できませんでした。
決める順番を1枚にすると
ここまでの話を、決める順に並べ直します。前の段で決めたことが、後ろの段の条件になるように並べています。
1で根拠を決めると、2で申請の主体が本人か雇用主かが分かれます。本人が主体になるなら、3の医療保険も自分で先に用意します。4で住まいを借りるならTawtheeqと占有証明書を確かめ、買って住むなら登記と在留の条件を合わせて確かめます。住所が決まったら、5で日本の在留届を出します。
ドバイとの違いは、この順番のうち2と4に集中しています。申請先がICPになること、賃貸契約がTawtheeqに登録されること、そして不動産の登記がADRECとその電子基盤のDARIで行われることです。物件を買う手続きそのものはアブダビ不動産の買い方で順に説明しています。制度の名前が同じでも窓口は違う、という1点を押さえておけば、ドバイ向けの情報を読むときにも取り違えを減らせます。