アブダビ不動産の買い方/解説

アブダビ不動産の買い方|起票する人と登記までの順序

アブダビで住戸を買うとき、DARI上で誰が申請を起票し、何をそろえ、いくら払い、いつTitle Deedが届くのかを、ADRECの案内ページとUAE政府ポータルの記載だけで順に整理します。

アブダビ不動産の買い方|起票する人と登記までの順序 - Reheat

アブダビの物件を紹介されたとき、契約書に署名したあと何が起きるのかまでは説明されないことがあります。ドバイの手順を書いた日本語の記事は増えましたが、アブダビは登記を扱う機関も、申請に使う仕組みも別です。ドバイの段取りをそのまま当てはめると、誰がいつ動くのかを取り違えます。

先に結論を書きます。アブダビの売買で最初に申請を起こすのは、買主ではありません。完成した住戸なら売主が、まだ建設中のオフプラン住戸ならディベロッパーが起票します。買主が自分で申請を立ち上げる場面は、アブダビ不動産センター(ADREC)の案内のどこにも出てきません。買主がすることは3つです。届いた内容を確認して承認すること、費用を負担する側になったときに支払うこと、最後にTitle Deed(権利証)の通知を受け取ることです。

この記事は、ADRECが運営するDARIの案内ページと、UAE政府ポータルの記載だけを使って、その順序を組み立て直したものです。何を買えるのか、どの権利で持つのかはアブダビ不動産の所有権は4種類にまとめました。ここでは、買うと決めたあとに何が起きるかだけを扱います。価格やエリアの優劣は扱いません。

売買はDARIというADRECの仕組みの上で進みます

DARIは、アブダビの不動産手続きをまとめたADRECの電子的な基盤です。案内ページには、扱う手続きの種類が並んでいます。賃貸契約の登録と更新、売買やオフプランの登録といった取引、抵当契約の登録と抹消、所有の確認や権利証などの証明書、委任状の登録、評価会社・ディベロッパー・仲介・競売人の免許、広告の許可、苦情の受付、そしてエスクローの預託金照会と銀行保証の承認です。

この一覧が意味するのは、買主が契約前に確かめたいことの多くが、手続きと同じ場所に集まっているということです。仲介に免許があるか、その広告に許可が出ているか、プロジェクトが登録されているかは、売買の申請とは別の入口ですが、同じ仕組みの中にあります。日本の感覚でいえば、免許の検索と登記の申請と広告の届出が1つの窓口に統合されている状態に近くなります。

売買そのものは、次の順序で進みます。案内ページに書かれている段を、動く人ごとに並べ直しました。

完成した住戸をアブダビで買うときにDARI上で進む6つの段を縦に並べ、売主・買主・DMTのどれが動くかを右のラベルで示した工程図
丸数字は案内ページに書かれている順序で、右のラベルはその段を動かす人です。対面で行うのは5番だけで、残りはDARI上で完結すると説明されています。 出典:ADREC/DARI Support|Guide to Sell and Buy Property on DARI(確認日 2026-09-06)

図の2番と3番の順序に注意してください。買主が承認して初めて、申請が自治体(DMT)の審査へ回ると案内されています。買主の承認は形式的な確認ではなく、審査を始めるための引き金です。ここで内容に納得できなければ、理由を付けて売主へ戻せます。戻された売主は、修正して再送するか、取引そのものを終了するかを選びます。売主が複数いる物件では、全員が承認しないと買主のところへ回りません。

売主側の前提がそろわないと、申請そのものが起票できません

案内ページは、売主が売却を始める前に持っていなければならないものを挙げています。買主から見ると、これは相手の準備状況がそのまま自分の待ち時間になるという意味です。

売主側の前提 案内に書かれている条件 買主から見た意味
評価証明書 1か月(30日)を超えていないこと 古い評価は使えず、取り直しに時間がかかる
権利証(Title Deed) 6か月(180日)を超えていないこと 相手が本当に登記上の所有者かを示す書面
ディベロッパーの書面 投資区域か開発区域かを示すもの 外国籍で買えるかどうかがここで決まる
抵当 設定されていないこと 残っていれば売買の前に処理が要る
長期リース 設定されていないこと 借主がいる状態のままでは進まない
裁判所の命令 かかっていないこと 係争中の物件は対象から外れる

有効期限が2つとも短いことに気づいてください。評価証明書の30日は、交渉が長引けば簡単に切れます。売主が「書類はそろっている」と言った日から数えて、署名までに1か月以上かかるなら、取り直しが必要になる可能性を織り込んでおくほうが安全です。

抵当と長期リースと裁判所の命令は、いずれも「無いこと」が前提として挙げられています。裏返せば、抵当が残っている物件をどう処理してから売るのかは、この案内ページには書かれていません。売主に住宅ローンが残っている物件を検討するときは、その解除をどの順番で行うのかを個別に確認してください。案内に書かれていないことを、書いてあるものとして扱わないでください。

ADRECのDARIサポートに掲載された、DARI上で不動産を売買する手順の案内ページの表示
引用キャプチャ売却を始める前に売主がそろえておくもの(評価証明書と権利証の有効期限、抵当や長期リースが無いこと)を列挙しているADRECの案内ページです。売買の各段の順序もここに書かれています。 出典:ADREC/DARI Support|Guide to Sell and Buy Property on DARI(確認日 2026-09-06/表示のファーストビュー)

手数料は売買価格ではなく「高いほう」で決まります

費用として金額が公表されているのは、登録にかかる手数料です。案内ページの記載をそのまま並べます。

対象 案内されている料率と金額 支払う時点
完成住戸の売買 評価額と売買価格の高いほうの2% DMTの承認後、窓口の予約時
完成住戸の売買(もう一方の記載) 契約の残額に対する1%のうち高いほう 適用の条件は記載がありません
オフプラン住戸の売買登録 売買価格の2% DMTの承認後、DARI上で支払う
オフプランの遅延分 AED10,000が加算 契約日から21日を過ぎた場合

読み違えやすいのは1行目です。売買価格だけを見て2%を計算すると、足りないことがあります。案内は評価額と売買価格を比べて高いほうを基準にすると書いており、評価額はDARIが自動で計算すると説明されています。値引き交渉が成立しても、評価額が下がるわけではありません。

2行目に挙げた「契約の残額に対する1%」は案内ページに併記されていますが、どの場合に2%ではなくこちらが適用されるのか、条件の説明は見当たりませんでした。確認できていないので、この記事では条件を推測しません。実際の取引では、申請の画面に表示される金額を根拠にしてください。

誰が払うかは、申請の中で指定します。案内には費用を負担する人を選ぶ欄があり、その人に支払いの通知が届くと書かれています。手数料の負担者は制度で固定されているのではなく、申請の入力項目です。つまり交渉の対象になります。口頭で「買主負担が普通です」と言われたときは、申請画面のどの欄にどう入力されるのかまで確かめてください。

完成住戸とオフプランで、起票する人が変わります

同じ「アブダビの住戸を買う」でも、対象がどの登記簿にあるかで経路が分かれます。判断の基準は広告の表記ではありません。いま登録されている登記簿です。

対象の住戸が不動産登記簿にある完成住戸か、初期不動産登記簿にあるオフプラン住戸かで、起票する人と手数料と最後の手続きが分かれることを示した分岐図
左右で起票する人が違い、右側だけ登記簿を移す段が最後に増えます。金額と日数は各案内ページに書かれている値です。 出典:ADREC/DARI Support|Off-Plan Unit Sale Registration同|初期登記簿から不動産登記簿への移転(確認日 2026-09-06)

オフプラン住戸の売買登録について、案内ページは不動産ディベロッパーだけが手続きを進めると明記しています。買主が自分で登録することはできません。添付する書類として挙がっているのは、売買契約書、代理人がいる場合の委任状、買主が法人の場合の押印された契約書の3つです。

買主にできるのは、登録が実際に行われたかを確かめることです。案内には、支払いが済むと売買の証明書が発行され、売主であるディベロッパーと買主の双方がダウンロードできると書かれています。契約日から21日を過ぎるとAED10,000が加算されるという記載もあるため、期限は買主にとっても確認の目安になります。契約から3週間たっても証明書を取り出せないなら、状況を尋ねる理由が立ちます。

引き渡しのときには、もう1段あります。初期不動産登記簿に載っている住戸を、正式な不動産登記簿へ移す手続きです。これもディベロッパー側の担当者が起票し、賃貸契約の登録制度であるTAWTHEEQへの登録を同時に選べること、未払いがない旨の確認に同意して自治体へ提出することが書かれています。自治体の承認後、買主がDARIの申請一覧から費用を支払い、権利証をダウンロードします。抵当権を付けて引き渡しを受ける場合の扱いは、アブダビのオフプランに抵当権で別に整理しています。

買えるのは投資区域だけで、その数は動いています

DARIの案内は、買える人の範囲を条件として書いています。UAE国民と公開株式会社は投資区域と開発区域の両方で買え、それ以外の国籍は投資区域でのみ買える、という記載です。日本のパスポートで買う場合、対象は投資区域に限られることになります。

ここで数の食い違いが出ます。UAE政府ポータルは、外国人が不動産を所有できる区域として9つを挙げています。ヤス島、サディヤット、リーム、マリヤ、ルル、アル・ラハ・ビーチ、サイ・アル・セダイラ、アル・リーフ、マスダール・シティです。このページの最終更新は2024年12月30日と表示されています。一方、ADRECは2026年7月17日の発表で、2026年上半期に8つの投資区域を承認し、アブダビ全体の投資区域の合計が50になったと説明しています。

9と50は、同じものを数えた結果とは考えにくい数字です。政府ポータルの一覧が更新されていないのか、ADRECが別の単位で数えているのかを、当サイトは確認できていません。確かめられていない以上、どちらかを正しいものとして書くことはしません。実務上の結論は1つです。区域の一覧を日本語の記事や広告で判断せず、対象の住戸が投資区域にあるかどうかを、ADRECの資料と売主のディベロッパーの書面で確かめてください。区域ごとの違いはアブダビのエリア比較で扱っています。

Emirates IDが無い状態でも買えると書かれています

日本に住んだまま買えるのかは、多くの人が最初に気にする点です。DARIの案内には、買主が国外にいる場合、Emirates IDが無くてもUAEで不動産を買えると書かれています。申請の入力でも、買主の識別にはEmirates IDまたは統一番号(unified number)のどちらかを使うとされています。

ただし、書かれていないことのほうが多い点に注意してください。渡航が必要かどうか、委任状をどこで作成し、日本で作った委任状にどんな認証が要るのかは、この案内ページには記載がありません。窓口での手続きが5番目の段として残っているため、そこに誰が出席するのかは、契約前に売主と仲介へ確認する項目になります。「オンラインで完結します」という説明を受けたら、5番の段をどう処理するのかを具体的に聞いてください

仲介と広告は、登録されているかを先に見ます

相手の登録を確かめられるかどうかは、この業種では信頼の入口になります。ADRECの2026年7月17日の発表によると、2026年上半期に発行された不動産の専門職向け免許は2,040件で、前年同期比34%増、免許を持つ仲介の合計は3,302に達しています。同じ発表で、物件情報の共有基盤であるMadhmounが開始以来41,200件を超える広告の許可を発行したことも示されています。

これらの数字は、あなたの取引が安全であることを意味しません。意味するのは、免許と広告の許可という2つの登録が実際に運用されていることです。登録があるかを確かめられる状態なら、確かめないまま進める理由はありません。契約前に見ておく項目を並べます。

確かめること どこで見るか 注意すること
仲介の免許 ADRECの免許(DARIの免許の区分) 会社と担当者の両方を確認する
広告の許可 Madhmounが発行する広告の許可 許可のない掲載は情報の裏付けが弱い
対象が投資区域か ADRECの資料とディベロッパーの書面 区域の一覧は資料によって数が違う
どちらの登記簿にあるか 売主またはディベロッパーの説明 起票する人と手数料の計算が変わる
費用を払う人 申請に入力される負担者の欄 口頭の合意ではなく画面の入力を見る
権利証の受け取り方 DARIの証明書の区分 2017年以降に変更があると自治体の承認が要る

最後の行は、権利証を取り出すときの案内にある記載です。所有者や物件の情報に2017年以降の変更があると、申請が自動的に自治体へ回って承認を待つと書かれています。すぐに出るとは限らないという意味なので、引き渡し当日に権利証の紙が手に入る前提で予定を組まないでください。市場全体の動きはアブダビのデータにまとめています。

この記事で確認できなかったこと

アブダビ政府の総合窓口であるTAMMの不動産サービスのページは、確認日の時点で当サイトの自動取得では応答を読み取れませんでした。手数料の一覧や必要書類の網羅的な記載はそちらにある可能性がありますが、読めていないものを読んだことにはできません。この記事の内容は、ADRECのDARI案内ページとUAE政府ポータルの記載に限っています。

金額として確認できなかったものが3つあります。権利証の発行手数料の額は、案内ページに記載がありません。初期登記簿から不動産登記簿へ移すときの必要書類は「所定の書類」とだけ書かれ、一覧は示されていません。各手続きにかかる日数も、案内には出てきません。付加価値税や管理費の扱い、相続や法人名義での取得の扱いも、この記事では確かめられていません。

当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。この記事が扱っているのは手続きの順序と、公表されている手数料の記載だけで、購入の結果を示すものではありません。

まとめ

アブダビで住戸を買うとき、申請を起票するのは買主ではありません。完成住戸なら売主が、オフプランならディベロッパーだけが起票すると案内されています。買主は内容を承認し、負担者になったときに支払い、最後にTitle Deedの通知を受け取ります。DMTの審査が始まるのは買主の承認の後なので、承認は形式ではなく手続きを進める行為です。

金額として公表されているのは、完成住戸で評価額と売買価格の高いほうの2%、オフプランで売買価格の2%、契約日から21日を過ぎた場合のAED10,000です。売主側には評価証明書30日以内、権利証180日以内という有効期限があり、抵当・長期リース・裁判所の命令が無いことが前提として挙げられています。外国籍で買えるのは投資区域に限られ、その区域の数は資料によって食い違うため、対象の住戸が投資区域にあるかは書面で確かめてください。