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アブダビのエリア比較|投資区域を同じ条件で並べる手順

アブダビのエリアを比べる前に、外国人が権利を取れる区域か、登記がADGMとアブダビのどちらの枠組みに入るか、並べる数値の定義がそろっているかを確かめる手順を、UAE政府・ADGM・ADRECの公表資料から整理します。

アブダビのエリア比較|投資区域を同じ条件で並べる手順 - Reheat

アブダビでどのエリアを選ぶかを考えるとき、最初に見たくなるのは価格です。ところが、公表されている数字をエリアごとに拾って横に並べても、比較として成立しないことがあります。アブダビには外国人が権利を取得できる区域とそうでない区域があり、しかも同じ首長国の中で、不動産の登記を扱う枠組みが2つに分かれているからです。この記事では、価格を並べる前にそろえておく3つのこと、つまり権利を取得できる区域かどうか登記の枠組みがどちらか並べる数値の定義がそろっているかを、UAE政府・ADGM・ADRECの公表資料の範囲で整理します。エリアごとの価格や家賃の水準そのものは本文へ転記せず、アブダビのデータに分けています。数値は更新されるため、記事に書き写すと更新のたびに食い違いが生まれるからです。

外国人が権利を取れる区域は9つと公表されている

UAE政府のポータルは、アブダビで外国人が不動産を所有できる区域として9つを挙げています。Yas Island、Saadiyat、Reem、Mariya、Lulu、Al Raha Beach、Sayh Al Sedairah、Al Reef、Masdar Cityです。比較の対象を選ぶときは、まずこの一覧に載っているかどうかを見ます。載っていない区域を同じ表に混ぜると、そもそも買えるかどうかが違うものを、価格だけで並べることになります。

UAE政府ポータルの表記 当サイトでの表記 当サイトの個別ページ
Yas Island ヤス島(Yas Island) ヤス島
Saadiyat サディヤット島(Al Saadiyat Island) サディヤット島
Reem アル・リーム島(Al Reem Island) アル・リーム島
Mariya - なし
Lulu - なし
Al Raha Beach - なし
Sayh Al Sedairah - なし
Al Reef - なし
Masdar City - なし

表の「-」は、当サイトがカタカナの読みを確認できていない区域です。読みを推測して作ることはしません。表記そのものにも注意が要ります。UAE政府のポータルはReem、Mariyaと短く書き、ADGMの公式サイトはAl Reem Island、Al Maryah Islandと書きます。ADRECの市場レポートでは、さらに別の綴りで載っている地区もあります。カタカナは読み方の目安であって公式の表記ではないので、照会や検索のときは英語表記を控えてください。控えていないと、同じ島を指しているのか別の開発地区なのかを、自分で確かめられなくなります。

当サイトはフダイリヤット島の個別ページを持っていますが、この島は上の9区域の一覧には出てきません(確認日時点)。取引の集計には地区として登場する一方で、外国人が所有できる区域として列挙されてはいない、という状態です。理由は公表資料からは確認できませんでした。取得の可否は区域の名前でまとめて判断せず、契約の対象になっている区画と住戸について書面で確かめてください。

UAE政府ポータルの外国人による不動産取得を説明するページの表示
引用キャプチャアブダビで外国人が不動産を所有できる区域と、取得できる権利の区分を列挙しているUAE政府のページです。 出典:UAE Government|Expatriates buying a property in the UAE(確認日 2026-09-03/表示のファーストビュー)

同じアブダビでも、登記を扱う相手が分かれる

ADGMは公式サイトで、2023年4月24日がアブダビとADGMにとって節目であり、国際金融地区の範囲をAl Maryah IslandとAl Reem Islandの両方へ広げたと説明しています。ADGMの登録局は、この管轄区域にあるあらゆる種類の不動産上の権利について登録の申請を受け付けると述べ、開発から登記、所有権の移転、賃貸、物件管理までをAccessRPという電子プラットフォームで扱うとしています。

アブダビ全体の不動産分野については、DMT(Department of Municipalities and Transport)がアブダビ不動産センター(ADREC)を設立したことを、アブダビ政府のメディアオフィスが公表しています。ADRECは戦略立案、振興、規制、取引管理の4つを柱にすると説明されており、市場のデータもADRECが公表しています。

検討中の物件を、所在がAl Reem島・Al Maryah島かどうか、UAE政府が挙げる9区域に含まれるかどうかで振り分け、ADGM登録局・投資区域・一覧外の3つの結論へ導く分岐図
所在で振り分けると、手続きの相手と根拠になる規則が決まります。左の2つの判断を先に済ませてから、価格の比較へ進みます。 出典:UAE GovernmentADGM Registration Authority(確認日 2026-09-03)

この違いは、比較の中身に直接効きます。登記を扱う相手が違えば、必要な書類、受け取る証明、手続きの流れ、問い合わせ先が変わります。「アブダビの相場」としてひとまとめにされた表を見ているときも、行によって手続きの枠組みが違う可能性があると考えてください。Al Reem島の枠組みはアル・リーム島の不動産で詳しく扱っています。

取得できる権利の区分も、あわせて確認します。UAE政府は、外国人が取得できるものとして、住戸についての所有(99年)、建築や改変を行うmusataha(50年で、当事者の合意により同じ期間だけ更新できると説明されています)、使用と収益に関するusufruct(99年)、最初の期間が25年以上の長期リースを挙げています。根拠法はLaw No. 19 of 2005で、2019年4月の改正により、投資区域にある不動産について非UAE国民が物的権利のすべてを取得できるようになったと説明されています。同じ価格帯の2件でも、取得する権利が違えば同じ商品ではありません。期間の長短だけで優劣を決めず、更新、譲渡、相続、担保の可否まで確かめてください。ドバイの区分と対応させたい場合はドバイのフリーホールドとは?外国人所有の仕組みを参照してください。

数字を並べる前に、4つの軸をそろえる

区域と枠組みがそろったら、次は数値の定義です。ここがずれたまま表を作ると、桁も単位も正しいのに結論だけが間違う、という形の誤りになります。危ないのは4つです。

統計量・期間・粒度・確からしさの4つの軸について、そろえずに並べた比較と、そろえてから並べた比較を左右に対比した表形式の図
左の状態でも数字は表に並びます。並んでいることと比較できていることは別だ、という区別のための図です。 出典:ADREC|Abu Dhabi Real Estate Market Report H1 2026 の定義と注記(確認日 2026-08-28)

1つめは統計量です。平均と中央値は、同じ「平均的な価格」という言葉で紹介されても、計算の方法が違います。高額な取引が数件混じるだけで平均は動き、中央値はあまり動きません。どちらを見ているのかを、エリアごとにそろえてください。

2つめは期間です。ADRECの市場レポートは、集計の対象がその期間にADRECへ登録された取引であり、契約がいつ結ばれたかにはよらない、と定義しています。登録のタイミングでずれが出るということなので、期間の違う値を横に並べると、市場の差ではなく登録の差を見ていることになります。

3つめは粒度です。地区の集計値と、住戸1件の価格はまったく別のものです。集計値はその地区でどれだけの金額が動いたかを示すもので、そこから1件あたりの価格を割り戻すことはできません。4つめは確からしさです。同じレポートの中でも、登録済みの実績と、今後の供給の見通しは性質が違います。見通しは、登録された計画や検査報告、有効な建築許可にもとづく予測であり、変わり得るとレポート自身が明記しています。実績と予測を同じ列に置かないでください。

公表資料で、どの粒度まで比べられるか

比べたい項目ごとに、確認できる資料と粒度が違います。この対応を先に持っておくと、存在しない資料を探し続けずに済みます。

比べたい項目 確認できる公表資料 粒度
外国人が権利を取得できるか UAE政府ポータルの区域一覧 区域
登記と手続きの相手 ADGM公式サイト(管轄区域)/ADRECの公表 区域
売買の規模と資金の向き先 ADRECの半期の市場レポート 地区の集計値
価格・家賃の水準 ADRECが公開しているデータ(当サイトのデータページ) 地区・物件種別・間取り
個別の住戸の条件 契約書、図面、登記の記録 住戸

このうち、地区の集計値として公表されているのが売買額です。下の図は、ADRECの半期レポートに載っている地区別の住宅売買額を並べたものです。金額そのものはレポートに載っている集計値で、当サイトが計算し直したものではありません。

2026年上半期の住宅売買額を地区別に横棒で並べた図。Al Hidayriyyat Island、Al Saadiyat Island、ADGM管轄のAl Reem島とAl Maryah島、Yas Island、Ramhan Island、Fahid Island、Ghadeer Al Tayr、Zayed Cityの順に短くなる
棒の長さは地区ごとの住宅売買額の合計です。緑の行は、レポートがAl Reem島とAl Maryah島をADGMとしてまとめて集計しているため、島ごとには分けられません。 出典:ADREC|Abu Dhabi Real Estate Market Report H1 2026(21ページ/確認日 2026-08-28)

この図から言えるのは、その期間にどの地区へ資金が向かったか、までです。どの地区の物件がこれから値上がりするか、どの地区の利回りが高いかは、この集計からは分かりません。ADGMの行のように、レポートが2つの島をまとめて集計している箇所もあるため、島ごとに比べたい場合は粒度が足りません。エリア別の価格と家賃の水準はアブダビのデータにまとめており、ドバイと並べたい場合はドバイのエリア別データを使ってください。首長国をまたぐ比較では、出典もデータの作り方も違う点に注意が必要です。

比較を進める順序

確認の順序があります。前の番号があいまいなまま次へ進むと、あとで比較の前提ごと崩れます。

順序 確認すること 確認する先
1 区域が9つの一覧に含まれるか UAE政府ポータル
2 登記の枠組みがADGMかどうか ADGM公式サイト、および相手方からの書面
3 取得する権利の区分と期間 契約書と登記の記録
4 並べる数値の統計量と集計期間 出典の定義と注記
5 集計値か、住戸単位の値か 出典の粒度
6 費用の内訳、支払先、支払う時期 相手方から受け取る書面

前半の3つは制度の確認で、公表資料と書面で片が付きます。後半の3つは数値の確認で、出典の定義を読むところから始まります。順序を入れ替えないでください。制度の確認を後回しにすると、そもそも買えない区域や、想定と違う権利の物件を、価格だけで検討し続けることになります。物件を見に行く前に、書面と公表ページで確かめられることは先に確かめてください。

この記事で確認できなかったこと

登記や権利の移転にかかる手数料の率は書けませんでした。確認日の時点で、公表ページから率を確かめられなかったためです。他の解説で見かける率をそのまま書き写すことはしません。実際の金額は、手続きの案内と、相手方から受け取る書面で確かめてください。

フダイリヤット島がUAE政府ポータルの9区域の一覧に出てこない理由も、確認できませんでした。一覧に無いことは確認できた事実ですが、その理由を説明する公表資料は見つかりませんでした。取得の可否は、区域単位の推測ではなく、対象の区画と住戸について個別に確かめてください。

エリアごとの将来の価格や利回りの見通しも、この記事では扱いません。当サイトが持っているのは、公表された実績の集計と、レポートが予測と明記している供給の見通しだけです。そこから個別のエリアの将来を導き出すことはできません。

値上がりも賃料収入も保証されません

当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。売買額が大きい地区が、これから買う人にとって有利だという意味にもなりません。集計は過去の登録の記録であって、これからの結果を示すものではないからです。

供給の増減、物件そのものの状態、管理費、空室、賃貸の条件、為替、売却時に買い手が付くかどうかは、どの地区を選んでも結果を左右します。比較でそろえられるのは条件のほうで、結果ではありません。確かめられた事実と、確かめられていない見込みを、同じ表に混ぜないでください。

まとめ

アブダビのエリア比較は、価格を並べる前に3つをそろえます。外国人が権利を取得できる区域として公表されているか、登記の枠組みがADGMか、そして並べる数値の統計量・期間・粒度・確からしさがそろっているか、です。

そのうえで公表資料から比べられるのは、区域の制度、手続きの相手、地区の集計値、当サイトのデータページにある水準までです。住戸ごとの条件は、契約書と登記の記録でしか確かめられません。制度と定義を先に押さえてから、収支と出口の検討へ進んでください。