アブダビの不動産市場がどのくらいの規模なのかは、アブダビ政府メディアオフィスの発表で確かめられます。先に結論を書きます。2025年の1年間に登録された不動産取引の総額はAED142 billion、件数は42,814件と公表されました。2026年は上半期だけでAED117 billionです。ただし、ここでいう「取引」には売買以外の登録も含まれています。買われた物件の総額だと思ってこの数字を引くと、実態より大きく読むことになります。この記事では、公表されている値そのものと、その値が何を数えているのか、そして期間の違う発表をどう並べればよいのかを、政府の公表ページで確認できた範囲だけで整理します。エリアごとの数字がどこまで公表されているかはアブダビのエリア別データにまとめているので、こちらでは首長国全体の規模に絞ります。
公表されている「取引総額」は、売買だけの数字ではありません
2026年上半期の発表を分解します。総額のAED117 billionのうち、売買はAED86.1 billionで16,838件です。抵当の登記はAED26.7 billionで8,876件、ムサタハと長期リースの合計がAED4 billion、贈与がAED311.5 millionと書かれています。
抵当は融資に伴う登記であって、誰かが物件を買った金額ではありません。同じ住戸を買って融資を受ければ、売買と抵当の両方が登録されます。ムサタハは土地の上に建物を建てて使う権利で、これも所有権の売買とは別の登録です。贈与にいたっては対価の授受がありません。つまり総額は、性質の違う登録を横に足し上げた合計値です。
「アブダビの不動産市場はAED117 billion」という言い方は、発表のとおりではあります。ただし読者がそれを「買われた物件の総額」と受け取ると、実態より大きく見えます。売買の規模を知りたいなら、総額ではなく内訳の売買を使ってください。当サイトが総額と内訳をいつも並べて出しているのは、この取り違えを避けるためです。
| 区分 | 金額 | 件数 | 前年同期との比較 |
|---|---|---|---|
| 総額 | AED117 billion | 記載がありません | 金額112パーセント増/件数61.7パーセント増 |
| 売買 | AED86.1 billion | 16,838件 | 金額163.7パーセント増 |
| 抵当 | AED26.7 billion | 8,876件 | 金額33パーセントを超える増 |
| ムサタハ・長期リース | AED4 billion | 記載がありません | 記載がありません |
| 贈与 | AED311.5 million | 記載がありません | 記載がありません |
件数の欄に「記載がありません」と書いた行があります。埋められる数字を省いたのではなく、発表そのものに書かれていないという意味です。総額の件数は、伸び率だけが示されていて実数が出ていません。ここを推計で埋めると、出典にあたった読者が同じ数字にたどり着けなくなります。
2025年の年次は、AED142 billionで公表されています
2025年の1年間について、アブダビ政府メディアオフィスは総額AED142 billion、件数42,814件と発表しました。前の年と比べて、金額で44パーセント、件数で52パーセントの増加とされています。内訳は、売買がAED99.4 billionで25,604件、抵当がAED42.7 billionで17,210件です。
同じ発表には、市場そのものの数字以外も並んでいます。投資区域での取引はAED54.13 billionで、前の年のAED32.89 billionから65パーセント伸びたと書かれています。2025年に登録された新しい開発プロジェクトは56件、不動産の専門職の免許は57.7パーセント増えて3,566人になったとされています。免許の数は市場規模そのものではありませんが、仲介や管理の担い手がどれだけ増えたかを示す値として、同じ発表の中に置かれています。
期間の違う発表を、そのまま横に並べないでください
2025年については、四半期・半期・9か月・年次の4回にわたって発表が出ています。第1四半期まででAED25.3 billion(6,896件)、上半期まででAED51.72 billion(14,167件)、9か月まででAED94 billion(29,400件)、通年でAED142 billion(42,814件)です。
いずれも年初からの累計です。第2四半期だけの取引額を知りたいときは、上半期までの値から第1四半期までの値を引く必要があります。当サイトはその引き算をした値を本文に書いていません。発表に無い数字になるからです。同じ理由で、四半期ごとの推移を折れ線で描くこともしていません。描くには公表されていない値を作らなければならず、それは検算できない数字になります。
前年との比較も、同じ期間どうしで行います。2026年上半期のAED117 billionは、2025年上半期のAED51.72 billionと比べるものです。発表には金額で112パーセント、件数で61.7パーセントの増加と書かれています。2025年上半期の発表のほうにも、前年同期のAED37.2 billionから39パーセント増えたという記載があります。ここで年次の値と半期の値を同じ列に並べると、伸びを二重に読むことになります。
| 対象期間 | 総額 | 件数 | 前年同期比(金額/件数) |
|---|---|---|---|
| 2025年 第1四半期まで | AED25.3 billion | 6,896件 | 34.5パーセント増/記載がありません |
| 2025年 上半期まで | AED51.72 billion | 14,167件 | 39パーセント増/12パーセント増 |
| 2025年 9か月まで | AED94 billion | 29,400件 | 43.3パーセント増/48パーセント増 |
| 2025年 通年 | AED142 billion | 42,814件 | 44パーセント増/52パーセント増 |
| 2026年 上半期まで | AED117 billion | 記載がありません | 112パーセント増/61.7パーセント増 |
金額と件数は、同じ向きに動くとは限りません
2026年上半期は、金額が112パーセント、件数が61.7パーセントの増加でした。金額の伸びが件数の伸びを上回っています。ところが2025年の通年は、金額が44パーセント、件数が52パーセントの増加で、向きが逆でした。件数の伸びのほうが大きかったということです。
この差が意味するのは、1件あたりの規模が期によって違うということです。大型の登録が数件入るだけで金額は跳ね、小口の登録が増えれば件数だけが伸びます。どちらが良いという話ではありません。大事なのは、金額だけ、あるいは件数だけを見て「市場がこれだけ大きくなった」と言い切らないことです。
当サイトが1件あたりの平均額を計算して載せていないのも、同じ理由です。平均を出すには、どの区分を分母にするかを先に決めなければなりません。総額を全件数で割るのか、売買だけで割るのか。その定義を読者と共有しないまま数字だけを出すと、読者が同じ値を作り直せなくなります。区分ごとの金額と件数は発表に書かれているので、必要な方は自分の定義で計算してください。
海外からの直接投資は、総額とは別の切り口です
2026年上半期の海外直接投資はAED13.8 billionで、前年の同じ期間から309パーセント増えたとされています。投資した非居住者の国籍は116で、前年同期の82から増えました。2025年の通年ではAED8.2 billionで、前の年から13パーセントの増加、投資家の国籍は100を超えると書かれています。2026年は上半期だけで、前年の通年の額を上回っていることになります。
ここで注意が要ります。海外直接投資は、総額の内訳として並ぶ売買・抵当・ムサタハ・贈与とは別の切り口です。誰が投資したかで切った値なので、区分ごとの金額と足すと二重に数えることになります。同じ発表の中に並んでいても、足し合わせて使える項目とそうでない項目があります。
投資区域についても、2026年上半期はAED75 billionで181パーセントの増加と発表されています。投資区域は外国人が不動産の権利を取得できる区域のことで、どこが該当し、取得できる権利がどう違うかはアブダビのエリア比較にまとめています。投資区域の額も総額の一部を切り出したものなので、総額に足さないでください。
この数字で分かること、分からないこと
これらの発表から分かるのは、登録された取引の総量です。分からないのは、これから買う人が払う価格です。総額が伸びていることは、ある住戸が値上がりしたことの証明にはなりません。件数が増えれば総額も増えますし、大型の登録が入っても増えます。
平米あたりの単価、価格の指数、在庫や供給の量も、ここで挙げた発表からは読めません。エリアごとの水準を確かめたいときは、別の資料にあたる必要があります。どの資料が何をどの細かさで公表しているかはアブダビのエリア別データで扱いました。
購入時に何をいくら払うのかはアブダビの物件購入にかかる費用に、手続きが誰の起票でどう進むのかはアブダビ不動産の買い方にまとめています。市場全体の規模を見たあとで個別の判断に進むなら、その2つのほうが実務に近い情報です。
この記事で確認できなかったこと
ADRECの公式サイトは、当サイトの自動取得では開けませんでした。確認日の時点でアクセスが拒否されます。同センターが公表している市場レポートの本文と、そこに載っている地区ごとの内訳は、この記事では数値として扱っていません。人がブラウザで開く経路は残っているので、原典はADRECのサイトで直接確かめてください。
アブダビ統計センターの資料にも接続できていません。したがって、不動産が域内の経済にどれだけ寄与しているかや、価格指数の作り方については、この記事では説明しません。
もうひとつ、期間ごとの発表に載っている項目は毎回同じではありません。半期の発表にはエリア別の上位が載る回があり、年次の発表には専門職の免許数が載ります。同じ項目が毎回そろっているわけではないので、時系列で追いたい項目は、発表ごとに記載の有無を確かめてください。当サイトは、記載を確認できた回の値だけを本文に書いています。
値上がりも賃料収入も保証しません
当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれについても保証しません。市場全体の取引額が伸びていることと、個別の物件がこれから値上がりすることは別のことです。公表されている数字は、登録された過去の記録であって、この先の結果を示すものではありません。
伸び率の大きさにも気をつけてください。前年の水準が低ければ、同じ増加額でも伸び率は大きく出ます。伸び率だけを見て市場の勢いを判断せず、必ず元の金額と件数に戻ってください。この記事で伸び率と実額を必ずセットで書いているのは、そのためです。
まとめ
アブダビの不動産市場の規模は、アブダビ政府メディアオフィスの発表で確認できます。2025年の通年はAED142 billionで42,814件、2026年は上半期までがAED117 billionです。
読むときの要点は3つです。ひとつめは、総額が売買・抵当・ムサタハと長期リース・贈与を足した値であること。売買の規模を知りたいなら内訳を使います。ふたつめは、四半期・半期・9か月・年次の値がいずれも年初からの累計であること。比べるときは同じ期間どうしにします。みっつめは、金額と件数が同じ向きに動くとは限らないこと。片方だけで市場を語らないでください。
そのうえで、どの区分の、いつの、どの単位の値なのかを、出典と確認日といっしょに書き残してください。当サイトが持っているアブダビのデータはアブダビのデータから一覧できます。