新築・オフプラン/解説

アブダビのオフプランの支払いプラン|竣工予定と出来高の関係

アブダビのオフプランで示される支払いプランの区切りが何に結び付いているのかを、Law No. 3 of 2015の条文とADRECの公表ページで確かめます。竣工予定が案件ごとには公表されていないことと、出来高を誰が確認しているのかまで、確認できた範囲で整理します。

アブダビのオフプランの支払いプラン|竣工予定と出来高の関係 - Reheat

アブダビの新築案件の資料を開くと、たいてい2枚目か3枚目に支払いプランの表が出てきます。頭金が何パーセント、建設中に何回、引き渡し時に何パーセント。その隣に、引き渡しの予定として四半期が1つ書かれています。数字はどれも具体的で、そのまま予定表に書き写せそうに見えます。

ところが、この2つは性質がかなり違います。先に結論を書きます。アブダビの条文が定めているのは、支払いの「割合」ではなく、支払いの「基準」です。Law No. 3 of 2015の第15条第2項は、買主がオフプラン住戸の代金を、工事の実際の出来高の割合に応じて支払う義務を負うとしています。頭金を何パーセントにするか、何回に分けるかを指定する条文は、当サイトが確認した範囲では見当たりませんでした。つまり、資料に並んでいる区切りは各社が組んだ商品設計であって、その裏には出来高という別の物差しが置かれています。

一方の竣工予定は、もっと心もとない立ち位置にあります。個別の案件について竣工予定日を誰でも照会できる形は、政府の公表ページの範囲では確認できませんでした。公表されているのは首長国全体の見通しだけです。

この記事は、その2つを分けて扱います。支払いプランの区切りが何と対応しているのか、出来高を誰がどうやって確かめているのか、そして竣工予定について公表情報からどこまで言えるのか。オフプラン販売そのものに置かれた資金の保全の仕組みはアブダビのオフプラン物件とはに、登録手続きの起票者と手数料はアブダビの不動産取引データにまとめてあるので、ここでは繰り返しません。

支払いプランの区切りは、日付ではなく出来高に結び付いています

販売資料の表記で最も多いのは、比率です。頭金20パーセント、引き渡し時80パーセント、という書き方をします。次に多いのが工程の名前で、着工時、基礎完了時、上棟時、といった区切りが回数とともに並びます。

条文の側を読むと、この2つのどちらとも一致しません。第15条は、まずオフプランで売るための条件を並べています。権限のある機関による承認、開発計画の預託、土地についての権利、そしてプロジェクト・エスクロー口座の開設です。そのうえで同じ条の第2項が、買主の側の義務として支払いの基準を置いています。工事の実際の出来高の割合に応じて支払う、という書き方です。

ここに日付は出てきません。四半期も、月数も、契約からの経過日数も出てきません。基準になっているのは、建物がどこまでできているかという一点です。

アブダビのオフプランの支払いプランについて、販売資料に書かれている形と条文が定めている基準を左右に並べた比較図。左は比率の表記、工程の名前、竣工予定の3つ、右はそれぞれに対応する条文の記載で、比率を定める条文が無いこと、第15条第2項が実際の出来高に応じた支払いを定めていること、竣工予定日そのものを定める条文が無いことを示している
左右の3組は、同じ事柄について資料と条文がそれぞれ何を書いているかの対比です。比率と工程名は資料の側にしかなく、出来高は条文の側にしかありません。両者を突き合わせる材料は、資料の中には入っていませんでした。 出典:ADREC/DARI|Regulation of the Real Estate Sector Law(確認日 2026-09-16)

買う側にとって、この差は実務に直結します。「基礎完了時に10パーセント」と書かれていても、基礎の完了が工事全体の何パーセントにあたるのかは資料に書かれていません。同じ「基礎完了時」でも、案件によって出来高の水準は違います。だから、支払いプランを読むときに確かめるべきなのは比率そのものではなく、それぞれの区切りが出来高のどこに置かれているのかという対応です。

なお、条文が比率を指定していないという事実は、比率が自由だという意味ではありません。第15条第2項が置かれている以上、出来高と大きく離れた前払いを求める設計は、この基準との関係を説明できる必要があります。当サイトは個別の案件を評価しないので、どの比率なら適合するかを判定することはしません。確かめるのは読者自身か、代理する専門家です。

出来高は、誰がどうやって確かめているのか

出来高が基準なら、次の問いは「誰が測っているのか」になります。ここについては、ADRECが事業者向けのサービスとして手続きを公表しています。Request Project Survey、日本語にすれば進捗報告の申請です。

案内には、このサービスがディベロッパーに進捗報告を提出させるものであり、エスクロー融資のもとにある不動産プロジェクトが正確に進むようにするため、現地での確認を行い、資金の払い出しを実際のマイルストーンに結び付けるものだと書かれています。手数料は無料とされています。つまり、出来高の判定は当事者どうしの申告ではなく、確認を挟んだ手続きとして設計されています。

アブダビのオフプランで買主が払ったお金が動くまでの関係図。左に買主が払うお金、中央に案件ごとのエスクロー口座、右にディベロッパーの引き出しを置き、下に出来高の確認として進捗報告と現地での確認を置いて、その確認が引き出しの条件になっていることを矢印で示している
買主の支払いは中央の口座に入り、右への払い出しは下段の確認を条件にしています。図の中の「進捗報告」はディベロッパーが提出するもので、買主の側から請求する手続きは公表ページの範囲では見つかりませんでした。 出典:ADREC/DARI|Request Project Survey (Progress Report)・Law No. 3 of 2015・Madhmounの発表(確認日 2026-09-16)

この申請で求められる書類の一覧は、そのまま「登録された案件なら存在しているはずのもの」の一覧になります。買う側が売主へ質問を投げるときの手がかりとして使えます。

提出が求められる書類 何を示すものか
Location Map 敷地の位置
Site Plan 敷地の配置
Project Plan 案件の計画
Project Registration Certificate from ADREC ADRECへの案件登録が済んでいること
Building Permit 建築の許可
Piling Permit 杭工事の許可
TOC 案内に略称のまま記載されている書類
PCC 案内に略称のまま記載されている書類

表の下2つについて補足します。TOCとPCCは、ADRECの案内に略称のまま書かれており、正式名称はそのページに記載されていません。不動産の工事では Taking Over Certificate や Practical Completion Certificate を指す使い方が一般的ですが、このページからそう読み取れるわけではないので、当サイトからは断定しません。確かめたい場合はADRECへ直接確認してください。

重要なのは、この一覧にADRECの案件登録証明書が含まれていることです。登録されていない案件は、進捗報告の手続きにも乗りません。支払いを始める前に登録の裏を取る理由が、ここにも現れています。

竣工予定日は、登録の入力項目になっています

支払いプランと並んで資料に載っているのが竣工予定です。これは記録にまったく残らないわけではありません。オフプラン住戸の売買登録の案内には、入力する項目として販売の日、プロジェクトの完成予定日、販売価格、手数料を負担する側、登録手数料が挙げられ、続けて支払いプランについて分割の回数と各回の内容を入力すると書かれています。仲介者がいる場合はその情報も入ります。

つまり、資料で見せられた竣工予定と支払いプランは、契約が登録される段でそのまま入力欄に入ります。ただし起票できるのはディベロッパーだけです。買主の側からこの手続きを立てることはできません。手数料の率と登録の期限についてはアブダビの不動産取引データで扱いました。

ADRECのDARIサポートに掲載された、オフプラン住戸の売買登録の手続きを説明するページの表示
引用キャプチャ入力項目としてプロジェクトの完成予定日が挙がり、支払いプランについては分割の回数と各回の内容を入れると書かれている、ADRECの案内ページです。この記事で扱っている2つの数字が、どちらもここで記録に入ることが分かります。起票できるのはディベロッパーだけです。 出典:ADREC/DARI Support|Off-Plan Unit Sale Registration(ページの記載を確認した日 2026-09-16/画面の取得日 2026-09-09・表示のファーストビュー)

一方で、この記録が外から見えるかというと、話は別です。ADRECの案内には、DARIに登録されたディベロッパーの一覧があり、連絡先、案件、マイルストーンが載っていると書かれています。別の案内では、そのディレクトリがオフプランと完成済みの両方の案件を扱っているとも説明されています。ただし、その画面を当サイトから機械的に取得することはできませんでした。DARIの公開画面は読み込み後に描画される形式で、外部から中身を読み取れません。案件ごとの竣工予定日が誰でも確認できる形で出ているのかどうかを、当サイトは確かめられていません。

案件ごとの竣工予定は、公表資料では裏が取れません

代わりに公表されているのは、首長国全体の見通しです。2026年上半期の市場レポートについてADRECが出した発表には、2030年までに首長国全体でおよそ71,000戸が追加されると見込まれ、引き渡しは2028年のおよそ21,800戸で最も多くなると示されています。

アブダビの住戸の引き渡し見通しを2026年から2030年までの時間軸で示した図。2028年に約21,800戸で引き渡しが最も多くなると見込まれること、2030年までに首長国全体で約71,000戸が追加されると見込まれることを示している
時間軸に載っている2つの値は、いずれも首長国全体の見通しです。特定の案件の竣工予定日ではないので、検討している物件の引き渡し時期をこの図から読み取ることはできません。 出典:ADREC|Abu Dhabi Real Estate Market Report for H1 2026 の発表(確認日 2026-09-16)

この見通しは、市場全体の傾向を知るには役立ちます。けれども、手元の資料に書かれた竣工予定を裏づける材料にはなりません。2028年に引き渡しが集中するという見込みは、自分の買う住戸がその年に引き渡されるという意味でも、その年なら確実だという意味でもありません。

当サイトの立場をはっきり書いておきます。個別の案件の竣工予定について、政府の公表ページで裏を取る方法を、この記事の出典の範囲では示せませんでした。示せない以上、資料の四半期表記をそのまま確定した予定として扱わないでください。契約書に予定日がどう書かれ、遅れたときに何が起きると書かれているかを、契約書の側で確かめる必要があります。

引き渡しまで、権利証は発行されません

支払いを進めている途中、自分の手元に何が残るのかも、あらかじめ知っておいたほうがよい部分です。DARIのサポートには短い一文があります。現時点で、証明書はオフプランの住戸と土地については有効になっていない、という趣旨の記載です。

つまり、分割払いを何回か終えた段階でも、DARIから権利証を取り出すことはできません。完成前の住戸は初期の登記簿に記録され、引き渡しの段で不動産登記簿へ移ります。その順序はアブダビ不動産の引き渡しにまとめました。

支払いプランを検討するときに、この点は判断に効きます。お金は先に出ていく一方、所有を証明する書面は最後まで出てきません。だからこそ、条文の側で出来高と結び付けられ、エスクロー口座と進捗報告という別の仕組みが置かれています。書面が無いことを不安に思うのは自然ですが、その不安を埋めるのは権利証ではなく、登録と口座と確認の3点です。

予約の段のお金も、政府が管理する口座に入ります

支払いプランの1行目より前に、もう1段あることがあります。人気の案件で、販売開始の前に購入の意向を示して住戸を押さえる段です。英語では Expression of Interest、略してEOIと呼ばれます。

ADRECは、このEOIの登録を Madhmoun というプラットフォーム上で電子化したと発表しています。発表では、EOIがADRECの直接の監督のもとに置かれ、EOIの資金が政府の管理する準備段階のエスクロー口座へ預けられることで投資家を保護すると説明されています。デジタルでの返金の仕組みと監督の強化によって、従来の仲介者を挟むことによるリスクを取り除くとも書かれています。そして、新しい開発案件のすべてのディベロッパーが、投資家のオフプランEOIをMadhmounを通じて電子的に登録することを求められるとされています。

買う側から見ると、押さえるために払ったお金の置き場所が公表された仕組みの中に入ったことになります。支払いプランの表には、この段の金額が載っていないことがあります。載っていない場合でも、実際には最初の出金がここで起きます。総額を見積もるときは、表の1行目から数えはじめないでください。

選べる相手は、実際には多くありません

支払いプランを比べるという行為は、比べる相手が複数いて初めて成り立ちます。この点について、2026年上半期の市場レポートの発表に数字が出ています。

項目 発表されている値
住宅の売買額(2026年上半期) AED 70.4 billion(前年同期は AED 25.3 billion)
オフプランの比率 金額で89パーセント、件数で82パーセント
上位10社が占めるオフプランの一次販売 90パーセント(AED 51 billion)

この3行が示しているのは、アブダビで住戸を探すとほぼオフプランに当たること、そしてその一次販売の9割が10社に集まっていることです。支払いプランの条件を横に並べて比べようとしても、比較の対象はそれほど多くありません。

ここで注意したいのは、集中していること自体は良いことでも悪いことでもない、という点です。発表は金額の構成を示しているだけで、各社の条件の良し悪しを評価していません。当サイトも、公表値の基準を示せない順位は作りません。会社ごとに何が公表されているかはアブダビのディベロッパーランキングで、公表された発表額だけを並べて扱いました。

支払いプランを渡されたときに確かめること

ここまでの内容を、手元で使える形にまとめます。判定するための表ではなく、確かめる先を示すための表です。

アブダビのオフプランで支払いプランを渡されたときに確かめる4つの問いと、確認できなかったときの扱いを左右に並べた表形式の図。案件がADRECに登録されているか、支払いの区切りが出来高のどこに当たるか、竣工予定日が契約書と登録の両方に入るか、遅れたときの扱いが契約書に書かれているかの4つを挙げている
4つの問いは、この記事で確認できた条文と手続き案内から作りました。右の列は、確認が取れなかったときにその項目をどう扱うかで、いずれも「確認できたことにしない」という方向にそろえています。 出典:Law No. 3 of 2015・ADREC/DARI|Off-Plan Unit Sale Registration・Request Project Survey(確認日 2026-09-16)

4つのうち、2番目がこの記事の中心です。支払いの区切りが出来高のどこに当たるのかを、書面で示してもらってください。条文が定める基準はそこにあり、資料の比率表記はその基準の上に載った設計だからです。示されない場合は、示されなかったという事実を記録したうえで判断してください。

この記事で確認できなかったこと

第一に、案件ごとの竣工予定日の確認方法です。DARIのディレクトリに案件とマイルストーンが載っているとADRECは案内していますが、その画面を当サイトから取得できず、誰でも照会できる形で竣工予定日が出ているのかを確かめられていません。

第二に、支払いプランの比率についての上限や下限です。頭金の割合や分割の回数を指定する条文は見当たりませんでした。無いのか、別の規則にあるのに見つけられなかったのかは区別できていません。

第三に、竣工が遅れたときの扱いです。遅延した場合の買主の権利を定める公表資料を、この記事の出典の範囲では見つけられませんでした。契約書の条項に依存する部分が大きいと考えられますが、確かめられていない以上、当サイトからは書きません。

第四に、進捗報告の内容を買主が見られるかどうかです。この手続きはディベロッパーが提出する側の設計で、買主が結果の開示を請求できるかについての記載は見つかりませんでした。

第五に、TOCとPCCの正式名称です。ADRECの案内が略称のままなので、当サイトは展開しません。

当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。この記事が扱っているのは、公表されている条文の記載と手続きの案内、そして公表された集計値だけです。

まとめ

アブダビのオフプランで示される支払いプランは、条文が指定した割合ではありません。Law No. 3 of 2015の第15条第2項が定めているのは、買主が工事の実際の出来高の割合に応じて支払うという基準のほうです。資料に並ぶ比率と工程名は、その基準の上に各社が組んだ設計にあたります。

出来高の判定は、当事者の申告だけで進む形にはなっていません。ADRECはディベロッパーが進捗報告を提出する手続きを公表しており、現地での確認を経て、資金の払い出しが実際のマイルストーンに結び付けられると案内しています。申請に必要な書類の中に、ADRECの案件登録証明書が入っています。

竣工予定は、オフプラン住戸の売買登録の入力項目として記録に入ります。しかし案件ごとに外から照会できる形は、公表ページの範囲では確認できませんでした。公表されているのは、2030年までにおよそ71,000戸、引き渡しの山が2028年のおよそ21,800戸という首長国全体の見通しだけです。手元の資料に書かれた四半期を、この見通しで裏づけることはできません

支払いプランを受け取ったら、比率を比べる前に、その区切りが出来高のどこに当たるのかを書面で確かめてください。条文が置いている物差しはそこにあります。