アブダビのアパートメントを探し始めると、間取りと面積と価格の一覧はすぐ手に入ります。ところが、その1戸が法律の上でどう扱われるのかは、物件の紹介資料には書かれていません。日本の分譲マンションの感覚で読むと、建物を共同で持ち、そのうちの一部屋を使う権利を買うように見えます。
先に結論を書きます。アブダビでは、1つの住戸がそれ自体で1つの不動産として扱われます。建物ごと共有するのではなく、住戸ごとに台帳の記載が作られ、所有の証明も個別に発行されます。そして外国人が登記できる範囲には、よく知られた「投資区域」という線のほかに、もう1本、あまり紹介されていない線が引かれています。ADRECが規制のページに掲載している条文は、UAE・GCC国籍でない人による住戸の登記を投資区域内の、地上階以外に限ると記しています。
この記事は、アブダビ不動産センター(ADREC)が公開している法令・規制のページと、UAE政府ポータルに書かれている範囲だけで、アパートメントという1戸がどう登記され、買った後に誰と何が決まるのかを並べ直したものです。買う手順そのものはアブダビ不動産の買い方に、取得できる権利の4区分はアブダビ不動産の所有権は4種類に分けて書いています。ここでは順序でも権利の種類でもなく、住戸という単位だけを見ます。
1住戸が、それ自体で1つの不動産になります
ADRECの登記に関するページには、不動産登記簿が「特別に用意され、書面または電子的に記録されて当局に保管される、一群の不動産台帳から成る」と書かれています。台帳は不動産ごとに1つあり、その不動産の記述、所在、それに関する権利、行われた処分、加えられた変更が記録されると説明されています。
そのうえで、登記規則の第29条として引かれている条文が、集合住宅の扱いを決めています。複数の住戸と複数の階からなる不動産では、各住戸と共用部がそれぞれ単独の不動産を構成するという内容で、台帳の記載と所有の証明も個別に作られるとされています。
この違いは、買う側の実務に直接効きます。住戸が単独の不動産である以上、売買の対象も、抵当権の対象も、証明書が出る単位も住戸です。DARIのサポートには、住戸の権利証(Title Deed)を発行するサービスが、土地の権利証とは別のメニューとして用意されています。画面では対象の物件を選んでから申請するため、自分が持っているのがどの住戸なのかが、操作の時点ではっきりします。
登記そのものについても、ページには強い書き方があります。所有権は登記によってのみ移る、登記しなければ当事者のあいだでも権利が設定・移転・変更・抹消されたことにならない、という趣旨です。契約書に署名した時点では、まだ持ち主は変わっていません。オフプランで買う場合に初期登記簿という別の段があるのも、この原則の延長にあります。仕組みはアブダビのオフプラン物件とはにまとめました。
外国人が登記できる範囲には、区域のほかにもう1本線があります
UAE政府のポータルは、アブダビで外国人が不動産を所有できる区域を9つ挙げています。ヤス島、サディヤット、リーム、マリヤ、ルル、アル・ラハ・ビーチ、サイ・アル・セダイラ、アル・リーフ、マスダール・シティです。そして所有できるものについて、階と住戸だけであって、土地ではないと明記しています。アパートメントが話の中心になるのは、この一文があるためです。
ADRECの規制ページには、2005年法第3号の第10条として、もう1つ踏み込んだ記述が載っています。UAE国籍でない、またはGCC諸国の国籍でない自然人・法人についての住戸の登記を、投資区域内にある、地上階以外の不動産・住戸・階に限るという内容です。区域の中であれば何でも登記できるのではなく、階についての条件が別に書かれていることになります。
ここは、当サイトとして確認できていない点も同時に書いておきます。UAE政府ポータルの同じページは、2019年の改正に触れ、投資区域内にある不動産について、UAE国籍でない自然人・法人がすべての原始的な権利と物的権利を所有し取得する権利を持つとしています。地上階についての限定と、この2019年の書き方が、どちらがどこまで適用されるのかは、どちらのページからも読み取れませんでした。読み取れない以上、当サイトの側でどちらかに寄せた説明は書きません。地上階の住戸を検討する場合は、契約の前にADRECか登記の窓口で、その住戸が登記の対象になるかを確かめてください。
権利の年数についても、ポータルは区分ごとに書き分けています。所有では住戸の所有証書が99年の期間で与えられ、ムサタハでは50年で当事者の合意により同じ期間の更新ができ、用益では99年、長期リースでは25年以上の初期期間が与えられるとされています。年数と中身の違いはアブダビ不動産の所有権は4種類で扱っているので、ここでは繰り返しません。
間取りの表記は寝室の数です。日本のLDKとは数え方が違います
物件資料で最初に目に入るのは、Studio、1 B/R、2 B/R といった表記です。B/R は Bedroom の略で、寝室の数を指します。日本の1LDK・2LDKは、寝室に加えて居間・食事室・台所をひとまとめに数える表記なので、そもそも数えているものが違います。
| 英語の表記 | 指しているもの | 日本の表記との関係 |
|---|---|---|
| Studio | 寝室が居間と仕切られていない1室 | ワンルームに近い形 |
| 1 B/R | 寝室が1室 | 1LDKにおおむね対応 |
| 2 B/R | 寝室が2室 | 2LDKにおおむね対応 |
| 3 B/R | 寝室が3室 | 3LDKにおおむね対応 |
| Maid’s room | 使用人のための部屋 | 対応する日本の表記がない |
当サイトの用語集は、この対応を「おおむね」という言葉つきで書いています。1BRが1LDKと同じだ、とは書きません。台所が独立しているか居間とつながっているか、使用人の部屋と浴室を寝室に数えるかどうかが、物件によっても資料によっても違うためです。同じ表記でも、専有の面積が大きく違うことは珍しくありません。間取りの表記は絞り込みの入口として使い、面積と図面で確かめてください。
面積の表記にも注意が要ります。アブダビの資料では平方フィートと平方メートルが混ざり、バルコニーを含むかどうかも資料によって書き方が変わります。住戸の面積がどの範囲を指すのかを機械的に判定できる公表資料は、この記事の出典の範囲では見つけられませんでした。そのため当サイトからは、面積の定義について断定しません。
共用部は、住戸とは別に定義されています
2025年の行政決定第25号の第2条は、共用部として何が含まれるかを挙げています。ADRECの規制ページに引かれている範囲では、住戸の構造部分、守衛室と施設、複数の住戸へ供給する主要な設備と系統などが並んでいます。条文は限定しない列挙という形をとっており、ここに挙がっていないものが共用部に入らないという意味ではありません。
住戸を買うという行為は、この共用部の費用を毎年負担する立場に入るという意味でもあります。同じ行政決定は、サービスチャージを所管の局の承認を得たうえでADRECが承認した費用であり、共用部の管理・運営・維持の費用を賄うために所有者から徴収されるものと定義しています。管理会社が独自に決めて請求できる性質の費用ではない、という位置づけです。
利回りを考えるときにこの費用をどこへ入れるかは、アブダビ不動産の利回りで別に扱っています。ここでは金額ではなく、誰が決めて、誰が請求し、払わないとどうなるかを見ます。
住戸を持つと、管理会社とオーナーズ委員会が相手になります
ADRECのコミュニティ関連のページは、共同所有不動産に関わる主体を2つに分けています。日々の管理を担うコミュニティ管理会社と、所有者の側に置かれるオーナーズ委員会です。
管理会社については、共用部とその施設の管理・運営・維持・修繕を担うと説明されています。日常の業務、共用部の維持、サービス費用の徴収、建物や複合施設の管理システムの運用が、その役割として挙がっています。
オーナーズ委員会は、条件がそろってから作られます。開発プロジェクト内の住戸の総数のうち30パーセント以上が、複数の所有者の名義で不動産登記簿に登記された時点が、その条件です。委員の数は、委員長と副委員長を含めて5名以上9名以下とされ、所有者の投票で選ばれ、結成と委員の任命はADRECが承認します。
委員になれる人にも条件があります。共同所有不動産に居住している所有者であり、ADRECの資格要件を満たすこと、そしてコミュニティのサービスチャージを完済していることが挙げられています。ディベロッパーは委員になれません。委員は無報酬の任意の役割で、所有者と管理会社のあいだをつなぎ、予算を確認してサービスの提供状況を監視しますが、日々の運営には介入しないと説明されています。
この設計は、買う側が期待できることの範囲も示しています。委員会は請求額を自由に下げる機関ではなく、承認された予算と実際の提供内容を突き合わせる立場にあります。「オーナーズ委員会があるから費用が上がらない」とは言えません。
費用を払わない場合の扱いも公表されています。管理会社は未払いの額を所有者へ通知し、所有者はそこから60日のあいだに清算するとされています。期限を過ぎると法的な手続きへ進むと説明されています。そしてもう1つ、売る側になったときに効く決まりがあります。売却または移転の手続きを終える前に、未払いのサービスチャージをすべて清算しなければならないという記述です。中古の住戸を買う側から見ると、前の所有者の滞納を引き継ぐ形にはならない一方、売主の清算が終わるまで移転が進まないことになります。
金額については、ADRECのページに出ているのは登録されたコミュニティ全体の集計だけです。1戸あたりの額も、面積あたりの単価も示されていません。自分の住戸にいくらかかるのかは、この集計から割り戻すことができないので、物件ごとに承認された予算と請求書で確かめてください。
投資区域の中と外では、賃料の上がり方が違います
ADRECが2026年上半期の市場レポートについて出した発表には、アパートメントとヴィラを分けた変化率が並んでいます。新しく結ばれた賃貸契約の賃料は、前年同期比でアパートが17パーセント、ヴィラが9パーセント上がったとされています。そして投資区域の中では、アパートが21パーセント、ヴィラが16パーセントと、いずれも大きい値が示されています。
外国人が住戸を登記できるのは投資区域の中だけなので、日本から買う人にとって関係が深いのは、首長国全体の数字ではなく、投資区域の数字のほうです。発表は、この差がなぜ生まれたのかまでは書いていません。供給の構成が違うのか、対象になっている物件の質が違うのかは、当サイトからは説明できません。
同じ発表に載っている住宅の数字を、まとめて並べておきます。
| 項目 | 発表されている値 |
|---|---|
| 住宅の売買額(2026年上半期) | AED 70.4 billion(前年同期は AED 25.3 billion) |
| オフプランの比率 | 金額で89パーセント、件数で82パーセント |
| 有効な住宅の賃貸契約 | 233,000件・AED 9.3 billion(金額で8パーセント増、件数で2パーセント増) |
| 住宅の供給 | 約409,000戸 |
| 2030年までに見込まれる追加 | 約71,000戸 |
| 引き渡しの山 | 2028年に約21,800戸 |
| 買い手の内訳 | 居住する外国人と非居住の外国人で、住宅売買額の70パーセント |
この表で目を引くのはオフプランの比率です。金額で89パーセント、件数で82パーセントが建設前・建設中の取引だと書かれています。いま市場に出ているアパートメントの多くは、完成した住戸ではなく、これから建つ住戸です。価格の推移そのものの読み方はアブダビ不動産の価格推移にまとめました。
賃料の目安は指標値であって、契約の基準ではありません
貸すことを考えて買う場合、ADRECが公開している賃料インデックスを使うことになります。ここには但し書きがあり、そのまま読む価値があります。ADRECのページには、賃料インデックスはアブダビ首長国全体の賃料の一般的な目安として提供されるものであり、集計されたデータにもとづくと書かれています。続けて、情報提供を目的としたものであって、特定の住戸の正確な賃料を決めるための法的な根拠として使うべきではないとあります。示されている価格は住戸が所在するエリアの平均的な賃料であり、物件によって変わるとも書かれています。
つまり、この数字は交渉や判断の出発点であって、結論ではありません。家賃をめぐる3つの数字の見分け方はアブダビの家賃データで扱っています。
更新のときに上げられる幅についても、2026年に変更がありました。ADRECは2026年6月3日付の発表で、住宅・商業・工業の賃貸借契約の更新について、年間の賃料引き上げ率を5パーセントから0パーセントへ変更すると公表しています。期間は一時的な短期間で追って通知するまでとされ、更新と新規の合意はいずれも直近に登録されたTawtheeq契約の賃料を参照するとされています。貸して回すことを前提に買う場合、この0パーセントは見落とせない条件です。ただし一時的な措置と明記されているので、いつまで続くのかは当サイトからは示せません。検討している時点で発表が更新されていないかを確かめてください。
この記事で確認できなかったこと
第一に、地上階についての限定と、2019年の改正の書き方の関係です。ADRECの規制ページに載る条文は地上階を除くとしており、UAE政府ポータルは投資区域内のすべての権利を取得できるとしています。どちらが優先するのか、例外があるのかは、どちらのページにも書かれていません。
第二に、住戸の面積の定義です。専有の部分、バルコニー、共用部の按分をどう扱うのかを定める公表資料は、この記事の出典の範囲では見つけられませんでした。
第三に、サービスチャージの水準です。ADRECのページに出ているのは登録されたコミュニティ全体の集計だけで、面積あたりの単価も、物件ごとの請求額も公表されていません。承認された予算を住戸の単位で照会できる窓口があるかどうかも確かめられていません。
第四に、間取りごとの価格と賃料です。ADRECの発表と公開ページからは、アパートメント全体の変化率までしか読み取れませんでした。Studio、1 B/R、2 B/R といった区分ごとの平均値は、政府の公表ページの範囲では確認できていません。確認できていないので、この記事には間取りごとの金額を書きません。
当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。この記事が扱っているのは、公表されている制度の記載と、公表された集計値だけです。
まとめ
アブダビのアパートメントは、1住戸がそれ自体で1つの不動産です。登記規則の第29条が、集合住宅の各住戸と共用部をそれぞれ単独の不動産としており、台帳の記載も所有の証明も住戸ごとに作られます。所有権は登記によってのみ移るため、契約に署名した時点ではまだ移っていません。
外国人が登記できる範囲には2つの線があります。UAE政府ポータルが挙げる9つの投資区域と、ADRECの規制ページに載る、地上階を除くという条文です。後者と2019年の改正の関係は公表ページから読み取れないので、地上階の住戸は契約の前に確かめてください。
買った後は、コミュニティ管理会社とオーナーズ委員会が関係先になります。委員会は、住戸の30パーセント以上が複数の所有者の名義で登記された時点で作ることができ、5名から9名で構成され、ADRECが承認します。サービスチャージは所管の局とADRECの承認を経てから請求され、滞納には60日の通知があり、売却や移転の前にすべて清算する必要があります。
市場の数字としては、2026年上半期に新しく結ばれた賃貸契約の賃料が、投資区域の中でアパート21パーセント、ヴィラ16パーセント上がったと公表されています。一方で更新時の引き上げ率は、2026年6月3日付の発表で一時的に0パーセントとされました。新規の契約と更新の契約で、まったく違う条件が同時に置かれています。どちらの数字を見ているのかを取り違えないでください。