アブダビの不動産価格がどれくらい動いたのかは、ADREC(アブダビ不動産センター)が2026年8月18日に公表した市場レポートの発表で確かめられます。先に結論です。同じ住戸が売り直された価格は、2026年上半期に前年同期比でアパートが20パーセント、ヴィラが12パーセント上がったと書かれています。よく引用される「取引額が112パーセント増えた」という数字は、別の発表にある別の数字で、価格の上昇率ではありません。そしてもうひとつ大事な点があります。エリア別・広さ別の価格表は、確認日の時点で公的に公表されていません。この記事では、公表されている変化率が何をどう測ったものなのか、平均で測るのと何が違うのか、そして相場を自分で確かめるときに何が使えるのかを、ADRECとアブダビ政府メディアオフィスの発表で読み取れた範囲だけで整理します。価格と呼ばれる4つの数字の区別はアブダビの不動産価格データに分けて書いたので、ここでは「どれだけ動いたか」に絞ります。
公表されたのは、同じ住戸が売り直された価格の変化です
発表の英文には repeat sales prices と書かれています。日本語にすると「売り直された価格」で、同じ物件が複数回売買された記録どうしを組にして、その差から変化率を出す測り方を指す言い方です。組になるのは同じ住戸なので、広さも階も眺望も同じです。物件の違いが最初から消えているところに意味があります。
ADRECの発表には、この組をどう作ったのか、何回目までの売買を対象にしたのかといった細目は書かれていません。したがって、上の説明はこの測り方の一般的な意味であって、ADRECの実装そのものではありません。当サイトが確認できたのは、この言い方で出された変化率がアパート20パーセント、ヴィラ12パーセントだったという事実までです。
発表の末尾には、すべての結果が登録された取引データから導かれ、価格帯の検証、取引の絞り込み、地理的な層化を含むADRECの確立された方法に従うと書かれています。つまり、登録されたものをそのまま平均したのではなく、除外と層分けを経た値です。どの範囲を除いたのかは公表されていないので、他社の集計と数字が違っても、その差の原因を当サイトからは説明できません。
「取引額が112パーセント増えた」は、価格の話ではありません
価格の話と混ざりやすいのが、取引の登録額をまとめた発表です。アブダビ政府メディアオフィスとADRECは、2026年上半期に登録された不動産取引の総額がAED117 billionに達し、金額で112パーセント、件数で61.7パーセント増えたと公表しています。内訳は、売買がAED86.1 billionで16,838件(金額で163.7パーセントの増加)、抵当の登記がAED26.7 billionで8,876件(金額で33パーセントを超える増加)です。海外からの直接投資はAED13.8 billionで、309パーセントの増加とされています。
これらは登録された取引の合計額です。件数が増えれば合計は増えますし、抵当の登記は誰かが払った購入額でもありません。同じ住戸を買って融資を受ければ、売買と抵当の両方が登録されます。つまり総額の伸びは、値段が上がったのか、取引が増えたのか、性質の違う登録が積み上がったのかを区別しません。
価格の変化率が出てくるのは、同じ機関が別に出している市場レポートのほうです。発表の種類が違えば、測っているものも違います。総額そのものの読み方と内訳はアブダビ不動産の市場規模にまとめました。
平均で測ると、売れた場所と種類の偏りが混ざります
なぜ測り方にこだわるのかというと、この半年のアブダビは売れたものの構成が大きく偏っていたからです。市場レポートの発表から、住宅の売買の内訳を並べます。
| 公表されている項目 | 2026年上半期の値 | 価格を読むときの意味 |
|---|---|---|
| 住宅の売買額 | AED70.4 billion(前年同期はAED25.3 billion) | 金額の合計であり、1戸あたりの額ではありません |
| オフプランの比率 | 金額の89パーセント、件数の82パーセント | 完成前の住戸が大半を占めます |
| 現金での購入 | 61パーセント | 融資の条件が価格に反映されにくい部分があります |
| 居住外国人と非居住外国人 | 住宅売買額の70パーセント | 買い手の層が偏れば、売れる物件の層も偏ります |
| UAE国民の購入額 | AED21.0 billion(前年同期はAED8.9 billion) | 国民向けの住宅は外国人が買えるものとは限りません |
| 上位10社の一次販売 | AED51 billion(オフプラン一次販売の90パーセント) | 少数のプロジェクトの価格設定が全体に効きます |
オフプランが金額の9割近くを占める半年に、売れた住戸の平均価格を計算して前年と比べたとします。その差には、完成前の住戸がどれだけ混ざったか、どのプロジェクトが売り出されたかが、そのまま入り込みます。一戸ずつの値段が動かなくても、平均は動きます。同じ住戸の売り直しで測る値が別に公表されているのは、この混ざり方を避けるためだと読めます。オフプランの仕組みそのものはアブダビのオフプラン物件とはで扱っています。
売買と賃貸は、別々の変化率として公表されています
同じ市場レポートの発表には、賃貸の側の変化率も載っています。新しく結ばれた契約の賃料は、アパートが17パーセント、ヴィラが9パーセント上がり、投資区域の中ではそれぞれ21パーセントと16パーセントだったとされています。賃貸借契約は233,000件が有効で、契約額の合計はAED9.3 billionです。
ここで注意していただきたいのは、売買の変化率と賃貸の変化率を割り算して利回りにはできないということです。分子と分母で対象も測り方も違います。利回りの考え方と、アブダビで何が公表されているかはアブダビ不動産の利回りに、賃料の資料の性質はアブダビの賃料データにまとめています。
売れた額が大きいエリアは、価格が高いエリアではありません
市場レポートの発表には、住宅の売買額を場所別に並べた部分があります。ここは取り違えやすいので、表にしたうえで但し書きを付けます。
| 場所 | 住宅売買額 | 住宅売買額に占める比率 |
|---|---|---|
| フダイリヤット島 | AED19 billion | 27パーセント |
| サディヤット島 | AED13.3 billion | 記載がありません |
| アル・リーム島とアル・マリヤ島 | AED10.5 billion | 記載がありません |
| ヤス島 | AED7.3 billion | 記載がありません |
この表が示しているのは「どこで多く売れたか」であって、「どこが高いか」ではありません。売れた戸数が多ければ、1戸の価格が低くても合計は大きくなります。エリアごとの1平方メートルあたりの価格は、この発表には書かれていません。島ごとの位置づけはフダイリヤット島の不動産とサディヤット島の不動産にまとめています。
アル・リーム島とアル・マリヤ島が1行にまとまっている点にも触れておきます。発表ではこの2島をADGM(アブダビ・グローバル・マーケット)の区域として並べており、島ごとの内訳は出ていません。合算された値を分けて書くことはできないので、当サイトも1行のままにしています。
外国人が買える区域に、住戸がどれだけあるのかも公表されています
相場を比べるときは、どこに住戸が集まっているかも効きます。同じ発表には供給の内訳があり、投資区域が住宅ストックの22パーセント超を占め、戸数にしておよそ72,000戸だと書かれています。最大がアル・リーム島で27,500戸、続くのがアル・ラハ、ヤス島、サディヤット島の順です。
| 公表されている項目 | 値 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 投資区域の住戸 | およそ72,000戸(住宅ストックの22パーセント超) | 外国人が権利を取れるのは、この区域の中です |
| いちばん多いエリア | アル・リーム島 27,500戸 | 続くのはアル・ラハ、ヤス島、サディヤット島。戸数の記載はありません |
| 供給の伸び | 2022年以降、年平均2.9パーセント | アブダビ地域は3.3パーセントで、住宅ストックの79パーセントを占めます |
| 売買の集中 | 上位10プロジェクトで住宅売買額の43パーセント、AED30 billion | 少数の案件の値づけが、全体の平均に効きます |
投資区域の外にも住戸はありますが、外国人が権利を取れるのは区域の中です。つまり、外から見える「アブダビの住宅ストック」と、外国人が買える範囲は同じではありません。区域の一覧と権利の区分はアブダビのエリア比較に、アル・リーム島の位置づけはアル・リーム島の不動産にまとめました。
これから増える住戸の見込みも公表されています
価格を考えるとき、需要の側と同じくらい供給の側が効きます。発表には、住宅の供給がおよそ409,000戸で、2030年までにさらに71,000戸が加わる見通しであること、引き渡しは2028年におよそ21,800戸でピークを迎えると書かれています。
見込みの戸数が示されたからといって、その年に価格がどちらへ動くかが決まるわけではありません。引き渡しが遅れることもあり、需要の側も動きます。当サイトはこの数字を、価格の予想ではなく「いつごろ供給が厚くなると見込まれているか」の材料としてだけ使います。
相場を自分で確かめるときの順序
公表されているのが変化率だけである以上、金額そのものは自分で確かめることになります。当サイトが薦める順序は次のとおりです。
- 権利の種類と区域を先に確かめます。所有権なのか長期リースなのかで、買っているものが違います
- 比べる条件をそろえます。完成済みかオフプランか、支払いの条件、家具の有無、面積の取り方です
- 有資格の評価人が出す評価額を取ります。中古の移転では、評価額と売却価格の高いほうが手続きの基準になります
- 提示された価格を、上の変化率と突き合わせます。「1年で2割上がった」と言われたとき、それが同じ住戸の売り直しの話なのか、別の物件どうしの比較なのかを確かめます
ADRECのサイトには、市場データの入口として対話型の地図、ダッシュボード、詳細分析のレポート、市場レポート、住宅ローンの計算機が並んでいます。市場レポートは半期ごとで、確認日の時点では2024年・2025年上半期・2025年・2026年上半期の4本が置かれています。買う前の手続きの流れはアブダビ不動産の買い方にまとめました。
この記事で確認できなかったこと
エリア別・物件種別ごとの1平方メートルあたりの価格表について、公的に公表されているものを確認できませんでした。民間の集計は複数ありますが、集計の対象と除外の条件が公表されていないものを当サイトは出典にしません。
ADRECのサイトは、当サイトの機械的な照合では開けません。そのため、この記事に書いた市場レポートの数値は、同じ発表の全文が読める掲載先と突き合わせています。出典の一覧に2つのURLが並んでいるのはそのためで、値そのものはADRECの発表に書かれているものです。同じ機関が8週間ごとに出している市場の動きのメモは、この突き合わせができなかったので、数値としては扱っていません。
市場レポートの本体はPDFで公開されていますが、当サイトの自動取得ではファイルの大きさが上限を超えて読み込めませんでした。したがって、この記事で使ったのは発表に書かれている範囲だけです。PDFの中により細かい価格の表がある可能性は残ります。人がブラウザで開く経路は開いているので、原典はADRECのサイトで直接確かめてください。
2025年の通年について、総額AED142 billion、42,814件という取引の記録が公表されていますが、その発表に価格の変化率は書かれていません。変化率が出てくるのは市場レポートのほうです。年ごとの価格の変化を並べた系列は、この記事では作っていません。
変化率の基準になった価格の水準(指数の基準値や、前年の平均額)も公表されていません。20パーセント増という値は、いくらがいくらになったのかを示しません。
値上がりも賃料収入も保証しません
当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれについても保証しません。ここに並べた変化率は、2026年上半期という過去の期間について公表された記録であり、この先の価格を示すものではありません。
伸び率の読み方にも注意が必要です。前年同期の水準が低ければ、同じ金額の上昇でも率は大きく出ます。上で見たとおり、取引額の伸びと価格の伸びは別の数字です。率だけを覚えて持ち歩かず、どの期間の、何を測った率なのかまでを一緒に控えてください。
まとめ
アブダビで公表されている価格の数字は、変化率であって水準ではありません。2026年上半期について、同じ住戸が売り直された価格は前年同期比でアパートが20パーセント、ヴィラが12パーセント上がったと公表されています。新しく結ばれた賃貸契約の賃料は、アパートが17パーセント、ヴィラが9パーセント、投資区域の中ではそれぞれ21パーセントと16パーセントです。
住宅の売買額はAED70.4 billionで、その89パーセントがオフプラン、61パーセントが現金での購入でした。場所別ではフダイリヤット島が27パーセントを占めますが、これは売れた額の話であって価格の高さではありません。供給は現在およそ409,000戸で、2030年までに71,000戸が加わり、引き渡しは2028年におよそ21,800戸でピークになる見込みとされています。
エリア別の単価表が公的に出ていない以上、金額そのものは評価額と条件をそろえた比較で確かめることになります。当サイトが持っているアブダビのデータはアブダビのデータから一覧できます。