アブダビの住戸を買おうとすると、英語の書類名が一度に並びます。Title Deed、Verification Certificate、Site Plan、POA。仲介からは「これを出してください」と言われますが、その紙が何を示しているのか、誰が発行するのか、いつまで使えるのかまでは説明されないことがあります。
先に結論を書きます。書面は3つの系統に分かれていて、混ざりません。ADRECの側から出てくる証明書、売主と買主と仲介が作る契約書、裁判所を通して作る委任状の3つです。このうち買主が自分の操作だけで取り出せるのは、証明書の系統だけです。残りの2つは、相手か裁判所を経由しないと手に入りません。
この記事は、ADRECが運営するDARIのサポート記事とサービス案内に書かれている範囲だけで、書面ごとの発行元、手数料、有効期間を並べ直したものです。手続きがどんな順番で進み、誰が申請を起こすのかはアブダビ不動産の買い方で扱っています。ここでは順番ではなく、紙そのものを見ます。
書面は「示す紙」「約束する紙」「任せる紙」に分かれます
3つの系統は、発行する人が違います。発行する人が違うということは、取り寄せにかかる時間も、内容を変えられる人も違うということです。
この分け方には実務上の意味があります。証明書は自分で取り直せるので、期限が切れても困りません。契約書は相手の署名が要るので、取り直しに相手の時間がかかります。委任状は裁判所が絡むので、日本にいる場合は日程がいちばん読みにくくなります。急いで用意しなければならないのは右の列で、左の列ではありません。
もうひとつ、名前が似ていて役割が違うものがあります。Title Deed(権利証)は「いま誰のものか」を示し、Verification Certificate(検証証明書)は「その住戸にどんな取引が行われてきたか」を示します。どちらも所有に関わる書面ですが、答えている問いが別です。所有の形そのものが複数ある点はアブダビ不動産の所有権は4種類で整理しています。
DARIから自分で取り出せる証明書は6種類です
ADRECのサポートには、DARIから取り出せる証明書を挙げたページが2つあります。ひとつは「DARIでどの証明書をダウンロードできるか」を説明するページ、もうひとつは「UAEに居住していない利用者が使えるサービス」を説明するページです。
どちらも6件を挙げていますが、並んでいる名前は同じではありません。
| どのページの一覧か | 挙げられている6件 |
|---|---|
| DARIからダウンロードできる証明書 | Site Plan / Unit Title Deed / Property Certificate / Land Ownership Deed / Verification Certificate / Land Title Deed |
| 非居住の利用者が使えるもの | Title deed (Land) / Title deed (Unit) / Site plan / Unit verification certificate / Land verification certificate / Certificate of owned properties |
見比べると、前者にある Property Certificate と Land Ownership Deed が後者になく、後者にある Certificate of owned properties が前者にありません。同じものを別の呼び方で書いているのか、扱いが違うのかを、当サイトは確認できていません。確かめられていないので、2つの一覧をひとつにまとめて「6種類はこれです」とは書きません。ここで押さえるべき点は別にあります。非居住の利用者が使えるサービスとして、証明書の取得と委任状の登録が名指しで挙がっていることです。日本に住んだままでも、自分の口座から証明書を引ける前提になっています。
手数料が公表されているものと、されていないもの
金額は、サポート記事ではなくサービス案内の側に出ています。額が書かれているものだけを並べます。
| 書面 | DARIでの名前 | 公表されている手数料 | 有効期間 |
|---|---|---|---|
| 住戸の権利証 | Title Deed (Unit) | 追加の費用はかからないと記載 | 記載なし |
| 住戸の検証証明書 | Verification Certificate (Unit) | AED 90 + 電子行政サービス手数料 AED 10 | 発行日から15日 |
| 所有物件の証明書 | Certificate of Owned Properties | AED 50 + 電子行政サービス手数料 AED 10 | 記載なし |
| 配置図 | Site Plan | 記載なし | 記載なし |
電子行政サービス手数料(electronic administrative services fees)は、ADRECの説明では「アブダビの各プラットフォームで電子サービスを使うことへの象徴的な料金」とされています。象徴的とだけ書かれていて、額の一覧は示されていません。上の表のAED 10は、その2つのサービス案内に個別に書かれていた額です。
金額について、2つ断っておきます。ひとつめは、これらの案内が事業者向けのサービス一覧に置かれていることです。同じ額が個人の申請にも適用されるかは、ページに明記がありません。ふたつめは、権利証について「追加の費用はかからない」と書かれていることです。これは証明書を取り出す操作の話であって、所有権を移すときの登録手数料とは別のものです。登録手数料を含めた購入時の費用はアブダビ不動産の購入費用にまとめています。
いちばん短い期限は15日です
期限のある書面は4つあり、日数がすべて違います。
いちばん短いのは住戸の検証証明書で、サービス案内に「発行日から15日間有効」と書かれています。取引の履歴を確かめる目的でこれを取る場合、契約日から逆算して取得の日を決めないと、署名の場で期限切れになります。書類をまとめて先に取り寄せる進め方とは相性が悪い書面です。
21日だけは性質が違います。これはオフプラン住戸の売買を登録する期限で、契約日から21日を過ぎるとAED 10,000が加算されると案内されています。買主が守る期限ではなく、ディベロッパーが守る期限です。ただし買主の側からは、登録が動いているかを測る目安になります。契約から3週間たっても売買の証明書を取り出せないなら、状況を尋ねる理由が立ちます。
30日と180日は、売主が売却を起票するときに使える書面の上限です。評価証明書は1か月、権利証は6か月を超えていないことが条件として挙げられています。中古の住戸を買う場合、これは相手の準備の期限であって、あなたの期限ではありません。相手の権利証が古ければ、取り直しの時間だけ署名が遅れます。
4本の日数を足し引きして日程を組むことはできません。数え始める日が、発行日と契約日で分かれているためです。
支払いの後に残る紙は、完成住戸とオフプランで別です
同じ「買う」でも、支払いを終えた時点で手元に残る書面が違います。ここを取り違えると、権利証が出ないことを不備だと思い込みます。
オフプランの登録では、添付する書面が案内に列挙されています。売買契約書、代理人がいる場合の委任状、買主が法人の場合の押印された契約書の3つです。支払いが済むと売買の証明書(certificate of sale)が発行され、売主であるディベロッパーと買主の双方が取り出せると書かれています。この段階で出るのは売買の証明書であって、権利証ではありません。
権利証が出るのは、初期不動産登記簿に載っている住戸を正式な不動産登記簿へ移した後です。この移転の手続きでは、ディベロッパー側の担当者が起票し、所有者に未払いがないこと、移転に異議がないことを確認したうえで自治体へ提出すると案内されています。承認が下りると買主が費用を払い、権利証をダウンロードします。引き渡しの前後で何が起きるかはアブダビ不動産の引き渡しで別に扱っています。建設前に契約する仕組みそのものはアブダビのオフプラン物件とはにまとめました。
添付書類について、完成住戸とオフプランで案内の細かさが違う点にも触れておきます。オフプランは3つの書面が名指しされているのに対し、移転の手続きの案内は「所定の取引書類をアップロードする」としか書いていません。一覧が示されていないので、この記事でも列挙しません。契約前に、何を出すことになるのかを売主とディベロッパーへ具体的に確認してください。
委任状には「3年」という線が引かれています
日本に住んだまま買う場合、委任状は現実的な選択肢になります。ADRECの案内は、委任状をDARIへ登録する経路を3つに分けています。所有者本人として登録する経路、法定代理人として登録する経路、第三者として登録する経路です。
登録の画面では、委任状の出どころ(POA Source)としてアブダビの裁判所、ドバイの裁判所、UAEの他の裁判所、国外の裁判所のいずれかを選びます。アブダビの裁判所を選んだ場合だけ、情報を自動で取り込めると書かれています。それ以外は手入力になるため、原本の記載をそのまま読み取れる状態にしておく必要があります。
期限の記載がひとつあります。案内には、3年を超えた契約は期限切れとみなされ使用できないと書かれています。購入を検討し始めた時点で作った委任状を、数年後の決済でそのまま使える前提にはしないでください。年齢についての記載もあります。所有者が21歳未満の場合は、法定代理人が代わりに申請する必要があるとされています。
申請を出した後は、自治体交通局(DMT)が内容を審査して承認します。登録した時点で使えるようになるのではなく、承認を待つ段があります。ここも日程に入れておく項目です。
2017年という区切りが、受け取りの速さを変えます
証明書を取り出すときの案内には、権利証、検証証明書、配置図、所有物件の証明書のどれにも同じ一文が置かれています。所有者または物件の情報に2017年以降の変更があると、申請が自動的にDMTへ回って承認を待つという記載です。
これは、証明書がその場で出るかどうかを分ける条件です。変更がなければ操作の直後にダウンロードできますが、変更があれば承認が終わるまで受け取れません。承認にかかる日数は、いずれのページにも書かれていません。
実務での意味は単純です。引き渡しの当日に権利証の控えを持って移動する予定を組まないでください。取り出せる保証がある日ではありません。相手の書面についても同じことが言えます。売主から「すぐ出せます」と言われても、2017年以降に名義や物件の情報が変わっていれば、その場では出ません。
仲介との契約も、DARI上の書面になります
見落とされやすいのが仲介契約です。ADRECの案内によると、仲介はDARI上で仲介契約(Brokerage Contract)を起票します。売却のための契約と購入のための契約の2種類があり、起票者の情報、物件の情報、仲介の銀行口座、相手方(売却なら所有者、購入なら買主)の情報が入ります。
売却の契約では、起票した後に売主の承認へ回り、売主が署名してから仲介が承認して成立する流れが書かれています。購入の契約では、買主の承認へ回ります。つまり、仲介との関係も口頭ではなく、承認の記録が残る書面として処理されます。
手数料の率、契約の期間、途中でやめるときの扱いは、この案内ページには書かれていません。書かれていない以上、当サイトでは推測しません。契約の前に、率と期間と解除の条件を書面で確認してください。
この記事で確認できなかったこと
金額として確認できなかったものが2つあります。配置図(Site Plan)の手数料は、サポート記事にもサービス案内にも額が出てきません。電子行政サービス手数料の一覧も、象徴的な料金という説明があるだけで、サービスごとの額の表は見つけられませんでした。
期間として確認できなかったものが3つあります。権利証、所有物件の証明書、配置図に有効期間の記載はありません。検証証明書だけが15日と明示されています。記載がないことは「無期限である」という意味ではないので、そのようには書きません。
手続きの日数も確認できていません。DMTの承認に何日かかるのか、委任状の登録が何日で通るのかは、いずれのページにも書かれていません。日本で作成した委任状にどんな認証が必要かという実務上の要件も、この記事の出典の範囲では確かめられませんでした。
当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。この記事が扱っているのは公表されている書面の役割と記載だけで、取引の結果を示すものではありません。
まとめ
アブダビの売買に出てくる書面は、ADRECが発行する証明書、当事者と仲介が作る契約書、裁判所を通す委任状の3系統に分かれます。買主が自分の操作だけで取り出せるのは証明書の系統で、非居住の利用者向けの案内にも、証明書の取得と委任状の登録が名指しで挙がっています。
額が公表されているのは、住戸の権利証が追加費用なし、住戸の検証証明書がAED 90と電子行政サービス手数料AED 10、所有物件の証明書がAED 50と同AED 10です。配置図の額は公表されていません。期間で明示されているのは検証証明書の15日だけで、オフプラン売買の登録は契約日から21日、売却の起票に使える評価証明書は30日、権利証は180日という別の線が引かれています。
支払いを終えた時点で手元に残る紙は、完成住戸なら権利証、オフプランなら売買の証明書です。権利証は初期不動産登記簿から不動産登記簿へ移した後に出ます。委任状は3年を超えると使えず、証明書は2017年以降に情報の変更があるとDMTの承認を待ちます。いずれも、日程を縮める側ではなく延ばす側に働く条件です。