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アブダビ不動産の利回りデータ|公表値でどこまで割れるか

アブダビの利回りは、政府がパーセントの数値として公表していません。分子に置ける賃料3種と分母に置ける価格3種のうち、割ってよい組み合わせはどれか、実質利回りで何を引くのかを、ADRECとUAE政府の公表ページで確認できた範囲だけで整理します。

アブダビ不動産の利回りデータ|公表値でどこまで割れるか - Reheat

「アブダビの利回りは何パーセントですか」という質問には、公表された答えがありません。先に結論を書きます。アブダビの公的機関は、利回りそのものの数値を公表していません。公表されているのは、賃料の側にある四半期ごとの指標値と、売買の側にある登録された取引の集計です。利回りは、その2つを自分で割って作る数字であって、どこかから引いてくる数字ではありません。

だから、この記事が扱うのは「何パーセントか」ではなく、どの賃料をどの価格で割ったのかを言えるかどうかです。分子に置ける賃料は3種類、分母に置ける価格も3種類あり、そのうち組み合わせてよいのは1通りだけです。ここでは、その見分け方と、表面から実質へ進むときに引く費用の順番を、ADRECとUAE政府の公表ページで確認できた範囲だけで整理します。賃料そのものの見方はアブダビの家賃データに、価格そのものの見方はアブダビの不動産価格データに分けているので、この記事では割り算だけを見ます。

公表されているのは、利回りの一歩手前までです

アブダビで賃料と価格について公表されているものを並べると、いずれも利回りの手前で止まっていることが分かります。

アブダビ政府メディアオフィスの発表によれば、ADRECはこの首長国で初めての住宅向け賃料インデックスを立ち上げました。住宅・商業・工業の物件を対象に、アブダビ各地のエリアについて四半期ごとの指標となる賃料が利用できると書かれています。狙いとして挙げられているのは、市場の透明性を高めること、指標となる賃料値を示すこと、成長している首都の不動産市場の安定を支えることの3つです。ここに書かれているのは賃料であって、賃料を価格で割った値ではありません。

売買の側はどうか。ADRECのDARIには、ホーム画面にマーケットインサイトという集計の画面があり、案内ページには、アブダビの不動産取引の高い水準での分析を見られると書かれています。より細かい分析や高度な分析ツールが必要な場合はサポートへ連絡するように、とも案内されています。データの出どころは、別の案内ページに自治体交通局(DMT)が直接提供していると明記されています。対象の範囲についても案内があり、この画面はいまのところアブダビだけを対象にしていると書かれています。

半期ごとの発表になると、さらに大きな単位になります。2026年上半期に登録された不動産取引の総額はAED117 billionで、そのうち売買はAED86.1 billion、件数は16,838件と公表されました。これは規模の記録であって、投資の成績ではありません

公表されているもの 公表元 何が読めるか 利回りに使えるか
賃料インデックスの指標値 ADREC エリアごと、四半期ごとの指標賃料 分子の目安になります
DARIのマーケットインサイト ADREC(データはDMT提供) 登録された取引の高い水準での集計 分母の目安になります
半期・年次の取引総額と件数 ADREC/政府メディアオフィス 首長国全体の規模 使えません
利回り、投資収益率 公表を確認できませんでした - 該当なし

表のいちばん下が、この記事の出発点です。当サイトは、公表を確認できなかった項目を推計で埋めません。埋めた瞬間に、読者が同じ数字を再現できなくなるからです。

「利回り」という言葉は、3つの別の数字を指しています

相手が口にした利回りが何を指すのかを確かめないまま話を進めると、あとで数字が合わなくなります。分子と分母の中身で、少なくとも3つに分かれます。

利回りが分子と分母の中身で3つに分かれることを示した構造図。表面利回りは年間の賃料総額を物件の取得額で割ったもの、実質利回りは賃料総額から運営に出ていく費用を引いた額を取得額と取得費用の合計で割ったもの、自己資金利回りは賃料総額から運営費と借入の利息を引いた額を自分が出した資金で割ったもの
3つとも分子と分母の中身が違うため、パーセントの数字だけを並べても比べたことになりません。この図に金額を入れていないのは、アブダビの公表資料に利回りの数値が無いためです。 出典:分母に足す取得費用の範囲はADREC/DARI Support|Lease Registration Feesほかで確認しました(確認日 2026-09-10)

表面利回りは、年間の賃料総額を物件の取得額で割ったものです。いちばん高く出るため、売り文句としていちばんよく使われます。実質利回りは、賃料総額から運営に出ていく費用を引き、取得額に取得のときにかかった費用を足してから割ります。自己資金利回りは、そこからさらに借入の利息を引き、自分が出した資金だけで割ったものです。

この3つのうち、他人の数字と横に並べられるのは表面利回りだけです。実質利回りは何を引いたかで変わり、自己資金利回りは借入の条件で変わります。逆に、自分の判断に効くのは下の2つです。表面の数字が同じ2つの物件でも、共用部の管理費や空室の期間が違えば、手元に残る額は変わります。

分子に置ける賃料が3つ、分母に置ける価格も3つあります

アブダビでは、賃料も価格も1つの数字に決まっていません。どちらも層が分かれていて、層をまたいで割ると、誰の取引も表さない数字ができます。

分子に置ける賃料は3つです。広告に出ている募集賃料、ADRECが四半期ごとに示す指標賃料、そしてDARIに登録され借主が承諾した契約賃料です。分母に置ける価格も3つあります。広告の募集価格、有資格の評価人が出す評価額、そしてDARIに登録された取引価格です。評価額は、DARIの案内ページに住戸ごとの評価証明書を請求できる手続きとして載っています。

分子に置ける3つの賃料と分母に置ける3つの価格の組み合わせを示した比較マトリクス。登録された契約賃料と登録された取引価格の組み合わせだけがそろっており、指標賃料を含む組み合わせは目安まで、募集の値を含む組み合わせは層が混ざると示している
縦が賃料の層、横が価格の層です。9通りのうち、実際に登録された額どうしで割れるのは右下の1つだけで、指標賃料を使う3通りは目安として扱います。 出典:Abu Dhabi Government Media Office|ADREC launches first residential Abu Dhabi Rental IndexADREC/DARI Services|Issuing Valuation Certificate for a Unit(確認日 2026-09-10)

いちばん多い失敗は、募集賃料を募集価格で割ることです。広告どうしなので手に入れやすく、そろっているようにも見えます。しかし分子も分母もまだ誰も合意していない希望額なので、出てきたパーセントは売主と貸主の希望を割っただけの数字になります。

指標賃料を使う組み合わせは、目安としてなら使えます。ただし指標値は成約した賃料ではありません。同じ建物の同じ間取りでも、階数、眺望、家具の有無、支払いの回数、入居できる時期で条件は変わります。指標値は交渉の出発点であって、結論ではありません

分子側:指標賃料は四半期の値で、月の動きは追えません

賃料インデックスは四半期ごとの値です。週や月の単位で動きを追える資料ではないため、比べるときは2つの時点が違う四半期に属していることを意識してください。

利回りの分子を作るときに気をつけたいのは、期間のそろえ方です。指標値が四半期のものなのに、分母の取引価格を別の期間から取ってくると、賃料と価格が違う時期の市場を映すことになります。分子と分母は、同じ時期の値でそろえるか、そろえられないなら両方の時点を書き添えるかのどちらかにしてください。

もうひとつ、月額と年額の取り違えも起きます。募集の広告は月額で出ていることがあり、登録された契約は年額で入っています。月額を12倍した値と、契約に登録された年額は、支払い回数の割引や無料期間の扱いで一致しないことがあります。数字を控えるときは、必ず「月額か年額か」を一緒に残してください。

分母側:DARIの集計は、アブダビだけを対象にしています

分母に使う価格の集計は、DARIのマーケットインサイトで見られます。案内ページによれば、この画面が対象にしているのはアブダビだけです。ドバイの数字は入っていません。ドバイの相場観をそのままアブダビに当てはめないでください。制度も登記の機関も別です。ドバイ側の数値はアブダビ不動産の市場規模で扱っている総量とも性質が違います。

データの出どころがDMTだと明記されていることにも意味があります。当サイトは出典の層を分けて記録していて、政府機関そのものの公表と、政府データを加工して提供する民間のサービスを区別します。DARIの画面はDMTのデータを政府の側が示しているものなので、前者にあたります。仲介会社や物件ポータルが出している利回りの数字は、たとえ元がDARIの登録であっても、加工の過程が公表されていない限り後者です。引用するときは「DLDやADRECの公式データ」と「そのデータをもとにした民間の集計」を書き分けてください。

登録された1件がどう積み上がって集計になるのかはアブダビの不動産取引データに書きました。オフプランはディベロッパーだけが起票するなど、登録の起点が区分によって違います。

サービスチャージは、ADRECの承認を通ってから請求されます

実質利回りを出すとき、いちばん大きく効くのが共用部のサービスチャージです。アブダビ政府メディアオフィスの発表によれば、ADRECは共同所有不動産のサービスチャージとコミュニティチャージについて、2023年に6パーセントの引き下げがあったと報告しています。金額にするとAED39.7 millionで、2022年との比較として示されています。承認された予算の総額は、開発プロジェクト向けにAED685 millionと書かれています。同じ発表には、これらの費用が共用部分の管理と維持のためのものであること、そしてADRECの承認を得なければ所有者へ課せないことが書かれています。

ここで大事なのは、パーセントの数字そのものではありません。引き下げの実績は、あなたの物件の請求額を約束するものではないという点です。金額はプロジェクトごとに違い、承認された予算にもとづいて請求されます。買う前に確かめるべきなのは、平均がいくらかではなく、その物件で承認されている額がいくらかです。

アブダビ政府メディアオフィスの、ADRECが共同所有不動産のサービスチャージとコミュニティチャージについて2023年の引き下げを報告したことを伝える発表ページの表示
引用キャプチャ共用部分の管理と維持に充てられるこれらの費用が、ADRECの承認を得なければ所有者へ課せないことを説明し、2023年の引き下げ幅と承認された予算の額を示している、アブダビ政府メディアオフィスの発表ページです。物件ごとの請求額はここには書かれていません。 出典:Abu Dhabi Government Media Office|Abu Dhabi Real Estate Centre reports 6% reduction in service and community charges across the emirate in 2023(確認日 2026-09-10/表示のファーストビュー)

表面から実質へ、この順番で引きます

引く費用のうち、金額が公表されているのは一部だけです。公表されているものと、自分で調べて埋めるものを分けて並べます。

年間の賃料総額から実質利回りの分子までを引く順番に並べた工程図。空室と滞納、管理と仲介の費用、共用部のサービスチャージ、賃貸借契約の登録手数料と市政手数料を順に引き、残った年額を取得額と取得費用の合計で割ると示している
上の3段は公表値が無く、自分で調べて埋める欄です。金額が書かれているのは最下段の手数料だけで、住宅の登録手数料と市政手数料の額はADRECの料金案内に出ています。 出典:ADREC/DARI Support|Lease Registration FeesUAE Government|Leasing a property in the UAE(確認日 2026-09-10)

金額が確認できるのは、賃貸借契約まわりの手数料です。ADRECの料金案内によれば、住宅の契約では、期間が4年未満なら登録の手数料は1件あたり50 DHS、4年以上なら年間賃料の1パーセントです。市政手数料は年間賃料に対して5パーセントで、ローカル以外に適用され、450 DHSを下回らないとされています。UAE政府のポータルには、この5パーセントが賃料額か賃料インデックスのいずれか高いほうを基準に計算されると書かれており、水道と電気の請求に12か月へ分けて加算されるとも説明されています。

誰がこの費用を負担するかは、契約ごとに決まります。DARIの登録の画面には、市政手数料の負担者を入力する欄があります。口約束ではなく登録に残る項目なので、利回りを計算する前に、自分がその欄でどちら側になっているかを確かめてください。貸主負担なら、その分は分子から引く費用になります。

引く費用 公表されている金額 どこで確かめるか
空室と滞納 確認できませんでした 物件ごとの実績。売主や管理会社に尋ねる
管理と仲介 確認できませんでした 契約書の条件
サービスチャージ 物件ごとの承認額 ADRECの承認を通った予算
賃貸借契約の登録手数料 4年未満は1件あたり50 DHS、4年以上は年間賃料の1パーセント ADRECの料金案内
市政手数料 年間賃料の5パーセント、下限450 DHS ADRECの料金案内とUAE政府ポータル

分母の側も忘れないでください。取得のときにかかる費用を足さずに価格だけで割ると、実質利回りは高めに出ます。購入時にかかる費用のうち、金額が公表されているものと確認できなかったものはアブダビ不動産の購入費用に分けて並べました。

割り算の前に、そろっているかを確かめる4項目

層をそろえること以外にも、確かめる点があります。どれも、そろえないまま割ると数字が動くものです。

ひとつめは権利の種類です。所有権なのか、ムサタハなのか、長期リースなのかで、貸せる期間も条件も変わります。区分の中身はアブダビ不動産の所有権の種類にまとめました。年数に限りのある権利を、所有権と同じ利回りで比べることはできません。

ふたつめは家具と共益費の扱いです。家具付きの賃料と、家具なしの賃料は別の数字です。共益費や光熱費が賃料に含まれているかどうかでも、手元に残る額が変わります。

みっつめは支払いの回数です。同じ年額でも、1回払いと4回払いでは要る資金が違い、分割の回数によって提示される賃料そのものが変わることもあります。DARIの登録では、支払いの方法と分割の回数が入力項目になっています。

よっつめは比べている期間です。賃料インデックスは四半期の値、取引の集計は登録された時点の値です。半期や年次の発表を分母に使うと、期間の長さがそろいません。

当サイトが、アブダビのエリア別利回り表を出していない理由

「アブダビのこのエリアの利回りは何パーセント」という表を、当サイトはこのページに置いていません。理由は2つあります。

ひとつは、当サイトがアブダビの1件ごとの賃貸契約と売買の記録を受け取れていないことです。ドバイでは、当サイトはDLDの照会から契約の記録を受け取って集計し直しているので、期間の切り方や平均か中央値かを自分で決められます。アブダビでは、その形が取れません。公表されているのは集計された画面と、期ごとの発表です。

もうひとつは、ADRECのサイトが自動での取得を拒否していることです。この記事の確認日にADRECのサービスチャージの案内ページを機械から開いたところ、拒否の応答が返りました。当サイトは相手が拒否している経路を迂回しません。したがって、ADRECのサイト上にあるインデックスの画面や地図から数値を取り出して表にすることはしていません。人がブラウザで開く経路は残っているので、原典を細かく見たい方はADRECのサイトで直接確かめてください。

数字を出さない代わりに置いているのが、この記事の組み立て方です。当サイトが数字を出すなら、その数字にたどり着いた手順を読者が同じようになぞれることが条件です。なぞれない数字は、出典を付けても検算できません。アブダビ関連で当サイトが持っているデータはアブダビのデータから一覧できます。

自分で出した利回りは、検算できる形で残す

計算した数字は、半年もすれば根拠を思い出せなくなります。残すときは、パーセントの値だけでなく、次の項目をそろえてください。

残す項目 書く内容
分子 使った賃料の額と、それが募集・指標・登録のどれか
分子の期間 月額か年額か。指標値なら、どの四半期の値か
分母 使った価格の額と、それが募集・評価・登録のどれか
引いた費用 何を引いて何を引かなかったか。引かなかった理由も
出典と確認日 公表ページのURLと、自分が見た日
再確認の周期 指標値は四半期ごと、手数料は制度の変更に合わせて

この6つがそろっていれば、あとから同じ計算をやり直せます。逆に、どれか1つでも欠けた利回りは、他人に説明できない数字になります。仲介から提示された利回りについても、同じ6項目を尋ねてください。答えられない場合、その数字は判断の材料に使えません。

値上がりも賃料収入も利回りも保証しません

当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれについても保証しません。この記事に書いたのは、公表されている資料の読み方と、割り算をするときにそろえる条件です。

過去に登録された賃料は、次の借主が同じ額を払うことの約束ではありません。指標値が上がっているエリアで、あなたの住戸が同じように貸せるとも限りません。実際の賃料は、供給の増減、建物の管理状態、空室の期間、契約の条件によって変わります。数字は判断の材料であって、判断の代わりにはなりません

まとめ

アブダビの利回りは、公表された数値として存在しません。公表されているのは、ADRECの四半期ごとの指標賃料と、DMTのデータで作られたDARIの集計、そして期ごとの取引総額です。利回りは、その手前の値を自分で割って作ります。

割るときは、分子と分母の層をそろえます。募集の値と登録の値を混ぜない、指標値を使うなら目安として扱う、期間と月額・年額をそろえる。この3つを守るだけで、根拠のない数字を掴まされる場面は減ります。

実質で見るときは、空室、管理、サービスチャージ、そして登録と市政の手数料を順に引きます。金額が公表されているのは手数料だけで、住宅の登録手数料は4年未満で1件あたり50 DHS、市政手数料は年間賃料の5パーセントで下限450 DHSです。残りは自分で調べて埋める欄になります。賃料そのものの仕組みはアブダビの家賃データへ、価格の側はアブダビの不動産価格データへ進んでください。