エリア比較/解説

ドバイとアブダビのエリア比較|そろう項目とそろわない指標

ドバイとアブダビのエリアを同じ表で比べる前に、区域の指定の単位、権利を登録する相手、公表される数値の粒度と期間がどこまでそろうのかを、法令原文とDLD・ADGM・ADRECの公表ページで確認できた範囲で整理します。

ドバイのエリアとアブダビのエリアを、1つの表に並べて比べたい。この記事はその場面のためのものです。結論を先に置きます。同じ指標で横に並べられるのは制度に関する項目で、価格や利回りをエリアごとに突き合わせる表は作れません。理由は資料が足りないからではありません。エリアという単位の決め方が首長国ごとに違い、数値を公表している主体も別だからです。ドバイは規則で区域の名前と土地の区画番号を挙げて指定し、アブダビは投資区域という区域の単位で列挙します。公表される数値も、ドバイは取引を1件ずつ照会できる画面があり、アブダビは半期の報告書に載る地区の集計値が中心です。以下では、そろう項目とそろわない項目を分け、首長国をまたぐ比較表をどこまで作れるのかを、法令の原文と政府機関の公表ページで確認できた範囲だけで整理します。アブダビの中だけで比べる手順はアブダビのエリア比較、アブダビのデータの探し方はアブダビのエリア別データにあります。この記事はその2つをまたぐ話だけを扱い、首長国そのものの比較はドバイとアブダビに分けています。

エリアの指定は、ドバイが区画番号、アブダビが区域名

ドバイで非UAE国民が不動産の権利を取得できる場所は、2006年の規則で定められています。ドバイ政府の法令ポータルに載っている原文を読むと、第3条は、非UAE国民が期間の制限のないfreeholdの所有権、usufruct(用益権)、または99年までのleaseholdを取得できるとしたうえで、その対象を「次の各区域の向かいに示された土地の区画」と書いています。区画は、局が発行して規則に添付した地図で示されるとされています。名前が挙がっている区域には、Dubai Marina、Palm Jumairah、Emirates Hills 1から3、Jebel Ali、Umm Hurair 2、The World Islands、Warsan 1などがあります。第4条はさらに細かく、Nad al-Sheba の区画224 については、usufructとleaseholdだけを挙げています。

ここが比較の出発点になります。ドバイでは区域の名前が同じでも、区画によって取得できる権利が違うことがあります。エリア名だけを列に並べた表は、この差を消してしまいます。ドバイ側の行を作るときは、区域の名前ではなく、対象になっている区画まで確かめてください。権利の区分そのものはドバイのフリーホールドとはで詳しく扱っています。

アブダビは指定の単位が区域です。UAE政府のポータルは、外国人が不動産を所有できる区域として9つを挙げています(当サイトの確認日は 2026-09-03)。取得できる権利は、住戸についての所有が99年、建築や改変を行うmusatahaが50年、usufructが99年、そして最初の期間が25年以上の長期リースという区分で示されています。区画の番号まで絞った指定は、確認日の時点では見つけられませんでした。

もう一つ、アブダビには首長国の中で枠組みが分かれる事情があります。ADGMの登録局は、その管轄区域にあるあらゆる種類の不動産上の権利について登録を扱うと説明し、対象としてAl Maryah島とAl Reem島を挙げています。手続きはAccessRPという電子プラットフォームで行い、規則は英国のコモン・ローを取り込んだものだとされています。つまりアブダビ側の行は、同じ首長国の中で相手が2つに分かれます。

外国人が取得できる場所の指定の単位を左右で比べた図。ドバイは規則が区域の名前と土地の区画番号を挙げ、freeholdは期間の制限なし、usufructとleaseholdは99年まで、Nad al-Shebaの区画224はusufructとleaseholdだけ。アブダビは投資区域9つを名前で列挙し、住戸の所有99年、musataha 50年、usufruct 99年、長期リースは25年以上、Al Reem島とAl Maryah島はADGM登録局が扱う
左は区画の番号まで、右は区域の名前までが指定の単位です。区域名をそろえても、同じ条件を並べたことにはなりません。 出典:Dubai Legislation Portal|Regulation No. (3) of 2006 第3条・第4条(確認日 2026-09-28)/UAE Government|Expatriates buying a property in the UAE(確認日 2026-09-03)
Dubai Legislation Portalに掲載されたRegulation No. (3) of 2006の公式法令画面
引用キャプチャ非UAE国民が権利を取得できる場所を、区域の名前と土地の区画番号で指定しているドバイ政府の法令原文です。期間の制限のないfreeholdと、99年までのusufruct・leaseholdという区別、そして区画が局の地図で示されることがここに書かれています。区画を示す地図そのものは、このページからは読めません。 出典:Dubai Legislation Portal|Regulation No. (3) of 2006 Determining Areas for Ownership by Non-UAE Nationals of Real Property in the Emirate of Dubai(確認日 2026-09-28/表示のファーストビュー)

項目ごとに、照会する相手と粒度が変わる

制度が分かれていると、比較表の1行ごとに調べる先が変わります。下の表は、比べたい項目と、それぞれで公表されているものの対応です。同じ行の左右が同じ細かさになっているかを、値を入れる前に確かめてください。

比べたい項目 ドバイ アブダビ
取得できる場所の定め方 規則が区域の名前と土地の区画番号を指定 政府ポータルが投資区域を9つ列挙
取得できる権利 freehold(期間の制限なし)、usufruct、leasehold(99年まで) 所有(99年)、musataha(50年)、usufruct(99年)、長期リース(最初の期間が25年以上)
権利を登録する相手 Dubai Land Department(DLD) ADREC。Al Reem島とAl Maryah島はADGMの登録局
賃料の指標 Smart Rental Index(建物の格付けを用いる) Abu Dhabi Rental Index(四半期ごとの指標値)
取引データの公表 オープンデータの照会画面(区分ごとにCSV) 半期レポートの地区ごとの集計値

賃料の指標は、両方にあるのに軸が違います。DLDは、建物の格付けを使って賃料の指標を出す仕組みを公表しています。発表によれば、建物は技術面と構造、仕上げと維持管理の質、立地と空間的な価値、そして維持管理や清掃、駐車場の管理といった提供されるサービスの水準で評価されます。対象は、主要エリア、特別開発区域、フリーゾーンを含むドバイのすべての住宅エリアだと書かれています。つまり細かさの軸は建物です。

アブダビ側は、ADRECが住宅向けの賃料インデックスを立ち上げたことがアブダビ政府メディアオフィスから公表されています。扱うのは住宅・商業・工業の物件で、アブダビ各地のエリアにある物件について、四半期単位の指標となる賃料が見られると説明されています。こちらの軸はエリアで、更新は四半期です。建物ごとの格付けを軸にした値と、エリアごとの四半期の指標値は、同じ列に入れて大小を比べられるものではありません。

比べたい項目ごとに、ドバイとアブダビで公表されているものと、その粒度を並べた比較マトリクス。取得できる場所はドバイが区画、アブダビが区域。権利の登録先はドバイがDLDの1つ、アブダビはADRECとADGM登録局の2つ。賃料の指標はドバイがSmart Rental Indexで建物単位、アブダビがAbu Dhabi Rental Indexでエリア単位・四半期。取引データはドバイが照会画面で取引1件単位、アブダビが半期レポートの地区単位
青い札が、その項目でそろえられる細かさです。上の3行は札がそろい、賃料の指標と取引データの2行は札が違います。 出典:Dubai Land Department|Smart Rental Index 2025/ADGM Registration Authority|Real Estate Services/Abu Dhabi Government Media Office|Abu Dhabi Rental Index(確認日 2026-09-28)

数値の細かさが、エリア単位と地区単位で違う

価格の話に入る前に、どこまで細かく数字が手に入るのかを見ます。ドバイ側は、DLDがオープンデータの照会画面を用意しています。当サイトが画面を調べた 2026-08-24 の時点では、照会は売買・賃貸・プロジェクト・評価・土地・住戸・建物・仲介業者・ディベロッパーの区分に分かれ、条件を指定してCSVで取り出せるようになっていました。ただし照会にはいずれもボット検知が付いているため、当サイトは人が1回ずつ確認を通して取得しています。自動でまとめて取ることはしません。

こうして取り込んだ売買の記録から、当サイトはエリアごとの集計を作っています。対象は 2026-01-01 から 2026-08-25 までに登録された売買で、件数は約11万件、売買が記録されたエリアの区分は二百を超えます。エリアごとに、価格の中央値、平米あたりの単価、間取りの構成、月ごとの推移までたどれます。中身はドバイのエリア別データとドバイの市場データにあります。

アブダビ側は同じ形になりません。ADRECの半期の市場レポートには地区ごとの住宅売買額が載っていますが、挙げられているのは売買額の大きい上位の地区です。地区の集計値から1件あたりの価格へ割り戻すことはできません。地区ごとの平米あたりの単価は、当サイトが確認できた範囲では公表されていませんでした。エリアの細かさで公表されているのは、前の節で触れた賃料の指標値のほうです。

エリア別に並べられる細かさの実数を左右で比べた数値カード。ドバイはDLDの売買記録110,525件、エリアの区分240、平米単価の中央値18,510AED、オフプランの割合68.6パーセント。アブダビはADRECの半期レポートが挙げた上位8地区、最大の地区の住宅売買額19.0AED十億、住宅売買額の合計70.4AED十億、地区ごとの平米単価は公表を確認できていない
左の4つは取引の記録から計算した値、右の3つはレポートに載っている集計値です。左は単価まで下がれますが、右は地区の合計で止まります。 出典:Dubai Land Department|Open Data の売買を当サイトが集計(集計日 2026-08-28)/ADREC|Abu Dhabi Real Estate Market Report H1 2026 18ページ・21ページ(確認日 2026-08-28)

この差は、比較表の作り方に直接効きます。ドバイ側の行はエリア単位で埋まり、アブダビ側の行は地区単位でしか埋まりません。片方だけを細かくして並べると、細かいほうが正確に見えます。実際には、粒度が違うものを同じ列に置いているだけです。表を作るなら、粗いほうの粒度に合わせるか、粒度そのものを列として持たせてください。

期間をそろえないと、市場の差ではなく期間の差を見る

もう一つそろえるものが期間です。ADRECの市場レポートは、集計の対象がその期間にADRECへ登録された取引であり、契約がいつ結ばれたかにはよらないと定義しています。当サイトのDLD集計も、登録された日で数えています。数え方の考え方は近いのですが、対象の期間そのものがずれています。ADRECのレポートは上半期までで、当サイトの集計は8月下旬までです。

このずれを無視すると、7月と8月ぶんが片方にだけ入った状態で比べることになります。件数や金額の合計は期間の長さで動くため、差が市場の違いなのか期間の違いなのかが分からなくなります。そろえる方法は2つです。期間を短いほうへ切るか、更新のたびに両方を取り直すかです。どちらにしても、表の近くに対象期間を書いてください。書いていない表は、あとから自分でも検算できません。

集計対象の期間のずれを示したタイムライン。ADRECの半期レポートは2026年1月1日から6月30日までの登録分、当サイトのDLD売買集計は2026年1月1日から8月25日までの登録分で、7月と8月の約2か月はドバイ側にだけ含まれる
薄い色を付けた区間が、ドバイ側にだけ含まれている期間です。合計や件数を比べるときは、この区間を落としてから並べます。 出典:ADREC|Abu Dhabi Real Estate Market Report H1 2026 の集計の定義(確認日 2026-08-28)/当サイトのDLD売買集計(集計日 2026-08-28)

賃料の側も周期が違います。アブダビの賃料インデックスは四半期ごとに更新されると公表されています。ドバイのSmart Rental Indexについては、更新の周期を発表ページから確認できませんでした。周期の分からない指標と四半期の指標を並べるときは、それぞれの確認日を残してください。

そろう項目と、そろわない項目を分ける

ここまでを整理すると、首長国をまたいで同じ基準で並べられるのは制度に関する項目です。数値のほうは、粒度と定義がそろわないため列になりません。

並べたい列 同じ基準で並べられるか 判断の理由
外国人が取得できる場所か ○ 両方とも公表されている。ドバイは区画まで確かめる
取得できる権利の種類と期間 ○ 公表された区分と年数がある
権利を登録する相手 ○ 公表されている。アブダビは2つに分かれる
賃料の指標があるか △ 両方にあるが、細かさの軸が建物とエリアで違う
エリア別の価格の中央値 × アブダビ側は地区の集計値しか確認できていない
エリア別の平米単価 × アブダビ側の公表を確認できていない
エリア別の利回り × 分子と分母の定義をそろえられない

○の3行は、公表ページと書面で埋まります。ここだけで作った表でも、投資の判断には十分に役立ちます。買えるかどうか、どんな権利になるのか、誰に手続きするのかは、価格より先に決まる条件です。△と×の行は、空欄にして「確認できていない」と書いてください。埋めるために他社のデータサイトの数値を持ち込むと、出典の層が混ざります。

同じ表に混ぜてはいけない3つの組み合わせ

最後に、実際に表を作るときに混ざりやすい組み合わせを挙げます。どれも桁や単位は正しいまま、結論だけが狂う形の誤りです。

1つめは、地区の集計値と1件あたりの価格です。集計値はその期間にその地区でどれだけの金額が動いたかを示すもので、戸数で割れば1戸の価格になる、という性質のものではありません。2つめは、指標となる賃料と実際に決まった賃料です。指標値は交渉や判断の出発点であって、成約の記録ではありません。3つめは、権利の種類が違う物件です。freeholdの物件と、musatahaやusufructの物件を、同じ「所有」の列に並べると、期間と更新の条件が違うものを同じ商品として比べることになります。

混ぜたかどうかを自分で確かめる方法があります。表の各列に、出典・対象期間・粒度・統計量の4つを書き添えてみてください。同じ列の中で4つのどれかが行ごとに違っていたら、その列は比較になっていません。

この記事で確認できなかったこと

ドバイの区域の指定について、法令ポータルのページには改正の記載がありませんでした。そのため、現在有効な指定の全体像がこの規則の本文だけで完結しているのかは確認できていません。区画を示す地図も、規則に添付されたものとしてページ上からは読めませんでした。対象の区画に入っているかどうかは、契約の相手方から受け取る書面と、局の記録で確かめてください。

Smart Rental Indexの更新の周期と、エリア単位の数値が公表されるのかどうかも、発表ページからは確認できませんでした。アブダビの地区ごとの平米あたりの単価についても、公表を見つけられていません。見つけられなかったことは「存在しない」という意味ではありません。確認できた範囲だけを書いています。

両首長国で定義のそろったエリア別の利回りも、この記事では出していません。売買の側と賃貸の側で、対象になる物件の範囲と期間をそろえられないためです。数値をそろえられる範囲が広がったら、この記事を更新します。

値上がりも賃料収入も保証しません

当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。売買額の大きい地区やエリアが、これから買う人にとって有利だという意味にもなりません。集計は登録された過去の記録であって、これからの結果を示すものではないからです。

供給の増減、物件そのものの状態、管理費、空室、賃貸の条件、為替、売却時に買い手が付くかどうかは、どちらの首長国を選んでも結果を左右します。比較でそろえられるのは条件のほうで、結果ではありません。確かめられた事実と、確かめられていない見込みを、同じ表に混ぜないでください。

まとめ

ドバイとアブダビのエリアを比べるときは、まず単位をそろえます。ドバイは区域の中の区画番号まで、アブダビは区域の名前までが指定の単位です。次に相手を確かめます。ドバイはDLD、アブダビはADRECで、Al Reem島とAl Maryah島はADGMの登録局です。

そのうえで数値に進みますが、同じ細かさで並べられるのはここまでです。ドバイはエリア単位の集計まで下がれ、アブダビは地区の集計値で止まります。賃料の指標は両方にありますが、軸が建物とエリアで違います。そろわない列は空欄にして、そろう列で判断してください。制度と手続きの条件がそろえば、比較表は十分に使えます。