ドバイの住宅ローンを予定より早く返そうとすると、まず気になるのは手数料です。先に結論を書くと、確かめる先は2か所に分かれます。銀行へ払う繰上返済・早期完済の手数料と、ドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)へ払う抵当権の抹消費用です。前者は銀行ごとに違い、後者はDLDが項目ごとに公表している定額です。
この記事では、HSBC UAEが公表している料金表と、DLDの抹消申請の案内を材料に、その2か所を分けて読みます。HSBCの条件は1行ぶんの公表条件であって、UAEの制度ではありません。他の銀行では額も期間も違う可能性があります。それでも1行ぶんを正確に読むと、自分の契約書のどこを確かめればよいかが決まります。
金額はAEDのまま載せ、円へは換算していません。確認日は2026年10月22日です。当社は返済額、金利、物件価格、為替のいずれについても保証しません。
費用は銀行とDLDの2か所に分かれています
繰上返済の見積りを読むときに多い取り違えは、銀行の手数料だけを数えて終わることです。ローンを返し終えても、登記されている抵当権はそのままでは消えません。DLDへ抹消を申請して、はじめて記録が外れます。
銀行側の費用は、残高に対する料率と上限で決まります。DLD側の費用は、申請の件数と書類の種類で決まる定額です。決まり方が違うので、どちらか一方の見積りだけでは総額になりません。銀行から受け取る完済見積りにDLDの費用が含まれているかどうかは、書面で確かめてください。
もう1つ、両方に共通する注意がVATです。HSBCの料金表はVATを含む額と含まない額を並べて書いています。DLDの案内では、サービスパートナーの料金にだけ「+VAT」と書かれています。見積りを比べるときは、どちらの表記で並んでいるかをそろえてください。
年25%までは手数料のかからない枠があります
HSBCの料金表のなかで、実務にいちばん効くのがここです。変動(3か月EIBOR)型の住宅ローンについて、その年のうちに残高の25%までを繰上返済する分には手数料がかからないと書かれています。25%を超えた部分にだけ手数料が付く書き方です。
この枠には下限も併記されています。料金表には「最低25,000 AED」とあります。何に対する下限なのかは、額の表記だけが書かれていて説明はありません。少額を何度も入れる使い方を想定していない可能性はありますが、推測で埋めず、銀行に確かめる項目として残します。
もう1つ書かれているのが期間です。引き出し(draw-down)から7年が過ぎると、繰上返済の手数料はかからないとあります。同じ「一部を早めに返す」行為でも、その年の割合と、借りてからの年数という2つの条件で扱いが変わります。
繰上返済をすると何が減るのか、という点にも触れておきます。HSBCの案内は、同行の場合は借入期間は変わらず、繰上返済のあとに毎月の返済額が下がると書いています。期間が短くなる方式を当然の前提にしないでください。どちらになるかは商品によって違い、契約書の記載が優先します。
| 返し方 | 公表されている手数料 | 併記されている条件 |
|---|---|---|
| 年25%までの一部繰上 | かからない | 1回あたり最低25,000 AED |
| 年25%を超える一部繰上 | 超えた額の1%(VAT込み1.05%)または10,000 AED(VAT込み10,500 AED)の低い方 | 変動(3か月EIBOR)型について記載 |
| 自己資金・売却代金で全額を返す | 残高の1%(VAT込み1.05%)または10,000 AED(VAT込み10,500 AED)の低い方 | 引き出しから3年以内 |
| 他の銀行へ移して返す | 同じ料率と同じ上限 | 引き出しから7年以内 |
| 引き出しから7年が過ぎたあと | かからない | 繰上返済の手数料について記載 |
この表はHSBCが公表している1行ぶんの条件で、銀行の料金を比べたものではありません。固定(期間つき)型の早期完済手数料については、額が同じ料金表に書かれていませんでした。書かれていないものを他行の値で埋めることはしません。
1%と上限、効く側は残高で入れ替わります
料金表の書き方は「1%、または10,000 AED、のうち低い方」です。この形は、残高が小さいうちは料率が効き、大きくなると上限が効くという意味になります。境目は、1%がちょうど10,000 AEDになる残高です。
計算のしかたを示すために、仮の残高で見ます。残高50万AEDなら1%は5,000 AEDで、上限に届かないので5,000 AEDの側が請求されます。残高100万AEDなら1%は10,000 AEDで、上限とちょうど同じ額になります。これを超える残高では1%が上限を上回るため、残高がいくら大きくても10,000 AEDで止まります。50万・100万という数字は計算の説明のための仮定で、相場でも承認額でもありません。
この形が効いてくるのは残高が大きい局面です。上限の境目を超えていれば、繰上返済の額を増やしても手数料は増えません。逆に残高が小さい局面では、返す額に比例して手数料も増えます。自分がどちらの側にいるかで、一度にいくら返すかの判断が変わります。
自己資金で返すときと、他行へ移すときは期間が違います
同じ「全額を返す」でも、料金表は資金の出どころで条件を分けています。自己資金や物件の売却代金で返す場合は引き出しから3年以内が手数料の対象、他の銀行へ移す場合は引き出しから7年以内が対象と書かれています。期間の長さが違う点は、借換えを考えるときに効きます。
金利が下がったから他行へ移す、という判断をしても、7年以内なら完済側の手数料が付きます。さらに移った先でも費用が発生します。HSBCの料金表では、残高移管の手数料が2,500 AED(VAT込み2,625 AED)、物件の評価が2,625 AED、負債証明書が1通50 AED(VAT込み52.5 AED)と書かれています。
借換えで下がる利息と、こうした一時費用を同じ表に並べて比べてください。変動型の基準になる金利は銀行が単独で決めるものではないため、UAE中央銀行の基準金利の引き上げのように政策の側で動くこともあります。借換えの判断は、手数料と金利差の両方を見ないと決まりません。
完済しても、抵当権は自動では消えません
銀行への返済が終わったら、DLDへ抵当権の抹消を申請します。DLDの案内では、この手続きの費用が項目ごとに並んでいます。通常の抵当権の抹消そのものが1,000 AED、権利証(Title Deed)の発行が250 AED、図面1枚ごとに知識料10 AEDと革新料10 AED、サービスパートナー料が300 AEDに+VATです。所要時間は10分から15分と書かれています。
経路は2つあります。銀行のオンライン抵当権システム経由と、不動産登録トラスティの窓口経由です。必要書類が違います。オンライン経由は通常の抵当権の抹消だけが対象で、必要なのは所有者のEmirates IDの提示だけです(写しの提出は求められていません)。窓口経由では、銀行が出す抹消の依頼レターが追加で必要になります。
抹消の結果として権利証が出てくるため、費用のなかに権利証の発行料が入っています。権利証の読み方と合わせて、抵当の記録が実際に外れているかを確認してください。返済が終わったという銀行側の記録と、登記から抵当が外れたというDLD側の記録は、別のものです。
| DLDの費用項目 | 公表されている額 | 注記 |
|---|---|---|
| 抵当権の抹消 | 1,000 AED | 通常の抵当権について |
| 権利証の発行 | 250 AED | 抹消後に出る証書 |
| 知識料 | 10 AED | 図面1枚ごと |
| 革新料 | 10 AED | 図面1枚ごと |
| サービスパートナー料 | 300 AED | +VATと書かれています |
売却で返すときは、返済と登録が同じ場に乗ります
残債があるまま売る場合は、抹消だけを単独で申請する形になりません。DLDの「抵当権つき物件の売買登録」の案内では、銀行またはディベロッパーの負債証明書に加えて、マネージャーズチェックを3通用意するよう書かれています。債務額を銀行へ、残りがあれば売主へ、売買価額の4%ぶんをDLDへ、という内訳です。手続きは、銀行の抹消レターを提出したあとに売買を完了させる順序になると書かれています。
この経路では、繰上返済の手数料が売却の資金計画の一部になります。売却代金で返す場合も、料金表では引き出しから3年以内が手数料の対象です。売る時期と借りた時期の間隔を先に確かめてください。
上限の根拠になる条文は、当サイトでは読めていません
「1%または10,000 AEDのうち低い方」という形が、銀行の判断なのか規制で決まっているのか。読者にとっては大きな違いです。当サイトはこれを一次情報で確認できていません。
UAE中央銀行の規則集(rulebook.centralbank.ae)は、当サイトの取得経路に対してHTTP 403を返します。2026年10月22日に、規則本体のページと付属資料のPDFの両方で確かめました。拒否されている経路は迂回しませんので、条文の文言は未確認のままにします。HSBCの料金表の側にも、この上限を中央銀行の規則に帰する記述は見つかりませんでした。
したがって、この記事が書けるのはHSBCが公表している条件までです。他の銀行が同じ額を公表しているかどうか、上限が規制上の天井なのかどうかには答えていません。まとめサイトや他社のデータサイトを出典にして、その穴を埋めることはしません。確認できたら、この記事を更新します。
繰上返済を決める前に確かめること
銀行へ問い合わせる前に、手元の書類から次を拾っておくと話が早く進みます。どれも契約書か取引明細に書かれている事実で、推測の要らない項目です。
- 引き出し(draw-down)の日付。3年と7年の起算点がここです
- 自分の商品が固定型か変動型か。公表されている手数料の記載が分かれています
- その年にすでに繰上返済した額。25%の枠を使い切っていないか
- 完済見積りに、DLDの抹消費用が含まれているか
- 繰上返済の結果、借入期間が短くなるのか毎月の返済額が下がるのか
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