UAEの不動産購入で仲介会社、開発会社、銀行、登録手続きの関係者から本人確認や資金源の資料を求められることがあります。これは単なる社内都合ではなく、マネー・ローンダリング、テロ資金供与、拡散金融への対策という規制の中で行われます。ただし、すべての相手へ同じ個人資料を無条件に送ることも適切ではありません。
この記事は2026年9月1日にFederal Decree-Law No.10 of 2025とUAE経済省のDNFBP向け案内を確認し、買主側の準備を整理しました。特定取引が疑わしいか、提出が十分かという個別判定は行いません。
AML確認の対象と不動産事業者の立場を理解する
UAE経済省は、Designated Non-Financial Businesses and Professions(DNFBPs)の監督対象にReal Estate Brokers & Agentsを含めています。不動産の売買に関与する事業者には、顧客確認、取引の把握、記録、必要な報告などの義務が関係します。
買主に資料提出を求める相手が誰かを確認します。仲介会社、開発者、銀行、Real Estate Registration Trusteeでは役割が異なり、同じ資料をそれぞれが別の根拠で求める場合があります。「DLDのため」という説明だけで送付先と利用目的を曖昧にしないでください。
登録や免許の確認とAML確認も別です。相手が免許を持つかを確認したうえで、資料の受領部署、保存方法、問い合わせ先を確認します。登録済み事業者であることは、投資成果や情報管理上の事故がないことを保証しません。
自然人の本人確認資料を一貫させる
個人買主では、氏名、生年月日、国籍、住所、本人確認書類、連絡先などの確認が想定されます。実際に必要な項目は事業者の手続きとリスク評価に従うため、本記事の一覧を固定の必要書類として使わないでください。
パスポート、住所資料、銀行口座で氏名や住所表記が異なる場合は、理由と対応資料を用意します。転居や改姓がある場合も、古い資料の数字を加工せず、どの時点の情報かを示します。画像編集で文字を上書きすることは避けます。
代理人を使う場合は、本人と代理人の確認、委任の範囲、委任状の真正・認証を分けます。代理人が送金するのか、本人の口座から送金するのかも明らかにします。代理関係の説明だけで実際の資金提供者を隠さないことが重要です。
法人買主は所有・支配の連鎖を示す
法人名義では、設立・存続を示す資料、役員、署名権限、株主、Ultimate Beneficial Owner(実質的支配者)などの確認が関係します。会社名とライセンスだけを提出すれば個人の確認が不要になるわけではありません。
持株会社や複数国の法人を経由する場合は、所有割合と支配関係を図にします。各法人の正式名、登録国、登録番号、株主を原資料と対応させます。省略した中間会社や名義株主があると、確認が進まない可能性があります。
署名者が取締役か代理人か、今回の購入を決定する権限があるかも別の資料で確認されます。ドバイ不動産購入の入口も参照し、会社設立と物件取得の適格性を同じ判断にしないでください。
Source of FundsとSource of Wealthを区別する
Source of Fundsは今回の取引に使う資金がどこから来たか、Source of Wealthはその人・法人の財産がどのように形成されたかを説明する概念です。給与貯蓄、事業収益、資産売却、相続、融資など、事実に合う資料で説明します。
今回の支払が預金から出るなら、口座残高だけでなく、必要に応じて資金が形成・移動した経過を示します。資産売却なら売買契約と入金、相続なら公的な相続資料、融資なら金融機関の契約を対応させます。説明のために架空の収入区分を作らないでください。
第三者からの贈与・貸付や複数口座を経由する送金は、当事者、関係、契約、資金の流れを明らかにします。提出を避けるために送金を細分化するような助言は行いません。不明点は取引関係者のコンプライアンス窓口へ事前に確認します。
支払方法と名義を契約へ対応させる
売買契約上の買主、送金者、銀行口座名義、受取人を一覧にします。家族口座、法人代表者の個人口座、暗号資産から換金した資金などが関係する場合は、通常と異なる経路を隠さず説明します。
現金、小切手、銀行送金などの支払手段によって、確認される記録が異なり得ます。仲介者から指定された口座へ急いで送る前に、請求書、契約上の受取人、口座名義、公式連絡先を照合します。AML資料を提出したことと、送金先が正しいことは別の確認です。
支払後は送金依頼、銀行の実行記録、受取側の領収・計上、対象住戸への充当をつなげます。金額と日付だけでなく、referenceや請求番号を保存してください。購入手続き・契約の入口と一緒に管理すると対応が追いやすくなります。
追加質問や保留を拒絶と決めつけない
リスクベースの確認では、取引額、国・地域、法人構造、支払経路、本人との非対面取引などに応じて追加質問が行われることがあります。追加資料を求められたことを違法性の認定や取引拒絶と同じ意味にしないでください。
回答は、質問、提出資料、提出日、回答者、残った論点を表にします。前回と矛盾する説明を出さないよう、原資料に基づいて回答します。分からない項目は推測せず、確認中であることと回答予定を伝えます。
一方、正当な確認か不明な場合は、担当者から届いたリンクをそのまま開くのではなく、事業者の公式連絡先から依頼の真正を確認します。パスポートや銀行明細は機密性が高く、送付経路の安全も確認対象です。
個人情報を必要範囲で安全に提出する
提出前に、受領主体、目的、必要ページ、保存・共有、提出手段を確認します。メール添付しか案内がない場合も、公式ドメイン、担当部署、暗号化されたポータルの有無を確認してください。公開チャットやSNSへ本人資料を送らないようにします。
不要な情報を黒塗りできるかは、自己判断で加工せず受領者へ確認します。改変した資料が受け付けられない可能性があるためです。原本は変更せず保管し、提出版と提出履歴を分けます。
経済省の公式発表は、不動産仲介者等の記録保持に関する監督を説明しています。買主側でも、何を誰へ渡したかを記録すると、後の更新依頼や不正利用の疑いに対応しやすくなります。
疑わしい取引の報告内容を買主へ開示させない
AML/CFT制度には、対象事業者が疑わしい取引を当局へ報告する枠組みがあります。買主が「自分について報告したか」「なぜ報告しないか」と事業者へ回答を強要するものではありません。報告の有無を取引の安全性評価に使わないでください。
提出依頼に異議がある場合は、根拠、必要範囲、個人情報の取扱いを質問します。法令上の報告判断や内部リスク評価の開示を求めることとは分けます。誤情報を訂正する必要があるときは、どの資料のどの項目が誤っているかを具体的に示します。
AML確認の実務では、本人・法人・実質的支配者・資金源・支払経路を同じ取引へ結び付けることが重要です。書類を多く送ることが目的ではありません。事実に基づく一貫した説明を、安全な公式経路で必要範囲だけ提出してください。