法人設立/解説

アブダビの法人設立|本土とフリーゾーンの違いと許可を出す機関

アブダビで会社を作るとき、許可を出すのは本土ならADDED、フリーゾーンなら各区域の機関です。7種類の経済ライセンス、ADGMの仕組み、法人税の0%と9%の条件、Dual Licence、グリーンビザとの関係を公的機関の公表情報で整理します。

アブダビの法人設立|本土とフリーゾーンの違いと許可を出す機関 - Reheat

アブダビで会社を作るとき、最初に決まるのはどの機関から許可を受けるかです。フリーゾーンの外、いわゆる本土(メインランド)に置くなら、アブダビ経済開発局(ADDED)の経済ライセンスを取ります。フリーゾーンに置くなら、許可を出すのはADDEDではなく、その区域の機関です。金融のフリーゾーンであるADGMなら、ADGMの登録局(Registration Authority)が登録します。

取り違えやすい点が2つあります。1つは「フリーゾーンなら法人税がかからない」という理解で、連邦の法人税が始まってからは条件つきの話になりました。もう1つは、ドバイで会社を作る説明をそのまま当てはめることです。アブダビの本土の窓口はADDEDで、フリーゾーンの顔ぶれもドバイとは違います。窓口と区域が違えば、読むべき公表ページも違います。

この記事では、ADDED、ADGM、アブダビ政府メディアオフィス、UAE政府ポータル、UAE財務省、連邦税務庁(FTA)、連邦の身元・国籍・税関・港湾保安庁(ICP)の公表ページで確認できた範囲だけを書きます。設立の手数料や最低資本金の額など、ページに書かれていないものは書いていません。アブダビに住むための滞在資格の全体像はアブダビ移住の基礎で扱っています。

本土かフリーゾーンかは、事業の相手で決まります

ADDEDは、アブダビで事業をする場所として本土とフリーゾーンの2つを並べて案内しています。本土の利点としてADDEDが挙げているのは、UAE国内の市場へ制限なくアクセスできること、設立の費用が低いこと、そして多くの業種で最低資本金の要件がないことです。

フリーゾーンについては、外国人の100%所有、資本と利益の100%の本国送金、輸出入などの税の免除、費用を抑えた運営、そして2つのライセンスを持てる選択肢(dual licensing)を挙げています。あわせて、各区域が特定の業種に合わせて作られていると書いています。

つまり、分かれ目は区域の名前や響きではありません。UAE国内の顧客を広く相手にするのか、特定の業種の区域の中で事業をするのか、です。下の図は、ADDEDの2つのページの記載を、判断の順に並べ直したものです。

アブダビで会社を置く場所を決める分岐図。国内の市場で広く営業するなら本土でADDEDの経済ライセンスを取り、次にライセンスの種類を7種類から選ぶ。業種の決まった区域で営業するならフリーゾーンで各区域の機関に登録し、区域の外でも活動するときはADDEDのDual Licenceが加わる
上の問いから左右に分かれ、それぞれの下の段に次の手続きを置いています。分岐の言葉は編集部の整理で、枠の中の記載はADDEDのページにあるものだけです。フリーゾーンの会社が区域の外で活動する場合の許可(Dual Licence)が右下にあたります。 出典:ADDED「Licensing Requirements」「Abu Dhabi's Mainland and Free Zones」(確認日 2026-09-19)

どちらが有利かは、事業の中身と相手で変わります。当サイトは、どちらを選ぶべきかを判定しません。ただ、フリーゾーンに置いてから本土の顧客を相手にしたくなった場合は、別の許可が要ることだけは、設立の前に知っておくべきです。これは後の節で扱います。

本土で取る経済ライセンスは、7種類に分かれています

ADDEDのライセンスの案内ページは、本土の許認可を「経済ライセンス」と「許可(Permits)」に分けています。経済ライセンスは特定の経済活動を行うためのもので、許可は広告の掲出や一時的な活動などのためのものです。経済ライセンスの種類として、次の7つが並んでいます。

ライセンス ADDEDのページに書かれている対象・内容 移住を考える外国人に関係するか
Abu Dhabi Trader Licence 特定の商業活動について、UAE国民と居住者に電子的に発行 居住者になった後の選択肢
Dual Licence アブダビのフリーゾーンに登録した法人が、区域の外で活動し事業を運営するためのもの フリーゾーンに置く場合に関係
Freelancer Licence 国民・外国人の投資家が、特定の分野で、物理的な事務所なしに遠隔で活動するためのもの 関係する
Mobdea Licence UAE国民の女性向け。44の活動から選ぶ 対象外
Small Producers Licence 私有の農場を持つ国民が、農業・畜産のサービスを行うためのもの 対象外
Standard Licence アブダビ首長国で事業を行うための標準の経済ライセンス 関係する
Virtual Licence 国外に住む個人が、アブダビで事業を始めるためのもの 移住の前に関係しうる

右の列は、ページに書かれた対象者から編集部が読み取ったものです。たとえばMobdeaは国民の女性、Small Producersは農場を持つ国民と書かれているため、外国人は対象になりません。

日本から移住を考えている人にとって目を引くのは、Virtual Licenceが国外に住む個人向けと書かれていることでしょう。まだUAEに住んでいない段階でも、アブダビで事業を始める入口が用意されていることになります。ただし、このページには対象になる活動、手数料、必要書類、有効期間が書かれていません。Freelancer Licenceも、対象の分野が「特定の分野」とだけ書かれています。申し込む前に、自分の活動が対象に入るかをADDEDの個別のサービスページで確かめてください

どの種類でも、ADDEDはライセンスの予約・発行・更新・取消・変更・担保設定をサービスとして挙げています。会社を作って終わりではなく、更新や変更の手続きが続くということです。

アブダビ経済開発局(ADDED)の、経済ライセンスと許可の種類を案内するページの表示
引用キャプチャ本土の許認可を経済ライセンスと許可に分け、Dual Licence、Freelancer Licence、Virtual Licenceなど7種類の経済ライセンスを並べているADDEDの案内ページです。各ライセンスの手数料、対象になる活動の一覧、必要書類は、このページには書かれていません。 出典:Abu Dhabi Department of Economic Development|Licensing Requirements(確認日 2026-09-19/表示のファーストビュー)

フリーゾーンは6区域。ADGMだけ、仕組みが大きく違います

ADDEDのページは、アブダビのフリーゾーンとして次の6つを挙げています。Abu Dhabi Global Market(ADGM)、Khalifa Economic Zone Abu Dhabi(KEZAD)、Masdar City、Abu Dhabi Airports Free Zone(ADAFZ)、twofour54、Industrial City of Abu Dhabi です。ADDEDの事業環境の案内ページは、区域ごとに航空、金融、再生可能エネルギー、製造と物流、メディアに重点を置いていると説明しています。

このうちADGMは、ほかの区域と性格が違います。ADGMの登録局のページは、ADGMの事業体が国際基準にもとづく法の枠組みと、英国のコモン・ロー(English common law)の適用を受けると書いています。ADGMには、金融サービス規制庁(FSRA)、登録局(RA)、ADGM裁判所の3つの機関があり、会社の登録・設立・許認可を担うのは登録局です。

ADGMの登録と設立のページは、手順を3段で示しています。事業計画の概要を作って必要書類を確かめる、登録局のオンラインのシステムで申請と書類を出す、そして情報が正確に出されていれば数日で完了しうる、という流れです。選べる形態としては、有限責任の非公開会社(Private Company Limited by Shares)、支店、有限責任パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップ、保証有限会社、財団などが並んでいます。手数料は別の料金表に分けられており、このページには金額が出ていません。

本土、ADGM、ADGM以外のフリーゾーンの3つを、許可・登録する機関、公表ページが挙げる特徴、場所、統一経済ライセンスへの参加、設立にかかる期間の5項目で比べた表。ADGMは英国のコモン・ローを適用し、アル・マリヤ島とアル・リーム島にあり、統一経済ライセンスの発表には名前がなく、設立は数日で完了しうると書かれている
列がそれぞれの行き先、行が比べる項目です。「記載なし」は制度が無いという意味ではなく、この記事の出典ページに書かれていないという意味です。ADGMの列だけ、統一経済ライセンスの行を赤茶の字にしています。発表に参加先として名前が出てこないためです。 出典:ADDED、ADGM登録局、アブダビ政府メディアオフィスの公表ページ(確認日 2026-09-19)

もう1つ、不動産に関わる人が知っておきたいのはADGMの場所です。登録局のページは、ADGMがアル・マリヤ島とアル・リーム島の2つの島にまたがり、登録局がこの2つの島で不動産の所有・登記・開発・賃貸に関わるサービスも担うと書いています。アル・リーム島で物件を見ている人は、会社の登録だけでなく、不動産の登記もADGMの側で扱われることになります。島の経緯と登記の仕組みはアル・リーム島の不動産にまとめています。

法人税は「フリーゾーンなら0%」とは限りません

UAEでは、連邦の法人税がFederal Decree-Law No. 47 of 2022にもとづいて、2023年6月1日以降に始まる事業年度から適用されています。UAE政府ポータルによると、税率は課税所得のうちAED 375,000までが0%、それを超える部分が9%です。

フリーゾーンの会社の扱いは、これとは別の枠組みです。UAE財務省の法人税のページは、フリーゾーンの事業者のうちQualifying Free Zone Person(QFZP)の条件を満たすものは、Qualifying Incomeに0%の税率を受けられると書いています。FTAがフリーゾーンの事業者向けの指針を出したときの発表では、QFZPの恒久的施設(Permanent Establishment)に帰属する利益には9%がかかるとされています。UAE政府ポータルも、規制上の要件を満たし、本土で営業しないフリーゾーンの事業には優遇を続けるという書き方をしています。

連邦の法人税が会社の置き場所で分かれる図。本土の会社などは課税所得AED 375,000までが0%、超える部分が9%。フリーゾーンの会社はQFZPの条件を満たすとQualifying Incomeに0%、恒久的施設に帰属する利益に9%、満たさなければ0%の優遇の対象外。下に、ADDEDの案内が法人税の免除と書いている点への注意がある
左が本土の会社などの通常の税率、右がフリーゾーンの会社の判定です。右側の「満たさない」の先は、計算の仕方をこの記事で確かめていないため、指針で確認するとだけ書いています。下の帯は、政府のページの間で表現が揃っていない点を示しています。 出典:UAE政府ポータル「Corporate tax」、UAE財務省「Corporate Tax」、FTAの発表、ADDEDの公表ページ(確認日 2026-09-19)

ここで注意してほしいのは、政府のページの間で書き方が揃っていないことです。ADDEDのフリーゾーンの案内は、利点の1つとして「輸入・輸出・法人・個人の税の免除」を挙げています。一方で、連邦の法人税の側では、フリーゾーンの会社が0%になるのはQFZPの条件を満たし、所得がQualifying Incomeにあたる場合です。ADDEDの記載だけを読んで「フリーゾーンの会社には法人税がかからない」と受け取ると、連邦の制度と食い違います。当サイトは、税率については連邦の財務省・FTA・UAE政府ポータルの記載に従って書いています。

QFZPの条件の中身や、どの所得がQualifying Incomeにあたるかは、この記事で扱える範囲を超えています。財務省は、法人税の情報について財務省とFTAの公表物を頼るよう求めています。設立の前に、自分の事業がどちらの扱いになるかを税務の専門家に確かめてください。本土の顧客を相手にする予定があるかどうかは、この判定にも関わります。

フリーゾーンの会社が本土で動くときの仕組み

フリーゾーンに会社を置いたあとで、区域の外でも事業をしたくなることがあります。そのための許可が、ADDEDのDual Licenceです。ADDEDのページは、これをアブダビのフリーゾーンに登録した事業者が、区域の外で活動し、事業を運営できるようにするものと説明しています。発行するのは区域の機関ではなくADDEDです。

もう1つ、区域と本土の登録をつなぐ動きがあります。アブダビ政府メディアオフィスは、ADDEDがアブダビ・フリーゾーン評議会と連携して、首長国で統一された経済ライセンスを始めたと発表しています。発表によると、この取り組みはすべてのライセンスに共通の参照番号を付け、新しく統合されたアブダビの登録簿で会社の情報を最新に保つものです。先行して参加したのは、KEZAD Group、ADAFZ、Masdar City Free Zone、Creative Media Authority(CMA)と書かれています。

この発表の参加先にADGMの名前はありません。これをもって、ADGMが今後も加わらないとは言えません。発表に書かれていない、というだけです。また、統一経済ライセンスを持つことで、フリーゾーンの会社がそのまま本土で営業できるようになるとは、発表には書かれていません。区域の外で事業をする許可は、いまもDual Licenceとして別に案内されていると読むのが、公表ページに沿った理解です。

会社を作ることと、アブダビに住むことの関係

会社を作れば、自動的にUAEに住めるわけではありません。滞在資格は別の手続きで、アブダビに住む人の申請先はICPです。

会社を作った人が関係しうる区分として、ICPのグリーンビザのガイドは「投資家・事業のパートナー」を挙げています。条件として書かれているのは、UAE国内の事業への投資または出資を証明することと、関係する機関から必要なライセンスと承認を得ることです。グリーンビザは5年の在留で更新ができ、UAE国内に保証人を必要とせず、配偶者と子を扶養できるとされています。

一方で、このガイドには、投資や出資の最低額が書かれていません。会社の資本金がいくらなら条件を満たすのか、フリーゾーンと本土で扱いが違うのかも、ガイドからは読み取れませんでした。ADDEDが「多くの業種で最低資本金の要件がない」と書いていることと、グリーンビザで求められる投資の証明とは、別の制度の話です。会社を作る前に、ICPに対して自分の場合の在留の条件を確かめてください。滞在資格の選び方、医療保険、住まいの登録の順番は、アブダビ移住の基礎で扱っています。

会社で不動産を持つことを考えている人もいるでしょう。これは会社の設立とは別の話で、アブダビで外国人がどの区域でどの権利を取得できるかという不動産の側の決まりに従います。取得できる権利の区分はアブダビ不動産の所有権は4種類にまとめています。会社を作ること、会社で物件を持つこと、そのどちらも、値上がりや賃料収入を意味しません。当社は値上がり・賃料収入・利回りのいずれも保証しません。

この記事で確認できなかったこと

第一に、設立にかかる費用です。ADDEDのライセンス、ADGM、そのほかのフリーゾーンのいずれについても、この記事の出典ページには手数料の額が載っていませんでした。ADGMは別の料金表を案内しています。

第二に、Virtual LicenceとFreelancer Licenceの対象になる活動の一覧と、申請に必要な書類です。ADDEDの案内ページは対象者までしか書いていません。

第三に、QFZPの条件の中身と、条件を満たさないフリーゾーンの会社がどう課税されるかです。FTAが指針を出していることは発表で確かめましたが、指針の本文はこの記事では読めていません。

第四に、グリーンビザの「投資家・事業のパートナー」の区分で求められる投資額です。ICPのガイドに記載がありませんでした。

第五に、ADGM以外のフリーゾーンで会社の登録にかかる期間と、本土で外国人が持てる出資の割合が業種によってどう扱われるかです。この記事では、それぞれの区域の機関とADDEDの個別の案内まで確かめていません。

相談の前に、自分で決めておくこと

設立の支援会社や専門家に相談する前に、次の4つを自分の言葉で書き出しておくと、話が早くなります。1つ目は、誰を相手に事業をするかです。UAE国内の顧客なのか、区域の中の取引なのか、国外なのか。これで本土かフリーゾーンかの方向が決まります。

2つ目は、業種です。フリーゾーンは区域ごとに業種に重点があり、ADGMには金融サービスの規制庁(FSRA)が置かれています。本土なら7種類のライセンスのどれに当てはまるかを見ます。3つ目は、アブダビに住むかどうか、いつから住むかです。住む前ならVirtual Licenceが入口になりうる一方、住むなら滞在資格の手続きが加わります。4つ目は、将来、区域の外で事業をする可能性です。あるならDual Licenceと法人税の扱いを最初から確かめておきます。

どの行き先を選んでも、許可を出す機関のページが一次情報です。支援会社の説明が公表ページと違うときは、公表ページを先に確かめてください。当サイトは、本土とフリーゾーンのどちらがよいか、どの区域がよいかを順位づけしません。