ドバイのアパートメントの資料を開くと、いちばん上に「Studio」や「1 B/R」という表記が並びます。これは部屋の総数でも広さの等級でもなく、寝室(Bedroom)がいくつあるかだけを数えた区分です。そして買ったあとの費用の計算に使われるのは、この区分ではありません。共用部分の費用をいくら負担するかは、その住戸の面積から決まります。
先に取り違えを一つ外しておきます。「1 B/R」を日本の「1LDK」と置き換えないでください。寝室1つにリビングが付くという点ではおおむね対応しますが、キッチンが独立しているかどうか、メイド室をどう数えるかが資料によって違います。当サイトが英語の表記を落とさずに併記しているのも同じ理由で、原語が残っていないと、読者がドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)の記録や英語の物件資料と突き合わせられなくなります。
この記事では、間取りの区分が何を数えているのか、その区分がDLDの登記の記録にどう入っているのか、面積がどの費用の分母になるのか、そして住戸単位でどこに照会できるのかを、確認できた一次情報の範囲だけで並べます。価格の水準そのものではなく、スペック欄の読み方を扱う記事です。物件を勧めるものではなく、当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。アパートメント以外の種別を含む入口はドバイの物件情報にあります。
間取りの表記は、寝室の数を数えています
「B/R」はBedroomの略です。ドバイの資料では寝室の数を先に書き、リビングはこの数に入れません。したがって「2 B/R」は寝室が2つある住戸という意味で、リビングやダイニングの有無、キッチンの形は、この表記からは分かりません。日本の間取り表記と並べたいときは、おおむねの対応として読み、間取り図で部屋の構成を確かめてください。
この数え方の結果として、同じ区分の中に広さの違う住戸が入ります。寝室1つで専有部分が広い住戸と、寝室1つで最小限の住戸は、どちらも「1 B/R」です。間取りの区分は候補を絞る最初のふるいとしては便利ですが、広さの指標として使うと、同じ区分の中にある差が見えなくなります。広さを比べるなら、次の章で扱う面積の列を見ます。
当サイトは、この区分をDLDの原語と日本語の両方で表示しています。辞書は一か所にまとめてあり、ページごとに訳し方が変わらないようにしています。
| DLDの表記 | 当サイトの表示 | 数えているもの |
|---|---|---|
| Studio | ストゥディオ | 寝室が独立していない1部屋の住戸 |
| 1 B/R | 1ベッドルーム | 寝室1つとリビング |
| 2 B/R | 2ベッドルーム | 寝室2つとリビング |
| 3 B/R・4 B/R | 3ベッドルーム・4ベッドルーム | 寝室の数で続きます |
| NA・空欄 | 記載なし | 間取りの列に値が入っていない記録 |
| Office・Shop | オフィス・店舗 | 住戸ではない区画 |
最後の2行に注意してください。間取りの列には、住戸ではない区画の記録も入ります。「アパートメントの間取り別の件数」として数字を見るときは、そこに事務所や店舗が混ざっていないかを先に確かめる必要があります。
登記の記録にも、間取りの列があります
間取りの区分は、広告の都合で付けられた呼び名ではありません。DLDがオープンデータとして案内しているデータセットの出力には、間取りの数(Number of Rooms)、物件の種別(Property Type/Property Sub Type)、面積(Property Size (sq.m))が列として挙げられています。つまり、売買や賃貸の記録が登記として残るとき、間取りの区分もいっしょに記録されます。
当サイトは、この原記録を取得して自分で集計しています。2026年1月1日から8月25日までに売買(Sales)として登記されたのは110,525件で、そのうちオフプラン区分が75,805件、完成物件区分が34,720件でした。集計ファイルを作ったのは2026年8月28日です。DLDが公表した統計そのものではなく、DLDの原記録を当サイトが集計したものとして読んでください。
件数の構成を見るときは、2つの断りが必要です。1つは、間取りの列が物件種別を絞っていないことです。同じ期間に物件種別がFlat(アパートメント)として登記されたのは、オフプラン区分が65,425件、完成物件区分が21,114件で、間取り別の件数の合計とは対象がそろいません。もう1つは、間取りが記録されていない記録があることです。完成物件区分では、間取りの列が空欄のものが8,643件、「NA」と入っているものが480件ありました。完成物件区分には土地や建物一棟の取引も入るため、この空欄の多さは記録漏れとは言い切れません。
| 間取りの区分 | オフプラン区分 | 完成物件区分 |
|---|---|---|
| ストゥディオ(Studio) | 22,676件 | 5,339件 |
| 1ベッドルーム(1 B/R) | 26,344件 | 9,375件 |
| 2ベッドルーム(2 B/R) | 14,447件 | 5,958件 |
| 3ベッドルーム(3 B/R) | 4,270件 | 2,675件 |
| 4ベッドルーム(4 B/R) | 3,847件 | 1,028件 |
| 記載なし | 2,679件(NA) | 8,643件(空欄)と480件(NA) |
この表は、両方の登記区分で記録を確認できた区分を並べたものです。オフプラン区分には5ベッドルーム1,457件のようにさらに上の区分もありますが、件数が少ない区分は構成の話に使えるだけの母数がありません。買う間取りを決めたうえで、その間取りがどの区画で現実的な価格帯になるのかを見る手順は、エリア別のデータを間取りでそろえるに分けて書いています。
面積は、間取りを決めたあとに効いてきます
ドバイで集合住宅の1戸を買うとき、法律の上で扱われる単位は「Unit」です。Law No. (6) of 2019の第2条は、Unitを「共同所有不動産(Jointly Owned Real Property)の一部をなす、フラット、店舗、事務所、倉庫、階層、土地の全部または一部、タウンハウス、独立住宅」と定義しています。共同所有不動産そのものは、共用に充てられた部分と付属物を含む建物と、その建物が建つ土地、または区画に分割された土地だと定義されています。
その面積が、費用の分け方に直接入ってきます。第25条は、所有者が管理主体(Management Entity)へ年間のサービスチャージの持ち分を支払うと定め、共用部分の管理、運営、維持、修繕の費用に充てるとしています。そして持ち分の計算は、局長が承認した方法により、所有者の住戸の面積と共同所有不動産の全体の面積の比をもとに行うと書かれています。間取りの区分ではなく面積が分母になる、というのがこの条文です。
請求の側にも条件が付いています。第27条は、管理主体がRERAの承認を得ずに所有者へ請求してはならないと定め、RERAが認定した監査法人の承認がなければRERAは承認しないとしています。売り手や管理会社から口頭で聞いた金額ではなく、承認された額を確かめられる、という前提がここにあります。管理の枠組み全体はドバイ共同所有不動産法にまとめています。
面積を比べるときは単位をそろえてください。DLDのデータセットの面積の列は平方メートル(Property Size (sq.m))です。当サイトの集計も平方メートルで、平方フィートを併記するときは1平米=10.7639平方フィートで換算しています。物件資料が平方フィート表記なら、換算してから登記の記録と並べます。参考として、当サイトの集計では売買110,525件の面積の中央値が77.6平方メートル、オフプラン区分が72.5平方メートル、完成物件区分が109.3平方メートルでした。ただし完成物件区分には土地や建物一棟の取引も含まれるため、この値を住戸の広さとして読むことはできません。
いっぽうで、面積の内訳は条文から確認できませんでした。バルコニー、駐車区画、メイド室を面積にどう算入するかは、今回確認した法令の条文には書かれていません。資料の面積がどこまでを含んだ数字なのかは、建物ごとの図面(Site Plan)と管理の規則で確かめる必要があります。第2条は、Site Planを「開発業者が作成し、DLDと所管官庁が承認した、共同所有不動産における建物の境界を示す図面」と定義しています。隣の首長国での同じ論点はアブダビのアパートメントで扱っています。
住戸単位で照会できる窓口があります
住戸が登記の単位であることは、照会のしかたにも現れます。DLDのProperty Status Enquiryは、証明書番号と年、またはエリア・物件種別・土地番号・建物番号・住戸番号、あるいはMakani番号などから物件を特定して状態を調べる案内です。ページには、物件のブロックの有無とその理由、賃貸の係争中の案件、ドバイ市の違反、タイトルディードの情報とフリーホールドかどうかの区分などを確認できると書かれています。
サービスチャージの承認額には別の窓口があります。DLDのService Charge Indexは、RERAが承認した共同所有物件のサービス費用を照会するための案内で、プロジェクト名、用途、年を選んで調べる形です。提供の経路としてMollakシステムが挙げられています。先に見た第27条の承認が、照会できる形で置かれている窓口がここだと考えると、2つの資料がつながります。
| 確認したいこと | 使う公式の窓口 | 入力・選択するもの |
|---|---|---|
| 住戸の登記の状態 | DLD|Property Status Enquiry | 証明書番号と年、またはエリア・物件種別・土地番号・建物番号・住戸番号、Makani番号など |
| 承認されたサービスチャージ | DLD|Service Charge Index(Mollakシステム) | プロジェクト名・用途・年 |
| 面積と間取りの記録 | DLD|Real Estate Data | 物件種別、間取りの数、面積(平方メートル) |
所有の証明そのものの読み方はドバイ不動産のTitle Deedに、データの入口はドバイのデータにあります。当サイトが数値に出典と確認日を併記している理由は出典と数え方に書いています。
スペック欄を点検する順番
順番を決めておくと、資料の見落としが減ります。はじめに間取りの区分で候補を絞り、次に面積の数字と単位を確かめ、そのうえで面積が分母になる費用の承認額を照会し、最後に住戸番号で登記の状態を照会します。間取りから面積へ、面積から費用へ、という向きで進めるのがこの記事の要点です。
逆の順番は避けてください。費用の総額だけを見て住戸を選ぶと、同じ「1 B/R」の中にある面積の差が費用の差として表れていることに気づけません。面積を見ずに間取りだけで比べるのも同じことです。確かめられなかった項目は、推測で埋めずに空けておき、図面と管理の規則で確認できたときに埋めてください。数字の出どころを残しておけば、あとから自分で検算できます。