ドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)は2026年10月19日、ドバイ・ワールド・トレード・センターで同日から21日まで開かれたAccessAbilities Expo 2026に参加し、People of Determination(障がいのある人)、高齢者、その家族に向けた不動産サービスを示したと公表しました。展示で名前が挙がったのは、Barwaという取り組みのうち4つのサービス、Al Karani、Al Kaitoob、Al Taresh、Al Mersalです。
先に結論を書きます。この発表で制度が新しく始まったわけではありません。Barwaは2025年5月13日に立ち上げられていて、今回示されたのは、そのときに名前が並んだサービスの一部です。そして2つの発表に共通して書かれている対象は、ドバイの高齢者とPeople of Determinationです。日本に住む所有者や投資家が同じ経路で手続きを頼める、とはどちらの発表にも書かれていません。
それでも読む価値があるのは、窓口へ本人が出向くことを前提にしない手続きの形が、政府機関の公表資料に名前つきで並んでいることが分かるためです。手続きのために本人が現地へ出向く必要があるかどうかは、買う側にも貸す側にも負担として効きます。少なくとも制度の側には、出向いてくる窓口と遠隔の画面が、名前の付いた形で公表されています。誰がそれを使えるのかは別の話で、そこを混ぜないことがこの記事の目的です。
以下では、10月19日の発表の記載を先に並べ、4つのサービスがそれぞれ何を代わりに行うのかを分け、立ち上げの発表に並ぶ7つの名前と照らし合わせます。そのうえで、対象として書かれている人と、書かれていない項目を示します。記載はDLDとドバイ政府メディアオフィスの発表からの転記だけで、当サイトが補った内容はありません。
10月19日の発表に書かれていること
まず、発表で確かめられる項目だけを並べます。右の列が埋まっているものが、いま確認できる事実です。
| 項目 | 発表の記載 |
|---|---|
| 公表日 | 2026年10月19日 |
| 催し | AccessAbilities Expo 2026(第8回) |
| 会期 | 2026年10月19日から21日 |
| 会場 | ドバイ・ワールド・トレード・センター Za’abeel Hall 5 |
| 出展場所 | Stand 5050 |
| 示された取り組み | Barwa |
| 名前が挙がったサービス | Al Karani、Al Kaitoob、Al Taresh、Al Mersal |
| 示された対象 | People of Determination、高齢者、その家族 |
| 言及された計画 | ドバイ不動産戦略2033、Dubai Social Agenda 33、ドバイ経済アジェンダD33、家族の年2026 |
| 利用した人数・提供件数 | 記載がありません |
| 申込みの方法・費用 | 記載がありません |
発表には、DLD局長のOmar Hamad BuShehab氏が、People of Determinationが社会へ十分に参加できる、より包摂的な不動産の未来をつくることに引き続き取り組むと述べた、と書かれています。会場の設備としては、見えにくい人と聞こえにくい人が使えるよう、触る操作、音声の案内、簡単にした手順を組み合わせた対話型の画面が挙げられています。来場者向けの体験として、子ども向けの組み立て遊び、モザイクの写真体験、理解を広げるためのワークショップも並んでいます。
戦略に関する言及は、この発表が新しい目標値を示したという意味ではありません。ドバイ不動産戦略2033に公表されている数値目標はドバイ不動産セクター戦略2033に分けて整理しています。今回の発表に、取引額、戸数、手数料、対象区域に関する数字はいっさい出てきません。
4つのサービスは、窓口へ行く前提を外すためのものです
発表に書かれている4つの中身を、記載のまま分けます。名前だけが並んでいると区別が付かないため、何を代わりに行うのかで読み分けてください。
Al Karani は、手続きに付き添う専任の担当者です。発表には、不動産の手続きの進み具合を追い、助言と支援を行うと書かれています。利用者の代わりに契約の内容を決める権限がある、とは書かれていません。
Al Kaitoob は、遠隔で資産を管理するための画面です。People of Determinationの必要に合わせて設計された技術によって、離れた場所から物件の管理ができると説明されています。どの手続きがこの画面だけで完結するのかは示されていません。
Al Taresh は、移動する窓口です。移動する組を通じて、利用者のいる場所へ出向いて不動産のサービスを提供すると書かれています。2025年5月の立ち上げの発表では、自宅から出ることなく取引を完了できると説明されていました。
Al Mersal は、連絡センターで動く遠隔の支援チームです。離れた場所からの支援と、その場での応答を行うと書かれています。受け付ける時間帯と対応する言語は、どちらの発表にも出てきません。
4つを並べると、向きが3つに分かれます。人が出向くのがAl Taresh、人が付き添うのがAl Karani、画面と連絡センターで離れたまま行うのがAl KaitoobとAl Mersalです。いずれも、本人が土地局や登録窓口へ出向くことを前提にしていません。言い換えると、ドバイの不動産手続きで本人の来訪が要るかどうかは、法律で一律に決まっているのではなく、用意されている経路と、その経路を使える相手で決まります。
立ち上げの発表には、名前の付いたサービスが7つ並んでいます
Barwaは2025年5月13日に立ち上げられました。DLDとドバイのコミュニティ開発局(Community Development Authority、CDA)が共同で進める取り組みで、発表では、高齢者とPeople of Determinationが自分の不動産を自分で管理できるようにすることが目的だと説明されています。今回の展示で示された4つは、この立ち上げの時点から並んでいた名前です。
| サービス名 | 発表に書かれている役割 | 2026年10月19日の発表 |
|---|---|---|
| Al Taresh | 利用者のいる場所へ出向く移動の窓口 | 記載あり |
| Al Karani | 手続きに付き添う専任の担当者 | 記載あり |
| Al Kaitoob | 遠隔で物件を管理する画面 | 記載あり |
| Al Mersal | 連絡センターからの遠隔支援 | 記載あり |
| Real Estate Katateeb | 不動産の管理を学ぶ催し | 記載なし |
| Al Barza | 土地局の本館に置く専用の受付 | 記載なし |
| Al Hasela | 賃貸管理・維持・相談を優遇の条件で提供 | 記載なし |
立ち上げの発表には、このほかに専門チームによる個別の助言と、機関のあいだのデータ連携も柱として挙げられていますが、固有の名前は付いていません。ドバイ政府メディアオフィスの発表には、参加する民間の不動産会社としてHarbour Real Estate、On Plan Real Estate、Al Ruwad Real Estate、SBK Real Estateの4社、サービストラスティ窓口としてAfnanとAl Tabouが挙げられています。会社名は英語の綴りのまま控えてください。登録を照会するときの手がかりになるため、当サイトは法人名をカタカナに置き換えません。
対象として書かれているのは、ドバイの高齢者とPeople of Determination
ここがいちばん取り違えやすいところです。2つの発表のどちらにも、対象は高齢者とPeople of Determinationと書かれています。10月19日の発表では、ここに家族が加わっています。一方で、年齢の下限、国籍の要件、居住の要件、障がいの認定をどこが行うのかは、どちらにも書かれていません。申込みの方法も、費用がかかるのかどうかも示されていません。
そのため、日本に住む所有者が「DLDには出張と遠隔の仕組みがあるのだから、自分も同じように頼める」と読むことはできません。出向いてもらえる地域の範囲すら公表されていないため、依頼できる前提で予定を組むのは危険です。非居住の所有者が使える公式の経路を調べたいときは、投資家向けに公表されている仕組みを別に確かめてください。DLDが投資家向けの催しで挙げた4つの仕組みと、その対象はドバイ土地局が挙げた4つの仕組みに、UAEの居住者であることが条件になっている制度はドバイの初回購入者の制度に分けて整理しています。
対象が限られていることは、この取り組みの欠点ではありません。窓口に来られない人のために用意された経路だと公表されているので、そう読むのが正しい読み方です。問題が起きるのは、対象の記載を飛ばして「ドバイでは誰でも遠隔で手続きできる」と広がったときです。
Al Tareshという名前は、登録トラスティの会社名にもあります
検索するときに注意が要ります。DLDが公表している登録トラスティ窓口の一覧には19社が載っていて、そのうちの1社がAL TARESH ALAMEEN ALAQARI L.L.C です。BarwaのサービスであるAl Tareshと、この会社は別のものです。一覧には、会社名、所在するエリア、電話番号、メールアドレス、地図への導線、営業時間、Makani番号が並びます。
同じ綴りで別のものが出てくる状況は、日本語の記事を読んでいるときほど気づきにくくなります。カタカナに置き換えてしまうと、サービスの名前なのか会社の名前なのかを見分ける手がかりが消えるためです。当サイトがプロジェクト名と法人名を英語のまま出しているのは、こうした照合のためです。問い合わせる前に、相手がDLDの窓口なのか、民間の登録トラスティなのか、Barwaの担当なのかを確かめてください。
この発表に書かれていないこと
推測で埋めずに、そのまま並べます。10月19日の発表と2025年5月13日の立ち上げの発表からは、次の項目は分かりませんでした。
- 申込みの方法と、受け付ける窓口
- 対象になる人の要件の定め方(年齢、国籍、居住、障がいの認定)
- 利用にかかる費用の有無と金額
- 出向いてもらえる地域の範囲と、来てもらうための条件
- Al Kaitoobで完結する手続きの一覧
- Al Mersalが受け付ける時間帯と、対応する言語
- これまでに利用した人数と、提供した件数
- Real Estate Katateeb、Al Barza、Al Haselaのいまの提供状況
- 優遇の条件で提供されるというAl Haselaの料金の水準
広告や販売の場では、このうちの何項目かが口頭で埋められることがあります。そのときは、同じ内容がDLDの公表資料に書かれているかを確かめてください。発表に無い項目を当サイトが補うことはしません。
市場の数字でも、利回りの材料でもありません
この発表には、取引額、戸数、価格、家賃のいずれも出てきません。したがって、ドバイの不動産市場が強いか弱いかを判断する材料にはなりません。制度の充実を値上がりの根拠として説明する話を聞いたら、その前提が公表資料のどこにあるのかを確かめてください。当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。
この記事は、DLDの発表2件とドバイ政府メディアオフィスの発表1件、そしてDLDの登録トラスティ窓口の一覧だけを材料にしています。申込みの方法、対象の要件、費用のいずれかが公表された時点で、この記事を更新します。