ドバイで完成している物件は、どれだけ取引されているのか。Dubai Land Department(DLD、ドバイ土地局)が公開している登記の記録を当サイトが集計すると、2026年1月1日から8月25日までにSalesとして登記された売買110,525件のうち、完成済み(DLDの区分では Ready)は34,720件でした。取引額の合計は176,523,922,135 AED、取引価格の中央値は1,700,000 AEDです。
ところが、この1,700,000 AEDを「ドバイの中古住戸の相場」として使うことはできません。同じ34,720件をDLDの物件細目で分け、アパートメント(原語はFlat)だけを取り出すと、件数は21,114件、取引価格の中央値は1,127,773 AEDになります。住戸に絞ったほうが、中央値は約57万AED低く出ます。34,720件のほうには、住戸では説明できない広さと金額の登記が混ざっているためです。
この記事は、完成済みとして登記された34,720件を住戸まで絞り込んでいく手順です。どの段で何を外すのか、絞ったあとの数字が間取り別にどう並ぶのか、そして同じ記録からは答えられないことを順に示します。金額はすべてAEDのままで、円には換算していません。為替は日々動くため、換算した数字はその時点で事実と食い違います。
出典の層を先に断っておきます。この記事に出す集計値は、DLDが公表している集計ではなく、DLDの原記録を当サイトが集計したものです。「DLDの公式データ」と「DLDのデータをもとにした当サイトの集計」は別のものなので、引用するときは後者として扱ってください。データ系列の入口はドバイのデータにまとめています。特定の物件や事業者を勧める記事ではありません。値上がり、賃料収入、利回りのいずれも当社は保証しません。
日本語の「中古」は、DLDでは Ready という区分です
DLDの照会画面には Registration type(登記の種類)という絞り込みがあり、All / Ready / Off Plan から選べます。日本語で「中古」と呼ばれている側が、ここでいう Ready です。当サイトの集計も、この記録の区分をそのまま使っています。
ただし Ready は「完成している物件の取引」という意味で、前の持ち主から買ったのか、開発会社が持っている完成在庫を買ったのかは、この区分からは分かりません。日本語の「中古」には前者の意味が強く入りますが、記録の側はそこを分けていません。この記事で「中古」と書くときは、常に「完成済みとして登記された取引」を指しています。
数え方も先に決めておきます。取得した記録の全体は146,369行で、そこから取引の種類がSalesの行だけを残しました。抵当権の登録(Mortgage)30,043行と贈与(Gifts)5,801行は外しています。抵当権は所有者が変わる取引ではなく、贈与の価格は市場の水準を表さないためです。残った110,525件のうち、オフプランが75,805件、完成済みが34,720件です。
件数は行数、つまり登記された物件の数です。DLDの記録では1つの取引番号が複数行に分かれることがあるため、「取引の件数」ではなく「登記された物件の件数」として読んでください。
件数では全体の3分の1ほどの完成済みですが、取引額の合計では176,523,922,135 AEDで、オフプランの168,128,751,777 AEDを上回ります。件数の構成比と金額の構成比で多い側が入れ替わる仕組みはドバイのオフプラン取引データで扱っているので、ここでは繰り返しません。この記事が見るのは、完成済みの34,720件の中身です。
34,720件には、住戸ではない登記が混ざっています
完成済みの34,720件を、DLDの物件細目(PROPERTY_SUB_TYPE_EN)で分けます。件数の多い8区分までの集計です。
| 物件細目 | 件数 | 取引価格の中央値(AED) | 取引価格の平均(AED) |
|---|---|---|---|
| アパートメント(Flat) | 21,114 | 1,127,773 | 1,692,334 |
| Residential | 3,443 | 4,000,000 | 7,639,605 |
| Commercial | 2,671 | 8,002,391 | 16,157,867 |
| ヴィラ(Villa) | 2,363 | 3,650,000 | 4,472,580 |
| オフィス(Office) | 1,160 | 1,980,565 | 2,970,776 |
| 記載なし | 889 | 5,679,777 | 25,981,375 |
| General Use | 676 | 15,831,888 | 19,872,744 |
| ホテルアパートメント(Hotel Apartment) | 658 | 1,221,640 | 2,695,417 |
Residential、Commercial、General Use の3つは、ラベルを見ただけでは何の登記なのかを決められません。当サイトの集計は、物件種別(Land / Unit / Building)と物件細目を掛け合わせていないため、どの行が土地なのかをこの集計から特定できません。英語のラベルを日本語に置き換えると、意味を確かめていないまま「住宅」と読まれてしまうので、原語のまま出しています。
ただし、住戸ではない登記が混ざっていること自体は数字から分かります。完成済み34,720件の面積は、中央値が109.3 ㎡に対して平均が616.4 ㎡で、最大は1,201,279.6 ㎡です。面積あたりの単価も最大2,207,993 AED/㎡まで開き、取引価格の最高額は3,130,254,657 AEDです。住戸1戸では説明できない広さと金額が、同じ34,720件の中にあります。用途が住宅になっている割合は91.7%、フリーホールド(自由保有)の割合は94.8%でした。
この散らばりは、代表値にそのまま出ます。完成済み34,720件の取引価格は、中央値が1,700,000 AEDで平均が5,084,214 AEDです。平均が中央値の約3倍になっているので、平均のほうを「中古の相場」として読むと、桁違いの登記に引っ張られた数字を見ることになります。中央値と平均の開きを区分ごとに並べた一覧はドバイ不動産の価格中央値にあります。
住戸に絞ると、中央値は1,127,773 AEDになります
アパートメントだけを取り出すと、件数は21,114件で、完成済み全体の6割ほどを占めます。取引価格の中央値は1,127,773 AED、平均は1,692,334 AED、最高額は100,000,000 AEDです。全体の中央値1,700,000 AEDと比べると、住戸に絞ったほうが低く出ます。平均と中央値の開きも全体より小さくなります。
ここでオフプランと並べると、向きが入れ替わります。オフプランのアパートメントは65,425件で中央値1,251,000 AEDです。つまり同じアパートメントどうしで比べると、完成済みのほうが中央値は低いです。ところが区分を分けずに全体で比べると、完成済みの中央値1,700,000 AEDに対してオフプランは1,359,800 AEDで、完成済みのほうが高く出ます。
同じ記録から、正反対の2つの文が出てきます。「完成済みのほうが高い」は区分を分けない場合、「完成済みのほうが安い」はアパートメントに絞った場合です。どちらも同じデータの読み方の違いで、どちらが嘘ということではありません。見かけた数字が、どの範囲を数えたものなのかを確かめないまま使うと、この取り違えが起きます。
ヴィラでは、またもう一方へ振れます。完成済みのヴィラは2,363件で中央値3,650,000 AED、オフプランのヴィラは6,333件で中央値2,982,000 AEDです。ここでは完成済みのほうが高く出ています。「中古は安い」も「中古は高い」も、物件の種類をそろえずに言える主張ではありません。
間取りをそろえると、4ベッドルームだけ向きが変わります
次に、完成済みの34,720件をDLDの記録にあるROOMS(間取り)の区分で分け、オフプランの同じ区分と並べます。
| 間取り | 完成済みの件数 | 完成済みの中央値(AED) | オフプランの件数 | オフプランの中央値(AED) |
|---|---|---|---|---|
| ストゥディオ(Studio) | 5,339 | 560,001 | 22,676 | 687,765 |
| 1ベッドルーム(1 B/R) | 9,375 | 1,030,000 | 26,344 | 1,291,025 |
| 2ベッドルーム(2 B/R) | 5,958 | 2,007,695 | 14,447 | 2,265,929 |
| 3ベッドルーム(3 B/R) | 2,675 | 3,350,000 | 4,270 | 3,695,444 |
| 4ベッドルーム(4 B/R) | 1,028 | 4,275,000 | 3,847 | 2,903,000 |
ストゥディオから3ベッドルームまでの4区分では、完成済みの中央値がオフプランを下回ります。比率でいちばん大きく下回るのは1ベッドルームで、1,030,000 AEDと1,291,025 AEDですから2割ほど低い水準です。ところが4ベッドルームでは4,275,000 AEDと2,903,000 AEDになり、完成済みのほうが高く出ます。
この逆転の理由は、当サイトの集計からは特定できません。中央値はその区分の中で真ん中にあたる1件を指すだけなので、どのエリアのどのプロジェクトが多く登記されたかで動きます。オフプランの側では、4ベッドルームの中央値が3ベッドルームの3,695,444 AEDより低いという並びも出ています。間取りの区分だけで価格の順番を説明しないでください。エリアをそろえて間取り別に見る手順はドバイのエリア別データにあります。
間取りの読み方にも注意が必要です。1 B/Rは寝室(Bedroom)が1つという意味で、日本の1LDKとは数え方が違います。キッチンが独立しているかどうか、メイド室をどう扱うかが違うため、おおむね対応するとしか言えません。
この表には載せていない区分が3つあります。完成済みの側では、ROOMSの欄が空のまま登記されているものが8,643件あります。中央値は6,954,888 AED、平均は14,417,137 AEDで、住戸の水準とはかけ離れています。ここに土地や一棟の登記が入っていると考えるのが自然ですが、空欄である以上、中身は分かりません。これとは別に、ROOMSに文字でNAと入っている行も480件あり(中央値2,006,480 AED)、「空欄」と「NA」の2種類が同じ記録の中に併存しています。オフプランの側では、件数の多い8区分の中に空欄の行は現れません。
3つめは、完成済みのROOMSにOfficeと入っている行で、988件あります(中央値1,909,323 AED)。間取りの欄に物件の用途が入っているもので、間取りとしては読めません。間取り別の集計を作るときは、これらを住戸の区分と同じ表に混ぜないでください。
面積あたりの単価では、この2つを比べられません
面積あたりの単価も記録から出せますが、完成済みとオフプランの比較には使えません。完成済みの単価は中央値15,679 AED/㎡、平均17,637 AED/㎡で、オフプランは中央値19,304 AED/㎡、平均22,170 AED/㎡です。数字だけ見れば「完成済みのほうが単価が安い」と読めます。
しかし、完成済みの側には土地が混ざっています。面積の中央値はオフプランが72.5 ㎡、完成済みが109.3 ㎡で、平均はオフプランが90.8 ㎡に対して完成済みは616.4 ㎡です。平均が中央値の5倍以上になるほど広いものが入っている側と、そうでない側の単価を割っても、意味のある比較になりません。土地の単価は住戸より低く出るため、完成済みの単価は下へ引っ張られます。
住戸だけにそろえた面積あたりの単価は、当サイトの集計が持っていません。物件細目ごとの単価を出していないためです。ここは「比べられない」が答えで、無理に割った数字は出しません。単価そのものの読み方と、エリア間で比べるときの条件はドバイの㎡単価データで扱っています。
なお、区分を分けずに見た同じ期間の売買110,525件は、取引価格の中央値が1,424,503 AED、取引額の合計が344,652,673,911 AEDです。この記事の数字と並べるときは、完成済みだけを数えたのか、全体を数えたのかを必ず書き添えてください。
この34,720件は、どの手続きから生まれるのか
完成済みとして登記された取引は、所有権の移転を記録する手続きから生まれます。DLDの Property Sale Registration は、土地や物件、そして完成した不動産ユニットの売買(全部または一部)を登記する手続きだと説明されており、手続きを終えると電子的な権利証(Electronic Title Deed)と電子地図が発行されます。売主と買主の本人確認書類や、フリーホールドのエリアでは開発会社の異議なし証明が必要になることも、同じページに書かれています。
手数料や必要書類は変わりうるので、金額はここに書き写さず、公式ページで確認してください。権利証そのものの役割と、発行後に真正性を確かめる手順はドバイ不動産のTitle Deedで扱っています。
オフプランの側は、この手続きとは別の初期登録から記録に現れます。同じ「登記」という言葉でも通る手続きが違うため、2つの件数は同じ意味の数ではありません。完成済みの34,720件は所有権が移った記録、オフプランの75,805件は建設前・建設中の契約の記録です。
自分で同じ数字を取り直す手順
ここまでの数字は、4回の絞り込みで出てきます。
データはDLDのオープンデータのページから取得します。取引(Transactions)のデータセットは期間を指定して取れるので、1か月分を1回の照会でそろえられます。照会のたびにCAPTCHAが出るため、当サイトでは機械でCAPTCHAを越えることはせず、1回の照会ごとに人が解いています。1回解いた資格を使い回して連続で取得することもしません。
取得したCSVはリポジトリに入れず、集計した値だけをサイト側に持たせています。生の記録を配り直さないためと、集計の定義を1か所にそろえておくためです。定義が違えば、同じ出典から違う件数が出ます。この記事が外したもの(抵当権、贈与、オフプラン、アパートメント以外の物件細目)を書き出しているのは、読者が自分の集計と突き合わせられるようにするためです。
この集計では答えられないこと
最後に、この数字で言えないことを並べます。
月ごとの完成済みの件数は出せません。当サイトの集計が月別に持っているのはオフプランの比率までで、完成済みの件数は持っていません。比率は小数第1位までに丸めてあるため、月ごとの件数に掛け戻すと数十件の誤差が入ります。誤差つきの件数を集計値として出すと、読者が同じ数字を再現できません。月ごとの比率の動きはドバイのオフプラン取引データに載せています。
前年との比較もできません。DLDの照会画面が当年の範囲しか返さないため、「去年より中古の取引が増えたのか」という問いには、この集計では答えられません。
これは登記された取引の記録です。売り出し中の価格や、成約に至らなかった条件は入っていません。いま売りに出ている中古住戸の価格が、この集計のどこに当たるかを知るには、募集価格の側を別に調べる必要があります。登記の価格と募集の価格は違う数字です。
同じ住戸が前にいくらで取引されたのかも追えません。この集計は期間内の登記を横に並べたもので、1戸の売買履歴をつないだものではありません。したがって「中古で買って値上がりしたか」という問いにも答えられません。完成している物件を買ってから貸す場合の賃料の水準は、別の記録になります(ドバイの家賃データ)。
そして、DLDの公表は後から修正されることがあります。直近の期間ほど変わる可能性が高いため、当サイトでは90日ごとに取り直して数字を見直しています。この記事の集計は2026年8月28日に作ったファイルにもとづいており、同じ条件でいま取り直すと値が動くことがあります。
件数が多いことは、選択肢が多いという意味です。値上がりしやすいという意味ではありません。この記事は過去に登記された事実の集計であって、将来の価格を示すものではありません。値上がり、賃料収入、利回りのいずれについても、当社は保証しません。