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ドバイの家賃データ|新規契約と更新契約で水準が違う

DLDに登録された住宅の賃貸契約441,232件では、新規契約の年額中央値が75,000 AED、更新契約が62,090 AEDです。差を作っている更新時の上限と、エリアを面積あたりで比べる手順を、政府の公表資料で確かめられる範囲だけ示します。

ドバイで登録された住宅の賃貸契約のうち、真ん中の1件の家賃はいくらだったのか。Dubai Land Department(DLD、ドバイ土地局)の公開データを当サイトが集計した値では、2026年1月1日から8月25日までに登録された住宅の賃貸契約441,232件のうち、新しく結ばれた契約173,959件の年額中央値は75,000 AEDでした。同じ期間に更新された契約267,273件は62,090 AEDです。同じ市場の同じ住宅の記録なのに、契約の種類を分けるだけで代表値が変わります。

この違いは、集計のくせではありません。ドバイには更新時の賃料の引き上げに上限があり、住み続けている人の賃料は、新しく入る人の賃料より低いところに留まります。だから「ドバイの家賃はいくらか」という問いには、少なくとも2つの答えがあります。これから借りる人が見るべき数字と、更新を迎える人が見るべき数字は違います。

この記事は、その2つの数字を分けて置き、差を作っている決まりを一次情報で確かめ、エリアを比べるときに何に直せばよいかまでを順に扱います。金額はすべてAEDのままで、円には換算していません。為替は日々動くため、換算した数字は書いた時点から事実と離れていきます。出典の層も先に断っておきます。ここに出す集計値は、DLDが公表している統計ではなく、DLDの原記録を当サイトが集計したものです。引用するときは後者として扱ってください。系列の入口はドバイのデータ、この系列の一覧は家賃データにあります。特定の物件や事業者を勧める記事ではありません。値上がりも賃料収入も利回りも、当社は保証しません。

「家賃の相場」は、契約の種類で2つに分かれます

ドバイの住宅の賃貸登録441,232件を契約の種類で分けた比較。新規契約は173,959件で年額の中央値75,000AED、平均112,604AED、1平米あたりの年額中央値972.8AED。更新契約は267,273件で年額の中央値62,090AED、平均83,270AED、1平米あたりの年額中央値734.2AED
左が新しく結ばれた契約、右が更新された契約です。4つの指標すべてで、更新の側が低い値になっています。件数の合計は441,232件で、1契約1物件の住宅だけを数えています。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの登録記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/確認日 2026-10-16)

年額の中央値は、新規契約が75,000 AED、更新契約が62,090 AEDです。更新の側が低く、年額で1万2千AED台の開きがあります。面積あたりに直すと差はもっと開きます。1平米あたりの年額中央値は、新規契約が972.8 AED、更新契約が734.2 AEDで、新規のほうが3割ほど高い水準です。年額の差より開きが大きいので、2つの区分では住戸の広さの構成も違っているはずです。ただし当サイトの集計では面積の構成まで突き合わせていないため、ここは観察までにとどめます。

平均は、どちらの区分でも中央値から離れます。新規契約の平均は112,604 AEDで中央値より5割ほど高く、更新契約の平均は83,270 AEDで3割ほど高い値です。面積あたりではさらに極端で、新規の平均は1,930.4 AEDと中央値の2倍近く、更新の平均は2,971.8 AEDと中央値の4倍を超えます。1平米あたり1,000,000 AEDに達する記録が母集団に残っているためで、面積あたりの平均は賃料の水準として使えません。この記事が中央値を主にしているのは、この理由です。平均と中央値がなぜこれだけ離れるのかは、売買の側で価格の中央値と平均に書いています。

数え方の両端も書いておきます。新規契約の年額には最小値が0 AEDの記録が含まれ、最大値は175,000,000 AEDです。更新契約は最小値1 AED、最大値110,250,000 AEDでした。無償の契約なのか記入漏れなのかを当サイトでは特定できていないため、除外せずそのまま数えています。中央値はこうした両端に動かされませんが、平均は引っ張られます。

更新の側が低いのは、上げ幅に上限があるからです

ドバイで賃貸契約を更新するときに上げられる賃料の上限を5段階で示した図。指数の平均賃料より10%以下しか低くない場合は引き上げなし、11から20%低い場合は5%まで、21から30%低い場合は10%まで、31から40%低い場合は15%まで、40%を超えて低い場合は20%まで
いまの賃料が指数の平均賃料からどれだけ低いかで、更新時に上げられる上限が5段階に決まります。段階の区切りと上限の数字は政令の条文そのままで、当サイトの試算ではありません。 出典:Dubai Legislation Portal|Decree No. (43) of 2013 Determining Rent Increase for Real Property in the Emirate of Dubai(確認日 2026-10-16)

ドバイでは、賃貸借契約を更新するときに上げられる賃料の幅が政令で決まっています。2013年12月18日に発せられた Decree No. (43) of 2013 が、いまの賃料と類似物件の平均賃料の差に応じて、引き上げの上限を段階で定めています。平均より10%以下しか低くないなら引き上げはできず、11%から20%低いなら5%まで、21%から30%低いなら10%まで、31%から40%低いなら15%まで、40%を超えて低いなら20%までです。第2条では、この政令が民間と公的機関のどちらの貸主にも適用され、特別開発区域やドバイ国際金融センター(DIFC)のようなフリーゾーンも対象に含まれると定められています。

ここで肝心なのは、比べる相手が「近隣の相場観」ではないことです。第3条は、類似物件の平均賃料をRERA(Real Estate Regulatory Agency、不動産規制機関)が承認した「ドバイの賃料指数」に従って決めると書いています。指数が返す平均値が判定の基準で、この記事に出した中央値で上限を判定することはできません。当サイトの集計は登録された契約を区分ごとに数えたもので、個別の住戸がどの建物のどの階にあるかを織り込んでいないためです。

判定を自分で確かめる経路は用意されています。DLDの「Rental Index」で、契約の終了日、物件の種別、寝室の数、面積、いま払っている年額賃料、エリアや建物名を入れると、その物件についての照会ができます。物件の特定にはDEWA(水道・電気)の番号やEjariの契約番号が使えます。指数は住宅だけでなく、商業用、工業用、工業用地、スタッフ宿舎に分かれていて、住宅と同じ尺度で商業用を見ないように区分されています。上限や更新をめぐる手続きそのものはドバイの賃貸借法で扱っています。

この上限は、あくまで契約を更新するときの定めです。新しく結ぶ契約の賃料には当てはまりません。だから新規契約の記録は市場で合意された水準に近く、更新契約の記録は上限に押さえられた水準を含みます。2つを混ぜた「平均的な家賃」は、契約の種類の構成比だけで動きます。更新が267,273件、新規が173,959件と更新のほうが多いため、混ぜると全体は低い側へ寄ります。

この数字が残っているのは、登録が義務だからです

Dubai Legislation Portalに掲載されたLaw No. 26 of 2007の公式法令ページの表示
引用キャプチャ貸主と借主の関係を定めた Law No. 26 of 2007 の原文ページです。第4条で、この法律の対象になる賃貸借契約はRERAに登録されると定められています。このページに家賃の相場は出ていません。相場は、ここに登録された契約の記録を集計して初めて出てきます。 出典:Dubai Legislation Portal|Law No.26 of 2007(当サイトが2026-09-02に取得したファーストビュー/再確認日 2026-10-16)

ドバイの家賃データが数十万件の単位で存在するのは、賃貸借契約の登録が義務づけられているからです。Law No. 26 of 2007 の第4条は、賃貸借契約を書面にすることと、この法律の対象になる契約をRERAに登録することを定めています。UAE政府の案内ページも、ドバイでは貸主が賃貸借契約をDLDに登録しなければならないと書いています。この登録の仕組みがEjari(イジャリ)で、当サイトの家賃データはその登録記録から来ています。登録の手続きそのものはEjariの登録で扱っています。

登録された金額は、記録として残るだけではありません。UAE政府の案内では、借主はドバイ市に対して年間賃料の5%にあたる住居料を払うと書かれています。つまり登録された年額は、手続きや負担の基準になる数字です。相場を調べる側から見れば、売り出しの広告と違って合意されて登録された金額が集まっているということで、ここがこのデータの強みです。

いっぽうで弱みもあります。登録されるのは成立した契約だけなので、いま募集されている賃料は入っていません。募集価格と成約額は、名前が似ていても別の数字です。現在の募集を知りたい場合は、このデータではなく募集側を別に調べることになります。

何を数え、何を外したのか

集計の範囲 行数 扱い
取得した賃貸契約の全行 720,629 住宅以外(労働者宿舎・商業用など)を含むため、そのままでは使いません
うち住宅(アパートメント・ヴィラ) 441,232 この記事が使う母集団です
1契約で複数物件を借りている契約 25,327 面積が1戸分しか記録されないため外しています
うち新しく結ばれた契約 173,959 市場で合意された水準に近い側
うち更新された契約 267,273 更新時の上限に押さえられた水準を含む側

取得した賃貸の記録は全体で720,629行あります。そこから住宅用で、かつ物件の区分がアパートメント(原語はFlat)またはヴィラ(Villa)の行だけを残しました。労働者宿舎や商業用の賃貸は、住宅の賃料水準とまったく違うためです。さらに1つの契約で複数の物件を借りている25,327件を外しています。社宅の一括契約などがこれにあたり、賃料は契約全体なのに面積は1戸分しか記録されないため、面積あたりの単価が出せません。残った441,232件が、この記事で扱う母集団のすべてです。

住宅の区分で分けると、アパートメントが400,998件で年額の中央値63,000 AED、平均80,834 AEDです。ヴィラは40,233件で中央値174,250 AED、平均234,380 AEDでした。ヴィラの中央値はアパートメントの2倍以上になります。ただしこの2つは新規契約と更新契約を合算した値なので、上で見た新規と更新の区分とは切り口が違います。種別と契約の種類を同時に絞った値は、当サイトではまだ出していません。

件数についての注意もあります。ここでの件数は行数、つまり登録された物件の数です。また新規契約の中央値と平均は、年額の記録が無い1件を除いた173,958件から出しています。母数が1件ずれるのは、読者が同じ数字を再現するときに引っかかるので、そのまま書いておきます。

エリアを比べるなら、面積あたりに直します

ドバイの区画別に新規契約の1平米あたり年額賃料の中央値を並べた横棒グラフ。アル・ハイラン 1は9,747件で1,362.3AED、ブルジュ・ハリファは8,754件で1,676AED、ビジネスベイは8,252件で1,283.7AED、マルサ・ドバイは6,601件で1,184AED、ジェベル・アリ 1は5,676件で935.9AED、アル・メルカドは4,874件で1,372.9AED、アル・サニヤ 5は3,044件で1,101.1AED、アル・バルシャ 1は2,661件で898AED
棒の長さは1平米あたりの年額賃料の中央値、ラベルの下の数字はその区画で数えた新規契約の件数です。並べた順は賃料の高い順ではなく、契約件数の多い順です。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの登録記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/確認日 2026-10-16)

エリアごとの年額をそのまま並べても、比べたことになりません。住戸の広さが違えば年額も違うためです。面積あたりに直すと、広さの差を外して比べられます。新規契約の全体の中央値は1平米あたり972.8 AEDで、契約件数の多い区画はその上下に散らばります。ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)が1,676 AEDでいちばん高く、アル・メルカド(Al Merkadh)が1,372.9 AED、アル・ハイラン 1(Al Khairan First)が1,362.3 AED、ビジネスベイ(Business Bay)が1,283.7 AEDと続きます。マルサ・ドバイ(Marsa Dubai、通称ドバイ・マリーナ)は1,184 AED、ジェベル・アリ 1(Jabal Ali First)は935.9 AED、アル・バルシャ 1(Al Barsha First)は898 AEDでした。

この8つの選び方を書いておきます。もとにしたのは、賃貸と売買のどちらも同じ区画・同じ種別で30件以上ある50組です。この条件は利回りを出すために置いたもので、賃貸の件数だけが多い区画はここに現れません。そのうえで賃貸の契約件数が多い順に8組を取りました。8組はすべてアパートメントで、ヴィラで件数がいちばん多いのはワディ・アル・サファ 5(Wadi Al Safa 5)の1,739件・872 AEDです。賃料の高い順に並べた一覧ではありません。

面積あたりの数字は、自分の候補にそのまま当てられます。気になっている住戸の専有面積に、その区画の1平米あたりの中央値を掛ければ、年額の目安が出ます。ただし当サイトの集計には建物名、階数、家具の有無、支払いの条件が入っていません。同じ区画・同じ面積でも実際の提示額は違うので、目安から外れた金額を見たときは、その住戸の条件を確かめるのが先です。区画の読み方そのものはエリア別データに書いています。

区画名についても注意があります。DLDの公式表記は英語で、カタカナは読み方の目安です。アル・サニヤ 5(Al Thanyah Fifth)はジュメイラ・レイクス・タワーズ(JLT)と呼ばれる区域の周辺にありますが、DLDには Jumeirah Lakes Towers という別の区画が存在します。名前が似ているものを同じ区画として足さないでください。

立場によって、見る数字が変わります

あなたの立場 先に見る数字 注意すること
これから借りる 新規契約の中央値と、その区画の面積あたりの中央値 更新契約の水準は当てになりません。いま募集されている賃料とも別の数字です
更新を迎える 自分の契約書の年額と、DLDのRental Indexが返す平均賃料 上限の判定に、この記事の中央値は使えません
貸す側として見る 新規契約の水準と、更新時の上限の両方 更新のたびに上限が効きます。入れ替わりと据え置きの差は、ここから生まれます
利回りを調べる 新規契約だけを、同じ区画・同じ種別でそろえた値 賃料の中央値を価格の中央値で割っただけの数字は、同じ物件の実績ではありません

同じ「家賃」という言葉でも、必要な数字は立場で変わります。これから借りる人にとって、更新契約の中央値は手に入らない条件です。逆に更新を迎える人にとって、新規契約の中央値は上限の根拠になりません。どちらも正しい数字で、答えている問いが違うだけです。

利回りを出すときは、もうひとつ条件が増えます。賃料の側は新規契約だけにそろえ、売買の側と区画も物件種別も一致させ、件数のしきい値を決めたうえでしか計算になりません。賃料の中央値を価格の中央値で割った数字は、別々の物件の比です。同じ1戸の実績ではないので、個別物件の利回りとしては使えません。手順はドバイ不動産の利回り比較にあります。

この集計では答えられないこと

最後に、この数字で言えないことを並べます。

これは登録された契約の記録です。募集中の賃料、交渉の途中で流れた条件、登録されていない契約は入っていません。空室の割合も分かりません。登録の件数は契約の数であって、空いている住戸の数を示すものではないからです。

期間は2026年1月1日から8月25日までで、前年との比較ができません。DLDの照会画面が当年ぶんしか返さないためです。「家賃が上がったのか下がったのか」という問いには、この集計では答えられません。代表値は母集団の構成で動くので、仮に前年のデータがそろっても、構成の違いを確かめないまま前年比だけを読むことはできません。

賃料以外の負担も入っていません。住居料、水道・電気の保証金、仲介手数料、更新時の費用は年額賃料に含まれません。中央値をそのまま予算にすると足りなくなります。また、DLDの公表は後から修正されることがあり、直近の期間ほど変わる可能性があります。この記事の集計は2026年8月28日に作ったファイルにもとづいており、同じ条件でいま取り直すと値が動くことがあります。当サイトでは90日ごとに取り直して見直しています。

そして、ここに並べた数字は過去に登録された事実の集計です。将来の賃料を示すものではありません。面積あたりの賃料が高い区画があっても、それは登録された契約の構成がそうなっていたという意味で、これから上がるという意味ではありません。値上がりも賃料収入も利回りも、当社は保証しません。