月次・年次レポート/データ

ドバイ不動産の市場レポート|四半期の公式発表と月次集計の差

ドバイ土地局が四半期・年次に公表する取引額と、同じDLDの登記記録を当サイトが月次で集計した値は一致しません。数えている範囲が違うためです。2026年第1四半期のAED252 billionと、1月から7月の件数・中央値・面積あたり単価を並べます。

「ドバイの不動産市場レポート」として出てくる数字には、作りの違う2種類があります。片方は、ドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)が四半期や年の節目に発表する取引額です。2026年第1四半期はAED252 billionと公表され、手続きの件数は718,160件、そのうち不動産取引は60,303件と書かれています(2026年4月9日付の発表)。もう片方は、同じDLDが配っている登記の原記録を自分で集計した値です。当サイトが2026年1月1日から8月25日までの記録を集計すると、Salesとして登記された売買は110,525件、取引額の合計は344,652,673,911 AEDでした。

この2つは一致しません。どちらかが誤っているわけではなく、数えている範囲と期間の切り方が違います。発表の側は不動産に関する手続き全体から順に絞り込んだ数字で、集計の側は売買の行だけを抜き出した数字です。市場レポートを引用するときにこの区別を落とすと、同じ「ドバイの取引額」という言葉で別のものを指すことになります。

この記事は2026年についての定点の記録です。公式発表として出ている四半期・年次の値を先に並べ、次に当サイトの月次集計を並べ、2つの関係を示します。そのうえで、月ごとの取引額の中央値が約38%下がって見えるのに面積あたりの単価は約6%しか動いていないこと、その差を作っている区画がどこなのかまでを、同じ1つの集計から追います。金額はすべてAEDのままで、円には換算していません。為替は日々動くため、換算した数字は書いた時点から事実と離れていきます。系列の入口はドバイのデータ、この系列の一覧は月次・年次レポートにあります。将来の価格を予想する記事ではなく、当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。

公式発表の件数は、3段の入れ子になっています

ドバイ土地局が2026年第1四半期について公表した件数の入れ子構造。外側が不動産の手続き718,160件、その内側が不動産取引60,303件、さらに内側が投資としての取引57,744件とAED173 billion。取引の総額はAED252 billionで、投資のうち外国人によるものはAED148.35 billion
外側の箱が内側を含みます。発表に出てくる3つの件数は別々の集団ではなく、絞り込みの段階が違うだけです。 出典:Dubai Land Department|Dubai's real estate transactions surge 31% to reach AED 252 billion in Q1 2026(2026年4月9日付/確認日 2026-10-16)

2026年第1四半期の発表には、件数が3つ出てきます。いちばん外側が不動産の手続き(procedures)で718,160件、その内側が不動産取引(transactions)で60,303件、さらにその内側が投資としての取引(investments)で57,744件です。投資の金額はAED173 billionと書かれ、そのうち外国人によるものがAED148.35 billionとされています。前年の同じ期間と比べると、取引の件数は6%、投資の金額は22%増えたと書かれています。

ここを取り違えると桁を間違えます。718,160件は不動産取引の件数ではありません。売買のほかに賃貸の登録や各種の手続きを含んだ、窓口を通った処理の数です。これを取引の件数として引き写すと「ドバイでは四半期に70万件を超える不動産取引がある」という話になり、実際の十倍以上に膨らみます。

3つが入れ子である以上、足し合わせることもできません。手続きと取引と投資を合計すると、同じ案件を二重、三重に数えます。発表の数字を自分の資料へ写すときは、どの段の数字なのかを列の見出しに必ず残してください。段の名前を落とした数字は、あとから見分けられなくなります。

AED252 billionがどの段の金額なのかも押さえておきます。これは不動産取引の総額として示された値で、投資のAED173 billionはその内側です。つまり取引の総額から投資の金額を引いた残りが、投資として分類されなかった取引の金額ということになります。ただし発表にその内訳の表は付いていないので、ここから先の分解はできません。何がこの差に入るのかは、発表の文面からは読み取れないためです。

年次の発表も、同じ作りで出ています

対象期間 発表元・発表日 取引の金額 不動産取引の件数 手続きの件数
2024年(通年) DLD/2025年1月26日 AED761 billion 226,000件 2.78 million
2025年(通年) ドバイ政府メディアオフィス/2026年1月12日 AED917 billion 270,000件超 3.11 million
2026年 第1四半期 DLD/2026年4月9日 AED252 billion 60,303件 718,160件

年次の発表も、四半期と同じ3段の形で出ています。2024年の通年は取引額AED761 billion、取引の件数が226,000件、手続きは2.78 millionでした。2025年の通年は取引額AED917 billionで前年から20%の増加、取引の件数は270,000件を超え、手続きは3.11 millionと公表されています。件数は発表の時点で丸められています。226,000件や270,000件を1件単位の数字として扱わないでください。

2025年の発表には、手続きの3.11 millionが「売買、賃貸、あらゆる不動産サービスを含む」ものだと書かれています。この一文が、年次の数字をどう読むかを決めます。手続きの件数は不動産が売れた回数ではありません。賃貸の登録もサービスの申請も同じ列に入っています。したがって年ごとの手続きの増減を「売買がこれだけ増えた」と言い換えることはできません。

同じ発表では、投資としての取引がAED680 billion、その件数が258.6 thousand、投資家の数が193.1 thousand、そのうち新しく入った投資家が129.6 thousandとされています。数の単位は発表の表記のまま残しました。投資家の数は人の数で、取引の数とも金額とも単位が違います。3つの単位を1つの表に混ぜると、どの列が何を数えているのか分からなくなります。年次の数字を比べるときは、件数は件数、金額は金額、人数は人数で列を分けてください。

この表に当サイトの集計値を並べていないのは、意図的なものです。期間の区切りも対象の範囲も違う値を同じ表に置くと、読者が縦に比べてしまいます。次の節で、別の表として置きます。

同じデータを自分で集計すると、別の数字が出ます

取得した記録の全体は146,369行です。そこから取引の種類がSalesの行だけを残し、抵当権の登録(Mortgage)30,043行と贈与(Gifts)5,801行を外しました。抵当権は所有者が変わる取引ではなく、贈与の価格は市場の水準を表さないためです。残った110,525件が、この記事の売買に関する数字のすべてです。期間を通した取引額の中央値は1,424,503 AED、平均は3,118,323 AED、面積の中央値は77.6平米、オフプランの比率は68.6%でした。記録が立っている区画は240、プロジェクトは2,896です。

月 売買の件数 取引額の中央値 取引額の平均 1平米あたり単価の中央値 オフプランの比率 状態
2026年1月 17,413 1,844,888 4,149,195 19,244 64.3% 完了
2026年2月 17,028 1,684,104 3,569,569 18,724 62.1% 完了
2026年3月 13,511 1,673,414 3,227,622 18,700 70.1% 完了
2026年4月 14,021 1,700,000 3,432,483 19,731 72.9% 完了
2026年5月 10,273 1,206,960 2,813,038 17,741 72.3% 完了
2026年6月 13,932 1,157,050 2,383,937 18,171 72.5% 完了
2026年7月 14,144 1,137,420 2,469,560 18,133 69.1% 完了
2026年8月(25日まで) 10,203 1,181,048 2,238,957 18,189 69.0% 途中

第1四半期にあたる3か月の件数は、1月が17,413件、2月が17,028件、3月が13,511件です。3つを足しても、発表の60,303件には届きません。当サイトの集計が抵当権と贈与を外しているのが理由のひとつですが、差の内訳までは確かめられていません。発表の「不動産取引」に何が含まれるのかが公表されていないためです。確かめられない部分を推定で埋めると、以後その数字が独立した事実として引用されます。ここは空けておきます。

数え方にはもう2つ、断っておくことがあります。1つは件数が行数であることです。1つの取引番号が複数の行に分かれることがあるため、契約の件数とは一致しません。もう1つは、8月が25日までの途中の月であることです。7月と8月の件数を増減として比べることはできません。観測した日数が違います。残りの日数ぶんを比例で伸ばす処理も、この記事では行いません。残りの期間に同じ割合で登記が入る根拠が、このデータの中にないからです。

この集計がDLDの公式統計ではないことも、はっきりさせておきます。当サイトの値はDLDの原記録を当サイトの定義で集計したものです。引用するときは「DLDの公開データをもとにした集計」として扱ってください。代表値の作り方そのものは価格の中央値と平均、価格帯ごとの厚みは価格帯の分布に分けて書いています。

中央値は約38%下がり、面積あたりの単価は約6%しか動いていません

ドバイで登記された売買の月次集計。取引額の中央値は2026年1月1,844,888AEDから7月1,137,420AEDへ下がり、1平米あたりの単価の中央値は同じ期間に19,244AEDから18,133AEDへしか動いていない折れ線2本
上が取引額の中央値、下が1平米あたり単価の中央値です。2つは目盛りが別で、どちらも0から始まっていません。線の傾きの大きさを見比べないでください。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの登記記録をReheatが集計(確認日 2026-10-16)

完了した7か月だけを見ると、取引額の中央値は1月の1,844,888 AEDから7月の1,137,420 AEDへ下がっています。下げ幅は約38%です。平均も4,149,195 AEDから2,469,560 AEDへ、約40%下がりました。数字としては大きな動きです。

ところが同じ月の1平米あたりの単価の中央値は、19,244 AEDから18,133 AEDへ約6%しか下がっていません。4月には19,731 AEDまで上がった月もあります。総額が約38%動いた期間に、面積あたりの単価は数パーセントの幅に収まっています。

2つの数字が同じ向きに同じ幅で動かないのは、月次の代表値が同じ住戸を追った指数ではないためです。各月の中央値は、その月に登記された売買を並べた真ん中の1件です。前月と翌月で同じ住戸が売られたことを前提にしていません。したがって総額の中央値の変化には、価格の水準の変化と、登記された住戸の構成の変化が重なって入ります。面積あたりの単価がほとんど動いていないという観測は、広さの小さい住戸の比重が増えたことと整合します。

ただし、これは観測の整合であって証明ではありません。総額の中央値の対象になった1件と、単価の中央値の対象になった1件が同じ住戸だとは限りません。構成の変化がどれだけ寄与したかを数字で分けるには、条件をそろえた別の集計が必要です。次の節では、構成が実際に動いた場所を1つ特定します。

下がり方の一部は、1つの区画の件数で説明できます

2026年の各月にドバイで登記された売買の件数のうちMadinat Al Mataarが占める割合。1月は782件で全体17,413件の約4%、6月は2,645件で13,932件の約19%まで上がり、7月は2,247件で14,144件
帯の全体がその月のドバイ全体の件数、濃い部分がMadinat Al Mataarの件数です。割合は件数どうしの比で、取引額の割合ではありません。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの登記記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/確認日 2026-10-16)

期間を通した売買の件数が最も多い区画はMadinat Al Mataarで、11,269件です。ドバイ全体110,525件の約1割を、この1区画が占めています。取引額の中央値は948,000 AED、面積の中央値は61.4平米、オフプランの比率は97.5%です。間取りではストゥディオが5,280件で最も多く、その中央値は654,000 AEDでした。件数が多く、1戸が小さく、価格の低い区画だということになります。日本語ではドバイ・サウスと呼ばれる地区で、区画としての詳細はドバイ・サウスの不動産にあります。

この区画の件数は、期間の中で大きく動いています。1月は782件で、その月のドバイ全体17,413件の約4%でした。6月は2,645件、その月の全体13,932件の約19%です。全体に占める割合が4倍近くになりました。価格の低い区画の比重がこれだけ増えれば、ドバイ全体の中央値は押し下げられます。登記された住戸の構成が変わったという説明が、ここで具体的な場所を持ちます。

区画の内側でも同じことが起きています。この区画の取引額の中央値は1月の1,570,888 AEDから6月の704,620 AEDへ、約55%下がりました。ところが同じ区画の1平米あたりの単価は16,130 AEDから18,471 AEDへ、約15%上がっています。価格の水準が下がったのではなく、登記されている住戸が小さいものへ移ったということです。オフプランの比率も1月の85.3%から6月の99.5%へ上がっています。

区画 売買の件数 取引額の中央値 面積の中央値 オフプランの比率 1月の中央値 7月の中央値
Madinat Al Mataar(ドバイ・サウス) 11,269 948,000 61.4平米 97.5% 1,570,888 724,000
Jumeirah Village Circle(JVC) 6,912 1,029,847 70.6平米 57.4% 1,030,000 941,948
Business Bay(ビジネスベイ) 4,470 2,275,000 83.8平米 52.2% 2,517,397 1,744,315

件数の多い3区画を並べると、動き方が同じでないことが分かります。JVCの中央値は1月の1,030,000 AEDから7月の941,948 AEDへ、約9%の動きです。ビジネスベイは2,517,397 AEDから1,744,315 AEDへ約31%下がり、1平米あたりの単価も29,527 AEDから22,727 AEDへ約23%下がりました。この区画ではオフプランの比率が1月の58.3%から7月の36.4%へ下がっており、総額と単価が同じ向きに動いています。区画によって、起きていることが違います。

ここで止めておきたい線を引きます。見たのは240区画のうちの3つです。全体の中央値の動きを、この3区画で説明し尽くしたことにはなりません。残りの区画がどう動いたかは、同じ形で区画ごとに確かめる必要があります。区画の中を間取りでそろえて比べる手順はエリア別データの読み方、オフプランの比率そのものの扱いはオフプラン取引データに分けて書いています。

期間の数字は、発表の形で出てきます

ドバイ土地局が上期の市場指標を示した発表ページの表示
引用キャプチャドバイ土地局が期間の指標を示した発表ページです。内訳の表やデータファイルは付いていません。だから月別・区画別の数字が必要になると、原記録を自分で集計することになります。 出典:Dubai Land Department|Dubai Land Department advances investor confidence, innovation and Emirati empowerment at IPS 2026, expanding real estate opportunities(当サイトが2026-09-08に取得したファーストビュー/再確認日 2026-10-16)

DLDが期間の数字を出す形は、冊子になった定期レポートではなく発表のページです。四半期や年の節目、あるいは展示会の場で、要点となる指標が文章として示されます。だから数字は読めても、そのもとになった表は同じページに置かれていません。

この形の良いところは、どの機関が、いつ、何を公表したのかが明確に残ることです。発表日とページがあるので、読者が同じ数字へたどり着けます。弱いところは、分解ができないことです。エリア別、間取り別、月別の内訳は、発表からは取れません。

役割の分担はここで決まります。市場の規模や前年との比較を示したいときは公式発表を引きます。自分の候補にあてはめて条件を絞りたいときは原記録の集計を使います。2つを混ぜて1つの表にしないことが、この記事でいちばん伝えたい点です。供給の側の期間値をどう扱ったかは上期に完成したプロジェクトにあります。

賃料の中央値は、同じ8か月でほとんど動いていません

月 新しく結ばれた賃貸契約 年額の中央値
2026年1月 25,670 75,000
2026年2月 22,876 80,000
2026年3月 14,717 75,000
2026年4月 16,070 74,000
2026年5月 17,155 75,000
2026年6月 25,437 76,000
2026年7月 27,617 75,000
2026年8月(25日まで) 24,417 77,000

同じ期間の賃貸の側も並べておきます。住宅について新しく結ばれた契約は期間を通して173,959件あり、その年額の中央値は月ごとに74,000 AEDから80,000 AEDの幅に収まっています。売買の中央値が約38%動いた同じ8か月で、賃料の代表値はほとんど動いていません。

この対比は、そのまま結論にはできません。賃貸と売買は別の市場で、別の決まりが働いています。賃貸には更新時の引き上げに上限があり、新しく結ぶ契約と更新する契約で水準が分かれます。賃料が動いていないことを「売買の価格水準も下がっていない」ことの証明として使わないでください。分かるのは、2つの系列が同じようには動いていないという事実だけです。契約の種類による分かれ方はドバイの家賃データで扱っています。

それでも、この表を置く意味はあります。売買の中央値が約38%下がったという1つの数字だけを見ると、市場全体が3分の2の水準へ落ちたように読めます。同じ期間の別の系列を並べると、その読み方が強すぎることが分かります。1つの代表値で市場を語らないための材料として使ってください。

この記録で言えないこと

最後に、この定点の記録で答えられないことを並べます。

前年との比較ができません。DLDの照会画面は当年ぶんしか返さないため、当サイトの月次集計は2026年の中だけで完結しています。「前年同月から何パーセント」という形の数字は、この集計からは作れません。公式発表の側には前年比が書かれていますが、それは発表の定義での前年比であって、当サイトの集計に当てはめられるものではありません。

数字が後から変わります。DLDの公表は修正されることがあり、直近の期間ほどその可能性が高いです。この記事の集計は2026年8月28日に作ったファイルにもとづいています。同じ条件でいま取り直すと、過去の月の値まで動くことがあります。当サイトでは90日ごとに取り直し、そのときは最新月を足すだけでなく過去月の値も見比べます。

募集中の条件は入っていません。これは登記された取引の記録です。売り出されている価格、成約に至らなかった条件、登記されていない取引は含まれません。供給の過不足も、この集計からは分かりません。登記の件数は売れた住戸の数であって、空いている住戸の数ではないからです。

そして、ここに並べた数字は過去に記録された事実の集計です。将来の価格を示すものではありません。中央値が下がった月があっても、それは登記された住戸の構成がそうなっていたという意味で、これから下がるという意味ではありません。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。