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Aldarが初めてシャルジャへ|AED 1.1 billionで住宅9棟を取得

AldarとAradaが2026年10月15日に公表したAED 1.1 billionの先渡し取得契約を、取得する住宅9棟1,100戸超の中身、2029年第4四半期という引き渡し時期、そして保有して貸すdevelop-to-holdの意味に分けて、発表の記載だけで整理します。

アブダビを本拠とするディベロッパーのAldarは2026年10月15日、AradaとのあいだでAED 1.1 billionの先渡し取得契約(forward purchase agreement)を結んだと公表しました。対象はシャルジャの大規模複合開発Aljadaにある住宅9棟で、3つのブロックにまたがる1,100戸超です。発表には、これがAldarにとってシャルジャでの初めての不動産投資であり、保有を前提とした事業(develop-to-hold)の規模がAED 21 billionへ広がると書かれています。

数字の並びだけを見ると、新しい住宅が1,100戸以上売りに出るかのように読めます。しかしこの発表に書かれているのは、Aldarが建物を買って持ち続ける側に回るという取引です。個人の買主へ分譲するとは書かれておらず、価格、家賃、利回り、販売の開始日もいっさい出てきません。発表の主体は民間の2社で、Dubai Land Department(DLD)やAbu Dhabi Real Estate Centre(ADREC)といった政府機関の公表ではありません。

この記事では、まず取引の形を3者に分けて確かめます。次に、公表されている日付が3つしかないことを示し、Aljadaという場所について発表が何を書いているかを並べます。そのうえで、発表に書かれていない項目を列挙し、最後にシャルジャで外国人が取れる権利がドバイやアブダビとどう違うかをUAE政府の案内で確認します。金額はすべてAEDの表記のまま置き、円への換算は行いません。数値はAldarとAradaの発表本文、およびUAE政府ポータルからの転記で、当サイトが推計した値はありません。

建てる会社と持つ会社が分かれています

2026年10月15日に公表されたAldarとAradaの先渡し取得契約の組み立てを、上から下へ3段の流れで示した図。1段目はAradaで、Aljadaの住宅9棟を建設し2029年第4四半期に引き渡すと記載があり、Aljadaは延べ2.2 million sqm、完成時は約25,000戸の計画。2段目はAldarで、AED 1.1 billion の forward purchase agreement により1,100戸超を取得し、保有目的の事業の規模は AED 21 billion へ拡大すると記載。3段目は入居者で、発表は end-users and long-term renters 向けと書いており、分譲として個人へ売り出すとは書かれていない。最下段に、この取引で住戸の所有者になるのはAldarであり、個人の買主が登記する分譲の取引ではないこと、価格・家賃・利回りの記載もないことを置いている
建設と引き渡しを担うのがArada、完成後に保有するのがAldarです。買主の立場に立つのは個人ではなくAldarで、住まい手として想定されているのは借りる側だと発表に書かれています。 出典:Arada|Aldar marks first entry to Sharjah with AED1.1 billion acquisition of nine residential buildings from Arada in Aljada(確認日 2026-10-16)

先渡し取得契約という言い方は、日本の不動産の取引ではあまり使われません。発表の英語は forward purchase agreement で、これから建つ建物を、完成前の時点で買う約束をしておく契約を指します。建てるのは売り手側で、買い手は完成したものを受け取ります。今回は、建てて引き渡すのがArada、受け取って保有するのがAldarです。

この形が、個人が建設前の住戸を買うオフプランの売買と似ているように見えるのは確かです。ただし、オフプランでは住戸1戸ごとに買主が登記され、完成後はその人が所有者になります。今回の対象は棟の単位で、発表の表現も three residential blocks、nine buildings です。1戸ずつばらして売る取引ではありません。

Aldarの側の説明も、この点をはっきり書いています。発表にあるGroup Chief Executive Officerの発言は、この投資が develop-to-hold の方針に沿うもので、residential for rent のポートフォリオに規模を加えるという内容です。買って持ち、貸して収益を得る資産として扱う、という説明にあたります。Arada側のGroup Chief Executive Officerの発言は、Aldarの選択がAljadaとシャルジャの住宅市場に対する評価のあらわれだというものです。

誰が住むのかについては、発表に end-users and long-term renters という書き方があります。自分で住む人と、長く借りる人を想定した住まいという意味です。投資用に小口で売り出す計画は、発表のどこにも書かれていません。

「1,100戸が売り出される」という話ではありません

供給の数字は、読み替えが起きやすいところです。1,100戸という数は確かに公表されていますが、それはAldarが取得する住戸の数であって、市場に売り物として出る数ではありません。両者を同じものとして扱うと、供給の見立てを誤ります。

賃貸として市場に出るのかどうかも、発表からは断定できません。residential for rent のポートフォリオに加わるとは書かれていますが、賃貸に出す戸数、賃料の水準、募集を始める時期の記載はありません。したがって、この1,100戸が借りる側の選択肢をいつどれだけ増やすのかは、現時点では分かりません。

この取引がドバイやアブダビの物件選びに直接効くかというと、対象がシャルジャである以上、同じ市場の供給ではありません。ドバイとシャルジャは行政区分が別で、不動産の登記も規制の主体も分かれています。通勤できる距離にあることと、同じ市場であることは別です。発表はAljadaがシャルジャ国際空港から7分、ドバイ国際空港からおよそ20分の位置にあると書いていますが、これは立地の説明であって、市場をまたいで価格や家賃が連動することを示すものではありません。

いっぽうで、この発表に意味があるとすれば、ディベロッパーを見る材料としてです。Aldarはアブダビで販売を続けている会社で、日本から検討する人が名前を目にする機会も多い相手です。その会社が、売って手放す事業だけでなく、持ち続けて貸す事業を広げているという事実は、会社の性格を見るうえで手がかりになります。公表されている実績でディベロッパーを並べる手順はアブダビのディベロッパー比較にまとめています。

公表されている日付は3つだけです

AldarとAradaの提携について公表されている3つの日付を左から右へ並べた時系列の図。1つ目は2026年9月30日のAED 15 billion の提携で、対象はアブダビ、Aradaがヤス島の3区画をAldarから取得し、Seih Sdeirahで合弁を組む。2つ目は2026年10月15日のAED 1.1 billion の取得で、対象はシャルジャのAljada、住宅9棟・1,100戸超の3ブロックをAldarが先渡しで取得し、同首長国でAldar初の投資、保有目的の事業の規模はAED 21 billionへ拡大。3つ目は2029年第4四半期でAradaが引き渡す予定、引き渡し後はAldarが保有し長期の賃借人向けと記載、着工と完成の日付、家賃と利回り、販売の予定の記載はない。下段に、この3点のあいだに買う側が動く日付はないことを置いている
左の提携は2026年9月30日の発表、中央が今回の取得、右が引き渡しの予定です。3点のあいだに、買う側や借りる側が動く日付は置かれていません。 出典:Arada(2026年9月30日公表)/Arada(2026年10月15日公表)(確認日 2026-10-16)

今回の取得は、単独の出来事ではありません。両社は2026年9月30日に、総額およそAED 15 billionの提携を公表しています。そちらはアブダビが対象で、Aradaがヤス島の3区画をAldarから取得し、Seih Sdeirahでは両社が合弁で複合コミュニティを開発するという内容でした。この提携の中身はAldarとAradaのアブダビでの提携に分けて書いています。

今回の発表は、その提携を踏まえた次の段階だと説明されています。前回はAradaがアブダビへ入る取引で、今回はAldarがシャルジャへ入る取引です。方向が逆になっている点が、この2件の関係を理解するうえでの要点です。

引き渡しの時期として示されているのは2029年第4四半期だけです。着工の日付、各棟の完成の日付、入居が始まる時期は書かれていません。発表の言い方は、資産がAradaによって2029年第4四半期に引き渡されるというもので、そこから先の運用の日程には触れていません。期間が3年以上あるため、途中の経過は追加の公表を待つことになります。

Aljadaについて発表に書かれていること

Aljadaはシャルジャの大規模な複合開発で、発表はその規模と現況を具体的に書いています。ここに出てくる数字は、今回取得する9棟のものではなく開発全体のものです。混ぜて読まないようにしてください。

項目 発表の記載
開発の面積 2.2 million sqm
完成時の住戸数 約25,000戸(at full build-out)
想定される総販売額 AED 35 billion(anticipated gross sales value)
引き渡しの開始 2021年から複数の地区で進行中
引き渡し済みの戸数 8,800戸超
完成している施設 Madarの娯楽地区、国際学校2校、ホテル2軒、Nestの学生住宅
商業床 300,000 sq ft超が入居済み
交通の便 シャルジャ国際空港から7分、ドバイ国際空港からおよそ20分
今後の開発 Arada Central Business DistrictとMadar Mall

この表で確かめておきたいのは、Aljadaがこれから始まる開発ではないということです。引き渡しは2021年から続いていて、すでに8,800戸を超える住戸が渡っています。学校、ホテル、商業施設も稼働しているという記載です。Aldarが買う9棟は、できあがりつつある街の中に加わる建物にあたります。

いっぽう、総販売額AED 35 billionという数字は想定であって実績ではありません。発表にも anticipated という語が付いています。完成時の約25,000戸も計画の数で、いつ到達するかは書かれていません。計画の数字と、引き渡し済みの8,800戸超という実績の数字は、別の物差しです。同じ表に並んでいても足し引きはできません。

この発表に書かれていないこと

買う側、借りる側が知りたい項目は、この発表にほとんど出てきません。推測で埋めず、記載の有無をそのまま並べます。

項目 発表の記載
取得の総額 AED 1.1 billion
取得する住戸数 1,100戸超(9棟・3ブロック)
引き渡しの時期 2029年第4四半期
1戸あたりの取得額 記載がありません
分譲として売り出す計画 記載がありません
賃料の水準・募集の開始時期 記載がありません
利回り 記載がありません
間取り・専有面積 記載がありません
棟ごとの戸数の内訳 記載がありません
着工と完成の日付 記載がありません
外国人が取得できるかどうか 記載がありません

1戸あたりの金額を出したくなりますが、AED 1.1 billionを1,100戸で割ってはいけません。発表は取得の総額が住戸だけの対価だとは書いておらず、棟に含まれる共用部分や設備の扱いも示していません。割って出した数字は、どの公表値とも照合できない当サイト独自の推計になってしまいます。

外国人が取得できるかどうかが書かれていない点も重要です。今回の取引はAldarという法人による取得で、個人の外国人が同じ建物の住戸を取得できるかどうかとは別の問題です。法人の取得実績を、個人が買える証拠として読まないでください。

AldarがAradaからAljadaの住宅9棟をAED 1.1 billionで取得したことを伝える、2026年10月15日のプレスリリースページの表示
引用キャプチャこの記事が引用したAED 1.1 billionという取得額、9棟・3ブロック・1,100戸超という対象、2029年第4四半期という引き渡しの時期、そして保有目的の事業がAED 21 billionへ広がるという記載が書かれている、AldarとAradaの共同プレスリリースです。1戸あたりの取得額、分譲として売り出す計画、賃料の水準、外国人が取得できるかどうかは、このページには書かれていません。 出典:Arada|Aldar marks first entry to Sharjah with AED1.1 billion acquisition of nine residential buildings from Arada in Aljada(AldarとAradaの共同プレスリリース)(確認日 2026-10-16/表示のファーストビュー)

シャルジャで外国人が取れる権利は、ドバイやアブダビと違います

UAEは首長国ごとに不動産の制度が分かれています。UAE政府のポータルには、外国人が不動産を取得する場合の枠組みが首長国ごとに書かれており、2026年9月28日の更新として掲載されています(確認日 2026-10-16)。この記事が扱うシャルジャと、当サイトが中心に扱うドバイ・アブダビを並べると、次のようになります。

首長国 外国人に認められる権利 期間の記載
ドバイ フリーホールド指定区域での所有、用益権(usufruct)、リースホールド リースホールドは99年まで。所有に年齢の制限はありません
アブダビ 指定投資区域での所有、ムサタハ、用益権、長期リース 所有と用益権は99年、ムサタハは50年で更新可、長期リースは25年以上
シャルジャ 所有権は認められず、用益権のみ 最長100年。シャルジャ首長の特別な承認と、政府が定めた区域であることが条件

表の3行目が、今回の取引の舞台です。シャルジャでは外国人に所有権が認められていません。認められているのは用益権で、しかも首長の特別な承認と、指定された区域であることが前提だと書かれています。ドバイのフリーホールドと同じ感覚で考えると、前提が食い違います。

Aldarはシャルジャの法人ではなくアブダビの上場会社ですが、UAE国内の企業として取得する場合と、外国人個人が取得する場合では、適用される枠組みが同じとは限りません。政府ポータルの記載は個人を対象にした案内であり、法人の取得条件はこのページには書かれていません。この発表から、外国人がAljadaの住戸を所有できると読み取ることはできません。

権利の種類ごとの違いはアブダビの所有権の種類に詳しく書いています。ドバイとアブダビのどちらを選ぶかという比較はドバイとアブダビの比較にまとめました。

この発表を、自分の検討にどう使うか

結論から言えば、いま購入を検討している人が、この発表を根拠に動ける材料はありません。買える住戸が増えたわけでも、価格や家賃の目安が示されたわけでもないためです。シャルジャの物件を検討している場合でも、外国人に認められるのが用益権だけである点は変わりません。

使えるのは、ディベロッパーの性格を知る材料としてです。Aldarは販売して手放す事業と、持ち続けて貸す事業の両方を持っており、後者の規模をAED 21 billionまで広げたと自ら公表しています。保有する資産を増やす会社は、完成後の建物の管理や運営にも関わり続けます。会社を選ぶときに、その点を公表値で確かめられるのは意味があります。

逆に、この発表を「シャルジャの不動産は値上がりする」という話に読み替えないでください。発表は価格の見通しをいっさい示していません。当社も、値上がり、賃料収入、利回りのいずれについても保証しません。大手が投資したことは、その会社がそう判断したという事実にとどまります。

今後、Aljadaの9棟について賃料や募集の情報が公表された場合、あるいは外国人の取得に関する条件が示された場合には、この記事を更新します。UAEの制度の変更は不動産政策・規制に、ドバイの登記されたデータはドバイの不動産データに分けて記録しています。この記事は、AldarとAradaの発表本文、およびUAE政府ポータルの記載だけを材料にしています。