アブダビの生活費を見積もるとき、政府のページに額や率がはっきり書かれている費目は、思ったより少ないです。書かれているのは、家賃に上乗せされる住宅の市政手数料(年額家賃の5%)、賃貸契約の登録料、仲介手数料の上限、路線バスの運賃、道路料金のDarb、そして付加価値税(VAT)の5%です。いちばん大きい家賃そのもの、子どもの学費、医療保険の保険料は、決め方までは公表されていても、額は契約や学校や保険ごとに違います。
もう1つ、先に断っておくことがあります。「アブダビの生活費は月いくら」という1つの数字を、当サイトは出しません。そうした数字は、住む場所、家族の人数、車を持つかどうかで大きく変わり、しかも多くは出典のはっきりしない集計です。この記事では、自分の予算を組むときに、どの費目を公表値で計算でき、どの費目を個別に確かめる必要があるのかを分けて示します。
出典は、UAE政府ポータル、アブダビ不動産センター(ADREC)とその電子基盤DARIの案内、アブダビ居住者事務所(ADRO)、アブダビ政府メディアオフィスが伝える統合交通センター(ITC)の発表、ITC自身のページ、アブダビ保健局(DoH)、アブダビ教育知識省(ADEK)、アブダビのエネルギー局(DoE)です。在留資格の選び方と手続きの順番はアブダビ移住の基礎にまとめています。
公表値で計算できる費目と、できない費目
まず全体を3つに分けます。左の列は、政府のページに書かれた額や率で自分の分を計算できる費目です。中央の列は、誰が負担するか、どう決まるかは公表されていても、額は相手ごとに違う費目です。右の列は、この記事の確認の範囲では数字にたどり着けなかった費目です。
この分け方をしておくと、見積もりの誤差がどこから来るのかが分かります。左の列は料金表どおりに計算でき、ずれは小さいはずです。見積もりが外れるのは、ほとんどが中央と右の列です。家賃と学費は、同じアブダビの中でも物件や学校によって桁が変わりうるため、そこを平均的な数字で埋めると、予算全体が意味を失います。
家賃は年額で決まり、1回払いが基本です
住まいの費用の中心は家賃です。ADROの住まいのページは、貸主は1年分の家賃を1回で受け取ることを期待すると書いています。分割は、仲介会社か貸主と交渉して決めるもので、その場合は取り決めた日付の先日付小切手を出すと説明されています。日本の月払いの感覚で予算を組むと、入居のときに手元の資金が足りなくなります。
家賃の水準について、アブダビでは、ADRECがエリアごとの指標となる賃料を公表しています。ただし、それは実際に決まった個々の家賃ではありません。指標値と、DARIに登録された契約の賃料と、広告の募集賃料の違いはアブダビの家賃データで詳しく扱っています。
家賃がこの先どう動くかに関わる決まりもあります。ADRECは2026年6月3日付の発表で、アブダビ政府が住宅・商業・工業の物件の賃料の年間の引き上げ率を5%から0%に変えたと公表しました。更新も新しい契約も、その物件で直近にTawtheeq(アブダビの賃貸契約の登録簿)に登録された契約の賃料を参照するとされ、期間は追って通知があるまでです。同じ発表は、需要の高まりで新規の賃貸契約の賃料が前年と比べてアブダビ全体で15%、投資区域で23%上がったとも書いています。
注意してほしいのは、DARIの更新手続きの案内には、いまも「前年の年額の5%を超えて上げられない」という記載が残っていることです(確認日 2026-09-21)。どちらを前提にするかで、2年目の家賃の見込みが変わります。当サイトは、より新しいADRECの発表を基準にして書いていますが、更新の前には、その時点で適用される率をADRECに確かめてください。措置の中身はアブダビの賃料据え置きで整理しています。
家賃の上に乗る費用は、料金表で決まっています
家賃とは別に、借りるときと住んでいるあいだにかかる費用があります。この部分は、UAE政府ポータルとDARIの料金表に額と率が書かれているので、自分の家賃から計算できます。
| 費目 | いつ払うか | 公表されている額・率 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 住宅の市政手数料 | 住んでいるあいだ、毎月の電気・水道の請求に上乗せ | 家賃の額と賃料インデックスの高いほうの5%。下限AED 450。UAE国民以外に適用 | UAE政府ポータル、DARIの料金表 |
| 賃貸契約の登録(住宅) | 契約の登録時 | 4年未満の契約は1件AED 50。4年以上は年額家賃の1% | DARIの料金表 |
| 仲介手数料 | 仲介会社を通して借りるとき | 家賃総額の5%まで | UAE政府ポータル、ADRO |
市政手数料について、UAE政府ポータルは、家賃の額か賃料インデックスのいずれか高いほうを基準に5%で計算し、12か月に分けて借主の電気と水道の請求に加えると書いています。DARIの料金表は、住宅の契約について、市政手数料は5%でローカル(UAE国民)以外に適用され、AED 450を下回らないとしています。商業と工業の契約には市政手数料がかかりません。
下の図は、仕組みを見るために年額家賃を仮の値に置いて、それぞれの額を並べたものです。図の家賃はアブダビの相場を示す数字ではありません。
年額の5%は、月々の家賃に直すと1か月分の6割ほどにあたります(12か月分の家賃の5%)。1か月分には届きませんが、請求が電気と水道の料金と一緒に届くため、光熱費が高く見える原因になります。光熱費の見込みを立てるときは、この上乗せ分を分けて考えてください。
1つ、政府のページの間で食い違いがあります。ADROの住まいのページは、この手数料を年額家賃の3%と書いています。一方で、同じADROの移住の案内ページ、UAE政府ポータル、DARIの料金表は5%です。当サイトは、料金を定めているDARIの料金表と、2026年1月20日更新と表示されているUAE政府ポータルに従い、5%で書いています。3%の記載を見て予算を組むと、年額家賃の2%分が足りなくなります。
電気と水道は、申し込み先は分かっても単価は確かめられませんでした
電気と水道について、ADROの住まいのページは、アブダビ市内はアブダビ配電会社(ADDC)、アル・アインはアル・アイン配電会社が供給すると書いています。申し込むには、Tawtheeqに登録された賃貸契約が要り、借主も所有者もパスポートとEmirates IDを出し、前の住まいの口座を閉じた証明が必要になる場合があるとされています。賃貸契約の登録が済まないと、電気と水道の口座も開けないという順番です。
単価はどう決まるのか。エネルギー局(DoE)の料金のページは、料金はすべて政府が決めると書き、住宅の具体的な料金は配電会社のサイトを見るよう案内しています。ところが、当サイトが確認した2026年9月21日の時点で、配電会社の料金のページは自動取得を拒否するか、中身が表示されない状態でした。当サイトは拒否されている経路を迂回しないため、電気と水道の単価、使用量の区分、UAE国民と外国人の料金の違いは、この記事では数字を書いていません。
報道や民間の計算サイトには単価の数字が載っていますが、それらは当サイトの出典の基準に入りません。申し込むときに配電会社から示される料金表を、そのまま確かめてください。なお、前の節の市政手数料は、この電気と水道の請求に上乗せされて届きます。請求書の中で、使った分の料金と手数料を分けて読むようにしてください。
建物に入居できるかどうかも、光熱費より先に確かめることがあります。有効な占有証明書が無い住戸では、Tawtheeqでの新しい賃貸契約の登録が止められます。制度の経緯はアブダビの占有証明書の期限にまとめました。
交通費:バスは1回AED 5まで、Darbは通過ごとにAED 4
交通費は、公表値でいちばん細かく計算できる費目です。車を持たずに路線バスを使う場合と、車で道路料金のゲートを通る場合とで、料金の決まり方が違います。
路線バスについて、アブダビ政府メディアオフィスは2023年12月12日、ITCが運賃を統一したと伝えています。基本運賃AED 2に、1kmごとに5フィルスを加え、1回の乗車はAED 5が上限です。ITCの料金のページは、この「標準サービス」を2024年2月28日から適用したとし、定期券の額も載せています。
| 項目 | ITCのページの記載 | ADROの交通のページの記載 |
|---|---|---|
| 基本の運賃 | AED 2+1kmごとに5フィルス(上限AED 5はメディアオフィスの発表) | 市内AED 2、郊外AED 2+1kmごとにAED 0.05 |
| 7日の定期 | AED 30 | 週AED 30 |
| 30日の定期 | AED 95(所得の限られたUAE国民はAED 80) | 月AED 80 |
| 1年単位 | 学生の年間の許可証AED 500 | 年間の定期AED 500(対象の記載なし) |
| 無料の対象 | 10歳未満、高齢者・障がいのある人(年間の許可証) | 記載なし |
表のとおり、30日の定期の額が2つの政府ページで違います。ADROのページは運賃を市内と郊外に分けて書いており、ITCが統一する前の区分のままと読めます。当サイトは、運賃を決めているITCのページに従い、30日の定期をAED 95としています。乗り継ぎは、降りてから60分以内に次のバスに乗り、3台までなら追加の料金がかからないとされ(都市間の路線を除く)、乗るときと降りるときの両方でHafilatカードをかざさないと、乗り継ぎの扱いにならないと書かれています。
車を使う人は、道路料金のDarbを見込んでおきます。ITCは2025年8月14日に、同年9月1日からの改正を発表しました。課金の時間帯は月曜から土曜の朝7時から9時と、夕方3時から7時です。日曜と公式の祝日は無料です。そして自家用車の1日AED 16、1か月AED 100〜200の上限がなくなり、ゲートを通るたびにAED 4がかかるようになりました。さらに2026年4月22日の発表で、Al QurmとGhantootの2つのゲートが5月4日から加わり、この2つは24時間・毎日、1回の通過でAED 4とされています。
計算の仕組みを見るための仮定として、従来のゲートを朝と夕方の課金時間に1回ずつ、月曜から土曜の6日通ると、1週間で12回、AED 48になります。上限があったころは1日の額がAED 16で止まりましたが、いまは通るたびに加算されます。住む場所と職場の間にどのゲートがあるかで、車の費用は大きく変わります。Al QurmとGhantootの2つは日曜も夜間もかかるため、とくに注意が要ります。
免除について、2025年の発表は障がいのある人、低所得の家庭、高齢者、退職者を挙げています。2026年の発表は、高齢者、障がいのある人、所得の限られた国民、退職した国民の車1台を免除すると書いています。外国人の居住者がどこまで対象になるかは、発表の文面からは読み切れませんでした。タクシーについて、ADROの交通のページは日中の初乗りをAED 12と書いていますが、ITCの料金表では確かめていません。
医療保険と学費は、負担する人と決め方までが公表されています
医療保険は、アブダビに住むための前提です。ADROの移住の案内は、医療保険はすべての居住者に求められ、保険が無ければ居住ビザを取得できないと書いています。費用を誰が持つかについて、DoHは2021年10月31日の発表で、アブダビで働く被雇用者については、Health Insurance Law No. 23/2005の規定に従い雇用主が引き続き保険の費用を負担しなければならないとしています。同じ発表は、それ以外のゴールデンビザの申請者には、在留の期間を通じて本人と家族の有効な保険を示すか、保険を用意しない場合に医療費をすべて自分で負担する誓約に署名することを求めています。
つまり、会社員として雇用される人と、グリーンビザやゴールデンビザを自分で申請する人とでは、保険料が生活費に入るかどうか自体が違います。保険料の額はDoHの発表にもADROの案内にも書かれていないため、この記事では扱いません。見積もりは保険会社から取ってください。
子どもがいる家庭では、学費が家賃に次ぐ大きな費目になりえます。UAE政府ポータルの学費のページは、アブダビの私立学校の値上げの申請は毎年1月にADEKへ出され、値上げの申請は学校の改善計画と結びつけなければならないと書いています。ADEKの学校政策のページには学費の方針(Fees Policy)が載っており、2024/25年度の秋学期に発効し、2025/26年度の秋学期から遵守が求められると示されています。ADROの移住の案内は、アブダビに200校を超える私立学校があると書いています。
学費の額は、学校ごとにADEKが承認するもので、この記事の出典のページには相場の額が載っていません。候補の学校のサイトで、承認された学費と支払いの予定を確かめるのが確実です。学費の方針の本文(PDF)は、当サイトの取得では中身を読み取れなかったため、分割払いの回数などの細目はここに書いていません。
税:所得税はなく、買い物には5%のVAT
税について、ADROのお金と税のページは、UAEは個人に所得税を課していないと書いています。付加価値税(VAT)は2018年1月1日に5%で導入されました。炭酸飲料、エナジードリンク、たばこなどには物品税がかかり、率は50%から100%とされています。通貨はUAEディルハム(AED)で、1米ドル=AED 3.6725に固定されていることも同じページに書かれています。
生活費として見ると、VATは日々の買い物や外食、サービスの支払いに広くかかります。前の節までに挙げた料金が税込みか税抜きかは、費目ごとの請求書で確かめてください。日本の居住者でなくなるかどうかによる日本側の税の扱いは、この記事では扱っていません。
この記事で確認できなかったこと
第一に、電気と水道の単価です。エネルギー局は料金を政府が決めると書き、配電会社のサイトを案内していますが、配電会社の料金のページは確認日の時点で取得できませんでした。
第二に、アブダビ首長国の消費者物価指数です。指数を作るアブダビ統計センター(SCAD)のサイトに、確認日の時点で接続できませんでした。食費や日用品の価格がどう動いているかは、そのためこの記事に書いていません。
第三に、医療保険の保険料と、私立学校の学費の額です。決め方と負担する人は公表されていますが、額は保険と学校ごとです。学費の方針の本文も読み取れていません。
第四に、Darbの免除が外国人の居住者に及ぶかどうかと、タクシーの運賃の最新の料金表です。
第五に、食費、通信費、家事の手伝いの費用など、公的機関が料金を定めていない費目です。これらは事業者ごとの価格で、当サイトは推測で平均を作りません。
予算を組むときは、左の列から埋めていきます
最初の図の3つの列は、そのまま予算を組む順番にもなります。まず、借りたい物件の年額家賃を決めます。ここは物件ごとの額なので、候補の家賃を当てはめるしかありません。家賃が決まれば、市政手数料・登録料・仲介手数料は料金表から計算できます。1年分を1回で払うことを前提に、入居時の資金を見積もってください。
次に、通勤の方法を決めます。バスなら定期の額、車ならDarbのゲートを通る回数から、公表値で計算できます。そのうえで、雇用主が医療保険を負担するのか、自分で入るのかを確かめ、子どもがいれば候補の学校の承認済みの学費を調べます。最後に、電気と水道、食費と通信費を、事業者の料金で埋めていきます。
アブダビで物件を買って住む場合は、家賃の代わりに購入の費用がかかります。登記の手数料などはアブダビ不動産の購入費用にまとめています。住むために買った物件が値上がりすることや、貸して収入が出ることを、当社は保証しません。生活費の見積もりは、あくまで自分の暮らしに必要な額を知るためのものとして使ってください。