ドバイで物件を探し始めると、ブルジュ・ハリファとドバイ・モールのある中心部が最初の候補に挙がります。ところが、ドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)が公開している記録を「Downtown Dubai」という名前で引こうとすると、該当する区画が出てきません。DLDが区画名として持っているのは Burj Khalifa です。日本語の記事やポータルで「ダウンタウン・ドバイ」と書かれている範囲の登記は、この名前の下に入っています。
この記事は、その Burj Khalifa 区画の登記記録を当サイトが集計した結果から、ダウンタウン・ドバイの市場がどういう形をしているのかを示します。物件を紹介するものではなく、どのエリアを買うべきかを決めるものでもありません。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。
先に結論を書きます。この区画では、登記された売買の4分の3が完成済みの取引です。オフプランが多数を占めるドバイ全体とは、多い側が入れ替わっています。価格の水準はドバイ全体より上ですが、間取りによって桁そのものが変わるため、「ダウンタウン・ドバイの相場」という1つの数字で語れません。そして賃貸の記録は売買よりはっきり厚く、表面利回りは計算できますが、その数字には引いていない費用があります。
水準そのものの数字は本文へ書き写さず、集計の期間と定義を添えて図に置いています。本文に写すと、データを更新したときに本文だけが古いまま残るためです。この区画とドバイ全体を同じ項目で並べた数字はダウンタウン・ドバイのデータにあり、そちらも同じ期間と定義で作っています。
区画名は Burj Khalifa です。Downtown Dubai では引けません
DLDのオープンデータは、売買(Transactions)、賃貸(Rents)、プロジェクト(Projects)など9つのデータセットに分かれていて、どれにも「Area」という列があります(確認日 2026-10-05)。エリアごとに記録を分けるというのは、結局この列の値で絞ることです。だから、この列に立っていない名前では絞れません。
当サイトが持っている区画名の一覧にも「Downtown Dubai」という項目はありません。綴りの近いものとして「Down Town Jabal Ali」が別に立っていますが、これはジェベル・アリ側の別の区画で、同じ場所ではありません。名前が似ているから同じ場所だろうと寄せると、別の区画の記録を混ぜることになります。
カタカナについても一点あります。「ダウンタウン・ドバイ」は世間での呼び方で、DLDの公式表記ではありません。当サイトはこの区画を「ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)」として表示し、読者が探しやすいようにURLだけを downtown-dubai にしています。DLDの原データや英語の物件情報と突き合わせるときは、英語の区画名が手がかりになります。区画名と通称が食い違いやすい組み合わせはドバイ不動産のエリア比較に並べました。
オフプランが例外になっている区画です
比率を読むときに最初に確かめたいのは、何を分母にしているかです。この図の割合は、DLDに登記された売買の件数に占めるものです。売り出し中の物件がどれだけ残っているかという在庫の比率ではありません。登記は契約が成立した結果の記録なので、広告で見かける物件の構成がこの比率と一致するとはかぎりません。
そのうえで、この区画の形は読み取りやすいです。オフプランは4件に1件で、残りは建物が完成している取引です。ドバイ全体では逆にオフプランが多数を占め、隣接するビジネス・ベイはおおむね半々でした。この区画では、新しく売り出される住戸よりも、いったん人の手に渡った住戸の売買が記録の中心になっている、ということです。
これは買う側の手順に直接きいてきます。完成済みを買う場合、相手は開発会社ではなく売主です。手続きは不動産登録トラスティ・センターで行い、手元には Title Deed(所有権証明書)が残ります。実物を見てから決められますし、引き渡しを待たずに貸し出せます。一方で、開発会社の分割の支払いプランは使えず、建物の管理の状態と修繕の履歴が判断材料に加わります。オフプランと完成済みで申請する人・窓口・残る書類・費用の行がどう変わるかは、同じ比較を手続きの側から整理したビジネス・ベイのオフプランと完成済みにまとめてあります。
裏を返せば、この区画でオフプランの住戸を探すのは、候補が少ない側を探すことになります。少ないことは悪いことではありません。ただ、「ドバイはオフプランが主流」という一般論をそのまま当てはめると、この区画で候補が出てこない理由が分からないままになります。完成済みの買い方を前提から整理したい場合は中古・完成物件が入口です。
間取りで価格の桁が変わります
図を見ると、件数が集まっている間取りと、価格が高い間取りが別の場所にあることが分かります。取引の中心は1ベッドルームと2ベッドルームで、この2つで登記の大半を占めます。一方、4ベッドルーム以上になると価格の中央値が一桁上がり、件数はごくわずかです。
この形が意味するのは、「ダウンタウン・ドバイの価格」を1つの数字で代表させると、どの間取りの話なのかが消えるということです。区画全体の中央値は、件数の多い1・2ベッドルームに引かれた値になります。広い住戸を探している人にとっては、その数字は予算の目安になりません。逆に、区画全体の中央値を見て「思ったより安い」と感じた場合、見ているのは件数の多い帯の値です。
もうひとつ、代表値の選び方です。当サイトはこの区画の代表値に中央値だけを使っています。平均は中央値よりはっきり高く出ます。1億AEDを超える登記が含まれているためで、こうした1件が混じるだけで平均は取引の中心から離れます。他社の数字と比べるときは、平均と中央値のどちらを見ているかを先にそろえてください。価格の読み方そのものは不動産価格・相場に分けてあります。
この区画の記録には、住宅のほかにオフィスも混じっています。用途を混ぜたままの代表値を住宅の相場として読むと、別のものを見てしまいます。図ではオフィスと、間取りの記載がない行を外しました。外した件数は図の注記に出しています。
表記についても触れておきます。「1 B/R」はベッドルーム(寝室)の数で、日本の「1LDK」とは数え方が違います。キッチンが独立しているか、メイド室をどう数えるかが物件ごとに違うため、おおむね対応するとしか言えません。間取りの表記を日本の表記へ機械的に置き換えると、広さの見当が外れます。
賃貸の記録は売買より厚いです
この区画では、同じ期間に登記された新規の賃貸契約の件数が、売買の件数を大きく上回っています。借り手の動きがある区画では、買ってすぐ貸すという前提が成り立ちやすくなります。ただしこれは区画全体の記録であって、特定の住戸が借り手を見つけられることを示すものではありません。
図に示したとおり、当サイトの表面利回りは、同じ区画・同じ物件種別の年間賃料と取引価格を、面積あたりに直して割ったものです。ここに3つの条件が付きます。
1つ目は、賃料が新規契約だけだということです。更新の契約には賃料の引き上げに規制があるため、市場の水準より低く出ます。新規と更新を混ぜた数字と、新規だけの数字は比べられません。他社の利回りと差が出たときは、ここを先に確かめてください。
2つ目は、同じ住戸の実績ではないことです。賃料の中央値と価格の中央値は、別々の物件の集まりから出ています。同じ住戸を買って貸したときの実績ではないので、個別物件の利回りとしては使えません。
3つ目は、引いていない費用があることです。サービスチャージ、空室の期間、仲介手数料、修繕、送金と為替の費用はどれも入っていません。表面の数字からは、手取りがどれだけ残るかは出てきません。表面と手取りの差をどう見積もるかは利回り・家賃収入にまとめています。
当サイトが表面利回りを出せたのは、賃貸と売買のどちらも30件以上あった区画と物件種別の組み合わせだけです。その全体の中央値と比べると、この区画のアパートメントは上側にあります。ただし上側にある理由は、賃料の水準と価格の水準の差し引きで決まります。「割安だから」とは読めません。
管理費は区画の平均で代わりにできません
表面利回りから最初に引くことになるのが、共同所有物件の管理費(サービスチャージ)です。この費用は区画の平均では決まりません。
照会の単位がプロジェクトである以上、同じ区画の中でも対象の建物が違えば金額が違います。区画の代表値を当てはめた見積もりは、建物が決まった時点で作り直すことになります。候補の建物が決まってから、その建物の名前と年度を指定して確かめてください。保有中にかかる費用の全体像は購入費用・諸費用に分けてあります。
ここで注意したいのは、照会できるのが承認された費用だという点です。実際の請求額や、滞納の有無、修繕積立の状況は、この照会では出てきません。建物の管理の状態は、売主と管理会社に確かめる項目として残します。
自分で同じ数字を出す手順
| 確かめたいこと | DLDのどのデータセット・サービスか | 絞り込みに使うもの |
|---|---|---|
| 価格・平米単価・オフプランの比率 | オープンデータの Transactions | Area に Burj Khalifa、期間、取引の種類(Sales) |
| 新規の賃貸契約と賃料の水準 | オープンデータの Rents | 同じ Area と期間、新規契約だけに絞る |
| これから増える住戸 | オープンデータの Projects | 同じ Area、期間 |
| 建物ごとの管理費 | Service Charge Index | プロジェクト名・用途・年度 |
当サイトの集計も、この表のとおりDLDのオープンデータから作っています。読者が同じ手順をたどれるように並べましたが、注意点が2つあります。
1つは、オープンデータの照会フォームにCAPTCHAが付いていることです。人がいることを確かめるための仕組みなので、当サイトは機械で越えません。期間を指定すればまとめて取得できるため、回数自体は多くありません。
もう1つは、集計の定義をそろえないと数字が合わないことです。当サイトは売買のうち Sales の行だけを数え、抵当権と贈与を除いています。賃貸は住宅だけに限り、1つの契約で複数の物件を借りているものを除いています。面積あたりの単価は、面積が記録されている行だけで計算しています。他社の数字と違うときは、水準が違うのではなく、含めたものが違う可能性を先に見てください。期間と定義をそろえた一覧はエリア別のデータ、市場全体の推移は市場のデータにあります。
確認できなかったこと
- オフプランと完成済みを分けた価格と利回り。当サイトの集計はオフプランの比率までで、価格を2つに分けていません
- 建物ごとのサービスチャージの水準。照会はプロジェクト単位の仕組みで、区画の代表値は公表されていません
- 空室の期間。DLDの記録は成立した契約だけなので、借り手が見つかるまでの日数は出てきません
- この区画でこれから完成する住戸の数。プロジェクトのデータセットをまだ集計に使っていません
- 住宅とオフィスを分けた価格の内訳
いずれも空欄のまま残しています。埋めるには、取得したデータに別の集計を足すか、プロジェクト単位で照会する必要があります。推測で埋めた数字をこの記事には書きません。
判断の分かれ目
この区画を候補にするかどうかは、価格の高安ではなく、次の4つで分かれます。
- 完成済みが前提でよいか。この区画の候補は完成済みに偏っています。実物を見て決めたい人には合いますが、分割の支払いプランを前提にしているなら候補が少なくなります
- 用途と間取りを分けて見られるか。区画全体の代表値は、件数の多い間取りに引かれた値です。探している間取りの帯で見直す必要があります
- 表面と手取りのどちらで考えているか。当サイトの利回りは表面です。サービスチャージと空室を引いた数字は、建物が決まってからしか出ません
- 建物まで絞れているか。管理費も管理の状態も、区画ではなく建物で決まります。区画の数字は候補を絞るためのもので、買う判断を代わりにはできません
どちらが有利かという問いには、公表されている記録からは答えが出ません。出るのは「この条件ならこちら」という切り分けだけです。ほかの区画と同じ基準で並べたい場合はエリア別のデータ、この区画の数字を続けて追いたい場合はダウンタウン・ドバイのデータを見てください。