ドバイのビジネス・ベイ(Business Bay)で物件を探すと、完成前のオフプランと、すでに建っている完成済みの住戸が、同じエリアの候補として並びます。どちらを選ぶかで最初に変わるのは、値段の高さではなく、だれが登記を申請し、手元にどの書類が残るかです。オフプランは開発会社がドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)の開発会社向けポータルから暫定の登録を行い、買主の手元には暫定登録の電子証明書が残ります。完成済みは売主と買主が不動産登録トラスティ・センターへ出向き、その場でTitle Deed(所有権証明書)が発行されます。
もうひとつ、この地区に固有の事情があります。ビジネス・ベイで登記された売買のうち、オフプランは半分強で、残りの半分近くは完成済みの取引です。ドバイ全体ではオフプランの比率がこれよりはっきり高いため、ビジネス・ベイは「完成済みを選ぶ」という選択肢が実際に残っている地区だと言えます。候補が片方しかない地区では、この記事のような比較そのものが成立しません。
この記事では、DLDが公開している登記データの集計と、DLDの公式サービス案内だけを使って、このエリアで両方の選択肢がどれだけあるのか、登記の経路と残る書類がどう違うのか、費用の行がどう違うのか、そして選ぶ前に公式の照会で何を確かめられるのかを順に並べます。価格や賃料の水準そのものは本文に転記せず、期間と集計方法をそろえた図とビジネス・ベイのデータに分けています。数字を本文へ書き写すと、データを更新したときに本文だけが古いまま残るためです。
ビジネス・ベイは、完成済みも選べる地区です
比率を見るときに最初に確かめたいのは、何を分母にしているかです。この図の割合は、DLDに登記された売買の件数に占めるオフプランの割合です。売り出し中の物件がどれだけ残っているかという在庫の比率ではありません。登記は契約が成立した結果の記録なので、「いま市場に出ている候補の数」とは別のものを数えています。広告で見かける物件の構成が、この比率と一致するとはかぎりません。
比較のために並べた3つの地区は、いずれも同じ期間にビジネス・ベイと同じか、それ以上の件数の売買が登記された地区です。オフプランがほぼすべてを占める地区では、完成済みを探しても候補がほとんど出てきません。逆にビジネス・ベイでは、すでに建っている建物の売買が、登記の半分近くを占めます。同じドバイでも、選べる選択肢の構成は地区ごとに違います。
エリア名について補足します。DLDの公式表記は英語で、カタカナは読み方の目安にすぎません。図の中で英語だけを示した地区は、公式表記をそのまま出しています。DLDの原データや英語の物件情報と突き合わせるときは、この英語の区画名が手がかりになります。
価格の水準は全体より上で、面積はやや広めです
図に並べた値はすべて中央値です。平均は代表値に使っていません。ビジネス・ベイの売買には、最高で3億AEDを超える登記が含まれています。この1件が混じるだけで平均は中央値から大きく離れるため、平均を「このエリアの相場」として受け取ると、実際の取引の中心からずれた金額を基準にしてしまいます。他社の数字と比べるときも、平均と中央値のどちらを見ているかを先にそろえてください。
平米単価の中央値はドバイ全体の水準を上回り、専有面積の中央値も全体よりわずかに広めです。間取りでは1ベッドルームと2ベッドルームが取引の中心で、スタジオもまとまった件数があります。ここで注意したいのは、ビジネス・ベイの登記にはオフィスと店舗の売買も含まれている点です。商業と住宅が混ざった地区なので、用途を混ぜたままの代表値を住宅の相場として読むと、別のものを見てしまいます。間取り別・用途別の内訳はビジネス・ベイのデータに分けてあります。
表記についても一点だけ。「1 B/R」はベッドルーム(寝室)の数で、日本の「1LDK」とは数え方が違います。キッチンが独立しているか、メイド室をどう数えるかが物件ごとに違うため、おおむね対応するとしか言えません。間取りの表記を日本の表記へ機械的に置き換えると、広さの見当が外れます。
登記の経路が違うので、残る書類も違います
DLDの初期売買登録の案内では、申請できるのは開発会社です。オフプランで販売した住戸や、代金を払い終えていない土地を暫定の登録簿へ登録する手続きで、窓口はDLDのウェブサイト上にある開発会社向けポータル(Oqood)だと書かれています。買主側に残るのは暫定登録の電子証明書で、案内に示された所要時間は営業日単位です。開発会社が自分で登録する場合の手数料として、AED 1,000の行が別に示されています。
完成済みの売買登録は、売主と買主の間の売買を登録する手続きです。申請の窓口は不動産登録トラスティ・センターで、案内の所要時間は25分と示されています。必要書類として、売主・買主双方のEmirates ID(非居住者は有効な旅券)と、フリーホールド地区では開発会社が発行する電子NOC(異議なし証明)が挙げられています。ビジネス・ベイで登記された売買はフリーホールドの比率が高い地区なので、この行は読み飛ばせません。
いちばん大事なのは、この2つが同じ段階の手続きではないことです。オフプランの初期売買登録は暫定の登録簿への記録で、完成して引き渡された後にどの手続きへ移るのかは、初期売買登録の案内そのものには書かれていません。ここは推測せず、契約書と開発会社に確認する項目として残してください。確認できていないことを「こうなるはず」と埋めるのが、この種の手続きでいちばん危ない進め方です。
費用の内訳は、完成済みのほうが行が多いです
登録手数料そのものは、どちらの経路でも売主2%・買主2%です。Knowledge feeとInnovation feeも、両方の案内に同じ行で載っています。違うのは、それ以外に並ぶ行の数です。
下の表は、DLDの2つのサービス案内に書かれている費用の行をそのまま並べたものです。片方の案内にしか無い行は「案内に行がありません」と記しています。これは「その費用がかからない」という意味ではなく、そのページには書かれていないという意味です。
| 費用の行 | オフプランの初期売買登録 | 完成済みの売買登録 |
|---|---|---|
| 売主の登録手数料 | 売買額の2% | 売買額の2% |
| 買主の登録手数料 | 売買額の2% | 売買額の2% |
| Knowledge fee | AED 10 | AED 10 |
| Innovation fee | AED 10 | AED 10 |
| 所有権証明書の発行 | 案内に行がありません | AED 250 |
| 統一マップ(Dubai Municipality) | 案内に行がありません | AED 225 |
| 同局の管轄外の土地の地図 | 案内に行がありません | AED 100 |
| ヴィラとアパートの地図 | 案内に行がありません | AED 250 |
| サービスパートナー手数料 | 案内に行がありません | 売買額AED 500,000以上はAED 4,000+VAT、未満はAED 2,000+VAT |
| 開発会社の自己登録 | AED 1,000 | 案内に行がありません |
| 申請の窓口 | DLDのウェブサイト(開発会社向けポータルOqood) | 不動産登録トラスティ・センター |
| 案内の所要時間 | 営業日単位 | 25分 |
| 受け取る書類 | 暫定登録の電子証明書 | Title Deed(所有権証明書) |
サービスパートナー手数料は、売買額がAED 500,000以上ならAED 4,000に付加価値税(VAT)、それ未満ならAED 2,000にVATという2段の表記です。ビジネス・ベイの売買の中心はこの境目よりはっきり上にあるので、この行は上段で見積もることになります。地図の手数料が3つの行に分かれている点にも注意してください。どの行が自分の物件に当てはまるかは案内文だけでは決まらないので、トラスティ・センターで確認する項目として残します。
もう一点、ここに並ぶのは登記の窓口で発生する費用だけです。仲介の報酬、住宅ローンの登録、管理費(サービスチャージ)、引き渡し後の内装は含まれていません。購入の総額を見積もるときは、この表を「登記の行だけが書かれた表」として扱い、別の費目は別に積んでください。
オフプランを選ぶなら、プロジェクト単位で確かめます
エリアの集計は、個別のプロジェクトの出来を保証しません。ビジネス・ベイのオフプランを検討するなら、DLDのプロジェクト状況照会で、そのプロジェクト自体を確かめられます。案内では、Dubai RESTのアプリからプロジェクト名またはプロジェクト番号で検索し、完成の状況と工程、開発会社と管理会社、エスクロー口座の銀行情報、検査の写真、所在地を見られると説明されています。
ここで見ておきたいのは、販売資料に何が書かれているかではなく、販売資料と公式の記録が一致しているかです。プロジェクト番号で照会できること、エスクロー口座が記録されていること、工程の進み方が資料の完成予定と矛盾しないこと。この3点を確かめられない物件は、価格や支払いプランを比べる前の段階にあります。比較表を作るより先に、照会の結果をそろえてください。
完成済みを選ぶなら、賃貸と管理費を確かめます
完成済みを選ぶ利点は、実物を見られることと、引き渡しを待たずに賃貸へ回せることです。ビジネス・ベイでは、同じ期間に登記された新規の賃貸契約の件数が、住戸の売買の件数を上回っています。借り手の動きがある地区では、買ってすぐ貸すという前提が成り立ちやすくなります。ただしこれは地区全体の記録であって、特定の住戸が借り手を見つけられることを示すものではありません。
利回りについては、図に出した値の意味をそろえておく必要があります。当サイトの表面利回りは、同じエリア・同じ物件種別の年間賃料と取引価格を、面積あたりに直して割ったものです。管理費、サービスチャージ、空室、仲介手数料を引いていません。しかも同じ物件の実績ではなく、別々の物件の中央値どうしの比です。個別物件の利回りではありません。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。
管理費の水準には、エリアの平均を当てはめないでください。DLDのサービスチャージ照会は、RERAが承認した共同所有物件のサービス費用を、プロジェクト名・用途・年度を選んで照会する仕組みです。エリアの代表値ではなくプロジェクト単位の数字なので、候補の建物が決まってから、その建物の年度を指定して確かめます。賃料から引く費用の見当は、この照会の結果が出てから付けられます。
確認できなかったこと
- オフプランと完成済みを分けた価格・利回りの集計。当サイトの集計はオフプランの比率までで、価格をオフプランと完成済みに分けていません
- ビジネス・ベイのサービスチャージの水準。サービスチャージ照会はプロジェクト単位の仕組みで、地区の代表値は公表されていません
- 初期売買登録のあと、引き渡し後にどの手続きへ移るか。初期売買登録の案内には記載がありません
- 完成予定の戸数のうち、ビジネス・ベイ分の内訳
いずれも空欄のまま残しています。埋めるには、取得したDLDのデータに別の集計を足すか、プロジェクト単位で照会する必要があります。推測で埋めた数字をこの記事には書きません。
どちらを選ぶかの分かれ目
価格の高安ではなく、次の4つで分かれます。
- いつ賃料が発生してよいか。待てるならオフプラン、すぐ貸したいなら完成済みです
- 実物を見てから決める必要があるか。図面と仕様書で判断できるかどうかが分かれ目です
- 手元に残る書類が暫定の登録でよいか。Title Deedが先に要るなら完成済みです
- 確認の相手がだれか。オフプランは開発会社とプロジェクトの記録、完成済みは売主と建物の管理の状態です
どちらが有利かという問いには、公表されている値からは答えが出ません。出るのは「この条件ならこちら」という切り分けだけです。エリア全体の数字はビジネス・ベイのデータ、他の地区との比較はエリア別の一覧、市場全体の推移は市場のデータにあります。