ドバイ・マリーナ/エリア

ドバイ・マリーナの不動産利回り|表面の数字は分母側で決まります

ドバイ・マリーナ(DLDの区画名はMarsa Dubai)の表面利回りを、ドバイ土地局の登記データの集計から整理します。賃貸の記録は厚く売買の記録は薄いため、同じ期間でも分母と分子の標本がそろいません。母数の確かめ方まで示します。

ドバイ・マリーナのアパートメントを貸して運用する、という話を調べ始めると、たいてい利回りの数字が先に出てきます。ところが、ドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)が公開している登記の記録から同じ計算をすると、この区画の表面利回りは2%台半ばにとどまります。当サイトが同じ条件で表面利回りを出せた区画と物件種別の組の中では、下から4番目です。

この記事は、その数字を「割高だから低い」で終わらせないために書いています。表面利回りは割り算です。分子に年間賃料、分母に取引価格を置き、どちらも面積あたりに直して割ります。だから分子が下がっても、分母が上がっても、同じだけ数字は下がります。そして、どちらが動いたのかは、割り算の結果からは分かりません。

先に結論を書きます。マルサ・ドバイ(Marsa Dubai/通称 ドバイ・マリーナ)の賃料単価は、近隣の区画と同じ帯に収まっています。大きく離れているのは分母、つまり取引単価のほうです。しかもその取引単価は、同じ期間の記録としては薄く、9割近くがオフプラン(完成前の登記)です。読み方としては、この数字を「いま建っているタワーを買って貸したときの利回り」として受け取ってはいけない、ということになります。

水準そのものの数字は本文へ書き写さず、集計の期間と定義を添えて図に置いています。本文に写すと、データを更新したときに本文だけが古いまま残るためです。この区画の数字を他の指標まで含めて並べたものはマルサ・ドバイのデータにあり、同じ期間・同じ定義で作っています。物件を紹介する記事ではありません。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。

表面利回りは、別々の記録を割ったものです

最初に、当サイトの表面利回りが何から作られているかをそろえます。分子はDLDの賃貸(Rents)のデータセット、分母は売買(Transactions)のデータセットです。別のデータセット、別の物件の集まりです。同じ住戸を買って貸した実績を追ったものではありません。

絞り込みの条件も違います。分子の側は、住宅(アパートメントとヴィラ)だけに限り、労働者宿舎などを外し、1つの契約で複数の物件を借りているもの(社宅の一括契約など)も外しています。面積が1戸分しか記録されず、面積あたりの単価が出せないからです。分母の側は、取引の種類がSalesの行だけで、抵当権(Mortgage)と贈与(Gifts)は数えません。

そのうえで、どちらも中央値にして、面積あたりに直してから割ります。平均ではなく中央値にしているのは、高額の登記が1件混じるだけで平均が中心から離れるためです。平均と中央値を取り違えると、同じデータから違う利回りが出ます。利回りの考え方そのものは利回り・家賃収入に分けてあります。

当サイトは、賃貸と売買のどちらも30件以上あった「区画×物件種別」の組だけに表面利回りを出しています。片側が数件しかない組で割り算をすると、1件の値動きで利回りが跳ねるからです。条件に届かなかった区画は、利回りの並びに入りません。並びに入っていないことは、利回りが低いことを意味しません。

賃料の単価は、近隣と同じ帯に収まっています

平米あたりの賃料と取引単価を、マルサ・ドバイ、パーム・ジュメイラ、ブルジュ・ハリファ、アル・サニヤ 5、ビジネスベイの5区画で左右2枚のパネルに並べた横棒グラフ。賃料単価ではマルサ・ドバイは中位、取引単価ではマルサ・ドバイが最も長い棒になっている
左のパネルが分子(新規賃貸契約の賃料単価)、右のパネルが分母(売買の取引単価)です。同じ区画が同じ高さに並んでいるので、左右を見比べると、どちらの側で差が付いているかが分かります。それぞれの母数は図の下に並べました。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの登記記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/確認日 2026-10-07)

左のパネルから読みます。マルサ・ドバイの賃料単価は、5区画の中では中位です。いちばん高いのはブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)で、アル・サニヤ 5(Al Thanyah Fifth)はマルサ・ドバイより低く出ています。賃料の側では、この区画は飛び抜けていません。水辺の高層住宅という性格を考えると意外に見えるかもしれませんが、記録はそうなっています。

右のパネルを見ると、形が変わります。マルサ・ドバイの取引単価は5区画の中で最も高く、ビジネスベイ(Business Bay)より8割ほど高い水準です。分子が中位で分母が最大なら、割り算の答えが下がるのは当然です。利回りの低さは、分母の側だけで説明がつきます。

母数も一緒に見てください。マルサ・ドバイの新規賃貸契約の記録は4桁あるのに対し、売買の記録は3桁にとどまります。比にするとおよそ20倍です。比較に並べたビジネスベイは賃貸と売買のどちらも4桁で、ブルジュ・ハリファも売買が4桁あります。マルサ・ドバイは、分母の標本だけが極端に薄い区画です。

標本の厚みが違うと、何が起きるか。賃料の側は、たくさんの契約が平らに積み上がった中央値になります。売買の側は、数が少ないので、その期間に何が売れたかという構成の影響をまっすぐ受けます。期間ごとに売られるものが入れ替われば、分母だけが動きます。区画を同じ指標で横に並べたものはエリア別のデータにあります。

離れているのは分母です。中身を開きます

マルサ・ドバイの売買登記を3つの側面に分解した図。登記の時点はオフプランが大半で、間取り別の件数では2ベッドルームが最多、スタジオは1桁にとどまり、区画全体の面積と価格と平米単価の中央値を下段に示している
左の箱がこの期間の売買登記の全件、右の3つがその中身です。上から、完成前か完成後か、間取り別の件数と価格の中央値、そして全件の面積・価格・平米単価の中央値です。オフィスと店舗の登記はこの区画にありません。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの登記記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/確認日 2026-10-07)

いちばん上の帯が分かりやすいところです。この期間にマルサ・ドバイで登記された売買のうち、9割近くがオフプランで、完成済みは1割強しかありません。ドバイ・マリーナは埋め立てと高層住宅の開発が早くに進んだ区域なので、感覚としては完成在庫の売買が中心だろうと思えます。記録はその感覚と逆です。

真ん中の段で、間取り別の件数と価格の中央値を並べました。件数がいちばん多いのは2ベッドルームで、次が1ベッドルームです。注目したいのはスタジオで、登記は1桁しかありません。同じ区画の新規賃貸契約は4桁あり、そこにはスタジオも含まれています。借り手が動いている住戸の種類と、売買として登記された住戸の種類がそろっていないということです。

いちばん下の段に、全件の面積・価格・平米単価の中央値を置きました。面積の中央値を見てから、スタジオの登記が1桁しかないことに戻ってください。この分母は、区画の在庫の平均的な姿ではなく、この期間に売り出されて登記が入った住戸の姿です。オフプランの買い方そのものはオフプラン物件、完成済みを買う場合の手順は中古・完成物件に分けてあります。

ここまでを組み立てると、割り算の中身はこうなります。分子は、建っている住戸の賃貸契約から出た、厚い記録の中央値です。分母は、まだ建っていない住戸を中心にした、薄い記録の中央値です。この2つは同じ母集団ではありません。だから出てくる数字は、ある住戸を買って貸したときの利回りの見積もりにはなりません。価格の水準の読み方は不動産価格・相場にまとめています。

並びの中の位置は、割安・割高の判定ではありません

表面利回りを横棒で並べた図。賃貸と売買のどちらも30件以上あった区画と物件種別の組から7組を抜き出し、最も高い組から最も低い組までを順位とともに示し、マルサ・ドバイの棒だけ赤で強調している
並べ替えの基準は表面利回りの高い順です。並びに入れたのは、賃貸・売買のどちらも30件以上あった区画と物件種別の組だけで、その中から水準の違う7組を抜き出しました。順位は組の総数に対するものです。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの登記記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/確認日 2026-10-07)

図の並びは、1つの公表値から出た数字を高い順に並べただけのものです。編集部の点数や「おすすめ度」は入っていません。同じ期間と定義で引けば、読者の手元でも同じ順位が出ます。順位そのものは評価ではありません。並べ替えの基準になった値がどう作られているかを見ないと、順位は読めません。

マルサ・ドバイのアパートメントは、この並びの下から4番目に入ります。すぐ下にはジュメイラ 1(Jumeirah First)とトレード・センター 2(Trade Center Second)が続き、いずれも取引単価の高い区画です。上の側には、賃料単価が高いわけではないのに取引単価が低い区画が集まっています。この並びは、賃料の高さよりも取引単価の高さで決まっています。

だから、順位が低いことを「この区画は買ってはいけない」と読むのは行きすぎです。表面利回りが低い区画は、同じ賃料をより高い価格で買う区画です。それを選ぶかどうかは、賃料収入を何年ぶん積むつもりなのか、売却まで含めて考えるのか、という別の問いになります。当社はそのどちらについても結果を保証しません。

一方で、「ポータルや資料で見た利回りと桁が違う」という場合には、読む順番があります。まず分子が新規契約か更新を含むか、次に分母が同じ住戸の価格かどうか、そして代表値が中央値か平均か、最後に両側の母数です。順番を変えると、水準の違いと定義の違いを取り違えます。区画をまたいで同じ指標で並べたものはドバイ不動産のエリア比較にあります。

新規契約だけを数えている、という条件

分子の条件をもう少し踏み込みます。当サイトが数えているのは、新しく結ばれた賃貸契約だけです。更新の契約を外しているのは、ドバイでは更新時の賃料の引き上げに上限の仕組みがあり、更新を含めると市場の水準より低く出るからです。

その仕組みは、DLDがRental Indexというサービスとして公開しています。契約の満了日、物件の種別、地域、部屋数、現在の年間賃料を入力すると、賃料の平均と増額についての結果が出る形です。窓口はEjari、Dubai RESTアプリ、DLDのウェブサイト、DubaiNowアプリで、居住資格を問わず使えると書かれています(確認日 2026-10-07)。

ここが運用の見積もりに直接きいてきます。空室の住戸を新しく貸すときの賃料と、入居中の借り手に更新で提示できる賃料は、同じ住戸でも同じ額になりません。当サイトの分子は前者です。完成済みのタワーで、長く住んでいる借り手が付いた住戸を買う場合、受け取れる賃料は分子より低い可能性があります。

逆に、引き渡し前の住戸を買う場合は、最初の契約が新規契約になります。この場合は分子の側に近い水準から始まりますが、引き渡しの時期が決まらないかぎり、いつから賃料が入るかは分かりません。利回りの分子は、賃料の額だけでなく、受け取り始める時期でも変わります。保有中に出ていく費用は購入費用・諸費用に分けてあります。

なお、賃料の水準そのものを区画と間取りの区分で見たい場合は家賃データ、表面利回りの並び全体は利回りデータにあります。どちらも、この記事と同じ期間・同じ定義で作っています。

入口を間違えないための区画名

DLDのデータは「Area」という列で絞り込みます。だから、その列に立っていない名前では引けません。ドバイ・マリーナの周辺には名前の近い区画がいくつも並んでいるので、入口でずれると別の場所の記録を読むことになります。

DLDの区画名 カタカナ 通称 覚えておくこと
Marsa Dubai マルサ・ドバイ ドバイ・マリーナ 「Dubai Marina」という名前では引けません
Jumeirah Beach Residence ジュメイラ・ビーチ・レジデンス JBR 海側の別区画で、マリーナの記録には入りません
Al Thanyah Fifth アル・サニヤ 5 記載なし 通称を当てずに英語の区画名で引きます
Jumeirah Lakes Towers ジュメイラ・レイクス・タワーズ JLT アル・サニヤ 5 とは別に立っている区画です

カタカナは読み方の目安で、公式の表記ではありません。公式表記は英語のほうです。当サイトが画面でも英語を並べているのは、読者がDLDの原データや英語の物件情報と突き合わせられるようにするためです。カタカナだけで引こうとすると、どの区画のことか決まりません。

通称の扱いには注意が要ります。「ドバイ・マリーナ」はマルサ・ドバイの通称として広く通っていますが、読み替えではなく「世間ではこう呼ばれている」という別の主張です。表の3列目に「記載なし」の行があるのは、当サイトが通称を確認できていない区画に通称を当てないためです。似た名前を当てはめると、DLDに別に立っている区画と衝突します。

数字が合わないときに先に見る4点

他の資料と数字が合わないとき、最初に疑うのは水準ではなく定義です。次の4点をそろえてから比べてください。どれも、同じ区画の同じ期間でも数字が変わる原因になります。

先に見る点 当サイトの扱い ずれていたときに起きること
賃料が新規契約か、更新を含むか 新規契約だけ 更新を含めると賃料が下がり、利回りも下がります
分母が同じ住戸の価格か 別の物件の中央値 同じ住戸の実績として読むと、再現できません
代表値が中央値か平均か 中央値 平均は高額の登記に引かれ、中心から離れます
分母と分子の母数 図に併記 件数の少ない側の数字が、全体の姿として読まれます

この4点のほかに、表面と手取りの違いがあります。当サイトの数字は表面です。共同所有物件の管理費(サービスチャージ)、空室の期間、仲介手数料、修繕、送金と為替の費用は、どれも引いていません。表面の数字からは、手元に何が残るかは出てきません。

もう1つ、見落としやすいのが期間です。マルサ・ドバイの分母は薄いので、期間を変えると構成が入れ替わり、取引単価の中央値が動きます。分母が薄い区画では、期間の違いがそのまま水準の違いに見えます。比べるときは、相手の数字がどの期間のものかを先に確かめてください。

自分で引くときの入口

ここまでの数字は、すべてDLDが公開しているオープンデータから作っています。読者が同じ手順をたどれるように、入口を示します。

ドバイ土地局のオープンデータ案内ページの表示。取引や賃貸などのデータセットが並び、期間を指定する入力欄が置かれている
引用キャプチャこの記事の分子と分母を作ったデータセットが配られているページです。Transactions(売買)とRents(賃貸)が別のデータセットとして並び、どちらも期間を指定する入力欄を持ちます。売買の側には取引の種類(Sales・Mortgages・Gifts)を選ぶ欄があり、当サイトはSalesだけを数えています。利回りという項目は、ここで配られるデータセットには含まれていません。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Data(オープンデータ)(キャプチャ取得日 2026-09-29/表示のファーストビュー。データセットの構成と、期間・取引の種類の入力欄は 2026-10-07 に同じページで再確認しました)

手順はこうです。Transactionsで区画名にMarsa Dubaiを入れ、期間を指定し、取引の種類をSalesにします。次にRentsで同じ区画と期間を指定し、新規契約に絞ります。どちらも、絞り込みをそろえないと割り算が成立しません。片方だけ条件を変えると、別のものを割ることになります。

注意点が2つあります。1つは、照会フォームにCAPTCHAが付いていることです。人がいることを確かめるための仕組みなので、当サイトは機械で越えません。期間を指定すればまとめて取得できるため、回数自体は多くありません。

もう1つは、利回りがそこで配られていないことです。利回りは、取得した2つのデータセットを自分で組み合わせて作る数字です。だから、含めたものと外したものを書き残していない利回りは、誰のものであっても検算できません。当サイトが定義を毎回併記しているのは、そのためです。

まだ埋まっていない項目

  • オフプランと完成済みを分けた取引単価。この記事の分母はオフプランの比率までで、単価を2つに分けていません
  • 間取りごとの表面利回り。賃貸側を間取りで割ると、組ごとの件数が条件に届かなくなります
  • 建物ごとのサービスチャージの水準。照会はプロジェクト単位の仕組みで、区画の代表値は公表されていません
  • 空室の期間。DLDの記録は成立した契約だけなので、借り手が見つかるまでの日数は出てきません
  • この区画でこれから完成する住戸の数。プロジェクトのデータセットをまだ集計に使っていません
  • 更新の契約を含めた賃料の水準。当サイトは新規契約だけを数えています

いずれも空欄のまま残しています。埋めるには、取得したデータに別の集計を足すか、プロジェクト単位・建物単位で照会する必要があります。推測で埋めた数字をこの記事には書きません。

この数字で決められること、決められないこと

決められるのは、候補の絞り込みの入口です。この区画は、賃料の水準が近隣と同じ帯にありながら、取引単価が高い区画です。同じ賃料をより高い価格で買う形になるので、表面利回りを先に置く運用には向きません。そこを承知のうえで選ぶのか、別の指標で選ぶのかを、先に決められます。

決められないのは、個別の住戸の利回りです。分子と分母が別の物件の集まりから出ているので、この数字はどの住戸の実績でもありません。買う候補が決まったら、その住戸の賃料と価格、その建物のサービスチャージ、引き渡しの時期で組み直すことになります。区画の数字は候補を絞るためのもので、買う判断を代わりにはできません。

最後に、分母が薄いことの意味をもう一度書きます。この区画の売買の記録は3桁しかありません。来月や来期に売り出されるものが変われば、取引単価の中央値は動きます。動くのは市場ではなく、記録の構成のほうかもしれません。そこを区別するために、当サイトは件数を数字と一緒に出しています。続けて追う場合はマルサ・ドバイのデータを、同じ考え方を別の区画で確かめる場合はダウンタウン・ドバイの不動産を見てください。