ドバイ・クリーク・ハーバー/エリア

ドバイ・クリーク・ハーバーの不動産|2つの区画名で読む供給と取引

ドバイ・クリーク・ハーバーの不動産を、ドバイ土地局の登記データの集計から整理します。この地区の記録はDLDでは DUBAI CREEK HARBOUR と Al Khairan First の2つの区画名に分かれ、片方だけでは供給と取引の全体が見えません。

ドバイで水辺の新築を探していると、「ドバイ・クリーク・ハーバー」という名前に必ず行き当たります。ところが、ドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)が公開している登記の記録をその名前で引くと、この地区で実際に動いているもののうち一部しか出てきません。DLDは同じ場所の記録を、2つの区画名に分けて持っているからです。

先に結論を書きます。DLDで DUBAI CREEK HARBOUR を指定して出てくるのは、ほとんどがすでに完成した住戸の売買です。オフプランは1割強しかありません。一方、同じ地区の土地区画名である Al Khairan First を指定すると、売買はすべてオフプランで、件数は前者の2倍近くあります。新規の賃貸契約も、これから完成する住戸のプロジェクト登録も、こちらの名前の側にしか記録がありません。

つまり、名前をひとつ選んで引いた数字は、この地区の半分です。完成在庫の売買だけを見て「中古が中心の落ち着いた地区」と読むことも、新築の登記だけを見て「オフプランしかない地区」と読むことも、どちらも同じデータからできてしまいます。どちらも間違いです。

この記事は、2つの名前に分かれた記録を突き合わせて、この地区の供給(これから建つ住戸)と取引(いま登記されている売買と賃貸)がどういう形をしているのかを示します。物件を紹介するものではなく、どのエリアを買うべきかを決めるものでもありません。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。

水準そのものの数字は本文へ書き写さず、集計の期間と定義を添えて図に置いています。本文に写すと、データを更新したときに本文だけが古いまま残るためです。この地区の数字を同じ期間と定義で続けて見たい場合はドバイ・クリーク・ハーバーのデータにあります。

なぜ同じ地区が2つの名前で記録されているのか

ドバイ・クリーク・ハーバーがDLDの区画名では DUBAI CREEK HARBOUR と Al Khairan First の2つに分かれていることを示す分岐図。前者は登記876件・オフプラン11.1%・賃貸の記録なし、後者は登記1,581件・オフプラン100%・新規の賃貸契約9,747件
左(赤)が完成した住戸の売買が入る区画名、右(緑)が新築の売買と賃貸が入る土地区画名です。右の組み合わせ(Al Khairan First × アパートメント)の表面利回りは4.80%で、ドバイ全体で算出できた50件の組み合わせの中央値(4.74%)よりわずかに上でした。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの登記記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/確認日 2026-10-06)

DLDの公開データは9つのデータセットに分かれていて、売買(Transactions)、賃貸(Rents)、プロジェクト(Projects)のどれにも「Area」という列があります(確認日 2026-10-06)。エリアごとに記録を分けるというのは、結局この列の値で絞ることです。だから、この列に立っていない名前では絞れません。

ドバイの大規模な開発地区では、ここが混乱の元になります。DLDの区画名には、土地の登記単位としての名前と、開発事業の名前として立った名前が混ざっているためです。クリーク・ハーバーの場合、土地の側の名前が Al Khairan First で、開発事業の側の名前が DUBAI CREEK HARBOUR です。同じ水辺の同じ計画でありながら、記録は別の値として並びます。

どちらが「正しい名前」かという問いには答えがありません。どちらもDLDが実際に使っている表記です。読者が決めるべきなのは、自分が知りたいものがどちらの名前に入るのかという点だけです。

カタカナについても一点あります。「ドバイ・クリーク・ハーバー」は日本語で広く使われている呼び方ですが、DLDの公式表記は英語です。当サイトは区画名を英語と並べて表示し、カタカナだけの表示を作っていません。DLDの原データや英語の物件情報と突き合わせるときは、英語の区画名だけが手がかりになります。

DLDの区画名 当サイトの表示 その名前に入る記録 読むときの注意
DUBAI CREEK HARBOUR ドバイ・クリーク・ハーバー(DUBAI CREEK HARBOUR) 完成した住戸の売買が中心。新規の賃貸契約は記録なし この名前だけでは、これから建つ住戸が見えません
Al Khairan First アル・ハイラン 1(Al Khairan First) オフプランの売買、新規の賃貸契約、プロジェクトの登録 日本語の通称では引けません。英語の区画名で指定します
Al Kheeran アル・ヒーラン(Al Kheeran) 綴りの近い別の区画として立っています 同じ場所と決めつけると、別の区画の記録が混ざります

表の3行目は注意のために置きました。当サイトが持つDLDの区画名の一覧には、綴りの近い Al Kheeran も別に立っています。名前が似ているから同じ場所だろうと寄せると、別の区画の記録を混ぜることになります。同じ種類の取り違えが起きやすい組み合わせはドバイ不動産のエリア比較に並べました。

供給は Al Khairan First の側に登録されています

Al Khairan First で登録されている3つのプロジェクトの着工から完成予定までを横棒で並べたタイムライン。Creek Bay 766戸、Creek Haven 594戸、Valia 492戸で、完成予定はいずれも同じ年に集まっている
棒の左端が着工日、右端が完成予定日です。3件の住戸数を合わせると1,852戸、事業の規模を合わせると AED 2,481,076,969 になります。いずれも登録している会社は DUBAI CREEK HARBOUR L.L.C で、エスクロー口座が開かれています。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataのプロジェクト登録をReheatが集計(住戸数の多い上位200件のうち/確認日 2026-10-06)

プロジェクトのデータセットを Al Khairan First で絞ると、この地区でこれから建つ住戸の計画が並びます。当サイトが集計に使っている上位の計画のなかでは3件が該当し、登録している会社はいずれも DUBAI CREEK HARBOUR L.L.C です。法人名は登記された名称なので、当サイトは英語のまま出します。地名が入っていてもカタカナにしません。読者がDLDやRERA(不動産規制庁)の登録を照会するときの手がかりになるからです。

ここで図から読めることが2つあります。ひとつは、完成予定が同じ年のごく近い時期にかたまっていることです。着工はいずれも同じ年の春から初夏で、完成予定は4年あまり先の春から夏に並びます。同じ地区で、同じ会社が、ほぼ同じ時期に引き渡す計画が続いている形です。もうひとつは、工事の進捗がまだ1%にも届いていないことです。進捗の値が記録されていない計画もあります。

完成時期が近いことは、買う側の判断に直接きいてきます。引き渡しが重なると、同じ時期に同じ地区で貸し出しや売却を始める住戸が増えます。先に貸し出せた住戸が借り手を取り、後から出した住戸が空室の期間を長く持つ、という順番が生まれやすくなります。これは将来の予測ではなく、公表されている完成予定日の並び方から読める条件です。どれだけの影響が出るかは、この記録からは分かりません。

進捗が1%未満という点は、別の意味を持ちます。オフプランで契約する場合、支払いは工事の進み方に合わせて区切られることが多く、工事がほとんど進んでいない段階では、まだ支払いの大半が先に残っている状態です。この段階で払った代金がどこへ入るのかを確かめる仕組みが、次に書くエスクロー口座です。オフプランを買う手順そのものはオフプラン物件に分けてあります。

代金の受け皿は、プロジェクトごとに開かれます

ドバイ土地局のオープンデータ(Real Estate Data)のページ。売買・賃貸・プロジェクトなど複数のデータセットを期間とエリアで照会できる画面が表示されている
引用キャプチャこの記事の集計は、すべてこのページから取得した記録を使っています。データセットが分かれていて、どれも期間とエリアで絞る形です。エリアの指定に使えるのは、この画面の選択肢に立っている区画名だけです。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Data(キャプチャ取得日 2026-09-29/表示のファーストビュー。データセットの構成と絞り込みの項目は 2026-10-06 に同じページで再確認しました)

DLDのプロジェクト登録は、建てる計画を届け出るだけの手続きではありません。DLDの案内によると、この手続きはオフプランで売るためのエスクロー口座を開く手続きとひとつになっています(確認日 2026-10-06)。土地がフリーホールドまたは長期賃借の区域にあること、所有権の証書を持っていること、開発会社がDLDの許認可の仕組みに登録されていること、承認済みの図面にもとづいて住戸が登録されていることなどが条件に挙がっています。

同じ案内には、工事の出来高、銀行保証、現金の預託のいずれかで30%の保証を差し入れることと、登録手数料が AED 150,000 であることが書かれています。知識手数料と革新手数料がそれぞれ AED 10 加わり、処理の所要時間は25分と示されています。差し入れる保証の形が3つから選べるという点は重要です。「保証がある」という表記だけでは、どの形の保証なのかが分かりません。

この記事で取り上げた3件は、どれもエスクロー口座が開かれている計画として記録されています。ただし、口座が開かれていることは、完成を保証するものではありません。口座は代金の置き場所を分ける仕組みで、工事が予定どおり進むことや、引き渡しが遅れないことを約束するものではありません。混同しないでください。

もうひとつ、読者が自分で確かめられる窓口があります。DLDはプロジェクトの進捗を照会する仕組みを公開していて、プロジェクト名や番号から完成の状況、建物と住戸の内容、開発会社と管理会社、エスクロー口座の情報を見られると案内されています。窓口はDLDのアプリです(確認日 2026-10-06)。当サイトの集計は取得した時点の記録なので、契約の前には、その時点の進捗をこの窓口で見てください。

間取りの構成も、名前によって違います

2つのDLD区画名について間取り別の登記件数を横棒で並べた図。DUBAI CREEK HARBOUR は2ベッドルームが最も多く4ベッドルームも13件あるが、Al Khairan First は1ベッドルームが最も多く4ベッドルームとスタジオの登記がない
赤が完成した住戸の売買、緑が新築の売買です。赤は2ベッドルームが最も多く、緑は1ベッドルームが最も多くなります。緑にはスタジオと4ベッドルームの登記がなく、1〜3ベッドルームだけで構成されています。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの登記記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/確認日 2026-10-06)

図を見ると、2つの名前で、売れている間取りの山が別の場所にあることが分かります。完成した住戸の側は2ベッドルームが最も多く、広い住戸の登記も少しあります。新築の側は1ベッドルームが最も多く、次が2ベッドルームで、そこから先が急に細くなります。

さらにはっきりしているのは、新築の側にスタジオと4ベッドルームの登記がひとつもないことです。売られている住戸が1ベッドルームから3ベッドルームまでに限られているということで、言い換えれば、この地区の新築で単身向けの最小の住戸や家族向けの広い住戸を探しても、候補が出てきません。広い住戸を探す場合、候補は完成した住戸の側にしかありません。

この違いは、価格の読み方にも効いてきます。地区全体の代表値は、件数の多い間取りに引かれた値になります。2つの名前で件数の多い間取りが違うのですから、2つの名前の代表値をそのまま並べて「こちらのほうが安い」と読むことはできません。見ているのは別の間取りの帯です。価格の読み方そのものは不動産価格・相場に分けてあります。

表記についても触れておきます。「1 B/R」はベッドルーム(寝室)の数で、日本の「1LDK」とは数え方が違います。キッチンが独立しているか、メイド室をどう数えるかが物件ごとに違うため、おおむね対応するとしか言えません。間取りの表記を日本の表記へ機械的に置き換えると、広さの見当が外れます。

賃貸の記録が片方にしかありません

この地区でもうひとつ特徴的なのは、新規の賃貸契約が Al Khairan First の側にしか記録されていないことです。DUBAI CREEK HARBOUR の側には、同じ期間の新規の賃貸契約がありません。

これは「完成した住戸が貸し出されていない」という意味ではありません。賃貸の記録も区画名の列で分かれるため、賃貸契約の登録に使われている区画名が、売買の登記に使われている区画名と一致していないと考えるのが自然です。同じ建物の売買が一方の名前に、賃貸が他方の名前に入る、ということが起こり得ます。

この食い違いは、利回りを出すときにそのまま効いてきます。当サイトの表面利回りは、同じ区画名・同じ物件種別の年間賃料と取引価格を、面積あたりに直して割ったものです。賃料の記録が片方の名前にしかないのですから、この地区の表面利回りは、賃料の側と価格の側が同じ名前でそろう組み合わせでしか出せません。もう一方の名前については、利回りを出していません。空欄のまま残しています。

出せた側についても、条件が3つ付きます。1つ目は、賃料が新規契約だけだということです。更新の契約には賃料の引き上げに規制があるため、市場の水準より低く出ます。2つ目は、同じ住戸の実績ではないことです。賃料の中央値と価格の中央値は、別々の物件の集まりから出ています。3つ目は、引いていない費用があることです。管理費、空室の期間、仲介手数料、修繕、送金と為替の費用はどれも入っていません。表面と手取りの差をどう見積もるかは利回り・家賃収入にまとめています。

自分で同じ数字を出すには

当サイトの集計は、上のキャプチャに写っているページから取得した記録だけを使っています。読者が同じ手順をたどれるように、順番を書いておきます。

まず、売買(Transactions)を期間で絞り、取引の種類を売買だけにします。当サイトは抵当権と贈与の行を含めていません。混ぜると件数が3割増えます。次に、エリアの欄で DUBAI CREEK HARBOUR を選び、同じ期間でもう一度 Al Khairan First を選びます。この2回を必ず両方やってください。片方だけでは、この記事が示した構成の違いが見えません。

賃貸(Rents)は、同じ2つの名前で引き、版の欄を新規だけに絞ります。プロジェクト(Projects)は、同じ2つの名前で引けば、これから建つ住戸の計画が出ます。当サイトはこのうち売買のデータセットだけを本格的に集計していて、ほかのデータセットは件数と登録の内容を読む段階にあります。集計していないものを「無い」と書かないために、ここも明示しておきます。

注意点も2つあります。1つは、照会のフォームに人がいることを確かめる仕組み(CAPTCHA)が付いていることです。当サイトはこれを機械で越えません。期間を指定すればまとめて取得できるため、回数自体は多くありません。もう1つは、集計の定義をそろえないと数字が合わないことです。当サイトは面積あたりの単価を、面積が記録されている行だけで計算しています。他社の数字と違うときは、水準が違うのではなく、含めたものが違う可能性を先に見てください。期間と定義をそろえた一覧はエリア別のデータ、これから完成する住戸の記録は供給・完成予定データにあります。

確認できなかったこと

  • 2つの区画名が、地図の上でどこまで重なっているのか。DLDは区画の境界をこのデータでは公表していません
  • 賃貸の記録が片方の名前に寄っている理由。登録の運用によるものと推測はできますが、公表された説明を見つけられていません
  • 完成した住戸と新築を分けた利回り。賃料の記録が片方にしかないため、分けて出せません
  • 建物ごとの管理費(サービスチャージ)の水準。照会はプロジェクト単位の仕組みで、区画の代表値は公表されていません
  • 上位の計画に入らない小規模なプロジェクトの有無。当サイトの集計は住戸数の多い順に絞ったものです
  • 空室の期間。DLDの記録は成立した契約だけなので、借り手が見つかるまでの日数は出てきません

いずれも空欄のまま残しています。埋めるには、取得したデータに別の集計を足すか、プロジェクト単位で照会する必要があります。推測で埋めた数字をこの記事には書きません。

判断の分かれ目

この地区を候補にするかどうかは、価格の高安ではなく、次の4つで分かれます。

  1. 完成した住戸と新築のどちらを探しているか。この地区は、探しているものによって見るべき区画名が変わります。片方の名前の数字だけで判断すると、候補の半分を見ないまま決めることになります
  2. 探している間取りが、新築の側にあるか。新築の登記は1ベッドルームから3ベッドルームまでに限られています。それより小さい住戸や広い住戸を探すなら、完成した住戸の側だけが候補です
  3. 引き渡しが重なる時期を前提にできるか。公表されている完成予定日は近い時期に並んでいます。同じ時期に貸し出しや売却を始める住戸が増えるという条件は、先に織り込んでおけます
  4. 進捗と口座を自分で照会するか。当サイトの数字は取得した時点のものです。契約の前に、その計画の進捗とエスクロー口座をDLDの窓口で確かめる手間をかけられるかどうかで、取れるリスクが変わります

どちらが有利かという問いには、公表されている記録からは答えが出ません。出るのは「この条件ならこちら」という切り分けだけです。ほかの区画と同じ基準で並べたい場合はエリア別のデータ、完成済みが中心の区画と比べたい場合はダウンタウン・ドバイの不動産を見てください。