ドバイ政府メディアオフィス(Government of Dubai Media Office)は2026年10月13日、ムハンマド・ビン・ラーシド・リーダーシップ・フォーラム(Mohammed bin Rashid Leadership Forum)での発言として、ドバイでいま進行中の事業がおよそAED2.1 trillionに達すると公表しました。発表では分野ごとの金額が並び、このうち不動産に充てるとされたのがAED1.1 trillionで、こちらには through 2030(2030年まで)という期限が添えられています。住まいについては、交通とインフラの拡張と並行しておよそ350,000戸の住戸を供給するとあります。
住戸の数が出てくるため、購入を検討している人には不動産の発表のように見えます。ただし、この発表に出てくるのは事業の規模です。物件の価格、家賃の水準、利回り、外国人が取得できる区域の変更、制度の改正はいずれも書かれていません。発表の主体はドバイ政府メディアオフィスで、不動産の登記や規制を担うドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)の発表ではありません。
この記事では、まず分野ごとの金額を発表の記載のまま並べ、次に through 2030 がどの数字に付いているのかを確かめます。そのうえで、計画として示された戸数と、DLDが上期の実績として公表した戸数を別の物差しとして分けます。最後に、1件のプロジェクトについて自分で状況を照会できる公式の経路を示します。金額はすべてAEDのまま書き、円への換算は行いません。数値はドバイ政府メディアオフィスの発表本文とDLDの公表からの転記で、当サイトが推計した値はありません。
分野ごとの金額は、別々に書かれています
発表は、進行中の事業をいくつかの分野に分けて金額を挙げています。空港、航空会社の機材、金融街の第2期、道路と鉄道、下水と雨水の排水、電力と水の系統、緑地と水辺、そして不動産です。それぞれの金額は発表に書かれた表記のまま下の表に置きました。
ここで気をつけたいのは、総額の読み方です。およそAED2.1 trillionは進行中の事業の総額として示された数字で、下の表に並ぶ分野別の金額を足し合わせた結果だとは書かれていません。足し上げて検算することはできませんし、表に出ていない分野が無いとも言えません。発表には、今後さらに公表される事業があるとも書かれています。
金額の大小から分野の優先度を読み取ることもできません。空港の建設、航空機の購入、下水の幹線、住戸の供給は、必要な費用の性質がそれぞれ違います。同じ基準で並べられる数字ではないので、額が大きいものほど早く進む、といった読み方は成り立ちません。
| 分野 | 公表された金額 | 発表の記載 |
|---|---|---|
| 不動産 | AED1.1 trillion | through 2030(2030年まで) |
| Al Maktoum International(空港) | AED128 billion | 今後10年で年間最大 260 million passengers の処理能力 |
| Emirates・flydubai の機材 | AED328 billion | 両社の機材の拡張に充てる |
| Emirates の整備施設 | AED18.7 billion | 新しい engineering and maintenance complex |
| DIFC 第2期 | AED100 billion 超 | Dubai International Financial Centre の第2期 |
| 道路とメトロ | AED100 billion | 道路の改良と Dubai Metro の Blue・Gold 両線 |
| Dubai Exhibition Centre | AED10 billion | 拡張 |
| Strategic Sewerage Tunnels | AED80 billion | 下水の幹線トンネルの系統 |
| Tasreef(雨水の排水) | AED30 billion | 雨水排水の事業 |
| 電力・水の系統 | AED151 billion | 新しい送電・送水の基盤 |
| Blue and Green Spaces Roadmap | AED4 billion | 緑地と水辺の工程表 |
| 住戸 | 金額の記載がありません | およそ350,000戸を供給するとある |
住戸の行だけ、金額ではなく戸数で書かれています。住戸の供給にいくら充てるのかは発表に出てきません。不動産のAED1.1 trillionがこの戸数の費用にあたるのかどうかも書かれていないため、戸数と金額を結びつけて1戸あたりの額を出すことはできません。
「2030年まで」が付いているのは、不動産の金額です
同じ発表に年の記載があるのは、不動産の金額のほうです。AED1.1 trillionに through 2030 が添えられています。いっぽう住戸の文は、交通とインフラの拡張と並行して約350,000戸を供給するという書き方で、いつまでに供給するのかは書かれていません。
この違いは、読み替えが起きやすいところです。2つの数字が同じ発表の中に並んでいるため、「2030年までに35万戸」という言い方になりやすいのですが、それは発表の記載を超えています。期限の付いた数字と、期限の付いていない数字を、1つの文にまとめないでください。
販売の場でこの言い方を聞いたときは、どの公表資料の何ページに書かれているのかを確かめるのが確実です。期限が公表されていない数量を、引き渡しの時期や値動きの前提として使うことはできません。年を補って説明された資料を受け取った場合は、その年の出どころを質問してください。
計画の戸数と、完成した戸数は別の物差しです
住戸の数は、別の経路でも公表されています。DLDは2026年9月7日、2026年上期の市場指標として、完成した不動産プロジェクトが104件、その投資額がAED 111 billionを超え、市場に加わった住戸が24,537戸だと示しました。前年の同じ期間と比べて、完成した件数は38.7%、住戸数は36%を超えて増えたとあります。この数え方と内訳はドバイの完成プロジェクトに分けて書いています。
2つの数字は、見た目は同じ「戸数」ですが、物差しが違います。約350,000戸はこれから供給するとされている計画の数で、24,537戸は上期のあいだに完成したとして公表された実績の数です。計画は変わることがあり、実績はその期間について確定しています。
したがって、2つを足して供給の総量を出すことも、片方で片方を割って年数を出すこともできません。計画の側に期限が書かれていないため、年あたりの戸数は計算できません。完成の定義が両者で同じかどうかも、計画の側には書かれていないので確かめられません。数字の大きさの比較に意味を持たせられるのは、数え方と期間がそろっているときだけです。
住戸35万戸について、書かれていないこと
買う側、借りる側が知りたい項目は、この発表にほとんど出てきません。推測で埋めずに、記載の有無をそのまま並べます。
| 項目 | 発表の記載 |
|---|---|
| 戸数の総量 | approximately 350,000 residential units |
| 供給の期限 | 記載がありません |
| エリア・区画 | 記載がありません |
| 価格帯・賃料の水準 | 記載がありません |
| 外国人が取得できる区域の変更 | 記載がありません |
| 分譲か国民向け住宅かの区分 | 記載がありません |
| 事業者・ディベロッパー | 記載がありません |
| 不動産に充てるとされた額 | AED1.1 trillion(through 2030) |
| 進行中の事業の総額 | およそAED2.1 trillion |
区分が書かれていない点は、特に注意が要ります。ドバイやアブダビでは、国民向けの住宅と、外国人が取得できる区域で販売される住戸が別の枠組みで進みます。どちらがどれだけ含まれるのかが書かれていないため、この35万戸のうち自分が買える住戸が何戸あるのかは、この発表からは分かりません。
エリアが書かれていないことも、検討には効きます。供給が増える場所と、自分が見ている物件の場所が同じかどうかが分からなければ、その戸数を自分の判断材料にはできません。地区ごとの登記の実績は、DLDのデータから確かめる経路があります。
自分で確かめる経路は、プロジェクト単位です
全体の戸数は確かめられなくても、1件のプロジェクトについてなら公式の経路があります。DLDの Project Status Enquiry(Mashrooi)です。案内ページによると、プロジェクトの番号、面積、住戸数、登録の日付、着工と完成の日付、所在、備考が表示され、建物の情報、ディベロッパーの情報、管理会社の連絡先、エスクロー口座の情報も示されます(確認日 2026-10-15)。経路として Dubai REST のアプリが案内されています。
手数料と処理にかかる時間は、この案内ページには書かれていません。利用できる人の条件も、このページでは明示されていません。したがって当サイトからは、照会できる項目までを案内の範囲とします。確かめたい物件があるなら、名前や番号で引いて、登録の有無と完成の日付を自分で見るほうが、公表された計画の戸数を見るより確実です。
複数の案件を並べる場合は、公表されている項目をそろえて比べる手順をドバイのオフプラン物件の比較にまとめています。片方にしか公表値が無い項目で順位を付けないことが、比較を壊さない条件です。
事業の規模は、価格が上がる根拠ではありません
進行中の事業の総額が大きいことは、街の整備が進んでいることを示す材料です。それが、個々の物件の値上がりや、賃料が取れることの根拠になるわけではありません。当社は、値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。
供給が増えることは、買う側にとって選択肢が増えることでもあり、同時に競合が増えることでもあります。どちらに働くかは、エリア、物件の種類、時期によって違います。発表に戸数の内訳が無い段階で、この35万戸が自分の物件にどう働くかを見積もることはできません。
登記された数字の側から市場を見る入口はドバイの不動産データにまとめています。政府が公表している不動産分野の数値目標との関係はドバイ不動産セクター戦略2033の目標値で扱っています。制度の変更があった場合は不動産政策・規制の記事として記録します。
この記事は、ドバイ政府メディアオフィスの発表本文と、DLDの公表およびサービス案内だけを材料にしています。住戸の供給について期限、エリア、区分が公表された時点で、この記事を更新します。