ドバイへ移ることを考え始めると、最初に決めるのは滞在資格です。ここは誰の説明でも同じです。ところが実際に調べ始めると、別のところでつまずきます。「UAEでは」と書かれた決まりと「ドバイでは」と書かれた決まりが、同じページに並んで出てくるからです。
UAEは7つの首長国でできた連邦です。滞在資格の枠組みと身分証は連邦が決め、医療保険の義務、賃貸契約の登録、住まいにかかる料金はドバイ首長国が決めています。この二層を分けずに読むと、アブダビ向けに書かれた手順をドバイに当てはめて窓口を取り違えたり、医療保険の費用を誰が払うのかを読み違えたりします。
二層を見分けられると、実際に3つのことが決まります。第一に、問い合わせる先が決まります。第二に、費用を負担する人が決まります。第三に、制度が改定されたときに、どの公表ページを見直せばよいかが決まります。移住の準備は1日では終わらないので、3つめは特に効いてきます。
この記事では、UAE政府ポータル(u.ae)と、ドバイ保健局(DHA)の健康保険ポータル(ISAHD)で2026年10月30日に確認できた範囲だけを書きます。書かれていないことは、書かれていないと記します。各項目の入口はドバイ移住にまとめています。
どの決まりがどちらの層にあるのか
先に全体を1枚にします。上が連邦の層、下がドバイ首長国の層です。同じ「ドバイ移住」の説明の中に、この二つが混ざって出てきます。
図のとおり、滞在資格そのものの種類はどこに住んでも変わりません。変わるのは申請する相手です。そして保険・賃貸・料金は、ドバイに住む人だけの決まりになります。以下では、この順に見ていきます。
滞在資格の枠組みは連邦が決めています
UAE政府ポータルの在留ビザの一般規定のページは、有効期間を種類と保証人で分けて説明しています。保証人のつく在留は1年、2年、3年のいずれか、保証人のつかない在留は5年または10年です。この区分は、どの首長国に住んでいても同じです。
同じページは、在留の条件として18歳以上の申請者に健康診断を求め、セキュリティチェックを通ること、そしてEmirates IDを申請することを挙げています。提出書類の一覧には「医療保険またはヘルスカード」が入っています。つまり保険は、滞在資格が出たあとに考えるものではなく、申請の段で必要になるものです。この点は後の節でもう一度出てきます。
保証人のつかない長期の在留としては、ゴールデンビザがあります。UAE政府ポータルのゴールデンビザのページは、これを5年または10年の更新できる在留と説明し、対象として投資家、起業家、科学者、優秀な学生と卒業生、人道分野の先駆者、フロントラインヒーローズを挙げています。区分ごとの投資額や条件は区分ごとに分かれているため、この記事では扱いません。不動産を根拠に申請する場合の条件は、ドバイではGDRFAとDLDの案内で確かめることになります。当社は、物件の値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。
家族を呼ぶ場合も連邦の決まりです。UAE政府ポータルの家族の在留のページは、在留者が家族を扶養するための条件として月給 AED 4,000、または AED 3,000 と住居の提供を挙げています。扶養できる相手は配偶者、未婚の娘、25歳未満の息子、特別な支援が必要な子です。18歳以上の家族は健康診断を受けて通る必要があり、被扶養者には在留の満了または取消から6か月の猶予が与えられると書かれています。
| 区分 | 保証人 | 公表されている有効期間 | 公表されている主な条件 |
|---|---|---|---|
| 保証人のつく在留 | 雇用主など | 1年・2年・3年のいずれか | 18歳以上は健康診断、セキュリティチェック、Emirates IDの申請 |
| 保証人のつかない在留 | 不要 | 5年または10年 | 区分ごとに分かれる。この記事では扱っていません |
| ゴールデンビザ | 不要 | 5年または10年(更新できる) | 投資家、起業家、科学者、優秀な学生と卒業生、人道分野の先駆者、フロントラインヒーローズ |
| 家族の扶養 | 扶養する在留者 | 扶養する人の在留に合わせる | 月給 AED 4,000、または AED 3,000 と住居。18歳以上の家族は健康診断 |
表の有効期間は、いずれも公表ページの記載です。実際に何年で出るかは区分と審査で決まるため、年数だけを見て日程を組まないでください。
ドバイの窓口はGDRFAです。Emirates IDはICPです
ここが二層の境目で、いちばん間違えやすいところです。UAE政府ポータルのビザの照会のページは、担当する機関を首長国ごとに分けています。アブダビ、シャルジャ、アジュマン、ウンム・アル・カイワイン、ラアス・アル・ハイマ、フジャイラの6つは連邦の身元・国籍・税関・港湾保安庁(ICP)、ドバイは居住・外国人局ドバイ(GDRFA)です。
制度の名前は同じでも、申請する画面もアプリも別です。日本語で見つかるUAEの滞在資格の解説は、どちらの機関を前提にしているかを書いていないことが少なくありません。手順を読む前に、その手順がGDRFAのものかICPのものかを確かめてください。アブダビに住む場合との違いはアブダビ移住の基礎で整理しました。
ただし、ドバイに住む人がGDRFAだけを相手にするわけではありません。Emirates IDを発行するのはICPです。UAE政府ポータルのEmirates IDのページは、カードをUAE国民と居住者の全員に義務づけ、常に携帯することを求めています。使いみちとして、行政サービスの利用、連邦国民評議会の選挙での投票、GCC域内の移動の際の身分証明(国民の場合)、空港の入国審査ゲートの通過を挙げています。
そして、在留ビザとEmirates IDは別の機関が出すのに、期限は連動します。一般規定のページはビザが切れると、ICPが発行したEmirates IDも切れると書いています。Emirates IDのページも、カードの取消が在留ビザの取消と結びついていると説明しています。ドバイに住む人は、2つの機関にまたがる1組の資格を持っていると考えるのが正確です。
医療保険の義務は、ドバイ首長国の法律です
費用の見込みがいちばん変わるのがここです。ISAHDのよくある質問のページは、Dubai Health Insurance Law No. 11 of 2013に定める区分の全員に医療保険の加入を義務づけるとし、その区分としてドバイに居住するUAE国民、ドバイの居住者(外国人)、そしてドバイを訪れる訪問者を挙げています。
負担する人も書かれています。同じページは雇用主が従業員の保険料の全額を負担する法的な義務を負うとしており、保険料を従業員の給与から控除してはならないと明記しています。最低の補償水準としては Essential Benefits Plan(EBP)が指定され、詳しい内容は適用される法令のもとで給付の一覧(Table of Benefits)に示されるとしています。従わない雇用主と保証人は、同法に基づく罰則の対象になると書かれています。
ISAHDの「What does it mean to ME」のページは、雇用主について、当該首長国の適用される健康保険法に従って従業員に医療保険を提供しなければならないと書いています。訪問者についても、少なくとも事故と救急の費用をまかなう有効な医療保険を持つことを目標として挙げています。家族の扱いについては、雇用主が家族の分まで補償を広げることを促し、雇用主が家族の補償を用意しない場合にはDHAが無理のない選択肢を市場に確保するとしています。
アブダビには、同じ役割を持つ別の首長国の法律があります。費用の負担の定め方も別です。だからドバイの保険の話をアブダビに持ち込むことも、その逆もできません。アブダビ側の定めは上に挙げた記事で扱っています。
前の節で見たとおり、連邦の提出書類の一覧には「医療保険またはヘルスカード」が入っています。つまりドバイで働く人の場合、保険を用意するのは雇用主の義務で、その保険が無いと連邦側の申請書類が揃わないという関係になります。雇用されない区分で申請する人は、自分で用意することになります。保険料の水準と、保険が在留の発給や更新の前提としていつから求められているかは、ISAHDのこの2ページには書かれていませんでした。
期限と料金は、すべて連邦の決まりです
在留を保つための日数も、Emirates IDの届け出の期限も、連邦の決まりです。ドバイ固有の数字ではないので、ドバイの情報源に出ていなくても当てはまります。
一般規定のページは、在留者がUAEの外に続けて180日を超えて滞在すると、在留ビザは自動的に無効になると書いています。日本への長い一時帰国や、第三国での長期の仕事を考えている人は、この日数を日程に入れておいてください。同じページは、在留許可が取り消されたか満了したあと、在留者の区分によって最大6か月までの猶予が与えられることと、訪問・観光・在留のビザの超過滞在の料金が1日 AED 50 に統一されていることも書いています。
Emirates IDの側にも期限があります。カードを紛失した場合は7日以内に届け出ること、登録した個人情報が変わった場合はその日から1か月以内に届け出ることが求められています。期限から1か月を過ぎて更新した場合の遅延の料金は1日 AED 20 で、上限は AED 1,000 と示されています。金額そのものは大きくありませんが、カードが切れているあいだは身分証が無い状態になります。銀行や通信の手続きが止まるのはそのためです。口座の側で何が求められるかはドバイで銀行口座を開く条件にまとめています。
住まいは、二つの層が重なるところです
住まいは、連邦の資格とドバイ首長国の手続きが直接つながる場所です。UAE政府ポータルの物件を借りる場合のページは、ドバイでは貸主が賃貸契約をDubai Land Department(DLD)に登録しなければならないと書いています。登録の義務は借主ではなく貸主の側にあります。
いっぽうで借主が用意するものも書かれています。旅券の写し、有効な居住ビザ、Emirates ID、そして合意した賃貸期間の支払いをまかなう先日付の小切手です。ここで連邦の層が前提条件として入ってきます。
この並びから1つ言えることがあります。滞在資格とEmirates IDが揃う前に、長期の賃貸契約は結べません。借主の提出書類にその2つが入っているからです。入国してから資格が出るまでのあいだをどこで過ごすか(雇用主が用意する住まい、短期の宿泊施設など)は、この記事で使った公表ページには書かれていませんでした。渡航の前に決めておく必要があります。
契約のあとに続く費用も、ドバイ首長国の決まりです。同じページは、借主がドバイ市(Dubai Municipality)へ住居料を払うこと、額は年間の家賃の5%であること、そしてそれが毎月の電気・水道の請求に加算されることを書いています。年額から決まるので、家賃が決まれば額も決まります。家賃の水準そのものはドバイの家賃データで、登録された契約の記録から見られます。
更新のときの賃料の引き上げについても、同じページが根拠を挙げています。ドバイの Law No. 43 of 2013 により、引き上げはRERAの計算機でエリアの平均賃料と比べて適用されるとしています。仲介手数料については、賃料の総額の5%までを求める業者もあると書かれています。登録の仕組みそのものはドバイのEjari登録、貸主と借主の権利と義務はドバイ賃貸借法の基本で扱っています。
層の見分け方を1枚にすると
調べ物のときに手元に置ける形にしておきます。見るべきは「誰が決めたか」よりも「どこに問い合わせるか」と「どのページを見直すか」です。
| 項目 | 決めている層 | ドバイに住む人の窓口 | この記事で使った公表元 |
|---|---|---|---|
| 滞在資格の区分と有効期間 | UAE連邦 | 申請はGDRFA | 在留ビザの一般規定 |
| ゴールデンビザの対象 | UAE連邦 | 申請はGDRFA | ゴールデンビザ |
| 家族を扶養する収入の条件 | UAE連邦 | 申請はGDRFA | 家族の在留 |
| Emirates IDの発行と届け出 | UAE連邦 | ICP | Emirates ID |
| UAE外の滞在日数・猶予・超過の料金 | UAE連邦 | - | 在留ビザの一般規定 |
| 医療保険の義務と費用の負担 | ドバイ首長国 | ドバイ保健局(DHA) | ISAHD |
| 賃貸契約の登録 | ドバイ首長国 | Dubai Land Department | UAEで物件を借りる |
| 住居料(年家賃の5%) | ドバイ首長国 | ドバイ市 | UAEで物件を借りる |
| 賃料の引き上げの基準 | ドバイ首長国 | RERA | UAEで物件を借りる |
表の右端は、改定を確かめるときに開くページです。連邦の行はUAE政府ポータル、ドバイの行はドバイ側のポータルに分かれます。1つの情報源だけを定期的に見ていると、もう一方の層の改定を取りこぼします。
この記事で確認できなかったこと
第一に、GDRFAの各サービスのページに載っている区分ごとの手数料と処理日数です。ページそのものは公開されていますが、本文が自動の取得では取り出せませんでした。金額は書き写さず、GDRFAの該当するサービスのページで確かめてください。
第二に、医療保険が在留の発給や更新の前提としていつから求められているかです。ISAHDの2つのページは、義務と負担する人は書いていますが、申請の段での扱いには触れていません。
第三に、保険料の水準です。EBPが最低の水準として指定されていることは書かれていますが、金額はISAHDのこの2ページには出てきません。
第四に、ゴールデンビザの区分ごとの投資額と条件です。区分ごとに分かれているため、この記事では扱っていません。不動産を根拠にする場合の扱いは、別に確かめる必要があります。
第五に、健康診断を受ける施設と、予約から結果が出るまでの日数です。この記事で使った公表ページには書かれていませんでした。
第六に、日本側の手続きです。転出届、住民税、在留届などは、この記事の範囲に入れていません。
次に決めることと、読む順番
二層を分けたうえで、順番に戻ります。まず連邦の層でどの区分で住むかを決めます。保証人がつくのか、つかないのか。ここが決まると、申請の主体が本人か雇用主かが分かれ、医療保険を誰が用意するかも決まります。
次にドバイ首長国の層へ移ります。保険はドバイの法律で義務づけられ、雇用される人なら費用は雇用主の負担です。住まいを借りるなら、滞在資格とEmirates IDが揃ってから契約に進み、登録は貸主が行い、住居料が電気・水道の請求に乗ってきます。
物件を買って持つことを考えている人は、所有の資格と滞在の資格が別のものであることに注意してください。外国人がどの区域でどの権利を取れるかは外国人でもドバイ不動産を所有できるかで扱っています。物件を持っていることが、そのまま滞在資格になるわけではありません。滞在資格の側の条件は、上に書いたとおり区分ごとに分かれています。
二層を見分ける習慣がつくと、調べ物の速さが変わります。見つけたページに「ドバイでは」と書いてあるのか、「UAEでは」と書いてあるのか。その1語を先に探すだけで、問い合わせ先と費用の負担者を取り違えずに進められます。各項目の入口はドバイ移住に並べています。