ドバイで会社を作る方法を調べると、ほとんどの説明が「本土(メインランド)かフリーゾーンか」から始まります。間違ってはいませんが、その2つを並べただけでは、自分が何をいつ決めることになるのかが見えません。実際に公表されている手順を読むと、本土は9段、フリーゾーンは4段です。段数が違うのは、本土では政府の側が順に確かめる項目が並び、フリーゾーンでは区域の機関への申請1つにまとまっているからです。
決め方の順番も公表されています。UAE政府ポータル(u.ae)の本土の手順は、第一段を事業の活動の特定に置き、それが法形態と免許の種類を選ぶ土台になると書いています。つまり、法形態や区域の名前から入るのは順番が逆です。活動が決まらないと、ほかは決められません。
この記事では、UAE政府ポータル、ドバイ政府のポータル(dubai.ae)、ドバイ土地局(DLD)、アブダビ経済開発局(ADDED)の各ページで2026年10月30日に確認できた範囲だけを書きます。設立の支援会社が出す費用の総額や、どの区域が得かという話は扱いません。書かれていないことは、書かれていないと記します。滞在資格そのものの枠組みはドバイ移住の基礎にまとめています。
活動(アクティビティ)が決まるまで、ほかは決められません
u.aeの本土の手順のページは、UAEで選べる事業の活動は2,000を超えるとしたうえで、最初に活動を特定するよう求めています。この1つが決まると、選べる法形態、申請する免許の種類、追加で必要になる官庁の承認が、それぞれ絞られます。
法形態として挙げられているのは、合名会社、合資会社、有限責任会社(LLC)、公開株式会社(PJSC)、非公開株式会社(PrJSC)の5つです。このうち合資会社、LLC、PJSC、PrJSCは、署名済みの基本定款(MOA)が要ります。
商号(トレードネーム)にも条件があります。公表ページが挙げているのは、法形態の略号を含めること、公序良俗に反しないこと、活動の種類と合っていること、宗教名や統治機関の名称、外部団体のロゴを含まないこと、そしてすでに登録されていないことです。
初期承認は「その事業を設立することに政府として異議がない」という意味だと説明されています。ここで外国から来る人に関わる条件が1つあります。外国投資家は、初期承認を得る前に居住・外国人局(GDRFA)の承認を取らなければならないと書かれています。会社の手続きのはずが、滞在資格の窓口と先につながるということです。
最後に支払いの期限があります。事業免許の料金は、支払通知を受け取ってから30日以内に払う必要があります。払わないと申請は取り消されます。金額そのものは、この記事で使ったページには載っていません。
本土の免許はDETが出し、ドバイでは8区分に分かれます
dubai.aeは、本土をフリーゾーンの外にあるドバイのすべての地域と定義し、本土の会社の登録と免許をドバイ経済観光局(DET)が管理すると書いています。フリーゾーンのほうは、ドバイの中に指定された区域で、関税や税の免除といった利点があり、区域ごとに独自の規則・規制・当局があるとしています。
免許の区分は首長国ごとに違います。u.aeは、ドバイについて8つを挙げています。そのうちdubai.aeに説明があるのは5つで、残り3つは名前だけが挙がっています。
| ドバイの免許区分 | 公表ページに書かれている対象 | 説明の有無 |
|---|---|---|
| 工業(Industrial) | 製造、生産、梱包、選別、収集などの活動 | dubai.aeに説明あり |
| 商業(Commercial) | ほとんどの物品・サービスの売買。輸出入、物流、建設、ソフトウェア、不動産を含む | dubai.aeに説明あり |
| 専門(Professional) | 知的・芸術的な能力にもとづく役務を提供する個人向け | dubai.aeに説明あり |
| eTrader | 自宅を拠点に、SNSなどのオンラインで物品・サービスを売る個人・起業家向け | dubai.aeに説明あり |
| Dual | フリーゾーンの会社が、追加の事務所やローカルパートナーなしに本土へ事業を広げるためのもの | dubai.aeに説明あり |
| Instant | - | u.aeに名前のみ |
| SME | - | u.aeに名前のみ |
| Intelaq | - | u.aeに名前のみ |
右端の列は、この記事で使った2ページに説明があったかどうかです。「-」は制度が無いという意味ではなく、この2ページには書かれていなかったという意味です。Instant、SME、Intelaqの対象と条件は、DETの個別のサービスページで確かめてください。
不動産に関わる人が目を留めるのは商業免許でしょう。dubai.aeの説明は、商業免許の対象に不動産を明記しています。ただし、仲介や管理を業として行う場合に不動産規制機関(RERA)の側で何が要るかは、この2ページには書かれていません。RERAが何を担っているかはRERAとは何かで扱っています。
フリーゾーンは4段で、免許を出すのは区域の機関です
u.aeのフリーゾーンの手順は4段です。分野と区域を選ぶ、法人の形態を決める、商号を選ぶ、事業免許を申請する。申請はそれぞれの区域の機関のサイトから行い、審査と承認のあと14営業日以内に免許が出ると書かれています。
選べる法人の形態として挙がっているのは、非公開の有限責任会社(LLC)、フリーゾーン会社(FZ Co.)、フリーゾーン事業体(FZE)、公開有限責任会社(PJSC)、そして国内外の会社の支店です。すべての区域がこの全部を登録できるわけではないとも書かれています。区域を選ぶ前に、自分が使いたい形態を登録できるかを確かめる必要があります。
商号の条件は本土とほぼ同じで、公序良俗に反しないこと、法形態を続けて書くこと、すでに登録されていないこと、活動と法的な地位に合っていること、宗教名や統治機関の名称を含まないことが並んでいます。区域が違っても、この部分は共通して求められます。
ドバイのフリーゾーンとしてu.aeが名前を挙げているのは、DMCC、Dubai Internet City、Dubai Media City、Jebel Ali Free Zone、Dubai Silicon Oasis、Dubai HealthCare Cityなどです。各区域の設立費用、事務所の要件、対象になる活動の一覧は、このページには載っていません。
| 比べる項目 | 本土(メインランド) | フリーゾーン |
|---|---|---|
| 公表されている段数 | 9段 | 4段 |
| 免許を出す主体 | ドバイ経済観光局(DET) | その区域の機関 |
| 適用される規則 | 首長国の経済部門と自治体の要件 | 区域ごとの規則・規制 |
| 公表されている所要期間 | 記載なし(Basherは15分で設立と記載) | 承認後14営業日以内に免許 |
| 関税 | 記載なし | 区域へ輸入する物品は0%、再輸出のための保管は関税なし |
| UAE本土の市場 | 制限の記載なし | 規制されている(下の節) |
「記載なし」は、この記事で使った公表ページに書かれていなかったという意味です。Basherは、u.aeが「15分で事業を設立できる」と紹介しているオンラインの設立サービスです。
本土の客を相手にするなら、区域の外へ出る手当てが要ります
フリーゾーンの利点として公表されているのは、外国投資家が100%所有できること、設立が簡単であること、そして関税の扱いです。u.aeは、区域へ輸入する物品には0%の関税、再輸出のために区域内に保管する物品には関税がかからないと書いています。区域の会社は、UAEの外から物品を輸入し、国際市場へ輸出し、UAEを経由して他国へ再輸出できるとされています。
いっぽうで、同じページはUAE本土の市場へのアクセスは規制されていると明記しています。本土で売るには、免許を持つ本土の販売業者を通すか、本土に支店を設けることになると書かれています。ドバイの場合、dubai.aeが挙げるDual Licenceが、フリーゾーンの会社が追加の事務所やローカルパートナーなしに本土へ事業を広げるための区分として案内されています。
ここが、設立の前に考えておく価値のある分かれ目です。最初から本土の顧客が中心なら、本土で免許を取るほうが工程は一本で済みます。逆に、取引の相手が国外か区域内で、物流が区域を経由するなら、フリーゾーンの作りが噛み合います。当サイトは、どちらが有利かを判定しません。判断の材料になるのは、売る相手が誰かという1点です。
100%の外国所有は本土でもできます。ただし除かれる分野があります
「本土はローカルパートナーが要る」という説明は、いまの公表内容と合いません。u.aeの完全な外国所有のページは、Federal Decree-Law No. 26 of 2020が本土の会社の100%外国所有を認め、2021年初めに施行されたこと、その内容がFederal Decree-Law No. 32 of 2021に引き継がれたことを書いています。過半数のエミラティ株主またはローカルパートナーの要件は廃止され、外国企業の支店にUAE国民のサービスエージェントを置く要件も撤廃されたとしています。
ただし、どの活動でもそうなるわけではありません。同じページは、内閣が「戦略的影響のある活動」を特定する委員会を設けられること、その活動には外国所有の制限を含む個別の免許要件を課しうることを書いています。完全な外国所有にできない分野として挙がっているのは7つです。
図の下の帯に書いたとおり、ここには公表ページどうしで揃っていない点があります。本土の手順のページには、GCC以外の居住者が全部を所有する事業にはUAEのローカル・サービス・エージェント(LSA)が必要で、その選任は公証人または裁判所の認証を受けた契約によると書かれています。いっぽう完全な外国所有のページは、外国企業の支店についてその要件が撤廃されたとしています。
この2つは適用される場面が違う可能性が高いのですが、どの活動にどちらが当てはまるかは、どちらのページにも書かれていません。当サイトは推測で埋めません。自分の活動と法形態について、DETに直接確かめてください。設立の支援会社が「LSAは不要です」と言う場合も、その根拠がどの規定なのかを尋ねるのが安全です。
会社には物理的な住所が要ります。ドバイでは契約をEjariに登録します
ここが、不動産を見ている人にいちばん効いてくる節です。u.aeは、UAEのすべての事業には、営業するための物理的な住所が必要だと書いています。事業所の場所は、その首長国の経済部門が定める要件と、地方自治体の土地計画の規制に適合しなければなりません。
そのうえで、事務所または倉庫の賃貸契約を提出することが求められ、ドバイではその契約をEjariに登録しなければならないと明記されています。つまり、本土で会社を作る工程には、物件を探して契約し、登録するという不動産側の工程がそのまま含まれます。登録の仕組みはドバイのEjari登録で扱っています。
賃料の水準は、会社の固定費としてそのまま効きます。登録された契約の記録から見た相場はドバイの家賃データにまとめています。住居用の賃料と事務所・倉庫の賃料は別の市場です。住居の数字をそのまま事業所の予算に使わないでください。
フリーゾーンの側については、u.aeの区域で事業を運営するページに事務所の要件が書かれていませんでした。区域によって、専有の事務所、共用の机、倉庫など用意されるものが違います。免許の料金に施設の利用が含まれるかどうかも、区域の案内で確かめる必要があります。
会社を作ることと、会社名義で物件を登記することは別です
会社ができれば不動産を会社名義にできる、とは限りません。DLDには、会社をDLDのシステムに登録して参照番号を得るためのサービスが別にあります。この番号は、不動産取引のサービスを申請するときに使うものです。
公表されている手数料は、申請する法人の種類で分かれます。個人事業(Single person establishment)が500 AED、有限責任会社が2,000 AED、外国株主のいる会社が4,000 AED、登録内容の追加・削除といった変更が500 AEDです。いずれも公表の表記は「+ VAT for the service partners fees」で、サービスパートナーの手数料とVATが別にかかる形と読めます。内訳の額までは書かれていません。手続きの窓口は不動産登録トラスティーのセンターで、所要時間は25〜30分と記載されています。
申請できる主体として並んでいるのは、個人事業、有限責任会社、非公開株式会社、公開株式会社、地場・外国・フリーゾーンの支店、民事会社、政府の連絡事務所、フリーゾーンの会社、外国企業、GCCの会社です。ここに名前があることと、特定の物件を自分の会社名義で登記できることは別の話です。登録地、法人形態、株主構成、対象の物件を揃えて、DLDまたは登録窓口に照会してください。
外国人がどの区域でどの権利を取得できるかは、不動産の側の決まりに従います。範囲は外国人でもドバイ不動産を所有できるかで扱っています。会社を作ることも、会社で物件を持つことも、値上がりや賃料収入を意味しません。当社は値上がり・賃料収入・利回りのいずれも保証しません。
法人税の線は、区域の名前では引かれません
UAE政府ポータルの法人税のページによると、税率は課税所得のうちAED 375,000までが0%、それを超える部分が9%です。適用は、2023年6月1日以降に始まる最初の事業年度からとされています。OECDのいわゆる第2の柱の基準に当てはまる大規模な多国籍企業には別の税率が適用されると書かれていますが、その率はこのページに出ていません。
フリーゾーンについて、同じページは「規制上の要件をすべて満たし、UAEの本土で設立した事業を行わないフリーゾーンの事業者に対しては、現在の優遇を引き続き尊重する」という書き方をしています。区域に登記したから0%になる、という書き方ではありません。条件つきです。
条件の中身(適格フリーゾーン課税者の要件や、どの所得が適格所得にあたるか)は、連邦税務庁と財務省が出すPDFの決定・指針に置かれています。この記事ではその本文を読めていないため、要件は書きません。税額に関わる判断は、税務の専門家と、FTA・財務省の原文で確かめてください。本土かフリーゾーンかの選択は、この判定にも関わります。
ドバイの手順を、ほかの首長国に当てはめないでください
本土の免許を出すのは、首長国ごとの経済部門です。ドバイはDET、アブダビはADDEDで、免許の区分の数も中身も違います。ドバイが8区分なのに対し、ADDEDが経済ライセンスとして挙げているのは7つで、名前も重なりません。
フリーゾーンも同じです。区域の顔ぶれが違い、登録できる形態も違います。アブダビ側の仕組みはアブダビの法人設立で扱っています。日本語で見つかる「UAEの会社設立」の説明が、どちらの首長国を前提にしているかを先に確かめてください。前提が違えば、窓口も免許の名前も変わります。
この記事で確認できなかったこと
第一に、免許の料金です。本土の免許も、区域の免許も、この記事で使ったページに金額が載っていません。支払いの期限(通知から30日以内)だけが書かれています。
第二に、Instant、SME、Intelaqの3区分の対象と条件です。u.aeは名前を挙げているだけで、dubai.aeの説明にも出てきません。
第三に、フリーゾーンの設立費用と事務所の要件です。区域ごとに異なるため、u.aeの共通のページには書かれていません。
第四に、適格フリーゾーン課税者の要件と適格所得の範囲です。連邦税務庁と財務省の決定・指針はPDFで公開されていますが、本文をこの記事では読めていません。
第五に、仲介や管理を業として行う場合にRERAの側で求められる登録です。商業免許の対象に不動産が入ることまでしか確認できていません。
第六に、本土の手順にあるローカル・サービス・エージェントの記載が、どの活動と法形態に当てはまるかです。上で書いたとおり、公表ページどうしで範囲が揃っていません。
第七に、DLDの会社登録が、どの登録地・法人形態の会社まで受理されるかです。申請できる主体の一覧はありますが、個別の受理可否は照会が要ります。
公表ページを開く順番
相談に行く前に、自分で開けるページは4つです。順番に意味があります。
まずu.aeの本土の手順で、自分の活動がどれにあたるかを考えます。ここが決まらないと、ほかのどのページも読み分けられません。次にdubai.aeで、ドバイの免許区分のうちどれに当てはまるかを見ます。本土で行くのかフリーゾーンで行くのかは、このあたりで見えてきます。
3つ目はu.aeのフリーゾーンの2ページです。区域を使う場合に、本土の市場へどう出ることになるかが書かれています。将来、本土の顧客を相手にする可能性があるなら、ここを先に読んでおく価値があります。4つ目がDLDの会社登録のページで、不動産を会社で扱う予定がある場合だけです。
支援会社の説明と公表ページが食い違ったときは、公表ページを先に確かめてください。当サイトは、本土とフリーゾーンのどちらがよいか、どの区域がよいかを順位づけしません。並べ替えの基準になる公表値を持っていないためです。会社を置く場所が決まったあとの住まいと滞在資格は、ドバイ移住の基礎とドバイで銀行口座を開く条件で続けて扱っています。