ドバイで1つの住戸を複数の入居者へ部屋単位で貸す「共同居住(shared housing)」を規律する法律が施行されました。Law No.(4) of 2026(共同居住の占有と管理の規律に関する法)で、2026年2月27日に官報へ公布され、法文の定めにより公布から180日後の2026年8月26日から効力を持っています。
日本からドバイの住戸を買って貸している読者にとって、これは「現地の運営会社だけの話」ではありません。住戸を共同居住に充てること自体が許可制になり、賃貸契約は登録簿に載せてはじめて効力を持つと定められたためです。所有者が負う義務は15項目が列挙され、違反には1件あたり最大500,000 AEDの罰金と、営業停止や退去命令を含む行政措置が用意されています。ここでは法文と政府の発表に書かれていることだけを、日付、対象、許可、契約、義務、罰則、期限の順に並べます。書かれていない項目は、埋めずに「書かれていない」と示します。
施行日は法文が決めていて、公布日から数えられる
第40条は、この法律を官報に公布し、公布の日から180日後に施行すると定めています。ドバイ政府の法令ポータルに載っている公布日は2026年2月27日なので、施行日は2026年8月26日です。読者が自分で数えられるように内訳を書くと、2月の残り1日、3月31日、4月30日、5月31日、6月30日、7月31日、そして8月26日を足して180日になります。
日付を確かめる手順をわざわざ書いているのは、報じ方によって施行日が食い違って見えるためです。法律が発表された時点の記事は「公布から180日後」とだけ書き、具体的な日付を出していません。当サイトは、法文の規定と公表されている公布日から数えた日付を採ります。これなら、同じ2つの資料を見た読者が同じ結論にたどり着けます。
対象は「設備を共用する住まい方」で、労働者の集団宿舎は外れる
法文が定義する共同居住は、複数の個人または家族が同じ住戸に住み、台所、食事の場所、浴室、屋外の空間といった設備を共用する住まい方です。日本語では「シェアハウス」「ルームシェア」に近い形が当てはまりますが、法律の側は建物の呼び名ではなく共用しているかどうかで線を引いています。
適用の範囲は第3条にあります。ドバイ首長国内のすべての住戸が対象で、特別開発区域とフリーゾーンも含みます。所有者、許可を受けた運営会社、そこに住む居住者、賃貸契約と管理契約が対象に入ります。一方で、労働者のための集団宿舎は対象から外れると明記されています。宿舎には別の枠組みがあるため、この法律の許可や登録の話をそのまま当てはめないでください。
許可がなければ、住戸を共同居住に充てられない
いちばん大きな変更がここです。法文は、許可を得ずに住戸を共同居住に充てることを禁じています。許可の申請は、ドバイ市が運営するデジタルの窓口で受け付ける仕組みとされ(第5条)、許可の条件と技術的な要件は、市が土地局と調整して定めるとされています。政府の発表では、要件として建築や消防、衛生、電気の安全といった項目が挙げられています。
許可の有効期間は1年で、同じ期間ごとに更新できます。更新の申請は、期限が切れる30日前までに出す必要があります(第10条)。政府の発表では、所有者の求めに応じて2年の許可を出せるとも説明されています。
申請の受付がいつ始まるのか、手数料がいくらかは、法文にも政府の発表にも書かれていません。市は、手続きと必要書類は追って公表するとしています。この記事を書いている2026年9月4日の時点で、その公表は確認できていません。読者がいま確認できるのは「許可が要ることになった」という点までです。
貸せるのは所有者と登録された事業者だけで、又貸しは無効になる
共同居住の住戸を貸せるのは、所有者と、その事業を行う登録された事業者に限られます(第11条)。居住者や第三者が住戸や割り当てられたスペースを他人へ貸すことはできず、そうした又貸しは無効として扱われると法文に書かれています(第26条)。
日本の読者にとって効いてくるのはここです。「1戸を借り上げて部屋ごとに貸す」「知人に任せて又貸しで利回りを上げる」という運用は、法文のうえでは成り立ちません。仲介や運営を任せる相手についても、共同居住の事業として登録されているかどうかが確認の対象になります。事業として行うには土地局の側での要件を満たす必要があるとされているためです。
契約は登録してはじめて効力を持つ
土地局には「共同居住登録簿」が置かれます(第17条)。ここに載るのは、管理契約とその変更、賃貸契約とその変更、居住者のデータ、そのほか土地局が定めるデータです。法文は、賃貸契約は登録簿に記載されてはじめて有効になると定めています。
読み違えやすいのが、登録しなかった場合の扱いです。法文は、登録がなければ貸主は契約上の権利を主張できないとする一方で、善意の居住者に対しては登録がないことを理由に不利益を及ぼさないと定めています。つまり、登録を怠って損をするのは貸主の側です。
賃料の扱いも法文にあります。金額は契約で定め、別段の合意がなければ月ごとに前払いします。電気と水道の料金は、別段の合意がなければ賃料に含まれるものとして扱い、貸主が事業者へ支払うとされています。加えて、土地局は住戸の仕様やサービスの内容を考慮した賃料の指標を作り、定期的に更新するとされています(第7条)。指標がいつ公表されるかは書かれていません。
貸主に15項目、居住者に7項目の義務が並んでいる
法文は、貸主の義務を15項目、居住者の義務を7項目として列挙しています。数が多いこと自体より、今まで契約書の中で当事者が決めていたことが、法律の側から並べられたという変化のほうが重要です。
| 立場 | 法文が列挙する項目数 | 挙げられている内容の例 |
|---|---|---|
| 所有者・登録された運営会社(貸主) | 15項目(第25条) | 許可の条件と最大収容人数を守る/識別のための表示を出す/賃貸契約を締結して登録簿へ載せる/許可された範囲を超える改造をしない/予防的な保守を行う/居住者向けの規則と案内を用意する/遵守の状況を確認して報告する |
| 居住者 | 7項目(第26条) | 衛生と安全の規則に従う/通常の借主として住戸を管理する/居住以外の用途に使わない/又貸しをしない/住戸で経済活動を行わない/点検のための立ち入りを認める |
表に挙げたのは、法文に列挙されている項目のうち内容を確認できたものです。項目の全文と細目は、施行のための決定であとから足される部分があるため、運営を任せている場合は現地の担当者に原文で確認してください。
罰則は1件あたり500〜500,000 AEDで、行政措置が併記されている
罰則は第29条にあります。罰金は1件あたり500 AED以上500,000 AED以下で、1年以内に同じ違反を繰り返した場合は倍額になり、上限は1,000,000 AEDです。金額だけを見ると幅が広いのですが、あわせて置かれている行政措置のほうが、貸している側にとっては重い場合があります。
| 区分 | 法文に書かれている内容 |
|---|---|
| 罰金 | 1件あたり500 AED以上500,000 AED以下 |
| 繰り返した場合 | 1年以内の再違反は倍額。上限は1,000,000 AED |
| 行政措置 | 6か月の営業停止/許可の取消/ライセンス取消に向けた関係機関との連携/サービスの停止/その物件に関する取引の受付停止/建築許可の停止/機材の押収/賃貸契約の登録の拒否/裁判官の命令による退去 |
「その物件に関する取引の受付停止」と「賃貸契約の登録の拒否」は、売却や再賃貸の手続きが止まるということです。罰金を払えば済む話ではない点に注意してください。監督の方法として、定期的な検査と抜き打ちの検査が定められ、指定された職員には立ち入りと記録の確認、違反の記録、警察への協力要請の権限が与えられています。所有者、運営会社、居住者には、その職員の職務を妨げないことが求められます。
なお、この法律に関する紛争は、賃貸紛争解決センター(Rental Disputes Settlement Centre)が専属で扱うと定められています(第36条)。センターの管轄と申立ての進め方はドバイ賃貸紛争センター(RDC)の解説にまとめています。
施行前から貸している場合は、2027年8月26日までに合わせる
第37条は、施行の前から住戸を共同居住に充てていた所有者と、事業を行っていた事業者に対して、施行日から1年以内に法律の内容へ合わせることを求めています。施行日が2026年8月26日なので、期限は2027年8月26日です。この期間は1回だけ延長できると書かれています。
現地で部屋貸しの形で運用している読者が、この1年で確認することを整理すると次のようになります。いずれも、法文に根拠のある項目だけです。
- その住戸が共同居住に当たるか(設備を共用しているか)を確かめる
- 許可の申請要件と受付の開始を、ドバイ市の公表で追う
- 運営を委託している相手が、その事業を行える立場かを確かめる
- 賃貸契約と居住者のデータが登録簿へ載る形になっているかを確かめる
- 又貸しの形になっていないかを確かめる
法文にも発表にも書かれていないこと
推測で埋めずに、そのまま並べます。次の項目は、いま公表されている資料からは分かりません。
- 許可の申請がいつから受け付けられるのか
- 許可の手数料と、審査にかかる期間
- 土地局が作る賃料の指標が、いつどの形で公表されるのか
- 既存の賃貸契約の登録と、共同居住登録簿の記載がどう結び付けられるのか
- 検査の頻度と、違反を判定する具体的な基準
報道の中には、許可の開始時期や運用の細目に踏み込んでいるものもあります。ただし当サイトでは、法文と政府の発表で確かめられない事項は書きません。確認できない数字や日付を載せると、読者が同じ資料で検算できなくなるためです。追加の決定が公表された時点で、この記事を更新します。
買う側・貸す側が、いま持っておきたい前提
この法律は、部屋貸しという運用の入口に許可と登録を置きました。利回りの見え方に関わるのは、空室率や賃料そのものより、その運用が許可の対象になっているかどうかです。許可が取れない住戸を前提にした収支は、根拠を失います。
購入を検討している段階なら、販売の説明で「部屋ごとに貸せば利回りが上がる」と示された場合に、その運用が共同居住に当たるのか、許可を取る前提になっているのかを必ず確かめてください。当社は賃料収入も利回りも保証しません。制度の側の裏付けを確かめることが、数字を検算する前提になります。
ドバイの賃貸に関わる制度は法律・規制のカテゴリに、家賃と利回りの考え方は利回り・家賃収入のカテゴリに、DLDの登録データにもとづく市場の数字はドバイの不動産データにまとめています。あわせて確認してください。