物件の資料に「高級」や「ラグジュアリー」と書かれていても、その言葉が指す金額の範囲は資料ごとに違います。そして、DLD(Dubai Land Department、ドバイ土地局)が公開している登記の記録には、物件の等級を示す欄がありません。だから公開データから「高級物件は何件」と数えることはできません。数えるには、読む側が自分で金額の線を引く必要があります。
この記事は、当サイトがDLDの公開記録を集計した売買110,525件(対象 2026-01-01〜2026-08-25、集計日 2026-08-28)をもとに、線の引き方を3通り並べます。総額で引く、面積あたりの単価で引く、住戸の規模で引く。この3つは同じ住戸を選びません。どれを使うかで、候補の数も中身も変わります。
先に結論を書きます。「高級」を数字に置き換えるなら、総額では90%点の 5,034,000 AED、面積あたり単価では90%点の 33,409 AED/m² が出発点です。ただしこの2本は別々に引いた線で、片方だけを越える住戸があります。資料で「高級」と書かれた物件を見たときは、総額と面積あたり単価の両方を聞いてください。金額はすべてAEDのままで、円には換算していません。為替が動いた時点で数字が事実と食い違うためです。物件の種別ごとの入口はドバイの物件情報にあります。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。
DLDの記録には「高級」の欄がありません
DLDのオープンデータの照会画面で指定できる条件は、期間、取引の種類(Sales・Mortgages・Gifts)、登記の種類(Ready・Off Plan)、フリーホールドかどうか、エリア、用途(Residential・Commercial・Other)、物件の型(Land・Building・Unit)です。価格の等級や「高級」を選ぶ欄はありません。当サイトが画面の構成を調べたのは2026-08-24で、9つの照会フォームすべてに人の操作を求める確認が付いていることも、このときに記録しています。
結果として受け取る列にも等級はありません。残るのは取引の日付と種類、面積、価格、エリア名、プロジェクト名、住戸の区分です。つまり「高級」はデータの側ではなく、売る側と読む側が付けている言葉です。だから他社の記事と件数が合わないことが普通に起こります。線の位置が違うだけで、どちらかが間違っているとは限りません。
なお、政府機関そのものの公表(DLD)と、そのデータを加工して提供する民間サービスを、まとめて「公式データ」と呼ばないでください。この記事の数値は前者を当サイトが集計したもので、集計の条件は下の「数える手順」にそろえて書いています。
総額で線を引くと、入口は 5,034,000 AED です
まず代表値を確かめます。110,525件の取引価格の中央値は 1,424,503 AED で、これは小さい順に並べたときの真ん中の1件を指します。同じ記録の平均は 3,118,323 AED で、中央値よりはっきり高く出ます。登記には数十億AEDの取引が混じり、いちばん高い1件は 3,130,254,657 AED でした。平均と中央値を混同すると、上位層の線を数百万AEDずらすことになります。
| 分位点 | 取引価格の総額(AED) | 面積あたり単価(AED/m²) |
|---|---|---|
| 5%点 | 540,000 | 8,885 |
| 25%点 | 822,999 | 14,851 |
| 中央値(50%点) | 1,424,503 | 18,510 |
| 75%点 | 2,746,000 | 23,919 |
| 90%点 | 5,034,000 | 33,409 |
| 95%点 | 8,578,000 | 39,246 |
「総額で上位1割」と言うなら 5,034,000 AED、「上位5%」なら 8,578,000 AED が入口です。線をどこに置くかは目的で決めてよいのですが、置いた場所を言わずに「高級」と呼ぶと、相手と話が合いません。
帯で見ると、5,000,000〜10,000,000 AED が 6,468件(5.9%)、10,000,000 AED以上が 4,836件(4.4%)です。どちらの帯も、500,000 AED幅の下の帯より棒が短く見えます。これは帯の幅が違うことの結果で、取引が急に減る地点があるという意味ではありません。予算の側から全8帯の厚みを読む手順は価格帯の分布の記事に分けてまとめています。
面積あたりの単価で引くと、別の住戸が入ります
同じ記録から面積あたりの単価を計算すると、中央値は 18,510 AED/m²、90%点は 33,409 AED/m²、95%点は 39,246 AED/m² です。総額の分位点とは別の計算なので、90%点どうしでも同じ住戸を指しません。
理由は単純で、総額は単価と面積の積だからです。面積が大きければ、単価が中位でも総額の線を越えます。逆に面積が小さければ、単価が高くても総額の線に届きません。売買に出てきた面積の中央値は 77.6 m² で、完成物件だけを見ると 109.3 m² です。同じ「上位1割」という言葉が、総額の側ではより広い住戸を、単価の側ではより狭く単価の高い住戸を集めます。
どちらの線を使うかは、確かめたいことで決まります。保有中の費用や売却時の総額の重さを見るなら総額、同じエリアの中で割高か割安かを見るなら単価です。単価の読み方と平方フィートとの換算は平米・平方フィート単価の記事にまとめています。
住戸の規模で引くと、ペントハウスは最上位になりません
3つ目の引き方は住戸の規模です。DLDの記録では寝室の数が「1 B/R」のように入ります。日本の「1LDK」とは数え方が違うので、そのまま置き換えないでください(間取りの表記の記事)。
| 記録されている区分 | 件数 | 価格の中央値(AED) |
|---|---|---|
| Studio | 28,015 | 672,223 |
| 1 B/R | 35,719 | 1,242,500 |
| 2 B/R | 20,405 | 2,199,300 |
| 3 B/R | 6,945 | 3,550,000 |
| 4 B/R | 4,875 | 2,982,000 |
| 5 B/R | 1,523 | 4,525,200 |
| 6 B/R | 50 | 20,955,000 |
| 7 B/R | 9 | 41,134,000 |
| PENTHOUSE | 22 | 6,337,500 |
6 B/R は 50件で中央値 20,955,000 AED、7 B/R は 9件で中央値 41,134,000 AED です。7 B/R はいちばん安い1件でも 21,000,000 AED、いちばん高い1件は 220,000,000 AED でした。いっぽう PENTHOUSE というラベルの付いた 22件は中央値 6,337,500 AED で、7 B/R よりはるかに低い水準にあります。「ペントハウス」という言葉が、記録の上では最上位を意味していません。
もう1つ目を引くのは、4 B/R の中央値 2,982,000 AED が 3 B/R の 3,550,000 AED より低いことです。寝室が増えれば価格が上がる、という順番になっていません。この集計からは理由を特定できません。エリアやプロジェクトの構成の違いが効いている可能性はありますが、確かめていないので断定しません。件数の少ない区分では、中央値が数件の取引で動くことも押さえておいてください。
ラベルの揺れが、上位層の数え方を変えます
物件の区分として記録されるラベルは1種類ではありません。同じ「アパート」に見えるものが、別のラベルで入っていることがあります。
| 記録されているラベル | 件数 | 価格の中央値(AED) |
|---|---|---|
| Flat | 86,539 | 1,226,247 |
| Villa | 8,696 | 3,250,000 |
| Residential | 3,443 | 4,000,000 |
| Residential / Villas | 141 | 20,460,000 |
| Residential Flats | 82 | 21,185,497 |
Flat が 86,539件で中央値 1,226,247 AED、Villa が 8,696件で 3,250,000 AED です。いっぽう Residential Flats の 82件は中央値 21,185,497 AED、Residential / Villas の 141件は 20,460,000 AED で、桁が1つ違います。ラベルの数が少ないほど、1件の取引が中央値を動かします。82件や141件の中央値を「高級物件の相場」として扱わないでください。
ラベルを英語のまま出しているのは、読者がDLDの原データや英語の物件情報と突き合わせられるようにするためです。読みを当てて日本語に直してしまうと、照会したときに同じ行を見つけられなくなります。
数える手順をそろえる
上位層の件数が他社の記事と合わないとき、見るべきは線の位置だけではありません。その前の5つの段がそろっているかです。
用途で絞ると何が変わるかを数字で見ておきます。用途が Residential の登記は 107,649件で中央値 1,399,600 AED、Commercial は 2,876件で中央値 8,006,888 AED です。Commercial の中央値は、住宅の90%点に近い水準にあります。混ぜたまま上位の帯を数えると、住宅を探している人には関係のない取引が上位に並びます。全体では住宅の割合が 97.4% ですが、完成物件だけを見ると 91.7% に下がります。土地やオフィスが入ってくるのは、おもに完成物件の側です。
件数は行数、つまり登記された物件の数で数えています。1つの取引番号が複数行に分かれることがあるため、「取引の件数」ではありません。面積あたりの単価は、面積が記録されている行だけで計算しています。
ゴールデンビザの基準額は「高級」の線ではありません
ドバイの物件と居住許可は、日本語の記事でよく一緒に説明されます。UAE政府ポータル(u.ae)のゴールデンビザのページは、投資家(公共投資または不動産)の欄に「5 years (real estate investments)」、要件に「Minimum capital of AED 2 million」と記載しています。ページには2026年7月28日に更新と表示されていました(確認日 2026-10-27)。
この AED 2 million は、居住許可の要件として示された額です。市場の上位層を示す線ではありません。同じ登記記録の中央値は 1,424,503 AED、75%点は 2,746,000 AED ですから、AED 2 million はその間に入ります。総額で見るかぎり、ビザの要件を満たす金額は上位25%に届きません。「ビザが取れる価格帯」と「高級と呼ばれる価格帯」は、別の話です。
オフプランの物件やローンがある物件の扱い、更新の条件については、このページの表に記載がありません。確認できていないので埋めません。実際の申請要件は ICP(連邦身分証明・市民権・税関・港湾保安庁)と GDRFA(居住・外国人関係総局)が所管します。申請の直前に、所管の案内で条件を確かめてください。
上位層を検討するときに重みが増える項目
線を引いて候補が絞れたあと、総額が大きいほど効きが強くなる項目が4つあります。
- 保有中の費用の決まり方。共用部分の費用は寝室の数ではなく住戸の面積から決まります。総額の線で絞ると面積の大きい住戸が集まるため、ここが重くなります(間取りの表記とサービスチャージの記事)
- 比べる相手のそろえ方。区画全体の中央値ではなく、同じ区画の同じ間取りで比べます。区画の順位は間取りを変えると入れ替わります(エリア別・間取り別データの記事)
- 区画の中の割れ。1つの区画名の下に性格の違う住戸が混ざることがあります。塔の住戸と1棟の住戸が同じ区画名で登記される例はパーム・ジュメイラのデータにまとめています
- 代表値の選び方。上位の帯では平均が1件の取引で動きます。中央値と件数をセットで見て、件数が少ないときは「少ない」と書き添えてください
確認できなかったこと
3つあります。1つ目は、「高級」の公的な定義です。DLDの記録に等級の区分が無いこと、照会画面に等級の条件が無いことまでは確認しましたが、他の政府機関が別の定義を持っているかどうかは確認できていません。
2つ目は、集計のあとの変更です。この記事の数値は2026-08-28に集計した記録に基づきます。DLDの公表は後から修正されることがあり、直近の期間ほど変わる可能性があります。画面の表示そのものを、この記事の作成時点で開き直してはいません。
3つ目は、前年以前との比較です。照会画面は当年ぶんしか出せないため、上位層の線が去年どこにあったかを示せません。線の動きを追うには、これから各年の記録を積み上げていく必要があります。
当サイトが使っているデータの出どころは出典の一覧に、ドバイのデータの全系列はドバイのデータにまとめています。候補の物件について総額と単価の両方を確かめたい場合はお問い合わせから承ります。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。