不動産政策・規制/ニュース

ドバイ不動産のトークン化|Category 1免許は3社だけ

ドバイ不動産のトークン化について、VARAの公開登録簿でCategory 1 VA Issuanceを持つ3社と免許の条件、DLDが公表したパイロットの実績と二次市場の段階、そして登記との関係を、政府の一次情報だけで整理します。

ドバイには、不動産の持分を小さく分けてトークンとして売る仕組みが、政府の枠組みの中で動いています。少額から参加できる話として紹介されることが多い一方で、だれでも自由にトークンを発行できるわけではありません。発行には、ドバイの仮想資産規制庁(Virtual Assets Regulatory Authority、以下VARA)の免許が要ります。2026年11月5日に確認した時点で、VARAの公開登録簿で Category 1 VA Issuance という活動を持つ会社は、ドバイ全体で3社だけです。

その3社のうち1社が、ドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)のトークン化プロジェクトで取引の場になっている PRYPCO Mint です。登録簿上の名前は Prypco FZE で、免許番号は VL/25/05/001 です。同社の公式ページには、2026年11月4日付で、VARAから broker-dealer services と Category 1 VA Issuance について免許を受けていると書かれています。当サイトはこの記載を、VARAの公開登録簿の該当ページで照合しました。

先に、確認できなかったことを書いておきます。登録簿に出ている免許の日付は2025年5月24日のままです。Category 1 がいつこの会社の活動に加わったのかは、VARAの公表からは読み取れません。VARAのお知らせの一覧にも、この件についての個別の発表は出ていません。したがってこの記事は「いつ認可されたか」ではなく、「2026年11月5日の時点でだれが何を認められているか」を扱います。

出典の層を先に断ります。この記事の制度と数字は、VARAの公開登録簿とルールブック、そしてDLDの公表ページという政府機関そのものの公表によるものです。PRYPCO側の記載は民間企業の公式発表として、政府の記載と区別して扱います。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。

トークンを発行できる会社は、免許で絞られています

VARAの規則が仮想資産の発行を2つに分けていることを示した分岐図。Category 1 VA Issuance に当たるのはFRVA、ARVA、VARAがその都度定める仮想資産で、発行の前にVARAのライセンスが必要であり、不動産の持分を表すトークンはこちら側に入る。Category 2 VA Issuance は Category 1 にも Exempt VA にも当たらないもので、VARAのライセンスは不要だが販売と流通は Licensed Distributor を通す必要がある
左が免許の要る側、右が要らない側です。下の破線の枠は、この分け方が読者にとって何を意味するかを示しています。 出典:VARA Rulebooks|Virtual Assets Issuance Rulebook(確認日 2026-11-05)

VARAのルールブックは、仮想資産の発行を Category 1 と Category 2 に分けています。Category 1 に当たるのは3つです。法定通貨を参照する FRVA(Fiat-Referenced Virtual Assets)、資産を参照する ARVA(Asset-Referenced Virtual Assets)、そしてVARAがその都度定める仮想資産です。この3つを発行する場合は、発行の前にVARAの免許が必要だと規則に書かれています。

Category 2 は、Category 1 にも Exempt VA にも当たらない仮想資産です。こちらはVARAの免許が要りませんが、その代わり、販売や流通をすべて Licensed Distributor を通して行わなければならないと定められています。免許が要らないことと、だれでも売ってよいことは別だという書き方になっています。

不動産の持分を表すトークンがどちらに入るかは、ARVAの定義で決まります。VARAの定義は、実物資産(Real World Asset)の所有権や収益を受け取る権利を表すもの、あるいは表すと称するもの、という形で書かれています。物件の持分と賃料の分配を表すトークンは、この定義にそのまま当てはまります。だからドバイで不動産のトークンを発行する会社は、必ず Category 1 の側に立つことになります。

ここが、読者にとって最初の確認点です。少額から不動産に参加できると案内している事業者を見つけたとき、その会社がVARAの公開登録簿に載っていて、かつ活動に Category 1 VA Issuance が書かれているかを見れば、発行そのものが規制の枠内にあるかどうかが分かります。登録簿は会社ごとのページに分かれていて、免許番号、免許の日付、認められた活動、条件、そして状態(Active かどうか)が並んでいます。

Category 1 を持つ3社は、認められた相手が違います

2026年11月5日に確認した時点で、Category 1 VA Issuance を活動に持つ会社は次の3社です。免許の条件はそれぞれ違い、同じ Category 1 でも、売ってよい相手と扱ってよい対象が同じではありません。

会社名(登録簿の表記) 免許番号 免許の日付 認められた活動 条件として書かれている相手と範囲
Prypco FZE VL/25/05/001 2025/05/24 Broker-Dealer Services/Category 1 VA Issuance 機関投資家・適格投資家・個人投資家。加えて、DLDが認可した資産のトークン化について限定免許での仲介
Ctrl Alt Solutions DMCC VL/25/05/002 2025/05/24 Broker-Dealer Services/Category 1 VA Issuance 適格投資家と機関投資家。DLDが認可したARVAのトークン化という範囲の限定つき
Tokinvest DMCC VL/2024/12/004 2024/12/30 Broker-Dealer Services/Category 1 VA Issuance 機関投資家・適格投資家・個人投資家

Prypco FZE と Tokinvest DMCC には個人投資家(Retail Investors)が条件に入っていますが、Ctrl Alt Solutions DMCC には入っていません。Ctrl Alt Solutions は適格投資家と機関投資家が相手として書かれていて、これは一般の個人が同社から直接買う形を想定していないという意味になります。Ctrl Alt Solutions はDLDの2025年5月の公表ページで、第1号プロジェクトの開発の担い手として名前が挙げられている会社です。

もうひとつ見落としやすいのが、条件に付いている「DLDが認可した」という限定です。Prypco FZE と Ctrl Alt Solutions DMCC の条件には、DLDが認可した資産のトークン化という範囲が書き込まれています。免許が、不動産であればどれでも自由にトークンにできる許可ではなく、DLD側の認可と組み合わせて初めて成り立つ形になっているということです。

登録簿で分かるのはここまでです。登録簿は、その会社の商品が良いか、過去の案件がうまくいったかを示すものではありません。示しているのは、免許の有無と、認められた活動と相手の範囲だけです。免許の状態が Active であることも、投資の成果とは関係しません。PRYPCO自身の公式ページにも、VARAによる免許がプラットフォームや投資の成果を推奨するものではないと書かれています。

DLDが公表しているのは、この6回分の数字です

ドバイ土地局が公表したトークン化の経緯を6段のタイムラインで並べた図。2025年3月19日のパイロット開始、2025年5月25日の第1号公開で最低AED2,000とUAE ID保有者という条件、2025年5月29日の第1号の結果として224人と44か国と平均AED10,714、2025年6月11日の第2号が1分58秒で完売して149人と35か国、2026年2月9日の第2段階で2月20日からおよそ780万トークンの再販、2026年11月4日のCategory 1 VA Issuanceの記載を並べ、2033年までにAED60 billionという見込みが実績ではないと示している
塗りのある6段はDLDとPRYPCOの公表に書かれている事実、下の破線の枠は見込みです。累計の件数や金額は、どの公表ページにも出ていません。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Tokenisation Project のパイロット公表ページほか各公表ページ(確認日 2026-11-05)

DLDがパイロットを公表したのは2025年3月19日です。VARA、ドバイ未来財団(Dubai Future Foundation)、そして不動産のサンドボックスと組んだ取り組みで、REES(Real Estate Innovation Initiative)という枠の中に置かれています。この公表ページでDLDは、登記された権利そのものにトークン化を適用した中東で初めての登記機関であると書いています。トークンが登記の外側に作られた別の商品ではなく、登記と結びつけられているという主張です。

2025年5月25日の公表で、第1号の物件がPRYPCO Mintで公開されました。この回の記載で条件がはっきりします。最低の投資額は AED 2,000、支払いはAEDだけで、パイロットの段階では暗号資産を使えません。参加できるのはUAEのIDを持っている人に限られ、国外への拡大は後の段階とだけ書かれています。画面には価格、リスク要因、仕様、必要な最低額が並ぶと説明されています。

2025年5月29日の公表は、第1号の結果です。224人が参加し、そのうち70%はドバイの不動産に初めて投資した人でした。国籍は44か国にまたがり、1人あたりの平均は AED 10,714 でした。待機の登録は6,000件を超えたと書かれています。同じ公表で、DLDは Property Token Ownership Certificate を世界で初めて出したとしています。

2025年6月11日の公表は第2号で、1分58秒で満額になったとあります。参加は149人、国籍は35か国、待機は10,700人を超えたという記載です。物件の価格や所在は、この公表ページには書かれていません。

2026年2月9日の公表で、第2段階に進みました。2月20日から二次市場での再販が始まり、対象はおよそ780万トークンだとされています。限定された枠組みの中で、市場の効率と運用の備え、透明性と統治、投資家の権利を確かめるためだと書かれています。

あわせてDLDは、トークン化の市場が2033年までに AED 60 billion、ドバイの不動産取引全体の約7%に達するという見込みを示しています。これは見込みであって、実績ではありません。ドバイの不動産取引そのものの規模をどう読むかはドバイ不動産の市場データに、集計の期間と定義を添えて置いています。制度側の目標の位置づけはドバイ不動産セクター戦略2033で扱っています。

公表されていない項目

確かめたい項目 公表の記載 どこで確かめるか
Category 1 が加わった日 記載がありません(免許の日付は2025/05/24のまま) VARAの公開登録簿・今後の公表
トークン化された物件の累計の件数 記載がありません 今後のDLDの公表
トークン化された金額の累計 記載がありません 今後のDLDの公表
二次市場で実際に売買された件数 記載がありません 今後のDLDの公表
1件ごとの物件の価格・所在 記載がありません プラットフォームの各案件の画面
分配された賃料・利回りの実績 記載がありません 今後の公表
準備資産(Reserve Assets)の個別の内容 規則上の求めはありますが、会社ごとの内容は登録簿にありません VARAの規則と事業者の開示
日本に居住する人が参加できるか パイロットはUAEのID保有者と記載 プラットフォームの案内
トークンとTitle Deedの法的な関係 記載がありません 今後のDLDの公表

この表の目的は、空いている欄を推測で埋めないことです。たとえば累計の件数と金額が書かれていないため、この仕組みがいまどのくらいの規模になっているかは決まりません。公表されているのは個別の回の人数と国籍、そして第2段階で再販の対象になったトークンの数だけです。4回ぶんの人数を足して「累計◯人」と書くことも、同じ人が複数回参加していないという前提がないのでできません。

トークンは登記の代わりではありません

トークン化に関わる4者の役割と、どれも保証していないことを示した関係図。ドバイ土地局は登記とトークン所有の証明書を出す政府機関、VARAは発行者に免許を出し規則を定める政府機関、中央銀行とドバイ未来財団はパイロットの枠組みに加わる政府機関、PRYPCO Mintは免許VL/25/05/001を持つ民間のプラットフォームであり、4者のどれも価格の上昇や賃料収入や利回りや元本や換金できることを保証していないと示している
左の4つが役割、右の破線の枠がだれも保証していない範囲です。赤茶の文字は、免許が成果の保証ではないという注意です。 出典:VARA|Public Register – Prypco FZE、PRYPCO|Virtual Asset Standards(確認日 2026-11-05)

トークンの裏付けは、DLDに登記された権利です。だからこの仕組みを確かめる順番も、トークンの画面から始めるのではなく、登記から始まります。物件まるごとの所有権の証明である Title Deed の役割はドバイ不動産のTitle Deedにまとめてあります。

DLDは2025年5月29日の公表で Property Token Ownership Certificate を出したとしていますが、その証明書が Title Deed とどう違うのか、法的に何を証明するのかは、この公表ページに書かれていません。当サイトは、書かれていない関係を補いません。トークンの持分が全部そろえば物件の単独所有になるのか、持分だけで何ができるのかも、公表の範囲では決まりません。

Dubai Land DepartmentのVerify Title Deedサービスの公式案内ページの表示
引用キャプチャこの章で「裏付けを自分で確かめる窓口」として挙げている公式サービスの案内です。DLDが発行した Certificate of Title/Title Deed の有効性を確認するサービスであること、利用の経路がDLDのサイトと Dubai REST アプリの2つであること、処理時間が Immediate であることが、この画面に書かれています。トークンの持分がどう記録されているかという欄は、この画面にはありません。 出典:Dubai Land Department|Verify Title Deed(取得日 2026-09-05/表示のファーストビュー。当サイトが同じページについて取得済みの引用キャプチャを使っています。記載内容は2026-11-05に再確認しました)

そのうえで、保証されていないことを並べておきます。価格が上がること、賃料収入が入ること、利回りが出ること、払った金額が戻ること、そして売りたいときに売れることです。このどれも、DLDもVARAもプラットフォームも保証していません。特に最後の点は、トークンに固有の注意です。持分を小さく買えるということは、売るときにも同じ大きさの持分を買ってくれる相手が必要だという意味です。二次市場は2026年2月に始まったばかりで、実際に売買された件数は公表されていません。

少額で不動産に関わる形としては、ファンドを通じた方法もあります。制度の立て付けが違うので、同じものとして比べないでください。ドバイ側の枠組みはドバイの不動産投資ファンドに分けてあります。

日本に住んでいる人にとっての線引き

いちばん大きな制約は、参加できる人の範囲です。DLDの2025年5月の公表では、パイロットの対象はUAEのIDを持っている人だと書かれています。国外への拡大は「後の段階で」とだけあり、時期も条件も公表されていません。日本に住んでいて、UAEの居住許可を持っていない人がいま参加できるかどうかは、プラットフォーム側の案内で確かめる必要があります。当サイトは、公表されていない可否を推測で書きません。

外国人が物件そのものを買う場合の枠組みは、トークンとは別の制度です。所有できる区域と権利の種類はドバイで外国人が不動産を買えるかとドバイのフリーホールドに分けてまとめています。トークンの持分が、これらの制度で言う所有と同じ扱いになるかどうかは、公表されている範囲では分かりません。

もう1つ、資金の出どころの確認です。不動産の取引には、UAE側でマネーロンダリング対策の確認が入ります。トークンの購入でも、仮想資産の事業者として同じ系統の確認が求められる建て付けになっています。確認の対象と手順の考え方はUAEの不動産とAML確認にあります。日本側の課税や申告については、当サイトの税の記事を読んだうえで、最終的には税務の専門家に確かめてください。

この先に追うもの

2026年11月5日の時点で確かに言えるのは、ドバイで不動産のトークンを発行できる会社は免許で絞られていて、Category 1 VA Issuance を持つのは3社だということです。手続きや制度がこの数日で変わったわけではなく、変わったのは1社の公式ページに免許の記載が加わったことと、登録簿でそれを照合できるようになったことです。

次に新しい情報が出るとしたら、二次市場で実際に売買された件数、トークン化された物件の累計、そして Property Token Ownership Certificate と Title Deed の法的な関係です。国外に住む人が参加できる段階に進むかどうかも、そこで初めて分かります。当サイトは、これらが公表された場合、または登録簿の記載が変わった場合に、この記事へ追記します。登録簿は会社ごとのページで誰でも見られるので、検討している事業者があるなら、まず名前と活動と条件を自分で引いてください。

この記事に書いた制度と数字は、VARAの公開登録簿とルールブック、DLDの公表ページとサービス案内、そしてPRYPCOの公式ページだけで確かめたものです(いずれも確認日は2026年11月5日)。データページの入口はドバイのデータにまとめています。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。