利回りデータ/データ

ドバイの利回りデータ|1つの平均では代表できません

DLDの公開記録から当サイトが計算できた表面利回りは50組で、中央値4.74%、最小1.36%、最大8.99%です。31組が4%台と5%台に入ります。分子は完成した住戸の賃料、分母の売買登記は68.6%がオフプランで、段階がそろっていません。

「ドバイの不動産の利回りは平均で何パーセントか」。この問いに1つの数字で答えると、たいてい読み間違いが起きます。Dubai Land Department(DLD、ドバイ土地局)が公開している売買と賃貸の登記記録を当サイトが集計したところ、同じ式で表面利回りを計算できたのは区画と物件種別の組み合わせで50組でした。その中央値は4.74%ですが、幅は1.36%から8.99%まであり、上下の端は6倍以上離れています。

平均という言い方が役に立つのは、値が1か所に集まっているときだけです。50組を1%刻みの帯で数えると、4%台と5%台の2つに31組が入り、残りの19組が1%台から8%台までに散ります。「だいたい4〜5%」という説明は半分より少し多い組には当てはまり、残りには当てはまりません。しかも、どの帯に入るかは物件の良し悪しではなく、その区画の価格水準でほぼ決まります。

この記事は、その50組を3つの角度から読み解くものです。分布の形、この50組がドバイのどれだけを覆っているか、そして割り算の上と下に何が入っているか。順番に見ていくと、「平均◯%」という表示を受け取ったときに何を確かめればよいかが決まります。金額はすべてAEDのままで、円には換算していません。ここに出す%はDLDが利回りとして公表している値ではなく、DLDの原記録を当サイトが割った結果です。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。

分布は4%台と5%台に寄り、両端がよく伸びています

当サイトが計算できたドバイの表面利回り50組を1パーセント刻みの帯で数えた分布。1%台が3組、2%台が4組、3%台が4組、4%台が20組、5%台が11組、6%台が5組、7%台が1組、8%台が2組。50組の中央値は4.74%、最小は1.36%、最大は8.99%
赤く塗った2つの帯が、組数の多い4%台と5%台です。帯は「その%以上、次の%未満」の区切りで数えています。並べた順は帯の低いほうから高いほうで、評価や推奨の順位ではありません。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの公開記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/集計日 2026-08-28/確認日 2026-10-20)

いちばん組数が多いのは4%台で20組、次が5%台の11組です。ここから上へは6%台が5組、8%台が2組、7%台は1組だけ。下へは3%台と2%台が4組ずつ、1%台が3組と減っていきます。真ん中が高く、両側が長く伸びた形です。高い順に数えると25番目は4.78%、26番目は4.7%なので、中央値の4.74%はこの2つのあいだに来ます。

上の端を具体的に見ると、ザービール 1(Zaabeel First)のアパートメントが8.99%、ワディ・アル・サファ 7(Wadi Al Safa 7)のアパートメントが8.02%、マディナ・ヒンド 4(Madinat Hind 4)のアパートメントが7.85%です。下の端はジュメイラ 2(Jumeirah Second)のアパートメントが1.36%、トレード・センター 2(Trade Center Second)が1.86%、ジュメイラ 1(Jumeirah First)が1.92%でした。この6組は同じ期間の同じ記録から、同じ式で出しています。

当サイトがこの50組の算術平均を出していないのは、両端が長く伸びているためです。端の数組に引っ張られた平均は、真ん中の位置を表しません。代表値として中央値を使い、分布の形そのものを図で見せるようにしています。「平均◯%」と書かれた資料を見たときは、母数、期間、そして平均なのか中央値なのかを必ず確かめてください。この3つが書かれていない%は、別の%と同じ列に置けません。平均と中央値がどれだけ離れるかは、売買価格の側で価格データにまとめています。

この%は、DLDが公表している指標ではありません

Dubai Land DepartmentのReal Estate Data(オープンデータ)案内ページの表示
引用キャプチャこの記事の数字のもとになっているDLDのオープンデータの入口です。並んでいるのはTransactions、Rents、Project、Valuations、Land、Building、Unit、Broker、Developerの9種類で、利回りを%で返すデータセットはありません。だからここに出す%は、取引と賃貸の記録を当サイトが割って作っています。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Data(2026-09-29に取得したファーストビュー/再確認日 2026-10-20)

利回りを調べ始めると「公式データによるとドバイの利回りは◯%」という書き方をよく見かけます。DLDのオープンデータの入口を2026年10月20日に確認した範囲では、利回りという指標そのものは配られていません。配られているのは取引と賃貸の記録で、%は誰かがそれを割って作ったものです。割り算の条件が書かれていなければ、その%は検算できません。

賃料の側には照会の仕組みがあります。DLDのRental Indexは、契約の終了日、物件の種別、寝室の数、面積、いま払っている年額賃料、エリアや建物名を入れて賃料を調べる作りで、住宅のほかに商業用、工業用、工業用地、スタッフ宿舎に分かれています。ただしここで返ってくるのも賃料であって、利回りではありません。賃料の記録そのものをどう読むかは家賃データに分けて書いています。

だから当サイトは、%の値そのものより先に条件を並べる形にしています。同じ区画・同じ物件種別で、新規の賃貸契約の年間賃料の中央値を、売買の取引価格の中央値で割る。どちらも1平米あたりに直す。賃貸と売買のどちらも30件以上ある組だけを計算する。この4つを書いておけば、読者は同じ記録から同じ%を作り直せます。出典の層としては、DLDそのものの公表値ではなく、DLDの公開記録をもとにした当サイトの集計として扱ってください。手順の全体は利回りの比較にあります。

240区画のうち、計算できたのは42区画です

絞り込みの段 残るもの 外れる理由
売買の記録に名前が出てくる区画 240区画 -
賃貸と売買の両方が同じ区画・同じ種別でそろう 42区画 片方の記録しかない区画が落ちる
その組み合わせで、どちらも30件以上ある 50組 件数が少ない組は中央値が1件で動く

売買の記録には240の区画が出てきます。そこへ「賃貸と売買の両方が、同じ区画・同じ物件種別でそろっている」という条件を置くと42区画になり、組み合わせとして数えると50組です。ドバイの区画の2割にも届きません。50組の内訳はアパートメントが37組、ヴィラが13組で、同じ区画でアパートメントとヴィラの両方を計算できたのは8区画だけでした。

ここで取り違えやすいのは、一覧に出てこない区画の読み方です。表に無い区画は利回りが低い区画ではなく、この方法では計算できなかった区画です。賃貸の登録が少ない区画、売買がほとんど動かない区画、両方あっても種別で分けると30件に届かない区画が落ちています。落ちた区画を「不利」と読むと、記録の多さと物件の性質を混同することになります。

しきい値を下げれば並べられる行は増えますが、増えた行は精度ではありません。数件の成約から出した中央値を、数千件から出した中央値と同じ列に置くと、見た目の上では同じ確かさを持ってしまいます。だから当サイトは行を増やすより、母数を画面に出すほうを選んでいます。50組の一覧は利回りデータにあり、同じ組の賃料単価、価格単価、件数まで並べています。面積あたりに直す理由と、平方フィートとの換算は平米・sqft単価に分けました。

分子は完成した住戸、分母は建設前を多く含みます

表面利回りの分子と分母で住戸の段階がそろっていないことを示す構造図。分子は住宅の新規賃貸契約173,959件で、1平米あたりの年額中央値は972.8 AED。分母は売買登記110,525件で、そのうちオフプランが75,805件、比率68.6%、完成済みが34,720件
左が分子、右が分母です。右の帯は売買登記の内訳で、赤がオフプラン、灰色が完成済みを表します。分子に使った賃料は完成した住戸の新規契約だけで、更新契約は入れていません。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの公開記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/集計日 2026-08-28/確認日 2026-10-20)

分子に入れているのは、住宅の新規賃貸契約173,959件です。賃貸契約は、完成して引き渡された住戸にしか発生しません。いっぽう分母の売買登記110,525件のうち、オフプラン(建設前・建設中の契約)は75,805件で68.6%を占めます。つまり分母の7割近くは、今日の時点では賃料が発生していない住戸の価格です。区画と種別をそろえても、この段階のずれは残ります。

売買登記の区分 件数 1平米あたりの中央値 住宅の比率
オフプラン 75,805 19,304 AED 100%
完成済み(Ready) 34,720 15,679 AED 91.7%
合計 110,525 18,510 AED 97.4%

単価の中央値は、オフプランが19,304 AED、完成済みが15,679 AEDです。数字だけを見ればオフプランの側が高いのですが、この差をそのまま読むことはできません。完成済みの34,720件には商業用、オフィス、土地が混ざっており、住宅の比率は91.7%です。オフプランの側は100%が住宅なので、2つは同じ中身の集まりではありません。言えるのは構成の事実、つまり分母にオフプランが多く入っていることだけです。区分ごとの件数と金額はオフプラン取引データと完成済みの取引データに分けて扱っています。

実務の場面に置き換えると、意味がはっきりします。すでに建っている住戸を買ってこれから貸す人にとって、必要な分母は完成済みの価格です。建設前に契約する人にとっては、賃料が入り始めるのは引き渡しの後なので、そもそも今の賃料で割った%が当てはまる時点にいません。当サイトの%は、どちらか一方の立場に合わせて作ったものではありません。だから候補が決まった段階では、この%ではなくその住戸の価格と賃料で計算し直してください。

組ごとに、分子と分母の厚みが違います

同じ区画・同じ種別の組について、賃貸契約の件数と売買登記の件数の比を帯で示した図。アル・イェライス 1のヴィラは賃貸416件に対し売買3,339件、マディナ・アル・マターのアパートメントは賃貸2,359件に対し売買10,487件、ジェベル・アリ 1は賃貸5,676件に対し売買2,092件、ブルジュ・ハリファは賃貸8,754件に対し売買1,254件、マルサ・ドバイは賃貸6,601件に対し売買318件、アル・バルシャ 1は賃貸2,661件に対し売買81件、アル・ジャダフは賃貸2,518件に対し売買73件、アル・メルカドは賃貸4,874件に対し売買83件
緑が賃貸契約、赤が売買登記の件数で、帯の長さは2つの件数の比です。上の2組は売買の記録が厚く、下の4組は賃貸の記録が厚い組です。50組のうち、件数の比が目立つ8組を選んでいます。 出典:Dubai Land Department|Real Estate Dataの公開記録をReheatが集計(期間 2026-01-01〜2026-08-25/集計日 2026-08-28/確認日 2026-10-20)

どちらも30件以上という条件を通っても、組ごとの厚みは大きく違います。アル・ジャダフ(Al Jadaf)のアパートメントは賃貸2,518件に対して売買73件、アル・メルカド(Al Merkadh)は4,874件に対して83件、アル・バルシャ 1(Al Barsha First)は2,661件に対して81件です。マルサ・ドバイ(Marsa Dubai、通称ドバイ・マリーナ)も6,601件に対して318件でした。こうした組では、分母の中央値が数十件から数百件の記録で決まっています。

逆の偏りもあります。マディナ・アル・マター(Madinat Al Mataar)のアパートメントは賃貸2,359件に対して売買10,487件、アル・イェライス 1(Al Yelayiss 1)のヴィラは416件に対して3,339件です。売買の記録がこれだけ厚くなるのは、建設前の住戸をまとめて登記した取引が入っているためで、分母は新しい分譲の価格に寄ります。両方が近い厚みの組もあり、ジェベル・アリ 1(Jabal Ali First)のアパートメントは5,676件と2,092件、ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)は8,754件と1,254件でした。

ここから出てくる使い方は単純です。%を見る前に、その組の賃貸と売買の件数を見てください。薄い側が動けば%も動くので、薄い側がどちらなのかで次に確かめることが変わります。売買が薄ければ候補の住戸と同じ建物の成約を探し、賃貸が薄ければ募集中の条件を調べる。1つの区画でこの作業をどこまで細かくできるかは、マルサ・ドバイの利回りで実際にやっています。

分母に足していない費用、分子から引いていない費用

ここまでの%はすべて表面利回りで、費用を引く前の割合です。手元に残る割合はこれより低くなります。引いていないものを並べると、分子の側はサービスチャージ、空室の期間、仲介手数料、修繕費です。分母の側は取得にかかる費用で、登記された取引価格しか入っていません。

サービスチャージは建物ごとに違うため、区画の代表値では代わりになりません。DLDは共同所有の物件について、RERA(Real Estate Regulatory Agency、不動産規制機関)が承認したサービスチャージを照会できるService Charge Indexを案内しています。入れるのはプロジェクト名、用途、照会する年の3つです。このページに金額そのものは載っていません。照会して初めて分かる仕組みなので、候補が決まるまでは数字を置けません。RERAの役割の範囲はRERAの解説にまとめています。

分母の側も同じです。DLDのProperty Sale Registrationのページには、売買の登記手数料が売主2%・買主2%と書かれています。ほかに所有権譲渡証の発行手数料などの定額の費用も並んでいます。これらを分母に足すと、賃料が同じでも比は下がります。つまり当サイトの%は、手元に残る割合の上限側の目安です。表面から実質へ下げるときに何を調べるかは利回りの比較の後半に置いてあり、この記事では分母と分子に何を入れていないかだけを明示しています。

この集計では答えられないこと

最後に、この50組では答えられないことを並べます。推測で埋めるより、答えられない範囲を書いておくほうが使えるためです。

期間の比較ができません。DLDの照会画面が当年ぶんしか返さないため、集計の対象は2026年1月1日から8月25日までです。「利回りが上がったのか下がったのか」という問いには、この集計では答えられません。代表値は母集団の構成で動くので、仮に前年のデータがそろっても、構成の違いを確かめないまま前年比だけを読むことはできません。

募集中の条件も入っていません。分子は登記された賃貸契約、分母は登記された売買で、どちらも成立した取引です。売り出し中の価格、提示されている募集賃料、交渉の途中で流れた条件は含まれません。空室の割合も分かりません。登録の件数は契約の数であって、空いている住戸の数ではないからです。

そして、ここに並べた%は過去に登記された事実の集計です。将来の賃料や価格を示すものではありません。DLDの公表は後から修正されることがあり、直近の期間ほど変わる可能性があります。この記事の集計は2026年8月28日に作ったファイルにもとづいており、当サイトでは90日ごとに取り直して見直しています。系列の入口はドバイのデータ、使っているデータの出どころは出典の一覧にまとめました。個別の住戸についてのご相談はお問い合わせから承ります。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。