アブダビでこれからどれだけ建つのか。その手がかりになる数字が2026年9月28日に公表されました。アブダビ自治体交通局(Department of Municipalities and Transport、以下DMT)の都市計画・許可センター(Urban Planning and Permits Centre)が、2026年上期に承認した延べ床面積を43.6 million square metresと発表したものです。前年同期から40%増え、純増で12.46 million square metresとされています。
同じ発表には、性質の違う数字がもうひとつ並んでいます。上期に発行された建築許可が4,730件で、前年同期比は0.9%増です。40%増と0.9%増が、同じ半年について同じ発表に載っているという点が、この記事でいちばん扱いたいところです。
先に押さえておきたいことを書きます。この発表は制度の変更ではありません。手数料も、外国人が買える区域も、手続きも変わっていません。日本から物件を検討している読者にとって意味があるのは、「承認された延べ床面積」が供給の予定戸数ではないと理解したうえで、供給側の数字として手元に置くことです。以下では、発表が何を数えているのか、これまでに公表された値とどう並べるのか、そして発表に書かれていない項目を順に示します。
承認されたのは「建ててよい床の量」です
発表は、この面積が何を指すのかを一文で説明しています。マスタープランと各プロジェクトのなかで承認された開発容量(approved development capacity)であり、住宅、公共施設、交通、インフラについて将来必要になるものを計画するための土台になる、という書き方です。
言い換えると、計画の上で「ここにはこれだけの床を建ててよい」と決まった量です。着工した床でも、完成した床でもありません。1 million square metresは1平方キロメートルにあたるので、43.6 million square metresは43.6平方キロメートル分の床という規模になります。
この区別を外すと、数字の意味がまるごと変わります。「上期に43.6平方キロメートル分の建物ができた」と読んでしまうと、供給が一気に増えたという誤った理解になります。住戸が実際に市場へ出るまでには、許可、着工、工事、検査、引き渡しという段があり、それぞれで件数も時期も変わります。ドバイ側では「上期に完成した実績」という形の数字が公表されているので、性質の違いを確かめたい方はドバイの上期の完成実績と並べて読むと分かりやすいはずです。
センター長のEng. Abdulla Mohamed Al Blooshiも、発表のなかで、成功を承認した面積の量だけで測るのではなく、アブダビの都市計画、生活の質に関わる優先事項、交通とインフラの受け入れ能力に沿っているかで見ると述べています。発表した側も、面積の大きさそのものを成果として示していません。読む側も同じ態度で扱うのが妥当です。
発表に並んでいた数値
今回の発表で読み取れた値を、対象の期間とあわせて並べます。単位の違うものが同じ発表に入っているので、列を分けています。
| 指標 | 値 | 前年同期比 | 対象期間 |
|---|---|---|---|
| 承認された延べ床面積 | 43.6 million square metres | 40%増 | 2026年1〜6月 |
| そのうちの純増 | 12.46 million square metres | 記載がありません | 2026年1〜6月 |
| 発行された建築許可 | 4,730件 | 0.9%増 | 2026年1〜6月 |
| 技術検査の依頼 | 54,852件 | 9.9%増 | 2026年1〜6月 |
| 新たに登録・免許を受けた技術者 | 4,574人 | 記載がありません | 2026年1〜6月 |
| 登録済みの技術者(累計) | 10,280人 | 記載がありません | 発表の時点 |
| BIMの初期導入で扱った手続き | 119件 | 記載がありません | 2026年1〜6月 |
下の4行は、面積や許可とは数えている対象が違います。役所の側で処理した手続きの量であって、建つ床の量ではありません。同じ表に入っていても、増減を横に並べて比べないでください。
40%増と0.9%増を、どう扱うか
同じ発表のなかで、承認容量は40%増、建築許可は0.9%増です。数字としては大きな差ですが、この差がなぜ生まれたのかは発表に書かれていません。
当サイトは、書かれていない理由を推測しません。「計画だけが先に膨らんでいる」とも「着工が止まりかけている」とも書けません。どちらも、確認できる公表値の外にある主張です。同じことは逆向きにも当てはまります。承認容量が40%増えたことを、そのまま「供給がこれから40%増える」と読むこともできません。
読者の側で使えるのは、次の2つです。ひとつは、2つの数字が別々の段を数えていると理解すること。承認容量は計画の段、建築許可は工事に入る直前の段です。もうひとつは、次の公表で許可の件数がどう動くかを見る材料にすること。DMTは四半期と半期の区切りで同じ指標を出しているので、同じ機関の同じ定義で追いかけられます。市場の数字を追うときに、こうして定義を固定してから時系列を並べるのが、当サイトの基本の扱い方です。
四半期と半期を、同じ列に並べない
承認延べ床面積は、これまでも期間を変えて公表されてきました。2026年第1四半期(1〜3月)は20.8 million square metresで、前年同期比17.3%増。2025年の通年は75 million square metresで137%増、このとき建築許可は11,000件を超えたとされています。2025年上期は30 million square metresを超え、前年同期比133%増でした。
ここで気をつけるのは、期間の長さがそろっていないことです。3か月、6か月、12か月の値が混ざっているので、数字の大小をそのまま比べると意味が崩れます。上期の43.6から第1四半期の20.8を引いて第2四半期の値を作る計算も、発表がそういう形で切り分けていないため、当サイトでは行いません。
いっぽう、発表が自分で示している2つの値から言えることはあります。上期の43.6 million square metresから純増の12.46 million square metresを差し引くと、前年同期は約31 million square metresになります。2025年上期の発表にある「30 million square metresを超えた」という表現と矛盾しません。ただしこれは当サイトが引き算をした値で、どちらの発表にもこの数字自体は書かれていません。図でも、そう明示しています。
許可・検査・技術者の数は、手続きの量です
発表には、面積のほかに手続きの量を示す数字が並んでいます。技術検査の依頼が54,852件で前年同期比9.9%増、新たに登録・免許を受けた技術者が4,574人、登録済みの技術者は合計10,280人。設計の審査の質を上げるために入れたBIMの初期導入では、119件の手続きを扱ったとされています。
これらは役所側の処理量です。市場に出る住戸の数とは違います。検査の依頼が増えていることは工事が動いている目安にはなりますが、どの工事がいつ完成するかは示しません。
区分の違いは、第1四半期の発表を見るとはっきりします。そこでは、許可の申請が5,096件、着工の届出が3,244件、検査の依頼が34,391件と、段ごとに分けて公表されていました。申請と発行は別の区分です。第1四半期の申請5,096件と上期の発行4,730件を引き算して「差の分が止まっている」と読むことはできません。期間も、数えている段も違います。オフプランで契約した住戸が実際に登記へ進む道筋はアブダビのオフプラン物件に分けて書いています。
発表に書かれていないこと
推測で埋めずに、そのまま並べます。
| 項目 | 発表での扱い |
|---|---|
| 用途別(住宅・商業・産業など)の内訳 | 記載がありません |
| 地域別の内訳 | 記載がありません。2025年上期の発表では対象地域の名前だけが挙がっていました |
| 承認された床面積に対応する住戸数 | 記載がありません |
| 承認から着工までにかかる期間 | 記載がありません |
| 承認された容量のうち実際に建つ割合 | 記載がありません |
| 上期の着工の届出の件数 | 記載がありません。第1四半期の発表にはあります |
| 下期の見通し、次の公表の予定 | 記載がありません |
この表が空欄で埋まっていることを、欠点として書いているのではありません。承認容量の発表は計画側の記録であって、住戸数や引き渡し時期を示す文書ではない、というだけです。引き渡しの前に買主の側で確かめられることはアブダビの引き渡しにまとめています。
需要側の数字と混ぜないでください
供給側の数字を見たあとは、需要側の数字と足したり割ったりしたくなります。できません。アブダビの2026年上期は、登録された不動産取引の総額がAED117 billionと公表されています。こちらは取引の登録額で、床面積ではありません。単位も、数える対象も違います。
それでも両方を並べる意味はあります。片方だけでは市場の姿が出ないからです。取引が増えていても、供給がどれだけ控えているかで価格の動きは変わります。逆に承認容量が増えても、需要がなければ工事は進みません。当サイトは、この2つを別の指標として置き、掛けたり割ったりしないという立場です。
取引額の内訳とその読み方はアブダビ不動産の2026年上半期レポートとアブダビ不動産の市場規模に、取引額の増加率を価格の上昇率と混同しないための整理はアブダビの不動産価格の推移にあります。供給が増えることが買う側にとってどういうリスクになるかはアブダビのリスク・注意点で扱っています。
自分で同じ数字にたどり着く経路
この記事の数値は、すべてアブダビ政府メディアオフィスの発表ページから取りました。政府機関そのものの公表なので、当サイトが出典の層としてgovernmentに分類しているものです。同じ数字を民間の不動産サイトやニュース媒体でも見かけますが、それらは政府の公表値を引き写したものか、独自の集計を加えたものです。集計の定義が違えば、同じ名前の指標でも値が一致しません。
エリアごとに細かく見たい場合の入口は別にあります。アブダビの物件・賃貸の登録データはADRECのDARIから照会する形になっており、ここは人がブラウザで操作する前提の作りです。当サイトの自動取得ではADRECのサイトを開けないため、細部は人が確かめています。どのデータがどこまで公表されているかはアブダビのエリア別データの出典に整理しました。
最後に、この記事の性質をはっきりさせておきます。承認された延べ床面積は計画の量であって、完成の約束ではありません。当社は、アブダビの物件の値上がり、賃料の水準、利回りのいずれも保証しません。この記事は30日ごとに見直し、下期の値や用途別の内訳が公表された時点で内容を更新します。上期の数字が後から改定された場合も同じ扱いにします。