2026年11月5日、Emaar Properties PJSC と Emaar Development PJSC が、2026年1月から9月までの9か月の業績をそれぞれ公表しました。グループの税引前利益は AED 19.8 billion(US$ 5.4 billion)で前年同期比18%増、売上は AED 37.5 billion で13%増、9月30日時点の受注残は AED 158.8 billion と記載されています。取締役会が AED 4.4 billion の特別配当を承認したことも、同じ発表に書かれています。
先に、この発表で動いていないものを確かめておきます。外国人が権利を取得できる区域、登記の手数料、オフプランの支払い条件、引き渡しの期限といった制度は、会社の決算が公表されても変わりません。すでに契約している人の支払い予定や完成予定日も、この発表では動きません。読者の手続きが変わる種類の発表ではありません。
変わるのは、会社の規模と進行状況について公表された数字が1つ増えたという点だけです。そこでこの記事では、発表に出ている数字の読み方を3つに分けます。物件販売額・売上・受注残という3つの金額が何を数えているか、グループの連結と子会社の開示がどう違うか、そして引き渡しの戸数が何を指しているかです。そのうえで、発表に記載がない項目を一覧にします。
出典の層を断っておきます。これは民間企業の開示で、政府機関が検証した統計ではありません。当サイトは、ドバイ土地局(Dubai Land Department、以下DLD)の公表と企業の開示を、まとめて「公式データ」とは書きません。金額はすべてAEDの表記のまま載せます。会社の業績を日本円に直すと、読者が原文の数字を引き当てられなくなり、為替が動いた時点で記事の数字も事実と食い違うためです。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。株式についての助言も行いません。
公表されたのは、9か月の累計です
発表の対象期間は2026年の最初の9か月で、受注残だけは9月30日時点の残高として示されています。四半期の3か月分を切り出した表はこの発表に載っていないため、以下の数字はすべて9か月をまとめた累計として読んでください。前年同期との比較は、発表に書かれている比率だけを使います。
| 項目 | 公表値 | 発表の記載 |
|---|---|---|
| 物件販売額(9か月) | AED 34.7 billion | Group property sales として記載 |
| 売上 | AED 37.5 billion | 前年の AED 33.1 billion から13%増 |
| EBITDA | AED 19.7 billion | 19%増、margin 53% |
| 税引前利益 | AED 19.8 billion | 18%増 |
| 受注残(9月30日時点) | AED 158.8 billion | 6%増。うちUAEの開発分 AED 127.2 billion |
| 立ち上げた案件 | 14件 | master-planned communities での立ち上げと記載 |
| 引き渡した住戸 | 4,800戸超 | UAEでの引き渡しと記載 |
| 土地 | 約604 million sq ft | うちUAE 315 million sq ft |
| 特別配当 | AED 4.4 billion | AED 0.5 per share(資本金の50%) |
分野ごとの金額も発表に並んでいます。UAEの不動産開発の連結売上が AED 28.3 billion で18%増、国外の開発が AED 1.6 billion で16%増(グループ売上の約4.3%)、モールと小売が AED 5.2 billion で10%増、ホテル・レジャー・娯楽が AED 2.4 billion、賃貸などの継続的な収入が AED 7.6 billion です。モールの稼働率は9月30日時点で約98%と書かれています。
この並びから読み取れるのは、売上の大半が住宅の開発と販売から出ているという構造です。賃貸や運営で毎年入ってくる収入は、継続的な収入として AED 7.6 billion と示されており、グループのEBITDAへの寄与は30%と記載されています。開発の販売が止まったときに同じ水準の利益が続くとは書かれていません。
いっぽうで、UAEのホテルの平均稼働率は9か月で63%、前年同期は80%だったと記載されています。下がった理由は発表に書かれていません。住宅の価格や賃料とは別の指標なので、ここから住宅市場の方向を読み取ることはできません。公表された数字のうち、下がっているものも同じように載せておきます。
販売額・売上・受注残は、別の数字です
物件販売額は、その期間に成立した契約の金額です。売上は、会計上その期間に計上した金額です。受注残は、契約はしているけれどもまだ売上にしていない分の残高で、9月30日時点の数字として示されています。3つは同じお金を違う場面で数えたものなので、合計しても意味のある数字になりません。
発表には、受注残が今後の年に売上を計上する見通しを与えるという説明があります。ただし、いつ、いくらが売上になるのかという内訳は書かれていません。当サイトは、この残高を年数で割って1年あたりの売上を出すようなことはしません。割るための前提が公表されていないためです。
読者の側で使えるのは、ここまでです。受注残が増えているという事実は、これから引き渡す契約が積み上がっているという意味にとどまります。工事が予定どおり進むこと、引き渡しが予定日に行われること、物件の価格が上がることのいずれも、この数字は示していません。販売額が大きい会社ほど完成が早い、という関係も発表には書かれていません。
グループと Emaar Development は、別の開示です
Emaar Properties PJSC と Emaar Development PJSC は別の上場法人で、決算もそれぞれ公表されます。11月5日の発表も2本に分かれていて、片方がグループ全体の連結、もう片方がUAEの住宅開発を担う子会社の開示です。検索で出てくる数字がどちらのものなのかは、会社名まで見ないと決まりません。
いちばん取り違えやすいのが利益です。グループの発表に出ているのは税引前の AED 19.8 billion で、Emaar Development の発表に出ているのは税引後の AED 10.8 billion です。段が違う数字なので、どちらの利益率が高いという比べ方はできません。当サイトが読んだ範囲では、グループの税引後の利益はこの発表に記載がありませんでした。
連結の範囲にも差があります。グループの発表はUAEの不動産開発の連結売上を AED 28.3 billion としていますが、Emaar Development 自身の売上は AED 22.2 billion です。同じ「UAEの住宅開発」という言葉でも、どの法人までを足したかが違います。グループの発表はさらに、Emaar Development の税引前利益を AED 12.5 billion(28%増)としています。子会社側の発表の AED 10.8 billion とは、やはり税の段が違う数字です。
いっぽうで、両方の発表に同じ AED 26.2 billion が出てきます。グループのUAEでの物件販売額と、Emaar Development の物件販売額です。同じ販売を2社ぶんとして足さないでください。2つの発表を並べて合計を作ると、実際より大きい市場規模が出ます。国外の販売は AED 8.5 billion で5%増と、グループ側だけに記載があります。
どちらを見ればよいかは、読者の立場で決まります。UAEの住戸を検討しているなら、近いのは Emaar Development の側の数字です。ただし契約の相手になるのは案件ごとの法人なので、最後は契約書に書かれた社名を見ることになります。会社ごとにどこまで財務が公開されているかはドバイのディベロッパーの決算はどこで読むかにまとめています。
引き渡しは「9か月」と「累計」の2本立てで書かれています
| 項目 | 公表値 | 主体と期間 |
|---|---|---|
| 引き渡した住戸 | 4,800戸超 | UAE・2026年1〜9月 |
| 2002年以降に引き渡した住戸 | 85,500戸近く | Emaar Development・累計 |
| 開発中の住戸 | 51,000戸 | Emaar Development・9月30日時点 |
| 本体工事の契約 | 23件・AED 13.5 billion | Emaar Development・9か月 |
| インフラ工事の契約 | AED 4.3 billion | Emaar Development・9か月 |
| 予定より前倒しの案件 | 80%超 / 85%超 | 前者はグループ、後者は Emaar Development の記載 |
戸数は2本立てで書かれています。9か月で引き渡した4,800戸超という期間の数字と、2002年以降に引き渡した85,500戸近くという累計です。期間の数字は会社の足の速さを、累計は積み上げの長さを示します。性質が違うので、どちらか一方だけを「実績」として扱わないでください。開発中の51,000戸は、これから引き渡す予定のある住戸の数です。
前倒しの割合は、2つの発表で数字が違います。グループの発表はUAEの進行中の案件の80%超、Emaar Development の発表は進行中の案件の85%超が予定より前倒しだとしています。母数になる案件の範囲が発表に書かれていないため、この2つを比べたり、差を説明したりはできません。自分の契約した案件がこの割合の内側にいるのかどうかも、ここからは分かりません。
当サイトが発表を読んだ範囲では、4,800戸がどの案件の引き渡しなのかという内訳はありませんでした。立ち上げた14件についても、名前が出ているのは Serro、Serro II、Salva at Heights Country Club & Wellness、Valia at Dubai Creek Harbour、Alva at The Valley の5件です。プロジェクト名を日本語に置き換えずそのまま載せているのは、読者がDLDの照会や契約書と突き合わせるときの手がかりになるためです。地区ごとの供給と取引の記録はドバイ・クリーク・ハーバー(Dubai Creek Harbour)のデータにまとめています。
工事の契約が出ていることは、発注が進んでいる事実を示します。ただし契約の件数や金額は、完成日や引き渡し日の約束ではありません。会社全体で工事が進んでいても、個々の案件が遅れることはあります。完成と引き渡しの実績をどう見るかはドバイ不動産の引き渡し実績、登録された完成案件の集計はドバイで完成したプロジェクトにあります。
自分の案件は、会社の合計では確かめられません
決算発表は、会社を合計で見るための資料です。自分が検討している、あるいは契約した案件の状態は、ここからは分かりません。案件ごとに見る窓口はDLDの Project Status Enquiry(Mashrooi)で、プロジェクト名または番号で照会すると、登録日と完成予定日、住戸の数、開発会社と管理会社の連絡先、エスクロー口座の銀行、検査の情報が表示されると案内されています。
会社の規模を自分で並べ直したい場合は、DLDのオープンデータでプロジェクトとディベロッパーのデータセットが配られています。当サイトはこの登録簿の住戸の列だけを使って上位の法人をドバイのディベロッパーランキングに並べ、期間と母数を開示しています。会社ごとに何が比べられて何が比べられないのかはドバイのディベロッパー比較、供給の内訳はディベロッパー別の供給データにあります。オフプランで契約した持分が記録されるしくみはOqoodの登録にまとめています。
発表に記載がない項目
| 確かめたい項目 | 発表の記載 | どこで確かめるか |
|---|---|---|
| グループの税引後の利益 | 記載がありません | 財務諸表と取引所への開示 |
| 販売額のエリア別・案件別の内訳 | 記載がありません | 今後の開示 |
| 期間中に売れた住戸の数 | 記載がありません | 今後の開示 |
| 平均の販売価格・単位面積あたりの価格 | 記載がありません | DLDの取引データ |
| 4,800戸の案件ごとの内訳 | 記載がありません | 案件ごとの登録記録 |
| 立ち上げた14件の全部の名前 | 5件だけ名前が出ています | 今後の開示 |
| 受注残が売上になる時期 | 今後の年にかけてとだけ記載 | 今後の開示 |
| 有利子負債・現金の残高 | 記載がありません | 財務諸表 |
| 特別配当の基準日と支払日 | 記載がありません | 取引所への開示 |
| 買主の国籍の内訳 | 記載がありません | 今後の開示 |
この表の目的は、空いている欄を推測で埋めないことです。たとえば販売額を売れた戸数で割れば平均の契約価格が出そうに見えますが、戸数が公表されていないので割れません。1戸あたりいくらで売れているのかを知りたい場合に見るのは、会社の発表ではなくDLDの取引記録です。発表に無い数字を会社の開示から逆算することは、当サイトでは行いません。
特別配当は、購入者の条件を変えません
発表によると、取締役会は AED 4.4 billion(US$ 1.2 billion)の一度かぎりの特別配当を承認しました。1株あたり AED 0.5 で、資本金の50%にあたると書かれています。基準日と支払日は、この発表には記載がありません。配当は株主への分配なので、物件の購入者が受け取るものではありません。
営業の場で、配当や増益が「会社が安定しているので契約を急いだ方がよい」という材料として説明されることがあります。しかし決算の数字は、個々の案件の完成日や引き渡しの品質を保証しません。会社が年間に出す利益と、自分が買う住戸が予定どおり渡されるかどうかは、別の資料で確かめる話です。当サイトは株式の売買についての助言を行いません。
公表された受賞歴や決算を会社選びの決め手にしない、という考え方はEmaarがDubai-it賞を受賞でも書いたとおりです。会社の活動全体に対する評価と、案件ごとの進行状況は別に確かめます。順位やおすすめを出すときは、並べ替えの根拠になった公表値と出典、確認日を同じページに出すのが当サイトの決まりです。
この先に追うもの
次に数字が出るのは通期の開示です。そこで初めてグループの税引後の利益が分かり、9か月の数字に10月から12月の分が足されます。受注残が実際に売上へ移っていくのか、引き渡しの戸数が年間でどこまで伸びるのかも、通期の発表と比べて見ることになります。当サイトは、通期の開示が出た時点でこの記事へ追記します。
それまでに読者ができることは、会社の合計ではなく案件を見ることです。検討している案件の番号を押さえ、DLDの照会で状況とエスクロー口座を確認し、契約書の社名が Emaar Properties PJSC と Emaar Development PJSC のどちらなのか、あるいは別の法人なのかを確かめておくと、次の決算を読むときに自分に関係のある行が分かります。
この記事に書いた数字は、Emaar Properties と Emaar Development が2026年11月5日に公表した2本の業績発表、およびDLDのサービス案内とオープンデータの案内だけで確かめたものです(いずれも確認日は2026年11月6日)。市場全体の水準はDLDの登録記録から見る必要があり、入口はドバイ不動産の市場データにまとめています。当社は値上がり、賃料収入、利回りのいずれも保証しません。